何はともあれヤムチャ修行開始です。
ヤムチャにヒロイン?いるんですかねぇ?
ヤムチャは走った。
果てなく続く荒野の先へ、燦々と熱視が降り注ぐ砂漠の先へ、地平線を遥かに越えた先へ、どこまでも広がる水平線の向こうへ。
そして、カリン塔に到着したのは占いババの館を旅立って数ヶ月経過した頃であった。ヤムチャはもともと地理に疎い。飛行機で大まかな座標を確認しながらならともかく、徒歩での移動では今現在の位置が把握しにくい。それがあまりの距離の長さに繋がり、到着にこれほどの時間を有してしまった。
しかし、ヤムチャはその数ヶ月サバイバルを行ってきた。様々な環境に適応し、食料のために数多の巨大生物たちを降したのだ。それも確かな訓練に繋がっていた。
さて、カリン塔に到着したヤムチャはボラ親子からの熱烈な歓迎を受け、生き返ったボラと熱い握手を交わすのであった。ヤムチャは「悟空一人でも大丈夫だったんだけどね」とやや後ろめたいものを感じながらもボラが生き返ったことに心から歓喜するのであった。
翌日、ヤムチャはボラ親子に別れを告げカリン塔の登頂を開始。アックマンとの戦いで受けた傷が完全には治ってなく、それなりに苦労したが最初ほど疲労が募ることはなかった。
数ヶ月のサバイバル生活をこなしながらひたすら走り続けてきたのだ。ヤムチャの持久力は格段にアップしていたのだろう。前回の半分ほどの早さで頂上にたどり着くことができたのだった。
着くや否やヤムチャはすぐに仙豆の壺へ直行、仙豆を食べようとする。しかし前回仙豆があった場所には何もなかった。上に登りカリン様から話を聞くと…
「お主のような奴から仙豆を守るために隠したのじゃ。仙豆もタダではないのじゃぞ?」
「なるほど、一理ある」
仙豆は栽培が難しい。それ故に数百年育てても溜め込めるのは壺一杯がせいぜいなのだ。つまり、ヤムチャが取っていった5粒の仙豆でもかなりの大損害というわけになる。この調子でヤムチャに仙豆を取られていってはカリン様も堪らない。
「それでは下から登って来た人に仙豆を与えるのはこれからは無いのか?」
「いやいや、隠すのはお主限定じゃよ。お主にはこれからはワシを捕まえることのできた回数に応じて仙豆をくれてやろうと決めた。そうすれば修行にも繋がって一石二鳥じゃろ」
「なるほど、一理ある。けどそれじゃ空腹が凌げないんじゃ…」
「腹が減ったのならばワシを捕まえて仙豆を食えば良いじゃろう。さあ、修行再開じゃ」
こうしてヤムチャが落下した事により中断されていた修行が再び始まったのだった。
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最初の一カ月は一度も捕まえることが出来ず、保存食を食べる毎日であった。
二カ月目になり保存食が尽きた頃、ヤムチャは遂にカリン様を捕まえる事に成功。仙豆を1粒手に入れヤムチャは狂喜乱舞し喜びに打ち震えた……が、その直後にやって来た悟空はカリン様を3時間で捕まえる事に成功。ヤムチャは心に酷い傷を負う事になる。その日、ボラ親子は誰かが泣き叫ぶ声を聞いたという。かの仙豆でも心の傷を治すことはできないようだ…。
三カ月目になりヤムチャ怒涛の追い上げ。その一カ月でカリン様を四回捕まえることに成功。
しかし数えてカリン様を五回捕まえた時、修行は終わりを告げた。亀仙人との約束の一年が近づいてきたからである。
獲得した仙豆の数は合計5粒。うち食料として食べたのは計3粒であり、最終的にヤムチャの懐に残ったのは2粒のみであった。
「カリン様、修行ありがとうございました。深く感謝します」
「ふむ、あの悟空とか言う小僧も大概じゃったが、お主も大概じゃったぞ。この短期間でこのワシを5回も捕まえるとはな。まあ、体の動きはそれで十分じゃろ。あとは武天老師に技を習い、己の体の限界を目指すといい」
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よう、俺ヤムチャ。
カリン塔から降りた俺は一度西の都へ帰還した。一番懸念していたブルマについては……案の定、機嫌は治っておらず散々罵倒された。俺はただ悪い、悪いと頭をさげるのみであった。仕方の無いことだが情けない。
俺は…ブルマを幸せにすることはできないと思う。
最初は原作で付き合ったからとか、付き合っていると何かと便利とか、そういう考えがあったことは否定しきれない。
ブルマはとてもいい奴だ。少女相応の我が儘やおてんば、性格のキツさはあるが、影から俺やみんなを支えてくれている真の優しさがある。俺には勿体無いほどの女性だ。俺はそんなブルマの姿を見ているうちに多分好きになっていったんだと思う、本当の意味で。
だけど俺はブルマとは常に一定の距離を置いてしまっている。真の意味で付き合うことはできないんだ。だってさ、ブルマにはーーーー
「ところでさ、あんたお父さんに変な頼み事してたんだって?」
「……うん、これから先必要になるって思ってな。お前から見てどう思う?」
「意味不明。あんなのを解析して何になるのよ。あんたよく未来を見越したような言い方するけど、あんなのが何の役に立つのかあたしにもさっぱりよ」
「まあ、調べてれば分かるぜ。それじゃ、行ってくる……………ごめんな、ブルマ」
最後に事務的な話を済ますと俺はブルマに別れを告げる。
せめて、せめて一年後はなるべくブルマの近くに居てやりたい。そのためにもこの一年…ガンバらねぇとな。
…と、出発する前に
「プーアル、この一年間俺について来てくれないか?お前の力が必要になりそうなんだ」
お前の力が必要…そう聞いたプーアルは目を輝かせ、「もちろんです!」と言ってくれた。ちょろいというか…従順というか…可愛い奴め。
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さて、南に進むこと数時間にしてようやくカメハウスが見えできた。前回ブリーフ博士に飛行機でも時間がかかるんですよねー、とさりげなく言ってみたら「そんじゃ改良しようかね」とか言って性能が三倍アップした。ちなみに機体は赤塗りだ。
カメハウス横に早速着陸しプーアルを飛行機の中に待機させドアを叩く。しかし武天老師様が出てくる気配はない。約束をすっぽかされたと思い窓から中を覗いてみると……居た。テレビの前に寝っ転がって体操を見ていた。
えー…着陸時の音やノックに反応しないほどに集中してたのだろうか。これも修行の一環…?まさかな。
「武天老師様ーッ‼︎ヤムチャですーッ‼︎」
「ええい、うるさいわい!もう少し待っておれ!」
…何だかなぁ。
はあ…クリリンでも居てくれれば暇つぶしとしてはよかったのに今ちょうど留守中みたいだし。
「待たせたの、よう来たぞヤムチャ」
「…あのですねぇ…」
何分待たされたと思う?2時間だぞ?2時間。暇の方はプーアルとたわいもない雑談やらなんやらして潰せたが、体操番組のために2時間外に放置されるってどゆことや。
「さて、早速修行を始めるとしようかの。まずは…」
「まずは…?」
「わしの前にピチピチギャルを連れてくるのじゃ!」
言うと思ったよ!あんたもうランチさんがいるからいいだろ!……とは言えない。仮にも師匠だし。
まあ、俺はちゃんと見越しておいてピチピチギャルを用意している。最初はブルマでもいいかなー、と思ったんだが今俺とブルマってさ…ほら、な?
「ふふふ…すでに用意してるんですよこれが」
「なん…じゃと…⁉︎まさかお前の彼女か⁉︎」
「違いますよ、まずあいつはここでの暮らしなんか耐えれそうにありませんし。それじゃあ紹介しますね。おーい、出てきていいぞー」
「はーい!」
元気のいい声で飛行機から飛び出したのは、それはそれはうら若き美少女。やや黒がかかった深い青色の長髪は艶っぽく、その美しい肢体はやや小柄ではあるものの均等にバランスが取れており、胸は存在を主張するほど大きくなく、かといって小さすぎない絶妙な大きさ。まさに美少女とはこの少女のためにあるような言葉と言わしめないほどの美少女であった。唯一の残念な点は野暮ったい真っ黒なサングラスを掛けていることぐらいだろう。
武天老師様は俺のほうに視線を向けることなくただただ少女を凝視し、俺には力強くbと親指を立てた。やったぜ。
さてみんなはもう気づいていると思うが、少女の正体はプーアルである。俺が化けるように指示したんだが…グレートですよこいつぁ…!
今のプーアルの姿は俺が指示したものになる。俺の趣味とかそういうのは置いといてだ。
プーアルの変化能力はかなり高い。なんせ制限時間なしだ。そこらへんがウーロンとの格の違いだな。しかし流石のプーアルといえど変化に弱点はある。それは目だけは変化できないってことだ。これではせっかく美少女に化けても少しばかりバランスが悪い。それでサングラス…というわけだ。
「や、ヤムチャ!こ、この娘さんは…?」
「ちょっとした知り合いですよ。レイって言うんです」
名前の由来はプーアル茶の別名、ポーレイ茶から。中々イカした名前だろう?
「うむむ…合格じゃ!ヤムチャよ、お主を亀仙流門下生として認めよう。とりあえずクリリンが帰ってくるまでそこらへんを泳いどれ。レイちゃんはわしと一緒に家の中で…」
「あの、ぼくヤムチャさまと一緒がいいんですけど…」
ふっ、イケメンは困るぜ。中身はプーアルだけどな!男か女かも分からないけどな!けど可愛いからオッケーだ!
この後プーアルと一緒にめちゃくちゃ泳ぎまくった。
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「へぇ、あの子がヤムチャさんの知り合いですか。めちゃくちゃかわいいじゃないですか。ちょっと紹介してくださいよ」
「ふ、よく分かっているじゃないか。だがお前にはやらんぞ」
そんなことをクリリンと組手しながら話す。
軽い会話とは裏腹に戦闘はスピーディーに、変則的になっていく。クリリンもかなりの武闘家だ。本気ではないにしても俺のスピードにわけなくついてくるとは。これは退屈せずに済みそうだな。
「えー、何でですか。レイちゃんはフリーなんでしょ?ヤムチャさんにはもうブルマさんがいるからいいじゃないですか。まさか二股?」
「いやいや。そんなんじゃなくてな…」
クリリンのラッシュを軽く受け流しながら言う。レイもといプーアルは俺の家族だぜ?そう簡単にくれてやるはずがないだろう。それにサングラスを外したらお前びっくりすると思うぞ。
「ケチですねー!ボクだって彼女が欲しいんですよ!」
「諦めろ。それに多分お前にはもっとお似合いなとびっきりの美人さんがいると思うぜ」
激しさを増したクリリンの攻勢にやや押されつつも合間の一瞬のスキをついて顔に一撃を決める。クリリンが尻餅をついて組手終了だ。
「イチチ…根拠なんかないでしょうに」
「いや結構あったりするもんだ。この勝ち組野郎」
「え、ヤムチャさん今なんて……っていうかもう組手終わりですか?」
クリリンが後ろから何やら言っているがガン無視。あの野郎…嫌味にしか聞こえねぇぜ。
それにしてもなんか疲れた。もちろん精神的にな。少しカメハウスで休んでから再開するとしーーーー
「ヤムチャさまー、お見事です!とってもかっこいいですよ‼︎」
「よっしゃクリリン二戦目行くぞ‼︎狼牙風風拳ッ‼︎」
「ちょ、ヤムチャさん⁉︎」
プーアルの声援で元気100倍ヤムチャンマン!
いやー、女の子の声援って結構力が湧くもんだ。女の声が男を奮い立たせるって本当なんだな。………ブルマも天下一武闘会の時とかに応援してくれたけどアレはなんて言うかその……。しかもこっちは女の子と言ってもプーアルだし…。
「ほっほっほ、二人ともよく励んでおるの。その調子で頑張るが良いじゃろう。ところでレイちゃん、この水着を着て泳いでみるとええ」
「え、けど…これヒモじゃないですか?どうやって着るんです?」
「お、ならわしが着替えるのを手伝ってあげーーーー」
ちなみに言うと武天老師様の持っていたヒモ水着は俺のかめはめ波によって完全に消滅した。当たり前だ。
こんな感じで俺の武天老師様の元での修行の日々は過ぎていった。
インフルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル。前半と後半の雰囲気が違うのはインフルエンザのせいということで。
プーアルが公式のヒロインですよね?そうですよね? 異論は聞きます。しかし認めない。
プーアルくんなのかプーアルちゃんなのかは分かりませんがプーアル自身、満更でもない様子。
感想にて日常回についてのご指摘をいただいたので挑戦してみたんですが……こんなんでいいのかなぁ。ダメですよね。
ドラゴンボールで日常回って難しい…。
未熟な作者で申し訳ない。