それでは、本編どうぞ
「はあ、あれだな。俺らってパーティのバランス悪いよな」
和真とアクアと別れ、ギルドに戻った俺は、そう呟いた。
「どうしたのよ、いきなり」
「考えてみろよ、盗賊と支援魔法使いに錬金術師。どう考えても近接火力がないだろ!」
「あ、あたしってパーティメンバーだったんだ……」
当たり前だろ。初心者二人でどうやって生きていくんだよ。
「よし、メンバーを募集しよう」
「そ、それは唐突だね」
「まあ、上級職である私がパーティにいるんだから、きっと誰か入ってくれるわよ!」
その自信はどこから来るんだ? 仲間ができなかった理由もなんとなくわかったような……。
「よし、じゃあ近接ジョブ限定で募集掛けようぜ」
「うーん、近接ジョブだったらあたしの知り合いにいるんだけど、どうも他のパーティに目を付けてるみたいなんだよね」
そうか、クリスの知り合いだったら話が早かったんだけどな。
「じゃあフィーネの知り合いに……ごめん、なんでもない」
「ねえ、なんで目をそらしたの!? いるわよ、知り合いくらい!」
空想と現実を一緒にしちゃってるんだな。
大丈夫、それでも俺はフィーネを見捨てはしないぞ。
「何よ!? その生温かい顔は!」
「フィーネの知り合いは近接型なの?」
クリスは優しいな。
フィーネの設定にとことん付き合ってあげるみたいだ。
「ミナト、今失礼なこと考えたでしょ! いいえ、近接じゃないわ。魔法の、それも爆裂魔法を使うちょっとファンキーな女の子よ」
「へえっ! 爆裂魔法を使う人って本当にいるんだね。あたし、見たことないから知らなかったよ」
話についていけない。爆裂魔法ってなんなんだ?
「まあ、とりあえず募集の紙を書こうよ。善は急げっていうじゃん」
「そうだな」
「そうね」
誰かが会話の輪に入れていなかったら話題を転換する。
クリスは本当に気がきくということを改めて理解した。
「あっ」
「おっ」
掲示板に紙を貼りに行くと、和真と遭遇した。
「どうしたんだよ。お前ら、三人もいたらメンバー足りてんじゃないのか?」
「近接が一人もいない」
「ああ、なるほど」
「お互い、いい仲間が来るといいな」
「おう」
他愛のない会話をしながら、それとなく和真の募集メンバーを見る。
……おいおい。
「なあ和真。流石にこの募集は無理があるだろ」
そこには、大きな字で黒々と上級職限定と書かれていた。
「それはうちの駄女神が以下略」
「……大変だな」
「ああ、本当に」
和真と立ち話を楽しんだ後、俺は自分の席に戻った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「あ、あ、あ、あの、近接ジョブの冒険者を募集しているのは、ここでよろしかったでしょうかっ?」
テーブルでくつろいでいた俺たちに、思いっきりテンパった声が掛けられた。
見ると、眼鏡を掛けた女の子が直立不動で立っているのだった。
「ああ、確かに募集してたのは俺たちだけど?」
「わ、私をパーティに加えてください!」
きっちり四十五度に頭を下げる、目の前の子。
年は俺と同じくらいだろうか。
礼儀作法がたいへんよろしいだな。
「えっと、一応聞くけど、職業は?」
「一応ランスマスターをやっています!」
クリスが小声で、ランスマスターはランサーの上級職だよ、と耳打ちしてくれた。
なるほど、槍か。
「名前は?」
「ソ、ソフィです。ソフィ=ブランシュと申します!」
ブランシュと聞いて、クリスが不思議そうに首をかしげるが、今は放っておこう。
「疑ってるわけじゃないけど、一応ステータスを見せてくれ」
すごすごとソフィが提示した冒険者カードに記されていたのは、俺と比べ物にならないほどの筋力と敏捷、器用度だった。
「分かった。 ソフィ、お前は今日から俺たちのパーティのメンバーだ」
当り前だろう。入ってくれそうな人。それも上級職をみすみす捨て置くつもりもない。
「え、あ、い、いいんですか!? ありがとうございます! これからよろしくお願いします!」
「敬語はいいって。俺は榊原湊。錬金術師っていう職業をやってる。ミナトって呼んでくれ」
「すみません、これは癖でして……。えと、先ほども言いましたが、私はソフィ=ブランシュと言います。どうぞ、ソフィと呼んでください」
「私はフィーネよ。エルフでハイエンチャンターをやってるわ」
「あたしはクリス。見ての通り盗賊だよ。これからよろしくね、ソフィ」
ようやくパーティメンバーも揃い、結構な顔触れになってきた。
ちなみに俺はレベルも上がり、スキルポイントも増えたので、スキル、上級魔法をとってみた。
近接、遠距離、支援に偵察。
どこからどう見ても完璧なパーティじゃんか。
と、俺はこの時思っていた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「じゃあ、実力の確認がてら、クエスト行っとくか。これなんてどうだ? 『ポイズンスコーピオン討伐』。これだったらクエスト難易度も高くないし、なんとかなるだろ」
フィーネが身震いしたのがわかったが、そもそもモンスターが嫌いなこいつに合わせてたら、何も選べない。
「ソフィはこれで大丈夫かい?」
「は、はい。たぶん大丈夫……だと思います」
「よしじゃあ行くか!」
「おおー!」
――アクセルの街郊外・とある洞窟
ここに大量にいるはずなんだけど……。
もう一度クエスト依頼書に目を通す。
ポイズンスコーピオン討伐 ポイズンスコーピオンを十匹討伐せよ。
「なあ、このクエストって本当にちゃんとしてんのか?」
「さあ、あたしには分かんないよ。今までそれっぽいのは一匹も見てないしね」
「あ、あの、あれってなんなんでしょうか?」
ソフィが指さす先に見えたのは、無数の赤い点。
「……絶対いや、絶対いや、絶対いや」
フィーネがすぐに俺の後ろにピタッとくっついた。
洞窟前で待たせた方が良かったかな。俺、動けないんだけど。
「ミナト、来るよ!」
結局やっぱりテンプレ通り、あの赤い点はサソリの目だった。
『キシャアアアアア(ハイッテクルナ)』
サソリともしゃべれるみたいだ。
「キシャアア、キシャアアアアアア。キシャア(お前らがここにいると、人間が迷惑するんだ。出てけ!)」
『キシャアアア(ニンゲン、キライ。オマエラ、コロス)』
モンスターとは意思疎通は出来ても、意味がないものなんだ。勉強になったよ。
そして、後ろの目線が異常に冷たいのも気になる。
「ミナト、あなた、やっぱり馬鹿でしょ」
「だ、大丈夫です、ミナトさん。私、何にも見てませんから!」
「何がしたいんだい、キミは」
そりゃこうもなるな。
いきなりゲロゲロだのキシャアアだの叫びだされたら、その人の異常性を疑い、できれば近づきたくない人ランキングの上位に食い込むだろうな、俺の場合。
「ち、近づいてくるんだけど。ミ、ミナト、なんとかしなさいよ!」
「ソフィ、頼めるか?」
「は、はい、わかりました!」
ソフィが槍を構え、サソリの群れに突っ込む。
ソフィの技はまさに絶技だった。
すさまじいスピードで一匹目に突きが繰り出される。
そして二匹目にも……と思いきや、ソフィは急にへたり込んだ
「きゃああああ!」
そして、猛スピードで俺の背中の住人二人目になった。
「……なあ、ソフィ。どうしたんだ?」
「じ、実は私、流血恐怖症なんです」
「……え? ああ、もういいや、『錬金』!」
とりあえず今は何で冒険者なんかやってるの? とか、せめて魔法使い職にしたらよかったのに。とかは置いておこう。
結局近接戦も俺がやることになりそうだった。
いかがでしたか?
この回は、近々手直しするかもしれません
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