ネタまとめ   作:髪様

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視野広く攻城戦?

誰一人欠けることなく、最悪のパターンも回避した状態。なんて城攻め日よりなんだ。

 現実逃避はやめにしよう、……起きてみれば既にほとんどの準備が終わっていた。あとは俺の号令を待つだけの状態である。別に時間的には問題ないのだが、なんだろう、この寝過ごした感は。

 少し慌てるように身なりを整え、集合をかける。こうして並べた集団を見ると、いかに俺たちが訓練されているのか分かる。プラプラと形だけの集合の部隊と、しっかりと整列までしている集団。思わずうんうんと満足げに頷いてしまった。

 

 「さて、合図は覚えていると思います。この後当初の予定通り各自グループを作り攻撃を開始してください、では解散!」

 

 外部連中は適当に集まり武装を整えていく、こちらは集合をかけ細かい調整である。城壁を登る際の梯子のかける位置や、優先的に制圧確保する場所。要塞の外観しか知らないので、城壁を確保してからは小さな建物、狭い部屋から順に確保していくことになる。広い場所、建物を先に確保しても人数的な問題があり、防衛が難しい。守る範囲が大きくなればそれだけ突破もされやすくなるからだ。

 梯子持ちの役目を命じた彼らに大まかに地面に描きなぐった、要塞外観の地図を指差していく。策なんていうのもおこがましいモノなので、うちの連中を十人ほど残し攻撃を開始する。

 

 

 最初に梯子を持った二組が脚立状に掛け合わせ、一人が頂上付近まで登る。すぐさま矢をつがえ、城壁の上を確認するのが見える。即席攻城塔的な使い方である。少しでも城壁の上の敵を減らすことで梯子を登りきる際の不利な状況を少しでも減らすためだ。

 

 「一匹もいません、そのまま城壁は確保できそうです」

 

 しかしそれも杞憂らしく、城壁の上には敵がいないことが告げられる。すぐさま梯子より降りてくると、目的の場所城門付近と城壁へ登るための階段がある場所へと梯子をかけていく。一箇所につき二つである。並べてかけた梯子を二人同時に、手を使わずに槍を握ったまま駆け上がる。

 城壁までたどり着くと飛び降りて、短槍を短く持ち左右確認。安全を確認すると一人が警戒、一人が手招き。

 この間に外部連中は城壁の周囲を歩き回っていた子鬼(ゴブリン)、豚鬼《オーク》を片付けていく。この際には既に絶叫など気にせずに殺していくのだ。

 城壁の確保の次は城門である、出来る限り上に弓兵を配置して援護させる。俺も梯子を使い城壁のうち、ちょうど城門の上に待機する。

 

 城壁につながる階段は絶対に人を置いて守らせるように言っている。当然ながらそういった場所に弓兵は配置しているので、内部の戦闘には参加しない。城門周囲の子鬼(ゴブリン)を片付けた部隊が腐りかけた貫木を外し城門を開ける。六人ほどをその場に残しすぐさま雪崩込む。

 敵が混乱しているあいだに一匹ずつ速攻で討ち取っていき、逃げ場がないように一つ以外の城門は塞ぐようにしている。鉄扉式の門の前に昨日刈り取った草木を積んでいるのだ。そこに導火線替わりの油をまいて大量に逃げ出そうとしたときは火をかけるように言っている。

 

 ちなみに遭遇すれば積極的に戦闘しているが、退路の確保も重要拠点の確保も全てうちのメンバーである。外部連中に上手い具合に最もなことを言って口先で誘導し、直接的な制圧は彼らが行っているのだ。

 適当に戦っている彼らだが、孤児らしく集団でリンチしながらの戦闘なので、今のところ一方的に敵を撃破できている。子鬼弓兵(ゴブリンアーチャー)に関しても、奴らは適当な場所に配置しているらしく弓の長所を活かせていない。射掛けられるより以前に撃破できているようである。

 馬小屋やその他の倉庫などに存在した敵を一掃すると、外部連中に数人の被害が出ていた。口うるさい連中ではないようなので少々残念である。ここでテコ入れをしようと、目の上のタンコブの連中を呼んできてもらい、要塞中央の指令所の制圧をお願いする。60名ほどが彼らの傘下であるので、彼らの一部には事故死してもらおう。

 

 「カイト、司令部の制圧に加わって貰えますか?」

 

 先程から制圧した門を暇そうに眺める、年長組で短弓を使わせたら右に出る者がいない者を呼ぶ。名はカイト、相方に長弓使いのトリンがいる。この子も今俺の横に居り下を眺めている。護衛らしいが、城壁への道は抑えているのでそう何人も必要あるまい。

 

 「以前告げたこと、できますか?やりたくないと言うのであれば、それでも構いません。次善の策はないこともないですから」

 

 これに関しては嘘だ、やらなければお帰りしてもらうしかなく、その時に抵抗したならば連携の訓練相手になってもらうしかない。結局のところ、今の彼らの自尊心ばかりの性格は厄介なので、この地に沈んでもらう他ないのだ。

 

 「姉さん、俺たちみたいに姉さんに心酔させるように仕向けてはどうですか?いえ、殺すのが嫌という訳ではないのですが。殺人に関して問題はない、問題はないのですが……」

 「カイト、お前がやらないなら俺がやろうか?長弓の方が得意だが、俺は短弓も普通以上に使えるから。俺なら長姉、禍根の内容にさりげなく仕留めてきます」

 

 さてどうしたものか、確かにそのまま戦力になるのならそちらの方がいい。しかし、そう簡単に上手くいくようなモノではないだろう。今俺の配下の孤児だって長い下積みあってこその関係である。こちらの余裕をあまり崩さず、小さな頃から頼れる姉をやってきたからこそ、こういった俺にとって現在望みうる限り最高の環境となったのだ。

 

 「……カイト、私の旗下に加える策、手腕があるのならばそうして下さい。少なくとも私には思いつかなかったのですが、私より優れたものを持っている、貴方たちなら何か思いついたかもしれません」

 

 こうして時々ヨイショと持ち上げているのも人間関係を作る上で大事であろう。と言っても、思いつかなかったのも、彼らが天才の類と思っているのも、心偽り無い本音であるが。

 

 「大丈夫です、姉さん。人間ああダメだなと思った時に助けられたら、コロッと騙されるものですよ。少し危険なところに誘い込んで、恩を感じるように仕向けます」

 

 苦笑い気味でこちらを向くと、城壁に足ををかける。えっ?と思った瞬間には時すでに遅く、カイトは城壁から飛び降りていた。8、9mある城壁をである、足のバネをうまく使ったのだろうが、骨に痛みが来ないのだろうか?あまりヒヤッとさせることはしないで欲しい。躊躇いもなく行ったことから、絶対の自信があったのだとは思うが……

 

 

△指令所内部▼

 

 

 「カイト、来たか。待ちわびたぞ」

 「ゲール、レント……、姉さんが困ってたからね。ちょっと危ないけどやって欲しいことがあるんだけど、大丈夫かな?」

 

 実際にこれからやることを姉さんにバレると叱責ものであろう。しかし、これが一番やり易い。本来僕たちが突入する際は左右を近接武器が固め、一人が扉を開ける。開いた扉の前に弓を構えた人間が片膝を付き室内を警戒。敵が向かってきたときは一度射かけ、扉付近に近づいたところを左右から一突きする、というのが基本戦術である。

 今回はあえて突入の際にそれを行わず、大声を出して扉内部に転がり込んでもらうのだ。非常に危険だが二人ならやってくれると信じているから。そして、どうやら僕たちの戦い方をなんとなく真似しているであろう外部連中は同じことを行い失敗するであろう。そこで死んだのならそこまで、生きていたならばそこを助ける。それが基本的な作戦だ。

 

 「姉さんは損な役回りだからね、表情も硬いしいつもツンツンしてるけど、僕たちのことを一番に考えている」

 「結局、大金を手に入れても出て行かなかったからな。皆で笑って見送ろうと集まったのに、いつも通りの仏頂面で働け働けだったし」

 

 そうなのだ、戦場に出かけると聞いたときは、何人かが着いていこうとしたのだが、断られた。その時僕たちは姉さんが僕たちを置いてそのまま行くのかなぁと皆が思ったものだ。姉さん程の美しさがあれば、どこでだってやっていけるだろうし、軍に入れば騎士にまで上がれるだけの才能を持っていると思うから。

 結局帰ってきた姉さんは服を揃えて美味しいものを食べさせて武器を整えてと、こんな場所でも僕らが生き残って行けるように手を尽くしてくれた。本当なら孤児の取り分はその孤児のものであるのだから、いくら余分に持っていようと分け与える必要なんてないのに。

 

 姉さんはいつもそうである。貧民街で服装は汚いが、体は普通のツンとした匂いでなく甘い匂いがするし、野菜だって育てることができる。丁寧な言葉遣いを教えてくれて、街で仕事をするときに有利にしてくれた。寝込みを襲われない安全な寝場所を作ってくれて、そんな僕らが上納しようとしても受け取らない。最終的にはなんとか受け取るようにしてもらったが、結局貯金して皆で使える生活に便利なものを購入してくるのだ。

 

 「結局さ、旅に出ないでこの要塞を手に入れようとしたのも俺たちのためだろう?」

 「だね、姉さんはいつもため息ばかりだけど、それだって僕たちが迷惑をかけているからだろうし」

 「だな、まぁ、そりゃ確かに居て欲しいけどよ、足でまといにはなりたくないものだな」

 

 リオンも少し前に同じことを言っていたことを思い出す。同じような生活、場所で育った僕ら65人は兄妹のようなものなのだろう。時折漏らす言葉もどこかに通っている。

 軽口を叩く僕たちの前ではレントが飛び出してきた子鬼(ゴブリン)を刻んでいる。何となくその背中が、無駄口はいいからさっさと手伝えと言っているように見えた。

 

 「トロル鬼は一人じゃ時間かかるが、豚鬼(オーク)程度なら不意打ちだって倒せらぁ。さっさと目標全部達成して長姉に戦勝報告と行こうぜ」

 

 それからはすべてが予定通りに進んだ。予想通りに彼らは失敗してそれを助けて、姉さんが彼らのことを心配していたことを告げてと、少しずつ誘導していく。表情は硬いが、君たちのことを心配していたからだとか、みんな仲良く暮らして行きたいとか。

 姉さんは貴族のお姫様なんかよりもよっぽど綺麗で美人だ。その髪は一本一本が高級な糸みたいだし、ニキビの一つだってない。今みたいに綺麗な服装をすれば、どこに出したって可笑しくないぐらいのご令嬢が出来上がる。

 そんな姉さんが君達を心配していた、君たちのことを考えているからなんて告げた日には、愛情に飢えている孤児たちは簡単に騙されてくれる。ついでに女性を困らせるのは、男らしくないとか自尊心をくすぐる言葉を囁けば完璧である。

 

 「少しやりすぎた感があるけど、姉さんなら上手くあしらってくれるよね?」

 「ちょ、お前ホント怖いもの知らずだよな」

 「どうでもいいのだが、結局全部俺が片付けたぞ?」

 

 いつも無口なレント参戦してきた。少々話し込みすぎたようである。怒らない人間ほど怒ったときに怖いことは、姉さんがキレた時に知っている。あれは死にかけるようなことをやらかしたゲール、リオン、ロウェンが悪いと思うのだが、いつもつるんでいる僕も連帯責任とやらで怒られた。僕らのことを思って怒ってくれたので、申し訳なさでいっぱいだったが、困ったことにそれ以上に嬉しさを感じてしまったのも事実である。

 

 「さて、あらかた片付いたしもどるとするかね~」

 「一日で終わってよかったね~、明日からは片付けだね~」

 「……お前らなぁ」

 

 

△城壁門直上▼

 

 

 「ん?リオン戻ってきましたか」

 

 指令所を睨めつけていると、後ろにリオンが立っていた。どうやら広場や要塞周辺は片付いたようである。この分だとそろそろ内部の制圧も終わるだろう。大体4時間か、城攻めとしては非常に速い。相手が知恵を持たないからだこそであるが。

 

 「恙無く(つつがなく)、この分だと明日には死体を焼くことができるでしょう。様々な備えも一度も使うことなく終わって僥倖(ぎょうこう)でした」

 

 それが終われば直ぐに移転作業に移れる。一部の収容術持ちに手伝ってもらえば二日で全てが終わるだろう。そこからは城の周辺に畑を作ったり、それを囲む用に丸太で作った城壁を作ったり。城壁の修復や武器の整理も必要だろう。

 各所に点在させた日用品も移動させないといけない。半数は城の周囲を警戒させて残党の殲滅。バリスタの矢も受注しよう、一応残っているようだが金属製のそれは結構錆びている。矢などの消耗品も調停士立ちが使う武器屋で数を揃えないといけないだろう。

 

 「どれほどで全てが終わることか、人を増やさないといけませんね。管理が大変なので安易に増やしたくはないのですが」

 「ああ、その件でもお話があります。カイトが問題なくやってくれたそうですよ。それと保存術のかけられた食料庫が見つかりました。特殊錠(マジックキー)がされていましたが、すでに魔力が切れかけているようで突破は簡単そうです。近くで見つけた書類上では中はしっかりと残っていることが記載されているので、一時の間主食に困ることはないかと」

 

 この分だと武器庫も無傷で手に入れることができるかもしれない。少々期待してみるか。ミルティー、ロッキーヌ姉妹からも設備報告が上がっている。一部力ずくで壊されているが、少しの修復で問題なく使用できるようだし、この分だと寝床を移す準備を急がせたほうが良いだろう。

 天幕をそのまま要塞内部の広場に持ってきてもらおう。日が暮れるまでに警戒のため、城壁を囲むように茂った膝上近くまでの草もある程度狩り終えねばなるまい。藪と違ってこちらは水分を多分に含んだモノなので火をかけても燃えないだろう。

 

 「これだけの討伐証明があれば、トロル鬼の分も合わせて結構な額になるでしょう。一部の人間に調停士登録させるのもいいかもしれませんね」

 

 調停士となれば、民として登録されるので衛兵からも無作法な行いはされなくなる。ついでに言えば今まで利用できなかった、公共の施設も利用できるようになる。最近全てが上手くいきすぎて後が怖いが、なるようになるだろう。

 

 「移動が終わり次第、勝鬨でもあげましょうか……」

 

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