この錬金術師に動物を!   作:薄翅蜉蝣

17 / 20
どうも、先日愚かにも三作目に手を出した七星天道です。

今のところ、これ以上こちらの更新速度を落とすつもりはありませんので、ご安心ください。

それでは、本編どうぞ


第十六話 かくして、湊は魔剣の所有者となる

――場所は変わって冒険者ギルド

 俺と和真の一行は、急におとなしくなったイケメンと別れ、ギルドへと戻っていた。ちなみに、あの後もう一度自己紹介をされたが、どんな名前だったかはもう覚えていない。

 報酬を独り占めできるのがよほど嬉しいのだろう。ギルドに戻り、鼻歌を歌いながらアクアは受付へ向かう。

 ふんふん上機嫌なアクアと、それについて行っためぐみん、ダクネス以外のメンツが、受付から少し離れた場所で駄弁っていた。

「アクアさん、そんなにお金に困っていたんですか……。言って頂ければ何百万かくらいなら貸せたのですけど……」

「いや、いい。あの駄女神にそんなことしたら、パーティのリーダーである俺が何を言おうと働かなくなるから、やめてくれ……。どっちかというなら、あいつじゃなくて俺に欲しいくらいだ」

「そ、そうですか。では、少し待って頂ければ、百万くらいなら用意できますが……?」

「マジで!?」

「あたしはそんなことしたら、今度はカズマが堕落すると思うんだけど」

「クリスの言うとおり。それにだ、ソフィ。和真が今こんなに苦労しているのは、正当な報いだ。俺らの故郷でコイツは俺にどれだけ迷惑を掛けたことか」

「反省はしてるから! こっちにはアクアもいるんだから勘弁してくれよ!」

「反省してるっていう人間の中で、本当に反省してるのは0,015%くらいだっていうのが、エルフの常識よ」

 人間不信すぎるだろ、エルフ。森の奥深くでしか暮らさない理由が少しわかった気がする。

 和真もすっかり苦労者だ。

 地球にいた時、どれだけ俺や和真の母さんが世話を焼いたかしっかりわかるまで、あいつに金銭類を貸すのはやめよう。

 

「な、なんでよおぉおおっ!!!!」

 

 その時、悲鳴に近い絶叫が、俺たちの耳に届いた。

 ……というか、アクアだった。

 厄介事の予感。

 

 一緒にされるのも嫌なので、皆には悪いが、俺は少し離れた場所に移動する。

 一人になって、思い出すのはずっしり重いあの魔剣。

 魔剣グラムとか言ったっけ?

「あいつ、なんで異世界まで来て勉強なんだよ」

 イケメンは勉強を教えてほしいと言ってきたので、授業料としてクリスがスティールしていた魔剣をもらうぞ、といったらすんなり了承した。魔剣を失うよりも勉強出来ない方がヤバいって、どんだけ勉強できないんだよ。教えるとは言ったものの、先が思いやられる。

「ちょっと、そこのアンタ!」

「待ちなさいよ!」

 これからの事を想像して嘆息していた俺に、二人の少女が声を掛けた。

 見覚えがあると思ったら、さっき別れたはずのイケメンの仲間だ。

「キョウヤがあんたに渡してたあの魔剣、返してよ!」

「あれはキョウヤにしか使えないの! あなたが持ってても意味は無いわ!」

 

 魔剣は持ち主を選ぶ。帰り道、アクアがそんなこと言ってたなあ、と思いだす。

 そして、あのイケメンを持ち主だと認めた以上、俺にあの魔剣が使えないということも。

 でも、記念として取っておくくらいはしてもいいだろう。

 和真は魔剣を売り払おうと言っていたが、今はした金を手に入れるために魔剣を売ったらきっと後悔する。そう言うと、渋々ながらも和真は納得していた。

 したがって、この魔剣はすでにあのイケメンの物ではなく、俺の記念品なのだ。

 それに、俺が無理矢理奪い取ったならまだしも、あいつはすんなり魔剣を渡した。

 すなわちどういうことか。

 つまり、この少女たちが無理矢理俺から魔剣を奪い取った場合、窃盗の罪に問われるのは俺ではなくこの少女たち、ということになるだろう。

 だから、この少女たちを犯罪者にしないためにも、俺はこの魔剣を渡すわけにはいかないのだ。

 そう、これは善い行いだ。決して俺が魔剣を持っているための口実ではないのだ。

 

 ……以上、約五秒の考察終了。

「ごめんな、悪いけどこの魔剣を渡すわけにはいかない。ちゃんとあいつには勉強教えるから、な? ここは穏便に済まそうぜ」

 我ながらパーフェクトな返しだったと思う。

 帰れ、と一喝するでもなく、かといって帰って下さいとお願いするわけでもない。

 上手にも下手にも出ないことで、きっとこの少女たちも……

「ハァ!? 魔剣の代わりが勉強って、アンタ、ふざけてるの!?」

「そうよ! 全然釣り合わないじゃない!!」

 ですよねー。本当は知ってました。

 アクアいわく、この世界の教育水準は高いらしい。

 授業料もそこまで高くは無いんだとか。

 だから、あの魔剣をもらう代わりに勉強を教えるなんて、本来なら全く釣り合わない。

 でも、よく考えてみてくれ。

「俺はあのイケメンがくれたものを、自分の記念にとっておいてるだけだ。お願いだからそっとしといてくれ。ここにきてから、職業にも恵まれず、特典もダメダメ。仲間も戦闘面では扱いにくいと来た。だから、ちょっとくらい運が向いてきてもいいと思うんだよ、俺は」

 自分で言ってて悲しくなる。

 だいたい特典選びですでにミスってるんだよ。

 そこでまた職業選びも失敗、仲間もって、運命の女神はどこまで俺をあざ笑えば気が済むんだ?

「なあ、お前らもそう思うだろ……?」

 にこりと微笑み、イケメンの仲間たちにそう問いかける。

 すると、少女たちは「ヒィッ」と声を上げ、数歩後ずさる。

「あ、はあ、失礼しましたッ……」

「もう帰りますんで、お気遣いなくっ……」

 あれ? おかしい。

 俺は確か軽く笑って質問したはずなのに、なんで逃げるんだよ。

「ねえ、ママー! あの人、目が変だよー?」

「しっ! 見ちゃいけません!」

「あの人、何かあったのかしら。目があそこまで死んでる人を見たのは初めてだわ」

「いや、あれはもうすでに手遅れだね。ほら、見てみろ、今にも人を殺しそうな表情だよ」

 俺はこの日から、錬金術師の新人は一定の条件を満たすと目が死ぬ、という変なレッテルを張られることになった。

 俺は隠しクエストか何かか!と突っ込みを入れたくなった俺は悪くない……と思う。

 

「緊急! 緊急! 全冒険者の皆さんは、直ちに武装し、戦闘態勢で街の正門に集まってください!」

 俺が自暴自棄になっていると、突然かかったギルドからの呼び出し。

 今はそういう気分じゃないからほっといてくれよ。

 しかし、そんな気持ちは次にかかった放送で霧散した。

「緊急! 緊急! 全冒険者の皆さんは、直ちに武装し、戦闘態勢で街の正門に集まってください! ……特に、冒険者サトウカズマさんとその一行は、大至急でお願いします!!」

 

「……えっ」

 

 アイツ(アクア)、また何かやったの?

 




いかがでしたか?

次回かその次で区切りを付け、幕話でも投稿したい所存です。
なんだか、どうしてもめぐみんとダクネスだけ別行動にしてしまう……。
ということで、次からは頑張ってめぐみンやダクネスを登場させます。

ご意見、感想、誤字脱字などお待ちしております。

3/23 すみません、明日は投稿できません。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。