ネタまとめ   作:髪様

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まじん


 『魔人の呪い』というものがある。世界を滅ぼす魔王とそれを守護する魔人という存在。だが、とある手法を除いて彼ら魔人を倒してしまえば、魔人を倒したその手練は新たな魔人へと変貌する、それを人は『魔人の呪い』という。ただでさえ強力な能力を持つ魔人は強者に倒されることによって更なる暴力の権化となり、魔王を守護する鍵は際限なく成長することを意味していた。

 

 

 そしてこれは魔人へ成った、一人の転生者の物語である。

 

 

 

 

 

 龍人と宝石人の奇跡の子、生物学的には非常に珍しい子供、それが俺であった。ちなみに一人称は『俺』であるが、性別は女である。本来特殊な場合を除いて初子とは歓迎されるものだが、慣習やら(しがらみ)やら掟やらが蔓延る小さな小さな村では他種族間の子供は存在全てが禁忌であった。龍人は正しく龍の人、耳は尖り小さな角が額に存在する種族。宝石人は額に宝石を持つ魔族の一種である。娼婦の宝石人とそれを買った龍人との間の子供であった俺は誕生を歓迎されることはまずなかった。子を殺すことは宗教的に禁じられているからという理由だけでギリギリ生かされていたのだ。

 

 

 最低限のパン切れと具のない水に色が付いただけのスープ。よっぽどお茶漬けやお粥の方が塩味が効いているものだと嘆息したものである。もし、これで前世とやらの記憶がなかったらと思いながらも、確かにこの記憶のおかげで今こうして生きていられるということも分かっていた。なれど、その記憶が故に今を恨み、昔を妬む生活を送ることになるとは思ってもみなかっただろう。

 

 

 本来、他の種族間で交わっても、ほぼその間で子をなすことはない。同じ人型であっても遺伝子的には若干(・・)違うのだ、だからこそ避妊の必要がない他の種族の娼婦を買うことが常として知られていた。生まれるはずがない、それなのに生まれてきた俺。龍人の耳に、本来角があるべき位置に存在する宝石。何が悪いというわけではない、ただ不気味だから村の禁忌に触れたのだ。珍しいは悪いこと、どの世界どの時代でもこれは変わらなかった。街の娼婦だった母に通いつめた父、父の遺伝子がとんでもなく頑張ったのだろう、そこだけは父に尊敬?を覚える。だが何故、父と母の仲は全く悪くなかったのが解せぬのだ。子供である俺が居ることを知った父は、とりあえず「やっちゃたぜ」とばかりに自分の村へと母を連れ帰ったのだ。母が龍人の村で忌避されても可笑しくないはずである。だが蓋を開けてみれば村でハブられているのは俺だけであった。

 

 

 宝石人はその額の宝石に魔力を貯め最高位の魔法すら簡単に行使し、龍人は龍の血が流れた頑丈な体でその敵へと猛威を振るう。それらの血を余すことなく受け継ぎ、良いとこ取りしたハイブリット。そんな俺はちょっとやそっとでは死ぬことはなかった。この世界には騎士やら冒険者やらがいる。それらは全て実力主義だ。力さえあれば見た目など些細な調味料にしかならない。安直な考えで今よりましな生活を得ようと初めに父が持っていた槍を振るった。何故槍か?素手より剣、剣より槍の方が有利、と聞いたことがあったから選んだのである。だが、そんな素人考えがそう上手くいく訳もなくあまり上達することはなかった。ならばと次は剣を選んだ。しかし結局のところ結果は火を見るよりも明らかであることに気づいてしまえば、後は落ち込むだけであった。

 

 

 父に頼ることはまずできない、嫌われているから。武器がダメなら魔法と考えても、母がもし魔法を知っていたならば娼婦などに身を落とすことはなかったであろう、つまり母から魔法を習うことも論外であった。

 

 

 だが強くなるのだ、ならば地道に行こうと、少し大きな木の枝を紐で吊るし、それを打ち付ける練習をした。木の枝の数も徐々に数を増やす。もちろん失敗も多くあった。打ち付けた木の枝が戻ってきてそれをまた打ち返すのだが、数を増やせばそれだけ対処する数が増えるのは通りで、反応が遅れれば手に持つ獲物ではなく体を枝で打ち付けることとなる。もちろん痛い。それでも独学の割には少しずつ剣も槍も上達していった、と思う、思いたい。

 

 

 次は魔物に挑むことにした。固めの木に鉄杭を打ち込んだモノを用意した、ぶっちゃけ釘バットである。だがしかし、釘バットと侮ることなかれ、龍人の腕力で振るえば人間の振るう戦槌に勝るとも劣らぬ威力を出すのだ。まあ、武器を揃えず、なぜか調子に乗っていた俺は体のスペックだけで魔物に挑んだとも言えるのだが。

 

 少し勢いをつけて手を振るえば風を切って小鬼の頭部を捉える。当たれば必殺、頭蓋骨が砕ける音を発しながらゴム毬のように弾みながら飛んでいく子鬼。武器を持ってさえ雑魚、群れてようやく雑兵レベルの子鬼。それらを乱獲しまくった。

 

 

 更には狼や豚鬼、鬼人など様々な敵を狩り殺す。もちろん、噂で聞いた討伐証明などを確保することは忘れない。気が付けば鈍器の扱いは一流でなくとも、二流ぐらいにはなっていた。

 

 

 大きめなフードをかぶり、安く見つけた鉄面(かなめん)(本来は矢を防ぐための装備)を装備し、村から少し離れた街に存在する冒険者たちの酒場へと向かう。そこで少しずつ貯めてきた討伐証明を差し出し、換金。ここでようやく小金ができる。村へと戻るとローブのフードは被ったままに龍人の鍛冶屋へと向かう。もちろんオーダーメイドなんてものは注文できないので、その場で手に入る『数打ち』の細剣を購入、そして槍も購入しようとしたのだが、これは売り切れで作り置きはないとのこと。その場にあった槍斧を勧められる。オーダーメイドクラスの業物だそうだ、注文した奴が金払う前に死んでしまって売れ残っているらしい。槍斧なんてピーキーな代物は全く売れないのでこの際、俺に売りつけてしまおうというわけである。

 

 

 だが、俺はNOと言える日本人。迷わず買った。

 

 

 その日から討伐報奨金のあまりを持って街へと向かった。街の周りに存在する冒険者たちの野営場へと向かう。宿屋なんて使うのはお上品な奴らだけだ。野営場は街のそばを流れる河原の近くを大きく切り開いただけの場所である。ロウソクを染み込ませた布と真っ直ぐで固めの木がセットのテントを組み立てる。木の棒と木の棒を紐で縛り付け骨組みにすると、布をかぶせる。これでテントは完成で、大きめの石ころを集めかまどを作る。そして村の付近で狩ったウサギ(もちろん、下ごしらえはしている)を二羽ほど焼いていると幾人かの冒険者がこちらへと寄ってきた。

 

「この酒とその肉少し交換しないか?」

「焼き魚と交換してくれ」

「主食がなけりゃ味気ないだろ、黒パンだ。受け取れよ、代わりはもらうがな」

 

と、次々に自らの獲物?を差し出してくるのだ。本来、余ったら干し肉にでもしようかと思っていたが、これから長い付き合いになるかもしれない。冒険者諸君と友誼を深めることも大切だろうと喜んでその申し出を受ける。飲みかけのぬるいエールに、味も何もない本当に焼いただけの魚、固くて噛むことも億劫な堅パン。かく言う俺の獲物も焼いただけの肉であるが。

 

 

 物々交換した様々なものをつまみながら情報を少しずつ得ていく。なに最近の優先討伐魔獣やら、なにどの都市の景気がいいやらといった内容が主である。火が小さくなる頃には大体の奴らが酔いつぶれて寝てしまった。自分たちの手を枕に石ころむき出しの地面でゴロ寝である。かと言って無用心なのかといえばそうでもなく、自分の獲物(・・)は抱え込んで、盗まれたりしないように、または咄嗟に襲われた時に少しでも抵抗できるようにの備えはしているのだ。

 

 

 

 

 冒険者稼業も板につ着始めた頃、とある都市で辺境伯の下級騎士募集の立札を見かけた。ちなみにここまで誰にも顔は見せたことはない、厨二言うなや、後戻りできなくなったとかタイミング逃しただけなんだよ。

 

 さて、本来であれば、小姓、従士(従騎士)、騎士という順番に育成(・・)しなければならない。なのでこれは異常なことであった。何せ、3工程のうち2工程省いているのだ。騎士として必要な行儀見習いやら、陣内での行動やらを小さい頃から現場で体験することを目的とした小姓、従士制度だ。傭兵上がり等から取り立てても色々と足りない騎士が出来上がるだけであろう。そこで冒険者うちで流れた噂を思い出した。

 

『魔人に辺境伯領の騎士団が壊滅させられたらしい』

 

 この辺境伯領であったか、と納得した。おそらく従軍していた見習いたちも多くが失われたのかもしれない。それならば納得も行く。まあ、案外、野良騎士でも募集しているのであって、普通の傭兵や冒険者向けの募集ではないのかもしれないが。だが、これを好機と見て厚顔無恥と自覚しながらも募集に応募することにした。

 

 さて、前世での騎士っぽいことを思い出す。ついでに今まで当たらなければどうということはないを地で行っていたので、防具なんぞほとんど付けてこなかったが、今回を機に身につけることにする。没落騎士やらなんやらみたいに、鉄製の胸当てやら全身鎧まではいかなくともそれなりの装備を龍人の村に舞い戻り受注購入した。付け焼刃もいいところである。おかげさまでコツコツ貯めてきた貯金がパーである。

 

 募集試験(やっぱり試験はあった)当日、未だ現役の細剣と槍斧を持って会場へと向かった。会場は都市より少しそれた位置にある砦の中である。そこにはあからさまな騎士みたいなやつから、落ち騎士(落ち武者の騎士版?)みたいなやつ、俺以外の厚顔無恥な傭兵どもがいた。さて試験だが、やることは簡単である。面接とトーナメントであった。面接はとにかく行儀よく受け答えできる奴。トーナメントは文字通りである。面接では鉄面つけたままだったし、もちろんそのことについて聞かれたが、顔の傷が醜く騎士として恥だからのようなこと、更には戒めで付けている等、口から出まかせ、でたらめなことを言って誤魔化し、トーナメントでは武器使わないで身体能力任せに物理で殴っていたら優勝していた。

 

 

 さて、思い出受験であったのだが、なんと面接トーナメント共に最高点。晴れて?騎士となった。

 

 

 

 

 騎士としての初めての仕事は他の合格者の観察と先輩騎士の観察である。もちろん、でまかせのボロが出ないようにするための小細工である。他には上司の命令下での盗賊狩りやら魔獣狩りやらで、誰かの命令っで動くということ以外は全くすることは変わっていない。何時も通りに奴さんの額やら喉元やら心臓やらを細剣でメッタ刺しにしてぶっ殺し、はたまた槍斧で敵を落馬させ頭をそのままカチ割り、またまた槍斧で敵の剣を引っ掛け突き刺し撫斬りにしたり、とりあえず殺りに殺った。

 

 

 気が付けば、何故か上級騎士(二つ名持ちのこと)になっていた。剣やら同じ槍斧使いの訓練を眺めて真似してさらに実践していたのが幸をなしたのかもしれない。二つ名は特徴的な鬼を模した鉄面と、そこまで多いわけではない女騎士(・・・)であることから、アイアンデーモネスである、つまり鉄般若。なんて悪意のある二つ名なのだろうか。他の二つ名騎士は鉄扉とか、鉄壁とか突撃槍とかそんなのばかりなのに、俺は鉄般若、もしくは鉄悪魔。まあ、顔にあるらしい傷が醜いと自分で嘘ついたの事もこう呼ばれることの原因の一つかもしれないが。

 

 

 さて今現在、俺の一人称は人のいないところでは「俺」であるが、 騎士としては「自分」と使いわけている。これには深くない訳がある。単にほとんどの騎士が使っているからである。名乗りが必要な時以外「自分がその役目を引き受けましょう」とか「自分~」という風に使うことが多い。しかも、普通に気張って「私」なんて使わなくて済むのだ、楽である。

 

 

 そして、武器も大きく更新された。宝石人は額に魔力が貯まるのだ、では一杯になるまで貯まればどうなるか。それは宝石として剥がれ落ちるのである。初めて剥がれ落ちたときは冒険者時代であり寝ている間であり、「あれ?ベットの上に宝石があるぞ?ラッキー」と間抜けなことを思ってしまった。もちろんどこかで見覚えがある宝石と気づき慌てて確認したら、額に存在する宝石があからさまに小さくなっていたのである。

 

 

 ちなみにこの宝石は魔石と呼ばれる、そのまんまであった。この魔石が三つ溜まった時に毎度同じく龍人の鍛冶師の下に持って行き、細剣、長剣、槍斧をオーダーメイドする。そして魔石を埋め込むのだ。これで通称魔石剣と呼ばれる魔法剣のさらに上位な剣が出来上がる。魔石自体が普通出回るものではない。これは魔法杖になったり、魔法使いが魔力を強化するために装飾品にするので、近接職の人間が手に入れづらいのだけなのだが。

 

 

 魔法剣と魔石剣には大きな違いがある。魔法剣は既に完成された魔法が宿った武具を指し、魔石剣とは魔石が埋め込まれた剣を指すのだが、魔石剣は成長するのである。宝石人の肉体に宿っていた時と同じように周囲の魔力を吸い、切れ味やら、魔力やら、込められた魔法の威力やら様々な項目が、時を経つごとに成長するのである。これらが一定レベルに到達することのよって魔剣やら聖剣と呼ばれるようになる。もちろん、魔石を使った杖や装飾品に関しても同じなのだが、気が付けば触媒として成長以前に使い潰してしまう方が多いのだ。それ故に一級品の魔法道具は数少ないこととなる。

 

 

 普通ならまずお目にかかれない武器を以てして功績をあげたからであろうか、結構な数の人間に妬まれている気がした。

 

 

 そんなある日のことである。腰には細剣を腰横に長剣を後ろ腰に装備し、下っ端兵士諸君数名と共に砦の内部巡回中に変な人影を見つける。偶にいる非番の酔っ払い騎士かと思い、部下に介護を命じようとしたときであった。件の相手は突如体を大きく震わせこちらに飛びかかってきた。だが、持ち前の身体能力でなんとか避けて抜剣する。敵が着弾した轟音が周囲に響き渡る。着地ではなく、着弾。さらに言葉も何を交わすまでもなく、敵は剣を抜き襲いかかってくる。刃に鍔なく柄が直接付いた黒い大剣。自分(・・)が言うのもなんだが、おかしすぎる腕力である。

 

「魔人だっ!増援を!」

 

 部下の一人が叫ぶ。そうか、これが魔人なのかと納得する。実はここは本来命ずるべき自分の役目を平に奪われたと怒るべきところなのだが、敵が魔人ならばこの部下の判断は大変良いものである。魔人とは天災そして強者の代名詞として使われることもあるぐらいのものだ、少し気をそらした隙に右と左の胴体が「バイバイ」とばかりにお別れしている可能性もあった。そして次に瞬きで部下の二人が一気に駆け出すのが、足音で分かった。

 

 

 戦闘再開、大きく高速に振り上げられた大剣。自分もあれを振り回すことぐらいはできるだろうが、あそこまで早くはない。我々が使う速さ重視の剣、その剣速に匹敵するものがある。つまり、細剣やら短剣やらのごとく奴は大剣を振るっているのだ。いくら魔石剣でもまともに打ち合えば折られる、そう直感し剣を長剣へと素早く変える。その直後大剣は振りおろされる、転がったり飛んで良ければ次の瞬間にはぶった切られる。ならばと剣を相手の剣に沿って振り上げ少しこちらの体を動かし躱すだけにとどめる。

 

 これは普通、相手の剣先を反らすのだが、こちらの体を反らさねばならなかった事実に驚きながら、腰を下げ前かがみに疾走、横凪で切りつける。少しの血飛沫が上がる。だが、堪えた様子が全くない。効いていないのかと目を見開き、その直後、勢い良く降ろされた肘を回避する。相手の横に回り込めば一瞬で相手はこちらに正面をもってくる。対人戦ならば決定打とも言える死角を取ったはずなのに、二度目を切り付ける暇がなかった。それを言えば一太刀で終わらなかったことに驚くべきなのだが、それでも驚愕するしかなかった。

 

 舌を噛むので本来すべきではないのだが、思わず舌打ちをする。懐にいても殺人的な速さで殴り殺されるそう考えたのですぐに間合いを取る。相手も懐にずっと居られるよりも戦いやすいと思ったのか、こちらが後ろに下がった瞬間のひと振りだけで追撃をやめる。一段落をしたとこで、何を勘違いしたのか、何かせなばならぬと感じたのか、数人の兵士がその手に持つ剣と槍を同時に構え、魔人へと突き立てる……ハズだったのだが、これも予想通りというのか、横薙ぎ一撃で全員が上半身と下半身を二つに割かれていた。おかげさまで敵も自分も兵士の飛び散った血を浴びることとなる。

 

 そこで再び駆け出した。体を反らす、切りつける、回り込む、避ける、突き立てる、これを幾度となく繰り返す。すべてが効いているのかわからない。これが魔人、人類の敵、そしてその尖兵かと理解する。こんな規格外に敵うのか?そう思いながら、ふとした隙を見つけ魔石剣に魔力を込める。牽制として放たれた剣に宿る中級魔法『風斬』は予想外にも敵の腕を切り落とした。

 

「物理防御は高くとも魔法防御は低いのかっ!」

 

 思わず叫んでしまった。まさかの弱点であった、魔力で切れ味の増した剣が効かないのだ、魔法も効かないのだろう、そう思っていたのだから当然である。そして両手持ちであった大剣が片手に変わったことで、あからさまに速度が落ちる。それに乗じて隙も大きくなる。調子に乗って切りつけ、回避、魔法を繰り返していた。腕を切り落とすなどというファインプレーはなかったが、敵は目に見えて遅くそして弱っていく。

 

 

 気が付けば魔人は剣を支えに片膝を地面につきこちらを向いていた。ここに勝敗は決した。魔人の目が言う、『殺せ』と。強迫観念、いや脅迫観念にも似た衝動に押され剣を持つ手に力を入れる。後ろでようやく到着した味方の騎士たちの静止が聞こえる。「止めろ!」「魔人に落ちるつもりか!」などと聞こえるが何を言っているのか、殺さねば終わらない、なぜわからないのだろう?そんなことを呑気に考えていた。

 

 

『歓迎しよう!魔王の新たなる配下を!』

 

 

 頭に響く魔人の声を最後に意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 裏切りの騎士と呼ばれる者がいる、その名も魔人リヤリス。力に溺れ、魔人となることでさらなる強者に成ろうとしたとされる『鉄の鬼女』、それが騎士リヤリスの通称である。

 

 

 騎士として魔人を倒した彼女はあの後、魔人の体がそして魔人の持つ武器がモヤとなり彼女の鎧そして肉体に鳥kまれた時点で、すぐさま砦の騎士に取り押さえられた。この時ならば簡単に殺せるだろうが、結局新たな魔人を生むだけであるのが分かっているので、すぐさま砦の魔法騎士総出で捕縛魔法やら封印魔法やらをかけられる。彼女の持つ武器は魔剣へと落ちる可能性も考慮され彼女と一緒に封印されることとなる。

 

 人型種族史上初の快挙とされる魔人捕縛であった。国中の魔法使い、諸外国からの魔法使い、様々な人脈を駆使し、急ピッチで封印のための神殿が建設される。これは神殿とは名ばかりのラビュリントスであった。三層に渡る巨大迷宮。地方の名をとり『アーシマの迷宮』と呼ばれることとなる。迷宮には何年かに一度、数人の少年少女を生贄に放り込むことで封印を継続することができる魔法がかけられていた。小年少女はその姿を魔牛ミノタウロス、魔女パシパエへと姿を変えられ、魔王殺しが生まれるまでの長き期間を神殿を守護することとなるのであった。

 

 

 

 

 

 

 魔王と呼ばれるものがいた。本来なら人型種族が総出になっても敵うものではなく、勝敗など見えきったものであった。だが、蓋を開けてみれば魔王はあっけなく倒されたのである。魔王が倒されることによって転生することのなくなった魔人222人のうち、221人の魔人は滅ぼされた。残りの一人は封印されたままの魔人リヤリスである。

 

 

 なぜ魔人の持つ鍵を手に入れるまでもなく、魔王は滅ぼされたのか、もちろん理由があった。この世界の神々が、様々な世界の神々より力を借り受け、人へと力を与えたのだ。人は魔人と同じく、際限なく強くなることができるようになった。ある程度の力が整うと神々は魔王への道を僅かの時間ながら作り上げ、そこへと人型種族を送り込んだ。実は魔人とは魔王の力のかけらとも呼べる存在である。強化された魔人を魔王が取り込むことによって魔王は完成されるのだが、魔人は全て残ったままに魔王の元へと人は至ってしまった。そのために魔王は簡単に滅ぼされたのである。

 

 その後この世界の神々は他の世界の神々へと恩返しをすべく旅立った。

 

 

 

 

 

 

 アーシマの迷宮は増築に増築が繰り返され、気が付けば221層となっていた。最初の神殿とも呼ばれていた頃は、地上一層、地下二層の迷宮であった。魔王が倒されると、軍隊を率いての魔人狩りが始められ、多くの被害を出しながらも全てを葬ることができた。だが、ここで問題が浮上した。これだけの被害を出しながら倒した魔人を個人で打倒した魔人リヤリスは封印の解除をしてまで倒すべきモノなのか、どうかである。正直続く戦乱に辟易していた諸王は問題を先投げにすることにした。

 

 かと言って自分たちの代で封印が解けてもいけないのでと、ピラミッド上に封印の神殿を増築したのである。新たに生まれた神官やら魔道士なんかも導入してさらなる強固な封印を完成させたのだ。そして更には遠く離れた神々の力を借りて、神殿を入口残して地中深くに埋没させたのであった。

 

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