噛ませ犬でも頑張りたい   作:とるびす

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消化回です。次回から新章の始まり!


第21回天下一武闘会、終了

 第21回天下一武闘会一回戦、第二試合はジャッキー・チュンの勝利という形で幕を閉じた。

 だが実際この一回戦というのは名ばかり。この試合、実質的には決勝戦のような激闘であり、観客たちは興奮冷め止まぬといった感じで勝者であるジャッキー・チュン、そして敗者であるヤムチャへ惜しみない拍手を送っていた。一回戦でこれほど盛り上がる戦いというのもそうそうないだろう。

 

 しかしヤムチャは立たなかった。否、立てなかった。

 体力的な負担もかなりあるだろう。だがそれ以上に精神的なものに対する負担というものがでかかった。

 今、ヤムチャの心に渦巻いているのは後悔、失望、怒り、悲しみ…、自分でもうまく説明することができないような複雑な心境であった。

 

 ヤムチャは豆腐メンタルである。それは半年前から変わっていない。

 冷静さを欠きそうになったらまず泣き叫ぶというどこぞの県議会員も実践したエ○ディシ流の心の落ちつけ方もまだ心得ている。しかし今のヤムチャにはそれをする気力など微塵にも残されていなかった。ただただ、呆然と地面に這いつくばるしか……

 

「ほれ」

 

 その時であった。ジャッキー・チュンはヤムチャの前に立つと手を差し伸べた。

 勝者が敗者に手を差し伸べるというのは戦いにおける礼儀の一つである。世の中にはそれを侮蔑の意味で使う者も居るが、ジャッキー・チュンの心の中にはヤムチャを賞賛する意はあれど侮蔑する意など微塵もない。ヤムチャに対しての敬意であった。

 

「素晴らしい腕じゃった。儂をここまで追い詰めることが出来たのは後にも先にも恐らくお主だけじゃろう、一回戦で殆どの手の内を披露してしもうたわい。良い武闘家じゃ」

 

 ジャッキー・チュンはヤムチャのことを褒めちぎる。それだけヤムチャは彼を追い詰めていたのだろう。

 ヤムチャはしばらくポカーンとジャッキー・チュンを眺めると、おもむろにジャッキー・チュンの手を掴み起き上がる。

 二人の視線が交錯し、互いに少しだけ見つめ合う。するとヤムチャはハッと息を漏らし、苦笑した。

 

「ありがとうございます。あなたほどの武闘家にそう言っていただけるのは幸福の至りです」

 

「はて?儂はしがない老人じゃ。お主に尊敬されるような者ではないぞよ」

 

 ジャッキー・チュンは空を見るようにして目をそらす。ヤムチャはまだしらばくれるのかとまたまた苦笑し、言った。

 

「まあいいですよ。弟子のために出場したのでしょう?いいことです。とても弟子思いな師匠さんだ」

 

「お主…。やはり儂が何者なのかを分かっておったか。繰り出す技を次々と看破出来たのもそれゆえじゃな?」

 

「おっしゃる通りです。今回の大会は運が悪かったようですね。まさか武術の神様と一回戦であたってしまうとは。まあ、時期はまだまだだったのでしょう」

 

 ヤムチャはどこか自虐気味に答えると、ジャッキー・チュンに手を差し出す。

 ジャッキー・チュンはそれに応えヤムチャの手を握る。俗に言う握手というやつだ。

 

「次は負けませんよ」

 

「ふむ、精進するがよい」

 

 二人は短く言葉を交わすとリングから引き揚げていく。観客たちはその二人の背中に賞賛の拍手を送り続けるのだった。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 よう、俺ヤムチャ。

 

 ……負けちまったか。勝てる要素は十分にあったんだけどな…。ま、まだまだ俺も未熟だったってことだ。

 くしくも一回戦突破を果たすことは出来なかったが、中々の手応えは感じることが出来た。この大会で収穫できたものはかなり大きい。

 そもそもジャッキー・チュン…まあ、亀仙人だな。あの人と戦えるチャンスが無くなったわけじゃない。俺が次の天下一武闘会の一回戦で天津飯を倒すことができればまた再戦することができるんだ。その時に俺の屈辱は返してやろう。

 

「すごかったなーヤムチャ!おめえ滅茶苦茶強くなったんだな!」

 

 選手控え室に入ると真っ先に悟空が俺に駆け寄ってくる。その隣にはクリリンもいた。

 

「まあな。だが俺の天下一武闘会はこれで終わりだ。悟空、それに…クリリンも、俺の分まで頑張ってくれ」

 

「おう!」

 

「は、はい!」

 

 何気にクリリンとはファーストコンタクトだな。これから仲良くやっていきたいものだ。

 

 次に俺が向かったのはジャッキー・チュン。さっき話したばっかだが、言わなければならないことがある。

 

「ジャッキー・チュンさん、一ついいですか」

 

「はて、何かの?」

 

「あなたは先ほど俺に『ここまで儂を追い詰めたのは後にも先にも恐らくお主だけじゃろう』と言いましたね。その言葉はとても嬉しいです。しかし恐らくそれは間違いですよ。あなたは俺以上の奴にすぐに出会います。早ければ大会の決勝戦あたりにでもね」

 

 これだけ言いたかった。じゃないと、後がとっても恥ずかしいからな!

 俺は言うだけ言ったのでさっさと退散する。ジャッキー・チュンがどんな顔をしていたかは知らない。

 ふと思ったんだが今俺が悟空と戦ったらどっちが勝つんだろうか?体格の差でまあまあ有利にはなれるだろうけど…。うーん…やっぱ悟空か?……悟空っぽいな。

 

 

 

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 俺が最後のかめはめ波でリングを少々破壊してしまったから少し遅れて第三試合は始まった。

 結果は原作通りナムの勝利。まあ、ランファンも相当な使い手っぽいがナムはそれ以上の男だったってことだ。多分修行前の俺よりかは強いだろうな。とんでもないバケモンだよ。

 

 第四試合は悟空vsギラン。

 グルグルガムで体の自由を奪われた悟空は場外に投げられるが筋斗雲で復帰。なんやかんやでギランを倒した。ぶっちゃけ筋斗雲は反則だよな。なんでセーフになったんだ?

 

 二回戦第一試合はクリリンvsジャッキー・チュン。

 クリリンはそこそこ善戦したが最後にはジャッキー・チュンに一蹴されてしまった。またパンティ作戦でジャッキー・チュンが場外に飛ばされ、かめはめ波で復帰した際、クリリンは滞空中のジャッキー・チュンに攻撃を仕掛けたがひらりと躱されてしまった。

 俺とジャッキー・チュンの戦いを見てクリリンも学習してたんだろうけどジャッキー・チュンも攻撃を仕掛けられるのは分かっていたみたいだ。

 それとクリリンの野郎道具を使ってるじゃねえか!アナウンサー、何故反則にしない?

 

 第二試合は悟空vsナム。

 これも原作通りに悟空が勝利。ナムも頑張ったが相手が悪かったな。その後ナムはジャッキー・チュンからホイポイカプセルを受け取り、故郷の村に帰っていた。いい話だな。

 

 さてそして決勝戦というわけだが…

 ジャッキー・チュンが悟空に終始押されるという展開だ。まずいな…俺が一回戦でジャッキー・チュンの技を殆ど披露させてしまったから悟空が多彩な技に対応できてしまっている。しかもジャッキー・チュンの体力がまだ回復しきれていない。

 本格的にまずいことになったな…。ここで悟空が勝ってしまうと驕り高ぶるという事にはならないだろうが次の天下一武闘会から参加しなくなってしまうかもしれない。

 なんとかしなくては…と考えていたら月が出た。一回戦が長引いた分早く出たらしい。

 悟空は月を見て大猿に変身、ジャッキー・チュンはMAXパワーのかめはめ波で月を消し飛ばそうとしたがそれには及ばない。俺がちゃんと刀を持って待機していたからな。悟空が暴れ出す前に尻尾を処理、これによってジャッキー・チュンに余力が生まれた。

 これでなんとかなりそうだな。ついでに言うとウサギ団の連中が救われた。

 その後は悟空とジャッキー・チュンが殆ど互角の勝負を繰り広げたが足のリーチの差でジャッキー・チュンが勝利。原作通りジャッキー・チュンが第21回天下一武闘会の優勝者となった。

 

 俺から言えることはただ一つ。一回戦で終わっちまうと決勝までの時間が長くてつらいという事だ。周りの人から「お前負けただろ?なんでまだ選手控え室にいるんだ?」とかいう目で見られてたからな。つくづく、ヤムチャに厳しい世界だ。

 

 

 

 

 

 

 




という消化回でした。さて、次回からRR軍編に入りますがヤムチャにはさらにトレーニングを続けてもらいます。じゃないと天津飯に勝てませんからね!

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