ネタまとめ   作:髪様

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壮絶なる戦い

 

午後5時半過ぎ、萃香(もどき)と警官のおっさんが壮絶なバトルを繰り広げて早三時間経過した。

おっさんがデスクで今日の報告書を書いている横でおっさんがくれた、もとい奪った、ビーフジャーキー、サラミ、スルメという、酒のおつまみ三種の神器を食べる萃香。

どうやら敗者に反抗する権利はないらしい。

と言っても「あんたをつまみにしていい?」と彼女がマジな目で聞いてきたからなので、悪寒がしたおっさん自ら身代わりに差し出した訳だが、既に脅迫なので奪ったとみていいだろう。

流石におっさん、まだこの年で死にたくないの。

しかし気付いているのか、気付いていないのか彼、思考が若干と言うよりほぼ確実に人外の方向に向かっている。鬼としての経験を積んだ伊吹萃香の体に彼と言う記憶だけをぶち込んでいるのである。心臓移植とかで新たな趣味に目覚めたり性格が変わったりするとか稀に耳にした事があるだろう。

その事から細胞レベルで記憶を保存している可能性がある事が分かる?訳だから、ある意味脳以外、全身移植された彼は萃香に考え方が似てきてもおかしくはない、かもしれないし、そうじゃないかもしれないが実際分からんのでそういう事にしとこう。

 

多分、おそらく、めいびー。

 

彼の行う行動が萃香に似てくる事を、彼を萃香に憑依させた奴も考えて彼を彼女に入れた、とも考えられない訳ではない。奴は、忘れていた事(転生場所を決めること)をもう一度行う事すら、ただ「めんどくさいから」という理由止めてしまうような生き物である、行き先をリアルにするような奴がそこまで深いことを考えないだろうから、気にしないことにする。

元々彼は萃香風の認めた者以外の他人見下した喋り方で結構友人が少なかったらしい。奴の前(かみ?)ではあれだ、「行儀よくしてたら何かオマケないかな〜」って猫かぶってたんだきっと。

社会人だった『中の人』元々の一人称は俺と私を使い分けてたので、今回萃香そのものになったことで私に統一したらしい、ってけーねが言ってた。

 

「ただいまー」

 

「ん?誰か帰って来たよ?」

 

「息子だよ」

 

おっさんと話していたら今いる駐在所を表としたら、裏口辺りから声が聞こえる。おそらく男特有の声の低さからして、駐在のおっさんの息子だろう。

駐在所はあまり家族数が多いと一人だけで単身赴任とかもあり得るらしいので、おっさんの兄弟とか両親とかはない、多分。

つうか、さっきおっさんが妻、息子、娘、の4人家族ってけーねが言ってた。

 

「実は娘だったりしないよね?」

 

「どう考えても男の声だろ。俺の娘に喧嘩売ってんのか?いや、勝てる気しねぇから買いたくないんだが、

 俺の娘を馬鹿にするってんなら話は別だ。俺の拳骨が嬢ちゃんに降り注ぐぞ」

 

「あははは、そんなことしても当たらないって、分かって言ってるから悲しいね?」

 

もちろん、おっさんも本気で萃香(仮)の言葉を受け取ったりしない。警官のおっさん、道端でべろべろに酔っぱらって力尽きたであろう、くそ親父を家まで送って行った事もある。

むしろ、警官の仕事に酔っぱらいの対処って項目があるのではないかと思うぐらいに、警察官は酔っぱらった人間を相手にする事が多いのだ。しかも大学卒業して警察入った、おっさん既に57歳でもうすぐ退職。結構な数の酔っぱらいをいなしてきたのだ。

東北地方の人は酒に強いって、けーね(だれか)が言ってた。……気がする。でもそのせいで自分を過信し過ぎて、引き際間違えて泥酔する事もあるらしい。

 

「ん?誰か知り合いでも来てるぅ……のぉんだと」

 

「なんだ、圭司、変なもん食べたか?」

 

萃香(もどき)の姿を見て本気で驚く高校生らしき少年。メガネにアシメヘアー、近くの農林高校の制服着た一見イケてる?現代っ子。きっと身内が警察官って辛いだろうなぁ。

しかし、なぜ彼は此処まで過剰に反応したのだろうか。答えは簡単、オープンなオタクだからである。

中学時代の友人に唯のスクロール式シューティングとして騙されて東方妖々夢を渡され、どっぷりはまる。今では紅魔館から星蓮船まで網羅しているのだ。最近では新作と旧作もゲットしようと試みているらしい。

 

「付き合って下さい」

 

「第一声がそれってすごいよね?

 いいよ、拳で突き合えばいいんだね?」

 

「何物騒なこと言ってるんだ」

 

暗に死んでも知らないよ〜と分銅付きの拳をチラつかせる。ちなみに3つ分銅、10キログラム近くあったりする。人にぶつければ結構な凶器である。

しかし少年、萃香(もどき)を見れた事がよほど嬉しかったのか、彼女の言動も役作りだろうと勝手に勘違いし目をキラキラと輝かせて観察を続ける。

もちろん見世物小屋の動物のようにじろじろ見られて、気分のいい鬼(ひと)なんていない。

 

「ねぇ、キミのこの角よく出来てるねぇ〜。触って良い?」

 

「ほおぅ、良い覚悟だ。表に出な、ぶっころす」

 

「頼むから勘弁してくれ。お前さんが人殴ったら冗談にならんし、

 高いとこから落ちて潰れたトマトみたいに息子が弾けちまうだろうが」

 

此処で彼女が鬼として過ごす際の五箇条の縛りを紹介しよう。

一、嘘ついちゃだめだよ。

一、勝負は逃げちゃだめだよ。

一、鬼にとって角は誇りだから触らせちゃだめだよ。

一、お酒は一日四斗樽で三樽までだよ。

一、得物(ひと)は残さず食べましょう。

 

うん、7,2000m×3だから216……だと?少なすぎる。

二時間かからずにこれぐらいだと飲みきれるぞ?と、100を空にした時、真面目に彼女は思った。実際には制限設けないと酒の生産追いつかなくなるから自重しなさいという訳だ。

幻想郷では酒屋はあっても人自体があまり住んで居ないから大した量は造れない。の割にのんべぇが非常に多いため度数が限りなく強いモノを用意して宴会をする。

もちろん鬼である萃香は毎回自重してほろ酔い状態でちょこちょこ嗜む程度である。

 

「少年、次はないぞ。今回はおっちゃんがくれたおつまみに免じて許してやる」

 

……何様だよと突っ込みたいものである。

 

「へ?あ、うん。なりきってるね」

 

どうやら彼女の中では既に『人間=おつまみ』で結ばれているらしい。

元人間の『中の人』よ、あんた鬼を受け入れ過ぎだろうと思わないでもないが、普通に彼女の鬼としての本能が人間をその程度にしか見ていないのであって、元の『中の人』に食人趣味があるわけではない。

しかし、少年。本当に本物(ばけもの)だと頭の中で直結しないのは分かるが、その程度で勘違いを止めないと、マジで「ワタシ、オマエマルカジリ」にされるぞ?

 

「嬢ちゃん、話は大きく変わるが、これからどうするんだ?ほら、色々とお前さんには必要なモノが無いだろ?

 これが日本じゃなくてロシアだったらヤバかったな。」

 

話を変えることで萃香(もどき)の気を紛らわそうとする、おっさん。

流石に結構としくってる、せこい、おっさん超せこいよ。

 

「とりあえず、神社巡りでもしてみるよ。この身にゃ妖力も流れているみたいだからねぇ。

 案外この世界にも神力や霊力持った人間もいるかもしれない。で、なんでロシアなんだい?」

 

で、単純な萃香(もどき)は引っ掛かる。先程までの話を長く続けても単に本人自身の気分が良いモノではないという、

 

節も一応彼女の中であるかもしれないが……。

 

「警官が身分証明書持ってなかったら賄賂要求するからだろ?そうだろ、マイダディ。」

 

そこで、意味も分からず会話から締め出させていた少年再び参戦。この子どうやら命が惜しくないらしい。

警官のおっさんの場合は彼女を見逃してもらう事が勝負の条件だったので喰われなかったが、少年の場合ふとしたことで勝負からパクリに移り変わる。

 

触らぬ神(おに)に祟りなし。

 

 

「だれがマイダディだ。父さんと呼べ、父さんと。ま、その通りだよ。逆にあっちじゃ賄賂さえあれば、それぐらいは見逃してもらえるってことでもあるんだがな。

 日本じゃその酒飄もお前さんなら普通に交番に直行だぞ?」

 

 

つうか、少年&おっさん、日本でも十分ヤバいから。

 

昼間に小学生程の身長の少女がコスプレみたいな恰好して歩いてたら確実に補導だから。いや、親いないとかいったらもっとめんどくさい事なるから。

 

「そんときゃ、走って逃げるから。……いや、霧状になって逃げるから大丈夫、大丈夫。」

 

「霧状に人間がなれるわけないじゃん。」

 

説明するのもめんどくさいと言うようなあからさまな態度をしたまま、ジト目で少年の方を向く。

 

 

「はぁ〜。おい人間いい加減にせんと、

 その首引っこ抜いてそこに詰まっている脳味噌啜るぞ?」

 

 

逃げて—、少年、超逃げてー

 

 

「本気でやめてくれ。嬢ちゃん、普通の人間はお前さんみたいな生き物がいるなんて、知らないと言うか想像すらしないんだから説明するのが道理じゃないのか?」

 

「……えっと、親父?どういうこと?」

 

萃香(もどき)の怒気を身近に受けて、ようやく少年本能だけが気付く。これは自分たちとは全く違う別な生き物だと。

しかし、見た目が東方コスの少女なのでそれが少年の思考を妨げる。こういった場合、おっさんのように予備知識が無い方が現実を受け止めやすい。

知識があればある程に常識という枷に囚われて行くからである。ましてや現代っ子である彼、お年寄りみたいに迷信の類を信じない時代を生きているから、

更に相乗効果によって信じないといったきらいもあるかもしれない。

 

 

なんてことはなかった、一般人がそんな殺気とか、もろもろを感じられんだろう、常考。

 

「鬼自体が幻想(そうぞう)なんだけどね。まあいいや、今回だけだよ。年、よく見てろ。私が鬼(笑)さ」

 

そういうと彼女は半身から徐々に霧散させていく。

完全に目に見えないほどに体の密度を下げ、少年が目を飛び出るほどに開いている事を確認するとそのまま少年の後ろで体を密に戻す。

完全に固まる少年。ちなみにおっさん、プルプル肩を震わせ自分の息子の顔見て笑っている。背後を取った萃香、後ろから気付け代わりに少年の頭をガシリとその小さな手で鷲掴みにすると、

徐々に力を込め頭を絞めて行く。

 

「ちょ!ギブギブッ!死ぬ、死ぬから!脳汁どころか味噌まででちゃう!」

 

「ふんっ、これで分かったろ。わたしゃコスプレじゃないんだ。

 何が言いたいかと言うと唯一つ。言いふらすな、笑うな、指さすな」

 

「……一つじゃねぇな」

 

「黙れ、おっさん。高度1000mぐらいまで投げるぞ」

 

なかなか物騒な事を言うやつである。いや、彼女が物騒なのは既に分かっていたんだけどね。鬼だし?

おお、最近の若者はキレやすくて困るね。1000m飛んだらほぼ確実に体の形が残らないくらいザクロになる。

汚いシミが交番前道路のアスファルトの上につくのですね、分かります。

 

「……俺にどうしろと?」

 

もちろんその呟きは誰の耳に届く事もなく空に消えて行ったとさ、めでたし、めでたし。

 

つまり、人じゃ人外には勝てないと。

 

 

その後、ようやく動く決意……いや、決意って言っても、そんなに大したことでもなくないか?

まあ、どうでもいいが、とにかく行動を開始した萃香(偽)は夜の街を歩く。あの後更に警官のおっさん+αにとってはトラウマになりかねない出来事があったとか、なかったとか。皆さんには関係ないことだろうから、親子の名誉のためにも黙っておこう。

ちなみにおっさんの家にあったおつまみ、お酒はスタッフ(主に萃香)が全ておいしく頂きました。

※交番にはデスクに腕を付け顔を伏せて泣くむさくるしい警官ルックスのおっさんが、近所のおばさま方に確認され、保護されたそうです。

その隣には「ふふふ、萃香たんと二人きりのヒ・ミ・ツ」とか、一人で不気味にぼそぼそと呟く高校生の姿が確認された気もするらしい。

ちなみにこの少年の様子にはは流石の東北出身色白ピチピチ強豪おばさん勢も恐れをなしたらしく、見て見ぬふりを決め込みましたけど何か?

 

 

 

▲▽

 

 

所変わって、とある国道。

 

我らが主人公は今日も果てしなき旅路を行く、とかなにげにカッコいい事を言ってみるが、実際には交番を出たの午後7時ちょい過ぎ、現在午後7時40分。大した時間は経っていない。

やはりまだ外は暗いが、ようやく気持ち程度には日が沈む時間が遅くなってきた。しかし、慣れている人間にはいいが、流石東北肌寒い。

 

「ざぶぅ」

 

ちなみに今現在警官のおっさん秘蔵の高級スルメを口にくわえたまま道を歩いている。

大変行儀が悪いので皆さん、よい子は真似しないように。

 

そなたもワルよのぉ〜。

 

そしてその右手にはこれまた秘蔵のオーストラリア産ビーフジャーキー(100グラム当り1500円ぐらい)を手に持っている。流石に彼女も良心が痛んだのか、いや痛んだモノと思いたい。

決して手に持った袋いっぱいの使い道の到底思いつかない数のタワシが邪魔だったからので、この際思い切って押しつけようとかとかなんて、そんなことは絶対ない。

 

 

……とは言いきれないところがこれまた恐ろしい。

 

 

つまり結果的に何が言いたいのかというと、つまみの代金代わりにタワシをそのまま置いてきた。

あれだよ、タワシってさ、年に一回すらも傷んで交換とかしないよね?

 

最近はさらに用途が減って来た、タワシ。

今では家庭でも置いていないところが増えてきています。ですが知ってほしい、タワシにもいいところがあるのです。ジャガイモの皮をこすっておとしたり、出来るよ多分。上靴の表面を洗ったり、出来るよきっと。鉄鍋の内側こすったりも、出来るよおそらく。それ以外にも何か色々…………まぁ、あるんじゃね?

 

ここで一つ私がタワシの有効的な活用法を教えよう。

タワシのぶら下げる為にあると思われる針金のとこを見ます。

紙粘土をそこらへんのホームセンターで買ってきます。

針金のとこに紙粘土を丸めて優しく、優しく(←ここ重要)包み込みます。

ここで、貴方がふと幼いころに包まれた母親の愛を包み込んだ紙粘土で、

見て感じることが出来たら完璧です。

取って付けたかのような紙粘土に適当に顔を描きます。

面白くする事がコツです。

 

此処までが第一ポイント。

ここからは更に難しくなります。

割り箸を何膳か持ってきます。(お好みの数だけでいい)

タワシの下にとりあえず突き挿します。

タワシに上も下もないので前回顔を描いた向きを参考にしましょう。

あえて反対に挿す事も良いかもしれません。

この時はまるで恋人を目の前で奪われた時を想像して恨みをもって突きさせば良いかもしれません。

ですが、勢い余って貫通して自分の手に突き刺さっても当方は全く関与しませんので、

ご自身の責任を持って頑張ってください。

 

 

そして最後のポイント。

 

玄関に置きます…………

 

 

 

 

 

しかし流石鬼、おつまみ全て奪うとは遠慮の欠片もない。ちなみにおっさんジャーキー差し出す時に「鬼!」とか叫んでたけど、事実だから気にしようがない。もちろん我らの主人公は「はははは。で、それが?」と容赦なかった。

 

「さてと、次はどのルートをたどるか……」

 

一人になると独り言が多くなると言うが、彼女もそうであった。そう、勢いよく?出て来たはいいが最終目的はあれども予定など結果的に道中どうするか、どの道を行くかなんて、全くといってもいいほど考えてなかったのである。

ルートとか偉そうな事を言ってるが、地図も持ってないので適当に所々ある道路標識で確認するだけである。しかしここら辺、国道とは名ばかりのとてつもなく細い林道等も多々あり、広いなと思った道が急に細くなる事なんてざらである。

最後に南下していたと思ったら山沿いをくるくると沿って進み、いつの間にか北上していたなんて事もある。

 

「飛べば楽かな?でもなんかUFOみたいな扱いされそうだな〜」

 

UFOだと?否、日本人をなめるな!東方キャラがホントに飛んでたらカメラ持って真下に行って、パンモロを取ろうと必死になって追いかけて来るぞ。

それこそ命など如何なっても良いぜ!みたいな感じで。そしてネットにアップされ、晒し者になった挙句に「幻想郷につれて行って下さい」とか言う猛者共が、彼女が居る場所に大量に集まって土下座してお酒とか献上してそうだ。

そんな猛者もいるハズ。

 

それを全部受け取った挙句、笑ってごまかしながらそのまま飛び去るのが萃香さんですけどなにか?

 

迷った挙句やっぱり飛ぶ事にした。だが流石に彼女も昼間など、人が目視で何が飛んでいるか確認出来る明るさのうちは飛ばない。

自分がどれほど情報誌などでうける容姿かは分かっているからだ。

 

「これより、operation TOUGOUを発動する〜」

 

operation TOUGOU、それは読んで字のごとく投合作戦の事である。

更に詳細の内容を説明すれば実に簡単、目的地の方向に向かってちび萃香を投げるだけなのだ。

うん、それだけ。今現在が羽州街道国道七号であるから目的地である諏訪大社まで直線距離で大体500キロメートル。

一回の投合で大体10キロ前後飛び、そこからゆっくり力を使い飛ぶ。そして着陸地点で本体を散らし、ちび萃香をもとに再構成。

 

「なんて完璧な作戦なんだろう」

(これなら一日300キロは固いな。ということは二日ほどで付けるんじゃね?)

 

 

 

▲▽

 

 

 

と思っていた時期が私にもありました。

 

結果的に言うえば一日で済んだ。夜明けと共に諏訪大社付近に広がる森付近に到着。人が少ないうちに大社内に行ってみるかと思い、参道を見つけ境内に向かって歩く。

考えが甘かったのか、日が昇ってすぐだと言うのに幾人かの男性が(……三人だな)、境内には居た。

当初は神主や巫女さんなどが境内を掃除でもしているのかと思ったが、どうやら違うらしい。全員が絵馬付近に固まりなんか下げてる。

気付かれないように小さくなって、そっと近づき覗き込んでみる。

 

「ああ、痛絵馬か」

 

そこには神奈子、諏訪子、更には腋巫女が無駄に上手い絵でかかれた絵馬。

(確か、東方って痛絵馬は迷惑になるからやめとけってなかったか?)

そう思い、声をかけてしまった。

 

「おい、あんたら私が言う事じゃないかもしれんが、それはやめた方が……」

 

「ん?」

「見つかったか?」

「逃げ、……あれ?何処に居んの?」

 

三人目の空気が止まった、うん、ちび萃香が見つかってしまったってことだ。

 

つまり、やっちゃったぜ☆

 

「「「マジで?」」」

 

三人揃って見下ろしてくる。

ああ、なるほど的な盛大なる自爆。

 

あれだけ人に見つからんようにしようと思ったのに一日で破ってしまった。

仕方が無いのか、中の人からして元々が大雑把な性格だし、案外なるようになるさ的な思考の方が結局強いのかもしれない。

 

(まあいい、どうせ見つかったなら本体に戻すか。

それよりもこいつら何で揃いも揃って痛フルフェイス装備に痛ジャケットなんだ?非常に金がかかってそうだ、特にジャケット。)

 

「「「なんだとぉ!?」」」

 

態々一息入れて叫ぶ三人組、何がやりたいのか。

実は見つからないようにコソコソしていたのではないのかと、色々と突っ込める所もあるが、おそらくその場の勢いに任せて何も考えず行動しているのだろう。

 

「お前らホント仲いいな。」

 

こいつらみたいな馬鹿は嫌いではないんだが、いかんせ神社の人間に迷惑がかかる。

そうすれば結果的に東方ファンにも迷惑がかかるかもしれない、そう思ったのだ。元々の東方好きとしての心が話しかけることを止められなかったんだろう、きっと。

 

「「おい!おまえたちっ!何をしてるんだ!」」

 

そう思った矢先の話であった、後方より巫女であろうか、女性の怒鳴り声が聞こえてくる。

この状況で彼女が奴らの近くに居れば確実にコスプレ扱い、つまり共犯者として扱われる。もしくは彼らが、いたいけな幼女にコスプレさせた変態共として扱われる。

後者は別に構わんが、前者は普通に嫌である。

 

(やばい、みつかったかぁ!逃げるしかないか?いや、非常に目立つな。)

 

蹴散らすのが一番簡単なんだが、それは後々の事を考えると結構ヤバい。おとなしくしていれば見た目幼女な訳だから少しの注意で済むだろう。少し我慢すればいいじゃないかとあきらめ、振り向いた。

 

 

 

あ、ありのままに起こった事を話すぜ!

 

 

後ろを向くとケロちゃんと⑨が浮いていた。

何を言っているのか分からないと思うが、私にも何が起こったのか分からなかった。

見間違いや超展開なんて物じゃ断じてねぇ。

もっと恐ろしいモノの片鱗を味わったぜ。

 

 

「「「「なんだとぉ!?」」」」

 

思わず、三人組と一緒にアイコンタクトして、声を合わせる。アイコンタクトと言っても依然としてフルフェイスだから目見えないけど。

まあ、大体ここらへんはお決まりであるから見合わせるだけでいい。

 

「お前たち、私の神社で悪戯するなんていい度胸だねぇ!」

「あんたらみたいなやつに注意する、あたいったら最強に良い奴ねっ!」

 

「覚悟は出来てるんだろうねぇ!」

「さぁ、覚悟しな!私の氷でカチコチにしてあげるよっ!」

 

「とくにその萃香のコスプレしてる奴!鬼の恰好でこの神社に訪れるなんて祟られたいのか!」

「その角あたいがが貰ってあげるよっ!」

「そーなのか〜?」

 

 

「「「「なんか更に増えた!?」」」」

 

言っていることの内容はバラバラで色々である。

しかしチルノ、諏訪子の言葉を遮らないで話し終わったあとに一々会話を入れるのは何を狙っているのだろうか。

なにげに諏訪子もチルノがしゃべり終わってから話すのはもしかして優しさなのだろうか。

 

(ふぅ、とりあえず落ち着こう。諏訪子とチルノだけかと思ったら更にルーミアまで増えてきた。どういうことなのだろうか?

ああ、そうか。本物はいないって言ってたから、こいつらも犠牲者なのだろう。あの駄目神の趣味がこれで若干わかった。)

 

「何か勘違いしているようだけど、私はこいつらの仲間じゃないよ。むしろ注意した側だしね」

(よしこれでいい)

 

「ん?そうなのか?じゃあ唯のコスプレの聖地巡礼かい?」

「あたいたちはコスプレじゃないんだねっ!」

「そーなのだー」

 

とにかく、⑨が会話をかぶせてきて、うぜぇのだ。嫌いではない、むしろ好きな部類に入るのだが今は自重してほしい。

だが、このままいくとルーミア、チルノときたらリグルやみすちー、大ちゃんも出てきそうだな。今の段階では居ないみたいだけど、案外噂をしたらひょっこり現れそうな気もする。

 

「やべーあいつなかまをうりやがったー」

「しんじらんないー」

「いままでなかよくやってきたのにー」

 

(いつから貴様らの仲間になった、ムカつくくらいの棒読みだな。)

 

「うるさいよあんたら。ねぇ、あんたらも変な奴に此処に送られたクチかい?」

 

おそらく諏訪子がそれを無視して話しかけてくる。三人組は一喝だけでほぼスルーされ落ち込む。そのおかげで少しだけ溜飲が下がる。フルフェイスだから顔はわかないけど。並んでorzになってるからわかりやすいね、わざとらしい奴らだ。

 

「ん?そう言うあんたもなんだね?」

「あたいが貰った餞別はバブ(入浴剤)だったのよっ!」

「消しゴム一年分を貰ったのだ—」

 

「ちなみに私は、ジョイ君(洗剤)だったよ。CMで出てくる人間程の大きさのやつだね。

 しっかりと中身が洗剤だった。もちろん動かないし喋らないよ?でかすぎて使いづらいから私たちを保護してくれた大社の皆に小分けして分けたよ」

 

でかいジョイ君?それって一々作ったのか?もしかして。無駄に手の込んだことを。

 

「私は大量のタワシだった。酔って知り合った警官に全部押し付けてきた」

 

 

なんていうか全員貰った餞別がまったく使えない訳ではないのだが、とりあえず生きてゆく上ではあまりすぐには役に立たないものばかりだ。

だから氷精、思わず乗ってしまったが少しだけでもいいから自重して下さい。しかし、この分だと酒呑童子の本場に行っても何の情報も得られないだろう。諏訪を本拠地に置く諏訪子が何の解決策も得ずに此処でこうして暮らしている訳だから。

 

「まあいい、痛絵馬掛けようとしたそこの三人。今回は色々話す事が出来たから見逃してあげる。

 次はないからね?って、言ってるそばから何写メ撮ろうとしてんの!ほら、さっさと帰りな!たく、朝からご苦労な事だよ、本当に。

 じゃあ、萃香で良いのかい?社務所で話そうか?」

 

「拳で語るなら外の方がいいと思うけど?」

 

本気でそう思っているわけではない、一応の確認である。正直相手の力量もわからず喧嘩を売ることはあまり好きではないのだ。

戦っても負ける気がするし、バトルジャンキーな気質はそこまで中の人にはない。理由もなく戦うのは現代人的に好きにはなれないのかもしれない。

 

「何を物騒な、境内を無茶苦茶にするつもりかい?今はそんなときじゃないだろうに。残りの馬鹿五人組は話にならないんだ。

 憑依する以前はどうだったか知らないが、今はホントに馬鹿なんだよ。

 大妖精とリグル、ミスティアは大馬鹿というほどではないが、残りの二人を食い止めるだけで精一杯なのか一向に進まない。

 ようやく会話が成り立つ奴が出てきたんだ。頼むから会話をしよう」

 

「……苦労してるんだな」

 

思わず素が出てきた。

 

「じゃあ俺たちは失礼して」「おい馬鹿、ここはついていくトコだろ」「こっそりとな」

 

聞こえてるんですけど?

 

(つうかホントに五人そろってるんだ。五人そろったらいつもはストッパーである大妖精とかも自重しないからな。

その心労は相当なものだろう。少しは優しくしてあげよう。)

 

「私もここにいていいのかい?以前は違うが今は鬼だよ?」

 

「それを言ったらルーミア、ミスティア、リグルも妖怪だろう?

 いいさ、困った時はお互い様さ。むしろ奴らが暴れた時の対抗戦力になるなら大歓迎だ」

 

「……飲むか?」

 

流石にその哀愁漂う背中を見て腰に巻きつけていた酒瓢箪を差し出す。今日ぐらいは愚痴を聞きながら、ちょびちょびと飲むのも悪くないだろう。

多分お酒とか買おうとしても絶対に売ってもらえないし。

私は証明する手段があり、ものわかりが良い人間に最初に出会ったが、彼女の場合どう見ても唯の変な帽子(zun帽)かぶった幼女です、本当にありがとうございました。

 

「ああ、夜になったら貰うよ。鬼の酒だ、旨いんだろ?」

 

「ああ、少々人には度数が高いがお前さんなら大丈夫だろうよ。味はあたしが保証する」

 

「神主に頼んで、酒の肴にワカサギとエビでも貰っておくよ」

 

「いいね、諏訪市の特産だったよね」

 

「時期はずれてるが味はしっかりしてるから安心して」

 

いつの間にか増えていた奴らはどうやらこちらの事はすでにどうでもよくなったらしく、本日の予定を大まかに決めているらしい。

こいつらならきっと幻想郷じゃなくても気にせず生きていけるのだろう。

本来幻想郷でないと消えてゆく可能性があるが、その辺はどうやらあの駄神が手を加えているらしい。恐怖でなくても一定以上の祈りやら知名度があればそこにある物として生きていける。

 

「チルノちゃん〜」

「おっ?どうしたの大ちゃん?」

「今日はどうするのだ?湖に行くのかー?」

「ボクは今日は寒いから暖かい場所が良いな」

「リグルは蛍ですから秋の朝はつらいのですね」

 

「あいつら本当に自然体だね」

「悩みなんかとは絶対に無縁そうだろう?」

 

ワイワイと何も間考えていない、更には楽しそうにそうにする五人組。そしてそれを遠目に見ながら若干哀愁漂う雰囲気となっている諏訪子。

聞くところによると今まで一週間ほどあれを相手に、此処まで本当に頑張って来た諏訪子(もどき)に黙とうと合掌を送りたい。

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