ちなみに今更ですが
〜〜は時間経過
ーーは視点切り替えです
よう、俺ヤムチャ。
カリン塔の登頂は結構順調だ。
重力によって断続的に身体に負担をかけ続ける修行をやってきたからな。爆発的な力の出し方なら悟空の方が圧倒的だと思うが、こういう……力を一定に使い続ける技術なら俺の方に分があると思う。
まあ、順調と言ってもかなりキツイことには変わりない。それに一番のネックは何と言っても恐怖心だ。一度のミスで全てが終わるというデスサドンデス。コレに一日中晒され続けるのだ。それによって生まれる心労が身体の疲労、負担に繋がってゆく。
なるほど、ただ体力に自信があるだけじゃ登りきれないわけだ。そう言う俺もかなり辛い。まず俺ってそこまで精神強くない。豆腐メンタルだからな。なるべく下を見ないようにして登っているが時々この手を離したら…なんて考えてしまう。ちびりそうになるのを必死に我慢したりもした。
そうそう、ちびりそうになるで思い出したが、排出物は垂れ流しなんだよなぁ。ボラとウパ…大丈夫か?もしアレだったら…ゴメンな。
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腹が…減った…。ひもじい…。柱を握る力が抜けていくような気がする。お腹の減りはどんどん加速していくばかりだ。それには心労による負担もあると思う。
一応食料は腰に付けている巾着袋の中に入っているのだが、この状況下で食すのはかなり厳しい。なんたって片手でカリン塔を掴んでぶらさがらなきゃならないんだからな。体力にまだ余裕があった序盤のうちに食事を済ましておくべきだった…。
くそ、早く登って仙豆食わねぇとやばいぞこれは。
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かゆ…うま……………………ハッ⁉︎
イカンイカン、意識を一瞬失った…。
現在俺はカリン塔に引っ付いた状態で夜を迎えた。悟空は引っ付いたまま寝たりしてたけど俺には到底真似できん。さっさと登り切るに限るぜ。
しかしヤジロベーならもうこの時間帯あたりで登り切ってんだよなぁ…なんだか悔しい。そういやあいつカリン塔のてっぺんから落ちても無傷だったような……そうか、化け物か。よし納得。
そんじゃどんどん登って行きますか!
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今、俺の目の前にあるのは楕円形の形をした横長の……なんて言えばいいんだこれは。まあいい、部屋がある。
これが指し示すもの、それは……
「ついに、着いちまったか。てっぺん」
カリン塔の完全登頂に他ならない。瞬間、俺の心の中で感動、感激の嵐が巻き起こった。俺は流れ出す涙をこらえることができなかった。
やれば…できるもんなんだなぁ…。
しかし悠長に感動に浸っている場合ではない。さっさと登って仙豆食わねぇと…。
「はぁ…はぁ…。よっこらせっ‼︎」
楕円形のスペースの中に入り込む。よし、仙豆の確保だ!
「み、水…と仙豆…」
片っ端から壺を開けていく。お、水だ。飲んでおこう。
ーーゴキュンゴキュン!
ふぅ…水!飲まずにはいられないッ‼︎まあ冗談はさておき、仙豆仙豆と…。
ーーガサゴソガサゴソ
「あれ、ねえな。壺の中に入ってると思うんだが…これか?」
「こっちじゃ。早く上がってこい」
ん?何処からか声が…まあいいか。今俺は忙しいものでね。すまんが後にしてくれ。かまっている暇はない。
「はいはいちょっと待っててくれよ。仙豆仙豆と……」
「…」
えっと…あ、これか。なんか『仙』とか描かれてるし。
さっそくふたを開けるとそこには黄緑色の豆がぎっしりと詰まっていた。
きたな、ドラゴンボール屈指のチートアイテム、仙豆。これがあれば勝つる!取り敢えず1粒を口の中に入れ、咀嚼しながら5粒程度巾着袋に入れておく。取りすぎは控えておこう。なんたってこれからもどんどん使っていくからな。それにしても仙豆は凄い。疲労とか空腹とか全部が一瞬で吹き飛んでしまった。
「そろそろよいかー?」
「あ、はい」
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「よくここまで登ってこれたのう。それも大したスピードじゃ」
「どうも、ヤムチャだ」
俺の目の前にいるのは仙猫のカリン様だ。ふむ…不思議な感じだな。只者ではないことはよーく分かるのだが、強者特有の身を切らんばかりの闘気なんかが感じられない。神の気は感じることができないというが…そういうのだろうか。
「それにしてもお主少々図々しくはないかの?きて早々、神聖な仙豆をあさくるとは」
「あー…申し訳なかった。極限状態だったもんでな」
判断力が空腹とかその他諸々で鈍っていたことは事実。しかし俺には仙豆をヤジロベーの手から守るという大義があるのだ。
「それで、お主がここを訪れた理由はやはり超聖水かの?」
「もちろん。俺も驚異的な力にあやかりたいと思ってな」
実際それで強くなってもただのドーピングだよな。まあただの水なんだけど。うん、超神水?論外だ。ヤムチャボディに耐えれるわけが無いだろう!
「…しかしなぜそれ以上の力を望む?もう十分強かろうに」
ふむ…なんて言えばいいか…。そうだな…
「ふむそうか。不純な動機ではなさそうだな。ならば取るといい。そこにあるぞい」
あり、もういいの?まだ何にも言ってないが…。まあいいのかな?
カリン様の言う通り超聖水は部屋中央の塔のようなものの上にのっている。しかし……
「そうかい。そんじゃーーーー」
超聖水を取ろうとした俺を抜き去り、カリン様が超聖水を杖にかけ俺から引き離す。
速い…!武天老師様を遥かに超えるだろうスピードだ。なるほど、やり甲斐がある。
「超聖水を飲みたくばワシから奪え。そう簡単に渡すわけにはいかんのでな」
「まぁ…そうだろうな。そんじゃ、最初っからフルスピードでいかせてもらうぜッ‼︎」
と、言いつつ実際には半分くらいのスピードでカリン様に飛びかかる。生憎、俺は最初からフルスピードで飛ばすようなバカでは無い。
「はっ!」
「ほい」
俺が飛びついたのはカリン様の残像だった。
カリン様はスピードの使い分けと緩急がかなりうまい。ただ超スピードで突進するだけじゃ絶対に追い付くことはできないだろう。
「ほれほれ〜、そんなものかの〜」
「まさか。どんどん飛ばしていくぞ‼︎」
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カリン塔に登頂してから数時間が経過した。
あの後もしばらくカリン様を追いかけ続けたが一向に捕まえることも掠らせることもできなかった。途中からフルスピードに切り替えたにも関わらず…だ。
ここで俺は一旦休憩を取り、作戦…というよりこの修行で得ることのできるもの、つまりこの修行を完遂するのに必要な技術を考えた。
まずはカリン様の動きをよく観察していくことに専念する。
この修行に求められるのは身体的能力ともう二つ。無駄の無い極限まで効率化された動きと次に何をするのが最良かをとっさに導き出す判断力だ。
これらに必要なのは相手の動きをよく見てよく考えること。だから観察というわけだ。
そんじゃ、さっそく実践してみるか。
「…よし、休憩終わり!行くぜ、はっ!」
「ほっと」
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カリン様の動きを観察し始めてからさらに十数時間が経過した。
法則性などは掴めなかったが、カリン様の動きを若干目で追えるようになってきた…ような気がする。
「だりゃ!せりゃ!」
「ほっ、よっ!」
しかしカリン様は凄い。狼牙風風拳と同じくらいの速さで掴みかかってもぬらりくらりと躱していく。だがまだだ、まだ終わらんよ!まだまだスピードアップしていくぜ!
「うおおォォォォォォォォッ‼︎」
「ぬっ⁉︎やっ、はっ!」
うわ、まだ付いてこれるのか⁉︎ならもっとだ!俺に引き出せる限りのスピードを捻り出す!
「ほああァァァァァァァァァァァァッッ‼︎」
「ぬおッ⁉︎」
っしゃあ!ついにカリン様が仰け反った。今がチャンス‼︎積極的に掴みかかっていこう。
部屋中を飛び回るカリン様を的確に追撃していく。
「な、なんと!この短期間でここまで付いてくるか‼︎」
「ッ!もらったァァ‼︎」
カリン様の軌道を完璧にとらえた。全力で飛びかかり、超聖水を奪い取る!
この勝負、もらっーーーー
「しかし、詰めが甘いようじゃな」
「ふぁ⁉︎」
カリン様は空中でピタリと静止し、軌道からズレる。あ、カリン様って舞空術が使えるのか…。
って勢い余って…‼︎
「あああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………ーーーーーー」
カリン塔から落ちちまった…。
身を投げ出した俺はなす術なく自由落下運動を開始した…。
「自分の跳ね上がった身体能力を把握しきれてなかったか…惜しい武闘家じゃったわい」
そんなカリン様の声が聞こえた……ような気がした。
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カリンは人の心を読むことができる。
もちろん、例外なくヤムチャの心を読んだ。しかしかなり不思議な事をヤムチャは考えていた。
「不思議な奴じゃわい。あれほどの身でありながらまだ遥か先の世界を見通すことができるとは」
カリンは深い記憶を探ることはできない。だからヤムチャがなぜあのような事を考えているのかは分からない。
だが、それでもヤムチャは面白い奴だった。
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あたり一面空と雲、開放感がありすぎて俺の意識は飛ぶ寸前だ。
「あばばばばばば……‼︎せっかく…!せっかくここまで来たのにぃぃぃぃ‼︎」
どんどん遠ざかっていくカリン塔の頂上に一抹の虚しさを感じる…。ていうかこれやばいな。地面に落ちたら間違いなく死ぬだろ。俺ってギャグキャラでもヤジロベーでもじゃないし。
どうすれば助かる?何をすれば助かる?考えろ…考えるんだ俺…‼︎………そう、そうだよ!飛べばいいんだ!(錯乱)
「うおおおおお‼︎浮かべぇぇぇ‼︎気を解放しろぉぉぉぉぉ‼︎」
ビーデルでもできたんだ‼︎俺だってできるに決まっている‼︎浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ浮かべ………。
「無理だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」
畜生!俺は死ぬのか⁉︎ドラゴンボールで生き返るとか言っても無茶苦茶怖いぞ⁉︎ああ…もう駄目だ…おしまいだぁ…!カリン塔になんか登るんじゃなかった。やっぱ俺にはまだまだ早かったんだ。悟空の先取りなんかしようとするからこうなったんだ。さらばだ悟空、ブルマ、プーアル、ウーロン、武天老師様、クリリン、あと……ブリーフ博士!あと……パンチー夫人!それからえっと……………宇宙のどっかにいるベジータ!あと…………………くそ、知り合いが少ない‼︎カッコつけることさえできねえのかよ‼︎嫌だ、死にたくない‼︎死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたく……うん?
風圧を感じない…。恐る恐る目を開けてみた。すると…
「…beautiful」
ちょうど雲を突き抜けたあたりで止まっていた。遥か先まで広がる広大な大地と大空がとても美しい。おう?おうおう?これは……浮いてるよな、俺。
えっと…なんだ。あれだ、うん、火事場の馬鹿力みたいな?かつてないピンチに俺の眠っていた潜在能力が覚醒したみたいな?
それか、御都合主義……?
まあそれは置いといて、念願の舞空術だが…いまいちよく分からんな…。現在、体中から気を放出する感じで棒立ちの状態を保っているんだが…これからどうすればよいのか。
取り敢えずカリン塔に掴まりたいんだが。
「前にせり出す感じでなんとか……うわっと‼︎」
前に進もうとした瞬間、いきなり落ちた。やばい。結構難しいぞ。例えるなら初めての氷上って感じだ。
ゆっくり…ゆっくりと下へ下降していこう。それならなんとかできそうだ。ゆっくり…ゆっくり…。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お、だいぶ地表が見えるようになってきた。
んん?なんか見えるな…。ああ、ボラとウパのテントか。早く降りちまったから悟空がもしかしたらいるかもしれない。桃白白はゴメンだけどな!
さてさて、地上はどんな感じかなー?
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「か…め…は…め…波ーー‼︎」
ーーブアァァァァ!
「おのれ…わたしの服を…」
「き、効いてねぇ⁉︎」
「どどん‼︎」
ーーボッ‼︎
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あ、あかん奴やこれ。
ストップ!ストップだ!桃白白と鉢合わせちまう!
しばらくここでじっとして桃白白が柱でどっかに行くまで待つんだ‼︎
桃白白は悟空からドラゴンボールを奪い取るとウパを軽くあしらい、地面に突き刺さっている柱を掴む。
よしよし気づいてない!いけっ!どっかにいけっ!
…………………………ん?心なしかどんどん高度が下がってるような…。あ、気が無くなったのか。
ーードシーン!
そして落下。高さはあまり無かったから痛いだけで済んだが…問題は…
「ん?なんだお前は」
桃白白の目の前に落ちてしまったということだ。
俺終了のお知らせ。
実は熊本地震の前日まで南阿蘇にいたんですね。あの美しい風景があんな風になってしまうなんて…。とても信じられませんでした。
私もできる限りの支援を行っていこうと思います。熊本の皆様。共に頑張っていきましょう。
あ、投稿が遅れたのは地震のせいか否かPCが逝かれたからです。
仙豆
「仙豆だ、食え」
超回復作用と十日分のエネルギーを秘めたドラゴンボールチートアイテム。またの名を出張版デンデ。
運搬役はピッコロのイメージが強いですが、実際運ぶのは大抵クリリンか悟空。
カリン様
カリン塔に住む仙猫。800歳とかなんとか。心を読む事ができるとかなんとか。実は神だったり。
ちなみにヤムチャはかめはめ波の逆噴射で飛ぶことができるのを忘れています。