最初だけどんどん投稿します。
いつか投稿速度がガクンと落ちると思いますが悪しからず。
それでは、本編どうぞ。
第一話 踏み出す異世界への一歩
「はぁ、結局そのまま飛ばされたなぁ」
目の前に広がる風景はまるで中世のヨーロッパみたいだった。
レンガの街並み、道を走る馬車。
時折見かけるエルフや獣人の姿が、ここが異世界であることを認識させる。
「これでちゃんとした特典貰えてたらなぁ」
ステータスは補正がかかっているらしい。
しかしそれでも、チートを手に入れることができなかった分、気分は沈む。いわゆる、逃がした魚は大きい、というやつだ。
「まあいつまでも落ち込んでたってしょうがない。どんなものにせよ、特典は貰えたんだ。これから頑張らないとな」
まずはギルドやコミュニティなんかを探そうか。
「それにしても、動物の声が聞こえるっていうのは本当なんだな」
小鳥のさえずりまで人間語に翻訳されてる。
大したことは喋ってないけど。
「あそこはいい餌のたまり場だ、とか聞いたところでだしな」
あ、いいところにおばあさんが。
「すみません、この街に冒険者ギルド的なものはありますか?」
「ありますよ。この街のギルドを知らないなんて、ひょっとして他所から来た人かしら? あら、なんだかデジャヴだわ」
他の人もこの人に同じ質問をしたのだろうか。
「いえ、少し遠くから来たものでして。先ほど、この街に到着した次第なんですよ」
「あらあら……。この街に来るってことは、冒険者を目指してるのかしら。ここは駆け出し冒険者の街、アクセル。ギルドはこの通りを真っ直ぐ行って右よ。……うーん、これも言ったような……」
「真っ直ぐ行って右ですか。どうもありがとうございます!」
一人何かを思い出そうとしているおばあさんは置いておいて、俺はギルドへの道を走った。
――冒険者ギルド
ファンタジーゲームに必ず登場する、冒険者のサポートをしたりする便利な組織だ。
中から漂う食べ物の薫り。そういえば朝から何も食べていないのを思い出す。
中にはやはり、荒くれ達がいるんだろうか。
「まぁ、扉の前で立ち尽くしても何もいいことないしな」
覚悟を決めて中に入る。
最初に目に飛び込んできたのは、茶髪の人物。
緑のジャージを着て、ファンタジー感をぶち壊している。
しかしこいつは、俺のよく知る人物に目と鼻と口と背丈が似ていた。というか、和真だった。
「おい、和真」
「……湊?」
驚いた。まさかこんなところで会うことになるとは。
あれだろうか、テンプレ通り、感動の再開的な感じになるんだろうか。
「……お前、なんて格好してんだよ」
和真に言われて自分の姿を見る。
……なんというか、喪服だった。疑いようもなく喪服だった。さらに言うと、革靴だった。
「……俺、冒険する気ゼロじゃん」
まあいい。服くらいクエストやって買えばいい。
「なあ和真、その人誰?」
和真は女子を連れていた。
「ああ、こいつはだな……」
「よく聞いてくれたわね! あなた、転生者かしら? 私はアクア。本来ならあなたをここに転生させるはずだった女神よ!」
ああ、例の適当移住計画の駄女神か。
「おお、よろしく駄女がm……ゴホン、アクア。俺は湊。榊原湊だ」
危ない危ない。神様相手に悪口ぶちかますところだった。
「よろしくね、ミナト」
「で、和真。冒険者になるにはどうしたらいいんだ?」
「ああ、それならあそこの登録カウンターで……ってそういえば、お前登録手数料持ってんのか?」
登録手数料?
「いや、冒険者ギルドに冒険者として登録されるためには手数料が千エリスかかるんだが」
そんな、殺生な。
「……和真、頼みがある」
「はいはいわかったよ。ほれ、千エリスだ。稼いだら返せよ」
「おう、サンキュー!」
和真はため息をつきながらも千エリスを貸してくれた。
うん、やっぱ持つべきものは友達だな。
――受付にて
「すみません、冒険者の登録がしたいんですけど」
「はい、それでは登録手数料が千エリスかかります」
「じゃあ、これで」
さっき和真から借りた硬貨を受付のお姉さんに渡す。
「はい、確かに。それでは軽く説明を。ある程度は理解しているとは思いますが、冒険者とは街の外に生息するモンスター。すなわち人に害を与えるものの討伐を請け負う人のことです。そして冒険者には、各職業というものがあります」
ああ、ここで戦闘の形式を選ぶわけだ。せっかくの異世界だし、魔法が使いたい。
受付から俺の前にカードが差し出された。
そのカードは免許証くらいの大きさで、身分証のようだった。
「こちらに、レベルという項目がありますね? 知っているとは思いますが、この世に存在するものは、自らの内に魂を秘めています。何らかの方法で他の生命に止めを刺すことで、他の魂の記憶、いわゆる経験値を入手できるのです。普通、経験値は目に見えません。ですが……」
お姉さんがカードの一部を指差す。
「このカードには、冒険者が入手した経験値が表示され、同じようにレベルというものが表示されます。このレベルが冒険者の強さの目安となります。この経験値を貯めていくと、生物はある日突然成長を遂げます。それがレベルアップです。レベルを上げることで、スキルを覚えるためのポイントなどの特典が与えられるので、是非ともレベルを上げてくださいね」
まんまゲームだな。
「では、こちらの書類に身長、体重、年齢、身体的特徴等の記入をお願いします」
なるほど、ファンタジーな世界とはいえ、そういう書類は大事なんだな。
差し出された書類に、自分の身体の特徴を記していく。
身長168、体重55。16歳で、黒髪黒目。
「はい、どうもありがとうございます。では、こちらのカードに触れてください。それであなたのステータスがわかります。そこから適正職業を選んでいただきます」
本当にステータス補正かかってるんだろうな。これでステータスがショボかったら号泣もんだぞ。
俺は不安に押し潰されそうになりながら、カードに触れた。
「……はい、サカキバラミナトさんですね。うーん、筋力は平均以下ですね」
ああ、泣きたい。
「あれ? でも、魔力と器用度、知力は高いですね。……えぇ!? 珍しい! 錬金術師の適正が異常に高いですよ!」
錬金術師ってものすごくファンタジーだよな。あの天使もちゃんと仕事するじゃないか。
「じゃ、じゃあそれでお願いしますっ」
「分かりました! 錬金術師……っと。私も古すぎて錬金術師がどんなものなのかはわかりませんが、頑張ってください! 冒険者ギルドにようこそミナト様。スタッフ一同、今後の活躍を期待しています!!」
あ、あれ? また意味の分からない能力なの?
「あ、あんまりだ……」
俺の心の呟きは、ギルド内に巻き起こる歓声の中に虚しく消えた。
いかがでしたか。
次回から、湊はちゃんと冒険します。
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