ネタまとめ   作:髪様

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三韓征伐だったはず?

 昔々、ある所に戦にめっぽう強い人型を取った狐がおりました。

狐は剣を振い、矛を突き出し大勢の敵兵を圧倒的な武力で薙ぎ払いました。

ひとたび狐が剣を振るえば、剣を持った兵ならば剣ごと叩き斬られ、矛を突き出したのなら鎧ごと串刺しにしました。

 

 

 

狐は敵兵犇めく草原で剣をふるい叫びました。

 

 

「私を倒せるものは居るか!」

 

「ここに居るぞ!」

 

「え、何それ怖い」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 新羅攻め、もとい三韓征伐。

対馬より発った船団は新羅の海岸へと向かう。

そして砂浜に船を寄せ、干潮の時を見計らい船を自ら座礁させ、船より板を降ろし馬と人員を次々に降ろす。

ちなみに神功皇后は対馬でギブアップ、引き返した。

と思っていたのだが、実際は仲哀天皇が崩御したらしい。

最後に見た時は元気そうに見えていたが、あれは化粧である程度誤魔化していたと言う事を砂浜で合流したニニギ殿に聞いた。

しかも、仲哀天皇は当初より敵の多い即位であった為、毒殺の疑いもあるようだ。

そんな重要なことを話していいのだろうか?

良くはないかもしれないが、まだそういった駆け引きをする時代でもないのだろう。

 

 

 どうなることかと思った新羅攻め、あわよくば取りやめになってほしかったが、普通に続行させられた。

女性である神功皇后がいない方が攻めやすい、むしろどうせ後から戦う事になるのであれば邪魔者がいない今のうちにある程度攻略しておこうと言う訳である。

ちょうど今ぐらいの中国、三国志とかならそう言った駆け引きもあるのに、日本でたらめだな。

指揮官にとっては、一々上を気にして行動しなくて良いというのは楽であろうが……。

 

 

 各自の持つ兵糧が少ない倭軍は急ぎ行動を起こす必要がある。

地面に立ったと思ったら、すぐさま自分の部下を大声で集め、集まったとこから総大将であるニニギ殿の元に報告、そこで様々な事を指示される。

ニニギ殿は元々九州の豪族で臣下の礼をとりヤマト朝廷の元におり、戦上手で知られた豪族であったらしい。

なにげに偉かったニニギ殿、いや仲哀天皇と直に話せる立場だし偉いのは知っていたけどね、普通に近くに居ると忘れるものです。

 

 

「狐月、主はワシと共に北へと向かう」

 

 

 という訳で結構な無茶ぶり、八〇〇〇を四つ、二〇〇〇人ごとに進軍する事となった。

兵を分けるは愚策であるが、そん事は言ってられない。

聞けば、新羅の砦は小さく三〇〇程しか籠れないので、それで十分だし食料拠点の近くに上陸したので増援が来る前に付近の砦と一緒に占領しないといけないとか。

 

 

でもさ、船を守らないで良いのかな?

 

 

 進軍する途中、暇だったのでニニギ殿の横に馬を寄せ、世間話をしていた。

倭人が以前上陸したときに、ここらの事は調査済みであり敵の拠点も、敵性集落もない故の行動である。

弓矢などで奇襲でもされたら、三mmほどの厚さのうろこ状の鉄板を簡単につないだだけの鎧しか着ていないのだ、すぐさま壊滅される。

鉄器を持つのは一部のみらしく、青銅の矛と剣しか持っておらず、鎧を着ていない兵も多くいる。

私も付近の鳥たちに周囲の状況を教えてくれるように頼み、万全を期している。

 

 

 ちなみに最近では当たり前に使っている私の技能(あくまで技能、能力ではない)だが、これは全ての物と言を交えるというもので、分かりやすく言えば言霊使いに似た性質を持つ。

しかし、言葉でモノを操れる訳ではなく、あくまで一定以上の知能を有するモノと会話、そしてお願いできる程度であるが……。

ちなみに知能のないモノに話しかけることで、同じ種の物からの情報を読み取ることもできる。

例えばA地点に生えていた楠に何か面白い事はないかと尋ねたとしよう。

すると他の楠が生えている場所B、C、D地点などで起こった事や情報を伝えてくれるのだ。

役には立つのだが、知能がないモノに情報の取捨選択は出来ないので大量の情報を自分で整理しなければならない。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

「見えましたぞ」

 

 

 モブAの兵士君が砦を発見した事を伝えてくれる。

だが残念、私はキミと同じ最前列いいるのだ、一々言わなくてもすでに見えている。

彼はお約束、様式美で言っているだけだと思うけどね。

ちなみにキツネだからといって、夜行性の動物のように視界が茶色ががっているとか、静止視力が下がっている訳ではない。

キツネの頃から抜群の動体視力と静止視力、夜目はもちろんのごとく効くし、普通に日中も人と変わらない、といってもマサイ族並みの視力はありそう。

 

 

「ほとんど石積んだだけですな」

「そんなモノだ、わしらの国なぞ|全て(・・)木の柵、城柵ではないか。石であれば火にも強いし、あれよりはマシであろう」

 

 

 梯子や櫓などの攻城兵器がないのにどうやって砦を攻めるんだ、と一人で考えていたのが杞憂であったか。

石垣は、ある程度はそろえて積まれているが、結構隙間が存在し、足をかける場所など十分にある。

狭間胸壁など、河原に落ちている少し大きめの石(両手で抱えられぐらい)ぐらいの大きさしかない。

そういや万里の長城のような綺麗な城壁はもう少し後にならないと世界中を見渡してみても出てこないのだったか。

いや、石造りの城壁自体、元々数が少ないので、今の時代でここまでの物を築けていることの方が驚きなのか?

 

 

「狐月、勘違いするな、城の多くは山城ぞ。ここは各地に通じる兵糧拠点ぞ」

「ではやはり、守備は堅いので?」

「見て分からぬか、百済、高句麗からも離れた拠点であるからして怠け切っておる。未だ誰も城壁に立っておるまい。このまま攻めるぞ、主の200を持ち裏手より攻めい。我らは残りで正面より攻める」

 

 

 という訳でやってきました、裏手門。しかし、門と言いましても門戸は存在しない。本来の攻城戦などの時は木柵の他に、土嚢や石を積んで出入り口を塞ぎ、中に入れないようにするらしいが、もちろんそんな物、敵さんがこちらの存在に気付いてもいないので存在しない。まあ、村に毛が生えた程度の砦であるし、守備兵も後方だから多くても300程度、城攻めで必要と言われる三倍の兵力、1200は十分に満たしている。で、私はそのまま攻撃の合図でもある、鬨の声を待つ。雄たけびが聞こえ相手が正面表門に集まった時を見計らい、そのまま兵を裏手から進ませ後ろから槍を突き付けるというものだ。

 

 

「キツネ殿、始まったようですぞ」

「少々間をおいて行く。しばし待て」

「しかし、」

「奴らが移動する間も置かずに攻めても陽動の意味はないだろう?それにそこまで時を置く訳ではない」

「承知しました」

 

 

 鬨の声が聞こえ、風に乗って流れてきた血の臭いを私の鼻が嗅ぎ取り始めたころを突入の頃合いにしよう。戦いが始まれば一先ずはニニギ殿が攻めている正面を優先的に守るであろうし、その間に幾人かの人間で裏門を塞ごうとするだろう。ちょうど裏門を塞ごうと土嚢を積み始めるぐらいに突入すれば最善だ。手に荷物を持つ人間が武器を持てる訳がない。だから今の(城壁に上に人が立っていない)うちに城壁に張り付いて侵入すれば、あっという間であろう。

 

 

「聞こえたな、おい半分を城壁の上に登らせてくれ。残りの半分を門から侵入させる。いいか、城壁に登ったら、弓兵から優先に狙え。狙い撃ちにされたくないからな」

「キツネ殿、承知。おい、お前らついてこい。壁からずり落ちるなんてうつけの事をするでないぞ」

 

 

 大体百人を壁に残したまま、門へ侵入する。思った通り、最近登場したばかり(中国三国時代に登場)の荷車に土嚢を大量に載せた新羅兵が慌てて門を塞ごうとしていた。そのまま戦闘を唯の人以上の速さで駆け抜け首に、剣を当て横へと振り抜く。未だ両手剣の時代で日本刀のような切れ味なんて有ったものではないが、鉄の剣は新羅兵の首の喉ボケを鈍い音を立てながら砕く。いくら切れ味が悪いといってもあれだけの勢いで振り抜けば首の半分は裂ける。新羅兵は唖然とし、何が起こったか分からないといった顔のまま地面へと倒れる。もちろん血が付かないように死体の後ろまで走り抜けている。

 

 

「く、くそう。蛮人め!回り込んでいやがった!」

「お、応援を呼べ!」

「無理に決まってるだろう、表にゃこいつらより大勢いるんだぞ!」

 

 

 なるほど、どうやら私の技能である言霊使いは異国の言葉でもしっかりと翻訳してくれるらしい。ふむ、では私の言葉を彼らは理解してくれるのだろうか?いや、降伏を呼び掛けようにもまだ無理だろう。今はどちらかというと味方を無残に殺され憤慨している感じだ。彼らが死にたくないと思わねば降伏勧告なんて意味がない。何人かは見せしめに切り倒さなければならんだろう。敵の多くが表に掛かりっきりなのは間違いない、未だ目の前に居る新羅兵は8人しかこちらには居ないのだから。

 

 

「貰ったっ!」

 

 

 再び先程と同じように圧倒的な瞬発力で一人の新羅兵に近づく。すぐ横、彼の隣りに立っていた他の新羅兵の「ひッ」と言う小さな悲鳴が聞こえる中、私の手によって既に高速の剣が振り抜かれ、何が起こっているのか理解できない内、腰にある剣を抜こうとする体形のままで新羅兵はその首をころりと落とす。そのまま横を向き隣に居た新羅兵の頭上へと剣を振り上げる。

 

 

「ま、待て。わしがこの拠点の長じゃ。降伏する、降伏するから見逃してくれ!わしにはもうすぐ齢三つになる子がおるのじゃ。死にとうない」

 

 

 ああ、一人だけ頭に赤いひもが付いた兜をかぶってるなとか思ってたけど、これって将兵の証だったのね、納得。でもどうすんよ、私。目の前の彼は既に戦意喪失、予想より早かったな。当初の予定通りだし別に許しても良いんだが、この人がそこまでの権限がない可能性も無きにしも非ず。しかし、殺してしまえばもし本当にこの拠点の将だった場合で殺したら、残りの新羅兵に散発的な降伏しか呼びかけられなくなるしな。

 

 

「よろしいのでは?ニニギ殿もおそらくこのようなお考えだったハズであります」

「え?」

 

 

 ……この人、もしかして新羅兵の言葉分かるの?あ、ああ、そっか。今の時代まだハングル文字生まれてないね。倭国も中国も朝鮮もほとんど漢文|(吏読)じゃん。日本も仮名文字すら生まれてないし、ヤマト朝廷の言語はほとんど大陸から渡って来たものだし。もしかして私が他国の言語を分かっていた訳ではなく、言葉が同じだっただけですか。つまり話せる程度の学があるなら分かるのね。

 

 

「ふぅ、分かった。今すぐ伝えろ」

「は、はい」

 

 

 新羅君はそのまま剣を地面に突き刺し大声で叫び出す。「降伏する、銅鑼をならせ。抵抗するな」などの言葉をである。ちょっと時間をおいて剣戟の音もしなくなり少しづつ声も小さくなる。中央の広場みたいな場所に新羅隊長を連れ立っていると、倭国兵五人で二人ほどの新羅兵を矛でつつきながらやって来る。こうしてみると装備面ではこっちの方が優れているな。新羅兵の場合、隊長格はそこそこ綺麗な装備であるが、その他の兵はこちらの兵と同等か、木を胴に巻いただけとかいう兵も大勢いる。

 

 

「予想以上にあっけないの。狐月、主はなにかやったか?」

「二人ほど」

「どういった風に」

「一太刀にて」

「なるほど、それゆえか。まあよい、新羅の兵よこれより主らは我らが傘下に入れ。さすれば主らの村は安泰ぞ。逆らうならば草の根残さず焼き尽くすっ!心しておけ」

 

 

 そのまま新羅兵の鎧を引っぺがし、鉄の武器を持つ者がいれば取り上げ、鉄の武器を持っていない倭国兵へと渡していく。兜は誤認されたあげく味方に殺される、同士打ちの可能性もあるから身につけないようだが、鎧は一部の隊長格が身につけて行く。汚い、流石倭国兵、超汚い、味方だけどね。むしろ死なないようにするのは非常に大事だしね。この人たちも今は本国より徴兵してるけど戦う農民もしくは戦う狩人でしかないしね。

 

 

「馬を駆けさせた。他の砦の情報もすぐに入って来るじゃろう」

「今晩はここで過ごすので?」

「おうよ。おいそこの、寝首をかかれぬように五人ひとくくりで縄で縛って見張りを立てい。妖しい奴はすぐさま首を落とせ。狐月、付き合え少々飲むぞ。良い酒が蔵にあった」

 

 

 ニニギ殿はそう言うと機嫌よさそうに笑いながら一つの小屋へとはいっていく。私は周りの将の刺さるような視線(酒は高級品故に)を全身に浴びながら同じく後に続く。小屋に入ると既に酒樽らしきもののふたを剣でこじ開けるニニギ殿の姿があった。流石気が早い。ニニギ殿が開けた酒樽の中を見るとべとべとの白い物、うん、どう見ても甘酒にしか見えない。

 

 

「ほれ、飲めい」

「ニニギ殿、その前に他の物に器で配ってきまする。未だ新参者の身でありますれば」

「そうであったな。ふむ、そこの大器でよかろう、回し飲むように伝えよ」

 

 

 ニニギ殿が指をさすとそこにはどう見ても桶にしか見えない器?があった。……器か?あれ。私にゃどう見ても酒を飲むものではない気がするのだが。いや、気にしまい。気にしたら負けだ。むしろ、今ニニギ殿が持っている器しか、そういった入れ物はないのだから気にしても意味がない。

 

 

「では、これに注いで回しておきます」

「狐月、主も友誼を深めてこい。その後にいっぱいつきあっては貰うがな、ガハハハ」

 

 

 見たことないぐらい上機嫌なニニギ殿をしり目に両手いっぱいの桶にはいった酒を小屋の外へと運び出す。一瞬驚いた様子を見せる諸将達だが、私の意図に気付くと満面の笑みを浮かべる。なんて奴らだ、酒にありつけると分かった瞬間、手のひら返すような反応しやがった。どんだけお酒飲み隊の?←誤字にあらず。

 

 

「気がきくのぅ、キツネ殿」

「うむ、では誰から行くかの?」

「キツネ殿で良いではないか、ほれささっと一口いかれよ」

「ふははは、遠慮せずとも良いぞ、主が運んだ酒じゃ!」

 

 

 既に出来上がってるのではいのかというほどに機嫌が良くなりやがったな。

 

 

「では一献」

 

 

 勧めに従い桶を傾ける。どろりとした酒が口の中に入って来る。

 

 

「あ、おいしい」

 

「器から口を放したら次に回せい」

「酒じゃ、酒じゃ!」

 

 

 私が二回ほど喉を鳴らし酒をすすり口を放せばすぐに桶を取り上げられる。風味は甘酒にアルコールが少し入った程度でそこまで強くはない。どろりとして飲みにくいかと思っていたが、結構すっきりとしている。倭国に居る前には酒を飲む機会など無かったから分からなかったが、この様子からすると非常に高級品扱いなのだろう。そんなモノがこんな後方にあったのは謎ではあるが、おそらく後方で製造したモノを一旦公布の食糧地点に運び込み、前線や酒屋、城に運ぶのだろう。

 

 

「わしらには珍しいが、新羅の兵どもは酒をそこそこ作っておるのだ」

 

 

 小屋に戻りニニギ殿に理由を知っているか訪ねてみると、ボソボソと呟く感じで教えてくれた。なんでも稲作を行う規模の問題らしい。ヤマトの地では未だ多くの開墾が住んでおらず、野生の熊や狼、猪を仕留めながらある程度まとまった平地を森を切り開き作り、そして水源が近くにある場所を探している段階だとか。これがなかなかの曲者で良い場所は他の有力豪族との取り合いになったり、反功勢力が既に開墾していたりする場合もある。

 

 

 前者の場合一番権力があるのが天皇家であっても他の豪族たちを無視はできないため、話し合いで解決。後者の場合はほとんどの場合小競り合いによってどうなるか決まるとか。つまり新羅の場合は稲作できる場所が広い為少々米を酒造に回しても大丈夫だが、倭国に自分たちの食糧を削ってまで酒を作る余裕はないとのことだ。

 

 

「主は賢いのぅ。わしの息子はこれを理解も出来なんだ。そなたであれば一国も治められるやもしれぬ」

「畏れ多く、酒に過ぎるお言葉に。私には学を知るとも生かす頭がございませぬ」

 

 

 私がある程度話せるは一般教養程度の知識を現代日本で習っていたからだ。少し前に活躍したであろう三国志の英雄や倭国ヤマトの豪族達ほどの駆け引きは出来ないだろう。せいぜい悲しいほどに少ない現代知識で千歯こきを作る程度だとか畑に堆肥、発酵させた人糞やら馬糞やらをつくるのみだろう。兵を率いてもある程度までなら大丈夫かもしれないが、増え過ぎると全く自身が無くなる。

 

 

「そなたがそう思うならそうなのであろう。主の剣は獣の剣なり、されどその剣は守るに特化せり」

「は、それはどのような意味で」

「寝る。主も寝ろ、戦いはまだ続くぞ。疲れはとらねばな」

 

 

 少々酔うのが早いのではと思わないでもなかったが、飲み慣れていない酒である。唯でさえ日本人はお酒には弱い種らしいので、積み重ねもない今の時代なら酔いが回るのも早いのではないか。そう思い、肘をつきながら横になりいびきをかきだした、ニニギ殿の近くに腰をおろし、そのまま寝転がる。明日も早い、流石に私はこの程度ので酔わないとはいえ、体が温かいうちに寝るべきだろう。

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 日が昇る少し前、誰に起こされるまでもなく目が覚める。昔、(前世って昔の扱いで良いのかな?)唯の凡人であったころは低血圧だったので、朝起きるのは非常に苦手であった。しかし今では目覚めも中々に良いし、一度起きると次の夜になるまで眠くなることはない。野生動物であったためか、健康的すぎるので体力をある程度消耗せねば目が冴えに冴えまくって夜ですら眠くなくなる。

 

 

「ニニギ殿、ニニギ殿」

「ん、なんじゃい狐月。ん、ああ、もう朝かい」

 

 

 日本本土に居たころに、ニニギ殿が起きる時間が近づいてきたので体を揺すり、起きるように促す。本来なら、これらはニニギ殿の奥さんであるカヌシ殿の役目であるのだが、今は村に居るのでここにはいない。ほぼ完ぺきであるニニギ殿であるが朝は弱い。かといって以前、朝駆けをしてきた反乱の衆を私を含め誰よりも早く目を覚まし、戦い防いでいたのであるから不思議だ。

ちなみに朝駆けをしてきた彼らは、前日の夕方よりじわじわと私達の村に近付き、朝になるまで待ってから襲ってきたのに簡単に全滅させられていた。

本当にご苦労なことである。その活力を稲作か何かに注げば他の村の食糧を盗まなくてもよいのではないかと思ったものである。

 

 

「ふはぁ、うむ。動くのがかったるいのう。狐月、ちょっくら主の兵で他の拠点を落としてきてくれんか。わしはここで酒を飲んでおく。」

「……ニニギ殿、私はこういった時どういった風に返せばよいか分かりません」

「何簡単なことよ。ヌシはただお任せ下さいと言えば良い」

「……いや、本気ですか?流石に二〇〇で他の拠点を攻めるのは無理があると思うのですが」

 

 

 ニニギ殿はそう答えた私の顔をじっと見つめると、言うべきか言わないべきか迷っているのだろうか顎鬚を弄る。それでも決心したのだろう、「ふぅ」とあきれるように(何故そんな顔?)溜息をつくと、私の顔から少々視線をそらし再び向き直し話し始める。

 

 

「わしは知っておるぞ。ヌシが奇術を使う事を。以前、剣をふるうだけで離れて生えた大木を切り倒したではないか」

「見ていたので?」

「でなければ言わん。まあよい、気にするな狐月。ヌシの兵二〇〇で攻めさせる云々は冗談じゃ。ただヌシは自らを過小評価し過ぎるきらいがある。はっきり言うぞ、狐月、ヌシは一人で一つの里を滅ぼすぐらい朝飯前であろう、あまりにも人からは離れておる故にな。なれど忘れるな、ヌシが己を、その身を人とするなら、ヌシははただ戦うものにあらず、守るモノとなるべきなのだ。でなければ主を人であらず。賊であれど家族あれば守る者ぞ。」

 

 

 この後ニニギ殿の話というより説教は半刻ほどだけ続いた。結果的に彼がなにを言いたかったのかというと、力を持つ者は術からしてその力に溺れやすく、己が初心たり目的なり失いやすく、朽ち易いとかなんとか。だからして、自分がやり遂げる目標に沿って生きその目標に近づいたのなら更に追加して行きなさいという事だ。何とも辛辣、私にとても大きなモノを求めるものである。

 

 

「では、筑前まで退くか」

「……はっ?」

 

 

 話が終わった瞬間、何かありえない事を聞いた気がする。ひく、退く?退却ってことですか?何をおっしゃるのだろう。確かに圧倒的兵力差があったが、砦を落としてからというか、ここにきて1週間と経っていない。まだ船の上の方が長かったぐらいである。得に言いたいことはないのだがあえて言うなら何もやった気がしない。むしろ実際、砦の後ろから侵入して脅しただけでほとんど戦ってすらいない。

 

 

「何を行っておるか、狐月よ。このまま先に進めば壊滅は必至。であれば退くのが当り前よ。もとより新羅攻めはただの脅しであるからして、至尊が奴らに約を結ばせるだけ為に行うとしたもの。このままこの地に居ってもも百済側に伸びた新羅勢を呼び寄せるだけ。毎回帰りの糧を得れば退いておるのだ。まあ、皇后殿はその他の思惑を持っておるようだったがな」

 

 

 上陸→略奪→退却って言う事ですか。ああ、なんだろ、これで倭寇、もしくはヴァイキングを連想した私はおかしいのかな?私が習った倭寇の初めは室町時代ぐらいだったが、この頃から片鱗を見せてたのですね、日本人。でも一つ聞きたい、これのどこが新羅攻略なんだろうか。ほとんどちょっかいかけてるだけです。

 

 

「降るよう申した新羅の兵はどうなされるで?」

「どうもこうも置いて帰るに決まっておろう。連れ帰っていかがする、おぬしも我らの食糧事情は知っておろうに。どうせ皇后殿が満足するまでなんどもこの地に立つことになるのだ」

「かけるリスク、あ、いえ危険性に釣り合わない気がしますが」

「そうでもないぞ?奴らの鎧をはぐだけで十分の益になる。どうしても我らがつくる鉄器の数は少量であるからな。地方に散らばる豪族を散らすにも鉄器で武装した兵は強いぞ、奴らの持つ青銅の剣を鉄剣であれば叩き折ることができるからな。もとより未だ我が国の者たちの集落でも鉄は珍しいのだ、新羅人が作ったものを奪うだけで、我らがちまちま作る鉄器の量をはるかに超す量を確保できるのであるぞ、何もわからぬ皇后殿の命に従うも一応の利があるからである。でなければ新羅を占領しろだの戯言に従えるか」

「ですが、質に関しては我が国のほうが良いでしょう?質の我が国、量の新羅ということですか」

 

 

 ニニギ殿は占領と言った。おそらく本来の命令は駐屯含めの占領だったのだろう。しかしやはりここは敵地。今は田舎の一部が攻撃される、彼らにとっては大規模の賊に襲撃されるものと大して変わらないから放っておいているのであろう。この時代、賊は大量におり、また時折近くの盗賊が連合を組んで貯蔵地を襲撃し奪っていくこともあるらしいから、我らも新羅側からすればおそらく同じ扱いで地方は地方で勝手に対処しろということであろうか?他の盗賊と違い、我らは仕掛けては元の海越えた地に帰るので討伐するのも面倒くさいのであろう。うん、やっぱり新羅側にもおそらくただの賊扱いだね。しかし駐屯し続けるというなら、こちらは食料を使ってしまえば補給する術がほとんどなく、彼等新羅も他の二韓に向けている兵を割いてこちらを狩りに来る。そうすれば勝ち目などないだろう。こちらは兵の補充もなく戦い続けるのであろうだから。

 

 

「本土はこれで満足するので?」

「今代の至尊がお隠れになる前ならば問題なかったであろうな。おそらく次はわしは新羅攻めより下ろされるであろう。皇后殿のことだ、無理やりこの地に留まろうとし、大敗するであろうな」

「ニニギ殿はそれでよろしいので?」

「良い訳があろうか?口うるさい者も多いが、ともに戦ったものも多くおる。それらが考えなしに殺されるのかもしれぬのだぞ?かと言ってわしは皇后殿には嫌を抱かれておるから聞く耳も持つまい」

 

 

 その後、私たちは先ほどの話のとおりに筑前まで退くこととなった。そのための伝令を他の隊に走らせ、海岸付近で集合、二百人規模で潮が満ちるのを待ち半島より離れた。そのような中、私は最後の殿

、殿といっても敵の追撃は今のところないのでただ単に歩哨として立ち、最後に船に乗るというだけである。そしてそのまま丸太舟に毛が生えた程度の構造船に乗船。ぶっちゃけ被害に関して言えば帰りに波に飲まれ沈む船での人的及び物資的被害の方が多かったらしい。なんやねんそれはと思った私は悪くない。

どっかの大戦中の空挺部隊のパラシュートが開かないよりもひどい話だと思う。ちなみに戦闘被害は合計48名に対し、沈没被害は馬6頭に人52名船六隻である。と言っても戦いよりも疫で死ぬほうが多いのだがね。

 

 

「しかし、こうもコロコロ状況が変わるのは解せませぬ」

「深く考えるでない。本音を申せば単に酒飲んだ後再び侵攻を開始するのが、めんどくさくなっただけじゃ」

「ホント、ぶちまけましたな」

「ふははは、何一応戦ったから良い、良い」

 

 

 今回の遠征でどれだけのものを手に入れたか分からないが、どう考えても費用対効果合ってない気がしてやまない。だって別に金の山を見つけた訳でもないしね。鉄がいくら今の時代に希少といっても9月過ぎ、稲作の働き手を失ってまでの遠征にどれほどの価値があるのだろう、そう思っていた時が私にもありました。

 

 

そして後々分かった事実、ここ朝鮮半島じゃないで中国のどっかだったらしい。

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