艦これ〜柱島泊地鎮守府での日々〜【凍結】   作:sha-yu

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一か月更新が滞りました、申し訳ありません。

これからは週一ペースで更新していきたいと思います。





艦これ改は普通に面白いと思います。


その艦娘は、母さんと呼ばざるを得ないほどの何かがあった。

 

「ふい〜……」

 

 

長門から明日の予定を小一時間ほど聞かされ、ようやく説明が終わり長門が司令室を後にして漸く一息つくことができた。長門の前では、なぜだか背筋が自然と伸びてしまう。なんというか、貫禄というのだろうか。

 

相手は、私よりも年下の女子だというのにな……在りし日の艦隊の記憶、というやつが関係しているのだろうか……。艦隊の記憶というものがあるのなら、私より年上か?

 

……気にしないでおこう。女性に年の話は禁句だ。

 

 

「さて、仕事始めは明日からだが……」

 

 

私は持ってきた荷物の中から、一冊の分厚いファイルを取り出した。

 

表紙には名簿と書かれており、その名の通り、この鎮守府に所属している艦娘の名簿である。

 

実は、この資料だけは全部目を通していなかった。量が多いというのもあったが、単純に女性のプライベートを覗き見るようで気が進まなかったというのもある。

 

1枚ずつ捲っていく。最初の方は、艦娘の中で力のあるもの……先ほどの長門のような、きっちりと執務や管理などを行える艦娘の名前が記されている。

 

 

「ふむ……それぞれの艦種ごとに、その役割を果たしているものがいるのか」

 

 

これは優先的に覚えておこう。

 

残りは……艦種別に分かれているようだな。

駆逐艦、軽巡、重巡……全部に目を通すのは大変そうだな。この辺はざっくりと目を通すことにしよう。

 

パラパラと名簿を捲ると、ふと目にとまったページがあった。

 

 

「この艦娘……見覚えが……」

 

 

記憶の断片が、繋がりそうだ。どこでこの艦娘とあった?

 

思い出そうと頭を抱える。しかし、思い出すための時間はすぐに司令室の扉をノックする音に打ち切られてしまった。もう少しだったのだがな……。

 

 

「入って」

 

 

そう声をかけるとゆっくりと扉が開く。

現れたのは弓道着にポニーテールの髪型をした女性……確か、軽空母の……。

 

 

「失礼いたします。初めまして、提督。私は軽空母、鳳翔と申します。長門さんから、提督に鎮守府を案内するよう仰せつかりました」

 

 

鳳翔、と名乗ったその女性は、とても艦「娘」とは呼びにくいほどの雰囲気というか……先ほどの名簿で見た艦娘達よりも、大人の雰囲気(怪しい意味ではない)を感じた。

 

 

「そう、か……うむ、ではよろしく頼もうか」

 

「はい。車椅子など、ご用意いたしますか?」

 

 

長門から義足のことを聞いたようだ。ちらりと、廊下に車椅子が用意されているのが見える。

 

 

「いや、用意させて申し訳ないが、できるだけ自分の足で歩きたくてな」

 

 

私がそう答えると、鳳翔は表情を崩さずに答えた。

 

 

「そうでしたか。いらぬお世話だったようですね。では行きましょうか」

 

 

申し訳ない気分になったが、車椅子にはなるべく頼りたくはないのだ。

 

荷物は……置いておいてもいいか。大したものも入っていない。私は杖をつきながら、鳳翔とともに司令室を後にした。

 

 

ーーーーーー

ーーーー

ーー

 

 

「右手の扉が工廠、左手の扉が入渠ドックになります」

 

 

鳳翔は、歩く速さが遅い私に合わせてゆっくりと隣につきながら、施設の案内をしてくれる。時折、私の顔を見て様子を確認しているのが見て取れる。気配りのできる女性というのは、それだけで好感がもてる。

 

 

「停戦した今となっては、新しい装備開発はほとんど行いませんので、艤装のメンテナンスのための施設しかありません。開発は行えませんので、ご了承ください」

 

「了解した。まぁ、開発と言われても、こちらとしてはちんぷんかんぷんだ。逆にありがたい」

 

「ふふ、面白い方ですね。ほとんどの提督の方は、開発に全力を注いでいますのに」

 

「あいにく、なりたくて提督になったわけではないのでね。その辺は、他の提督とは違うのだろう」

 

「そうなんですか?」

 

「込み入った話だ。あまり深く聞かないでくれ」

 

 

私自身、あまり話したくない話である。

鳳翔は気持ちを汲み取ってくれたのか、それ以上は何も聞いてこなかった。

 

 

「……変な空気になってしまったな。そうだ、食堂はあるか?ちょうど昼時だ。昼食をいただきたいのだが」

 

「わかりました。では、次は食堂に向かいましょう。今日のお昼は、確か……」

 

 

食堂へ向かう道中で、献立を聞いた私は、少し胸を躍らせた。

 

 

ーーーーーー

ーーーー

ーー

 

食堂に着くと、たくさん並べられたテーブルに数名の艦娘が固まって昼食を取っていた。おそらく非番の者達だろう。

 

食堂に入ってきた私を見て目を丸くしていた。まぁ、驚くだろうな。

 

 

「提督、私は昼食をお持ちしますので、お好きな席に座ってください」

 

「助かる。この体では、どうもうまく運べる気がしなくてな」

 

「できるだけのお手伝いはさせていただきます。せっかくですので、今ここにいる子達とお話してあげてください」

 

「昼食を持ってきてもらう身だ。それくらいおやすい御用だ」

 

 

昼食を取りに行った鳳翔を横目に、私はすでに昼食を取っていた艦娘達に近づいた。

 

そこにいたのは、眼帯に黒いマント羽織った気の強そうな子と、サンバイザーのようなものをかぶった小さな子だった。

 

 

「失礼、相席いいかな?」

 

「あ、ああ。ええで!」

 

 

サンバイザーをかぶった子が関西弁で席を勧めてくれた。

 

私は腰を下ろしつつ、本日の昼食であるカレーを食べている2人に自己紹介をする。

 

 

「十根川誘輝だ。ここの新しい提督、と言えばいいか?」

 

「あんたがそうなんか。うちは軽空母の龍驤や。よろしくな、提督さん」

 

「木曾だ。あんたが新しい提督か……なんていうか、ただ者じゃない雰囲気が……」

 

 

木曾と名乗った小さく呟きながら、私のことをジロジロと見ていた。ただ者じゃない、か……そんなことはないと思うが。

 

 

「木曾、あんまりジロジロ見るのは失礼やで」

 

「あ、ああ、すまん。とりあえず、よろしくな、提督」

 

「こちらこそ、よろしく頼む。鎮守府のこと、いろいろと教えてくれ」

 

 

こちとら、新米提督なのでな。

 

と、その時鳳翔が私の分と自分の分の2つのカレーをお盆に乗せて現れた。

 

 

「お待たせしました、提督」

 

「手間をかけてすまない」

 

 

お盆を右手で受け取り、ゆっくりとテーブルにおいてもスプーンを持つ。右手だけしか使えないのが、なかなかに面倒臭いものだ。

 

 

「いただきます」

 

 

カレーを掬い、口に運ぶ。うむ、これは美味い。昔行ったカレー専門店よりも美味い気がする。

 

 

「その顔は、気に入っていただけたようですね」

 

 

正面に座った鳳翔が少し笑顔を見せつつ聞いてきた。

 

 

「ああ、これはいいものだ」

 

「それは良かったです。あら、提督。口にルウが」

 

 

身を乗り出し、私の口元をハンカチで拭いてくる。子供ではないのだが……何故だか言い返せない気分になる。

 

 

「す、すまない」

 

「ハハ!提督、子供みたいやなぁ!」

 

 

そう盛大に言われると、なかなかに腹が立つな……。

 

 

「龍驤さん、服にカレーついてますよ?」

 

「んなっ!?」

 

「龍驤、お前も子供みたいだな」

 

「誰が幼児体型や!」

 

「いや、誰もそんなこと言ってねぇし……」

 

 

木曾が慣れたように突っ込んでいる。日常茶飯事なのか?

 

 

「提督、気にせずにお食事を続けてください。木曾さん、肘をつくのは行儀が悪いですよ」

 

「あ、ああ……」

 

 

……思わず母さんと言ってしまいそうになるな。鳳翔のこと。




1話完結にしたいのに、プロローグというか、なんというか、話がつながってしまううぅぅ。
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