それでは、本編どうぞ
「さあ、説明してくれ、ソフィ」
俺はソフィを目の前に正座させて、事情聴取を始めていた。
どうにも臆病な気質のあるらしいソフィは、あたふたしている。
「え、え、えっと、そ、その、私、流血恐怖症なんです! ごめんなさい!」
「でもあなた、このクエストなら大丈夫って言ってたじゃない。サソリなんて、血が出るものでしょう、普通」
フィーネの意見ももっともだ。
せめてアンデッドとかにしていたら血は出なかっただろうに。……もっとも、このパーティにはプリーストもいないから、倒すのは困難だろうけど。
「ポ、ポイズンスコーピオンに血があるなんて、私、知らなかったんです」
天然だ。
サソリも生き物だし、血ぐらいはあるだろう、と言いたいのをぐっとこらえて、質問を変えてみる。
「ところで、ソフィは流血恐怖症っていったよな。血液恐怖症じゃないのか?」
「ち、ち、違います! わ、私は、普通に血を見るのは大丈夫なんですけど、血が流れているのはとっても恐いんです」
何その冒険者になるべきではない恐怖症。
モンスターを倒す時、血が流れるのは見るだろう。
特に近接で、突いたり斬ったりする槍使いなんかは。
「ま、まあ、次からはソフィの為にも、できる限り血の流れないクエストを受けようか。いいよね、ミナト、フィーネ」
構わないけど、不便だ。
討伐系だと、アンデッドやゴーレム討伐とかじゃないと請けれないなあ。
「あ、あ、でも、私、赤い血は大丈夫なんです」
どういうことだ?
「む、虫とか、モンスターの一部とかが出す、赤じゃない血が流れるのだけが駄目なんです」
もうそれって、ピンポイントで冒険者になるなってことじゃないのか?
あ、昆虫学者とかも無理か。
「ど、どうかこのパーティにおいてください。私、もう他に入れてくれそうなパーティもないんです!」
まあ? 流血恐怖症の
現に俺もいらないし。
でも一回入れるって言った人を捨てるほど、俺は
「わかった。じゃあソフィ。これからお前は俺たちの仲間ってことで、よろしく」
「は、はい、そんなに簡単に入れるとは思っていません。なんでもします! 雑用でも、荷物持ちでも、なんならお金でも……って、え?」
ソフィ、お前には俺が女の子からお金を奪うような奴に見えたってことか。
「い、いいんですか?」
「ああ、俺は和真にはなれないよ」
「? は、はあ。そ、それじゃあ、これからも宜しくお願いします!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
――酒場にて
「おお、和真もパーティメンバー増えたんだな!」
和真のテーブルには、昨日までいなかった、魔法使いのローブを羽織った女の子が座っていた。
「ああ、一応仲間は出来たんだが……はあ」
「あなたがカズマの言っていた友達ですか! よく聞いてくれました! 我が名はめぐみん! アークウィザードを生業とし、最強の攻撃魔法 爆裂魔法を操る者……!」
「……で、本名を教えてくれないか?」
「本名ですが」
ああ、アクアと同じ系統か。和真も苦労しそうだ。
「めぐみん? めぐみんよね!」
「おお、フィーネじゃないですか!」
もしかして、この子が前フィーネの言ってた知り合いか?
「ほらミナト! 私にだって友達はいるのよ! 少しは見直した?」
……いや、ここは何も言うまい。
「いやあ、カズマの友達のパーティに私の知り合いがいるだなんて、案外世界は狭いのですね」
めぐみんが感慨深くそう呟く。
「ミナトのパーティも、メンバーが増えたみたいだな」
「ああ、ソフィ、こいつは俺の友達の和真だ」
後ろのソフィに和真を紹介する。
「わ、わ、私はソフィです。こここ、これからよろしくお願いします」
ソフィは、恐る恐るといった感じで和真の前に進み出て、挨拶をした。
人見知りしすぎだろ。
「そう言えば、キミのパーティに、ダクネスって子はいないかい?」
声の出所は、クリスだ。
クリスとカズマって接点あったのだろうか。
「う、あ、いや、あはは」
和真のひきこもり属性発動!
説明しよう! ひきこもり属性とは、長いひきこもり生活の中で、嘘もほとんどつけなくなってしまった、朽ち果てたコミュニケーション能力の事を指すのだ! ちなみに、あまり話したことのないの人間と話すのも苦手なため、クリスに話しかけられたときにどもってしまったのだ!
おそらく、面接には来たが、採用はしていない、あたりなのだろう。
そういう顔をしてる。
「ねえ、カズマ。ダクネスって誰なの? この女神である私に隠し事なんて、神への謀反に値するわよ!」
「あ、ダクネス!」
「げ!」
クリスが、酒場の入り口あたりにいた、金髪の女性に声を掛けた。
おい、和真、そう露骨に嫌な顔すんなよ。
「あの人お前のタイプじゃないのか? 和真の嗜好は年上の美人だったと思うけど」
「……確かに、それは認める。だけど、あの人も中身が駄目な系だ」
ああ、アクアタイプか。
「ねえ、カズマ、だったかな? キミ、冒険者なんだろ? スキルポイントの消費が少ないスキル、盗賊スキルを教えてあげるから、ダクネスをパーティに入れてあげてくれないかい?」
「盗賊スキルか……めぐみんは爆裂魔法しか使えないみたいだし、そんなの俺は覚えられないしな。分かりました、お願いします!」
ひきこもり、こじらせた結果、敬語なり。榊原湊。
同年代だぞ? タメ口でいいだろう。
「よし、じゃあ決まりだね! カズマにスキルを教えてくるよ、ダクネス、ミナト、ついてきて」
スキルを教えるときに手伝ってもらうから、と言われて、俺、和真、ダクネス、クリスの四人はギルドの裏手にある広場に向かった。
「まずは自己紹介をしとこうか。あたしはクリス。見ての通りの盗賊で、ミナトのパーティメンバーだよ。で、こっちの無愛想なのがダクネス。昨日ちょっと話したんだっけ? この子の職業はクルセイダーだから、キミに有用そうなスキルはちょっとないと思うよ」
「ウス! 俺はカズマって言います。湊の友達です! クリスさん、よろしくお願いします!」
ん? 俺、こいつらの話題としてここに呼ばれたのか?
「では、まずは『敵感知』と『潜伏』から行こうか。じゃあ、ミナトとダクネス、ちょっと向こうむいてて?」
「お、おう」
俺とダクネスは、横に並んで後ろを向く。
しばらくすると、ゴンッと、後頭部に硬く痛い感触があった。
ボトッと地面に落ちる石。
振り返ると、クリスが樽の中に身を隠すのが見えた。
「…………」
ダクネスが、樽に向かい無言ですたすたと歩いて行く。
樽を横に倒され、転がされてクリスが悲鳴をあげている。
何だろうか。これはやってもいいんだろうか。
「神の怒りを、我が手にしらしめせ!」
「ミナト! それは流石にまずいよ! シャレにならないから!」
「『サンダーボルト』!」
「いやあああああああああああ!」
俺は上級魔法をクリスに向けて放った。
「じょ、上級魔法を撃ちこむのは駄目だよ!」
プスプスと煙を上げていたクリスが復活して、俺にそう言った。
「いやはや、さっきの攻撃は、私も騎士として見過ごせん! どうして私にやらんのだ! あんなに強い攻撃を撃ちこまれたら……ううぅ、想像しただけでもう武者震いが……!」
ダクネスが、顔を赤くして、ハアハアしながら言っていた。
中身があれってそういうことね。なるほど納得だ。
ただのドMだな、これは。
「まあ、俺の故郷には、やられたらやり返す、倍返しだって言葉もあるしな」
「倍どころじゃないような……。ま、まあいいや。さて。それじゃあ次は窃盗をやってみようか。私の一押しスキルだよ。 これを使えば、どんなものでも、相手の持ち物をランダムで一つ、奪い取れるんだ。スキル成功率は、ステータスの幸運値に依存するよ。まあ、色々と使い勝手のいいスキルだから、ぜひ使ってみてね!」
それは確かに便利そうだ。
冒険者だったら窃盗だって覚えられたのに。
まあ、たらればはいみないな。
「じゃあ、カズマに使ってみるからね? いってみよう! 『スティール』!」
叫ぶと同時、クリスが手にしていたのは、財布の様な何かだった。
というか、和真の財布だった。
「おっ! 当たりだね! まあ、こんな感じで使うわけさ。 それじゃ、財布を返……」
クリスは、カズマに財布を返しかけ、その手をひっこめた。
「……ねえ、あたしと勝負しない? 窃盗スキルを覚えて、あたしから何でも一つ、奪ってもいい。何をとられても、文句は言わないよ。……どう? 勝負してみない?」
これって、俺がここにいる意味あるのか?
「なあ、ダクネス、だよな? 俺らっている意味あるの?」
「うむ、それは私も思っていた」
そして俺たちは固い握手を交わし、結局傍観者に戻った。
カズマは自分の冒険者カードを操作して、スキルを覚えたようだった。
「さっそく覚えたぞ! そして、その勝負乗った! 何とられても泣くんじゃねーぞ?」
「いいねキミ! そういう、ノリのいい人は好きだよ! 今なら当たりは魔法が掛かったこのダガー。これは四十万は下らない一品だからね! そして、残念賞はさっき二人にぶつけるために多めに拾っておいたこの石だ!」
「ああっ! きったねえ!! そんなのありかよっ!」
クリスの提示した残念賞を見て、和真が抗議の声を上げる。
まあ、あれだけ石もってりゃダガー盗られる心配もないだろう。
今日はカズマの金でちょっとイイモン食べるかな。
「よし、やってやる! 俺は昔から運だけはいいんだ! 『スティール』ッ!」
叫んだ和真の手に握られていたのは、一枚の白い布。
和真は、それを陽の下に晒し、マジマジと見る。
「ヒャッハー! 当たりも当たり、大当たりだあああぁぁぁぁぁ!!」
「いやああああああ! ぱ、ぱんつ返してええええええっ!!!!」
そこには、少女のぱんつを振り回す変態と、涙を流しながら絶叫する少女がいた。
というか、変わり果てた友二人の姿があった。
……そして、空耳かもしれないが、ダクネスが「羨ましい……」とか言ってたように感じた。いや、空耳だろう。空耳だと信じたい。
いかがでしたか?
もしかすると、明日あたり投稿できないかもしれません……
出来る限り努力しますが、投稿できなかったらすみません。
ご意見、感想、誤字脱字など、お待ちしております