今のところ、これ以上こちらの更新速度を落とすつもりはありませんので、ご安心ください。
それでは、本編どうぞ
――場所は変わって冒険者ギルド
俺と和真の一行は、急におとなしくなったイケメンと別れ、ギルドへと戻っていた。ちなみに、あの後もう一度自己紹介をされたが、どんな名前だったかはもう覚えていない。
報酬を独り占めできるのがよほど嬉しいのだろう。ギルドに戻り、鼻歌を歌いながらアクアは受付へ向かう。
ふんふん上機嫌なアクアと、それについて行っためぐみん、ダクネス以外のメンツが、受付から少し離れた場所で駄弁っていた。
「アクアさん、そんなにお金に困っていたんですか……。言って頂ければ何百万かくらいなら貸せたのですけど……」
「いや、いい。あの駄女神にそんなことしたら、パーティのリーダーである俺が何を言おうと働かなくなるから、やめてくれ……。どっちかというなら、あいつじゃなくて俺に欲しいくらいだ」
「そ、そうですか。では、少し待って頂ければ、百万くらいなら用意できますが……?」
「マジで!?」
「あたしはそんなことしたら、今度はカズマが堕落すると思うんだけど」
「クリスの言うとおり。それにだ、ソフィ。和真が今こんなに苦労しているのは、正当な報いだ。俺らの故郷でコイツは俺にどれだけ迷惑を掛けたことか」
「反省はしてるから! こっちにはアクアもいるんだから勘弁してくれよ!」
「反省してるっていう人間の中で、本当に反省してるのは0,015%くらいだっていうのが、エルフの常識よ」
人間不信すぎるだろ、エルフ。森の奥深くでしか暮らさない理由が少しわかった気がする。
和真もすっかり苦労者だ。
地球にいた時、どれだけ俺や和真の母さんが世話を焼いたかしっかりわかるまで、あいつに金銭類を貸すのはやめよう。
「な、なんでよおぉおおっ!!!!」
その時、悲鳴に近い絶叫が、俺たちの耳に届いた。
……というか、アクアだった。
厄介事の予感。
一緒にされるのも嫌なので、皆には悪いが、俺は少し離れた場所に移動する。
一人になって、思い出すのはずっしり重いあの魔剣。
魔剣グラムとか言ったっけ?
「あいつ、なんで異世界まで来て勉強なんだよ」
イケメンは勉強を教えてほしいと言ってきたので、授業料としてクリスがスティールしていた魔剣をもらうぞ、といったらすんなり了承した。魔剣を失うよりも勉強出来ない方がヤバいって、どんだけ勉強できないんだよ。教えるとは言ったものの、先が思いやられる。
「ちょっと、そこのアンタ!」
「待ちなさいよ!」
これからの事を想像して嘆息していた俺に、二人の少女が声を掛けた。
見覚えがあると思ったら、さっき別れたはずのイケメンの仲間だ。
「キョウヤがあんたに渡してたあの魔剣、返してよ!」
「あれはキョウヤにしか使えないの! あなたが持ってても意味は無いわ!」
魔剣は持ち主を選ぶ。帰り道、アクアがそんなこと言ってたなあ、と思いだす。
そして、あのイケメンを持ち主だと認めた以上、俺にあの魔剣が使えないということも。
でも、記念として取っておくくらいはしてもいいだろう。
和真は魔剣を売り払おうと言っていたが、今はした金を手に入れるために魔剣を売ったらきっと後悔する。そう言うと、渋々ながらも和真は納得していた。
したがって、この魔剣はすでにあのイケメンの物ではなく、俺の記念品なのだ。
それに、俺が無理矢理奪い取ったならまだしも、あいつはすんなり魔剣を渡した。
すなわちどういうことか。
つまり、この少女たちが無理矢理俺から魔剣を奪い取った場合、窃盗の罪に問われるのは俺ではなくこの少女たち、ということになるだろう。
だから、この少女たちを犯罪者にしないためにも、俺はこの魔剣を渡すわけにはいかないのだ。
そう、これは善い行いだ。決して俺が魔剣を持っているための口実ではないのだ。
……以上、約五秒の考察終了。
「ごめんな、悪いけどこの魔剣を渡すわけにはいかない。ちゃんとあいつには勉強教えるから、な? ここは穏便に済まそうぜ」
我ながらパーフェクトな返しだったと思う。
帰れ、と一喝するでもなく、かといって帰って下さいとお願いするわけでもない。
上手にも下手にも出ないことで、きっとこの少女たちも……
「ハァ!? 魔剣の代わりが勉強って、アンタ、ふざけてるの!?」
「そうよ! 全然釣り合わないじゃない!!」
ですよねー。本当は知ってました。
アクアいわく、この世界の教育水準は高いらしい。
授業料もそこまで高くは無いんだとか。
だから、あの魔剣をもらう代わりに勉強を教えるなんて、本来なら全く釣り合わない。
でも、よく考えてみてくれ。
「俺はあのイケメンがくれたものを、自分の記念にとっておいてるだけだ。お願いだからそっとしといてくれ。ここにきてから、職業にも恵まれず、特典もダメダメ。仲間も戦闘面では扱いにくいと来た。だから、ちょっとくらい運が向いてきてもいいと思うんだよ、俺は」
自分で言ってて悲しくなる。
だいたい特典選びですでにミスってるんだよ。
そこでまた職業選びも失敗、仲間もって、運命の女神はどこまで俺をあざ笑えば気が済むんだ?
「なあ、お前らもそう思うだろ……?」
にこりと微笑み、イケメンの仲間たちにそう問いかける。
すると、少女たちは「ヒィッ」と声を上げ、数歩後ずさる。
「あ、はあ、失礼しましたッ……」
「もう帰りますんで、お気遣いなくっ……」
あれ? おかしい。
俺は確か軽く笑って質問したはずなのに、なんで逃げるんだよ。
「ねえ、ママー! あの人、目が変だよー?」
「しっ! 見ちゃいけません!」
「あの人、何かあったのかしら。目があそこまで死んでる人を見たのは初めてだわ」
「いや、あれはもうすでに手遅れだね。ほら、見てみろ、今にも人を殺しそうな表情だよ」
俺はこの日から、錬金術師の新人は一定の条件を満たすと目が死ぬ、という変なレッテルを張られることになった。
俺は隠しクエストか何かか!と突っ込みを入れたくなった俺は悪くない……と思う。
「緊急! 緊急! 全冒険者の皆さんは、直ちに武装し、戦闘態勢で街の正門に集まってください!」
俺が自暴自棄になっていると、突然かかったギルドからの呼び出し。
今はそういう気分じゃないからほっといてくれよ。
しかし、そんな気持ちは次にかかった放送で霧散した。
「緊急! 緊急! 全冒険者の皆さんは、直ちに武装し、戦闘態勢で街の正門に集まってください! ……特に、冒険者サトウカズマさんとその一行は、大至急でお願いします!!」
「……えっ」
いかがでしたか?
次回かその次で区切りを付け、幕話でも投稿したい所存です。
なんだか、どうしてもめぐみんとダクネスだけ別行動にしてしまう……。
ということで、次からは頑張ってめぐみンやダクネスを登場させます。
ご意見、感想、誤字脱字などお待ちしております。
3/23 すみません、明日は投稿できません。