噛ませ犬でも頑張りたい   作:とるびす

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ついに炸裂する繰気弾。

かなり作者なりの独自設定があります。ご了承ください。


噛ませ犬vs天津飯②

 よう、俺ヤムチャ。

 

 やっぱ天津飯ってスゲェよ。身体能力はともかく、技なら俺の数歩先を行ってやがる。

 ここまでの膠着状態になっちまったら勝敗を分けるのは互いの持ち札(手数)の差だ。

 幸い、俺の持ち札はこの三年でかなり増えた。だが天津飯の持ち札はいずれも一つ一つが強力かつトリッキーだ。ちょこざいな戦い方ではいとも簡単にねじ伏せられてしまうだろう。ちなみに言うと目がいいってのはかなり厄介だ。オマケに天津飯のコピー能力。無駄に持ち札を見せては逆にその持ち札を天津飯に取り込まれてしまう危険性すらある。

 ホント…戦いにくいったらありゃしないぜ。だがこの嫌な状況を一気に打開できる術が俺にはある。そのうちの一つがやや早いお披露目となったこの繰気弾だ。

 

 繰気弾の開発には随分な時間と労力を要した。武天老師様の元で修行した気の制御を基礎に様々な試行錯誤を試したものだ。

 今までの俺は気弾すら出すことができなかった。なぜなら気弾とは、かめはめ波のように手を受け皿に発射するものではなく、そのまま直に手のひらから球体状に気を発射する技術だったからだ。受け皿のない気弾は空中で霧散し煙となってしまう。三年前の俺はそれで気弾技術の習得をやめにしたんだ。

 

 しかし、気の制御を覚えた俺は一つの案を思いついた。それは気を強化外骨格のように別の気で纏うということだ。

 中々難しかったが、やがては実現できるようになった。恐らく理論上は強化外骨格に使っている気ぐらいエネルギー密度を高くすれば外骨格なしでも気弾を発射することができるだろう。恐らく威力も段違いなほどに高くなると思う。ただそれはとんでもない負担になる。序盤の俺には外骨格として薄く纏うぐらいしかできないんだ。

 だがそれでも十分。あとはその気弾を自由自在に動かせるようになればいい。これには理論とかそんなのは必要ない。ただひたすら俺が練習すればいいだけなんだから。

 ぶっちゃけこれが正攻法だとは思わない。だが俺にはこのやり方が1番しっくりきたんだ。

 

 こうして、俺の繰気弾は完成したというわけだ。さて、早速お披露目といこうかね。

 

「はぁぁ……!」

 

 手に気を練り込んでいく。中々精密な技術を必要とするがここを越えてしまえばこっちのものだ。

 あとはこの気を体外に具現させるだけ。

 ポンッという音とともに一つの気弾が俺の手のひらで浮遊する。気のコントロールも俺の支配下にある、完璧だ。

 

「どうだ、中々のもんだろう?俺の繰気弾は」

 

「はっ、ただのちっぽけな気の集合体じゃないか。そんなもので何ができるんだ」

 

「なら試してみるといいぜ、そぉいッ‼︎」

 

 俺は勢いよく繰気弾を天津飯に向かって投擲した。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 ヤムチャの手を離れた繰気弾は天津飯に向かってかなりのスピードで飛来する。想定していたスピードよりも格段に速いその気弾のスピードに天津飯は少々驚くが、所詮はたった一つの気弾。天津飯にはかわすことなどわけもない。

 だが、それで終わらないのが繰気弾だ。天津飯の後方へ飛んで行ってしまった繰気弾はヤムチャが腕を動かすとともにその動き通りに方向を転換させ再び天津飯へ飛び掛る。

 

 《天津飯!後ろじゃ、躱さんかっ‼︎》

 

「ッ⁉︎なにッ⁉︎」

 

 鶴仙人からの念話により後ろから迫る繰気弾に気づいた天津飯、すんでのところで身を捻りコレを回避する。

 だが繰気弾はまだまだ終わらない。ヤムチャは再び手を動かし繰気弾を天津飯へと向ける。

 

「こいつ、意のままに気弾を操ってるのか⁉︎」

 

 天津飯は驚愕しつつも、飛来する繰気弾を躱し続ける。いくら繰気弾の持続性が高く、スピードがあっても当たらなければ意味がない。天津飯は躱しつつ、徐々にヤムチャとの距離を詰めていく。今のヤムチャは繰気弾の操作で手一杯である。敵に接近されてはひとたまりもない。

 

「ちっ、しぶとく避けやがる!」

 

「ふん、最初は少々驚いたが慣れてしまえばどうということはない!俺がお前の元にたどり着いた時、それがお前の最期だっ‼︎」

 

 そう宣言すると天津飯は一気にヤムチャとの距離を詰める。もはや天津飯は目と鼻の先だ。

 

「…っ!てぇや‼︎」

 

 ここでヤムチャ、トップスピードで繰気弾を操り天津飯の背後を狙う。だが…

 

「いかん!ヤムチャのやつ、勝負を急ぎおった‼︎」

 

 亀仙人が叫んだ。今ヤムチャと天津飯、そして繰気弾の位置関係は直線に当たる。つまりだ、天津飯がここで繰気弾を避けてしまえば繰気弾が牙を剥くのは主であるヤムチャなのだ。

 そして天津飯に単調な背後からの攻めなど通じるわけがない。天津飯は繰気弾をしゃがんで難なく躱す。そして繰気弾が襲いかかったのはヤムチャ!天津飯はニヤリと笑うとヤムチャが繰気弾を躱したその瞬間に追撃に出る姿勢を見せた。

 対しヤムチャは……

 

「計画通りっ‼︎」

 

 飛んできた繰気弾を横に回転しつつ片手で受け止めたのだ!これには天津飯も、亀仙人も目をむいた。

 回転により繰気弾の勢いを削いだヤムチャ。目は天津飯を見据えていた。

 

「もういっちょ、繰気弾ッ‼︎」

 

 そして回転の勢いに乗って手に持った繰気弾を再び投擲。追撃の体勢に出ていた天津飯はそれを避けきれず胸に受け、その衝撃によりリングに倒れてしまう。

 

「ゴハッ⁉︎」

 

「そして、トドメッ‼︎」

 

 繰気弾の追撃は終わらない。天津飯の胸を打つとヤムチャの操作により上空に上がる。そして…倒れている天津飯へと真っ逆さまに落下、腹へと命中し天津飯にさらなるダメージを与えた。

 

 そこで繰気弾は役目を終えたかのように霧散した。ヤムチャが込めていた気が切れたのだろう。しかしヤムチャは天津飯に大きなダメージを与えることに成功したのだ。

 

『天津飯選手、ダウン‼︎カウントを取ります!ワン!ツー!スリ…』

 

「くそ…ふざけやがって…‼︎」

 

 カウントスリーにて天津飯が立ち上がる。少し口から血を流しているが戦闘を行うには不自由ないだろう。

 天津飯という男、武闘家としての器はとてつもなくでかい。ヤムチャはまたもや天津飯に対し感心させられてしまった。

 

「流石にまだにわか仕込みの繰気弾じゃお前は倒せないか…。まぁ、今はそれでも十分、俺の勝ちが近づいてきたな」

 

「ほざけ、あの程度の攻撃でいい気になるな‼︎貴様は俺を本気にさせてしまったな。後悔してももう遅いぞ、徹底的にやってやる‼︎」

 

 天津飯がヤムチャに攻撃を仕掛ける。ヤムチャはその攻撃を受け止めラッシュを繰り出す。天津飯もそれに対抗してラッシュを繰り出し、試合は乱打戦になりつつあった。

 

『た、互いに一歩も引きません‼︎意地と意地のぶつかり合いといったところでしょうかー⁉︎』

 

 アナウンサーが興奮した声音で試合を解説する。試合の熱気に当てられたのか会場のボルテージも最高潮に達しようとしていた。

 だが一人、この試合を面白くないと思っている人物がいた。鶴仙人である。

 

 《なにをしている!そんな男さっさと片付けんか‼︎》

 

 《し、しかし思ったよりやるもので…》

 

 《……ならば四妖拳を使え。あの技ならばこの男を叩き潰すことができるじゃろう》

 

 《それでは決勝で使える技が…》

 

 《気功砲を使えば良い‼︎分かったらさっさとやれ‼︎》

 

 《わ、分かりました…》

 

 天津飯はヤムチャとのラッシュを切り上げ、距離を取る。そして腕をクロスさせ頭に青筋が浮かぶほどに力を込め始める。

 ヤムチャは一瞬、天津飯の行動にハテナを浮かべたがやがて何をしようとしているのか気づいた。

 

「(まずい!その技は厄介だ‼︎中止させねぇと‼︎)」

 

 ヤムチャは自分が出せる最高のスピードで天津飯に接近し一撃を繰り出す。あと少しで使用できるというところで天津飯は惜しくも技を中断せざるをえなくなった。

 

「くっ…勘のいいやつめ…!」

 

「嫌な予感がしたんでな、その技は使わせねぇぜ‼︎狼牙風風脚ッ‼︎」

 

 ヤムチャ必殺の蹴り技が天津飯を襲う。天津飯は断続的にくる攻撃のタイミングを見切り脚を防がんとした。

 だがこの三年で鍛え上げられたヤムチャの脚はその天津飯の防御すらをも突破する。着実に、天津飯は脚を防ぎきれなくなっていった。

 

「(くそ…!せめてスキを作ることができたら…‼︎…………まてよ…ならば…)」

 

 ここで天津飯、なぜか防御を解きヤムチャの狼牙風風脚を甘んじて受ける。狼牙風風脚は容赦なく天津飯の腹に突き刺さり、吹き飛ばす。

 

「は…?お前、何をやってーーーー」

 

 吹き飛ばされながら天津飯は、嗤った。手を開き、顔の横に構えて。

 

「太陽拳ッ‼︎」

 

「ッ⁉︎しまっーーーー」

 

 会場を強烈な閃光が包んだ。それはヤムチャは勿論、選手、観客、アナウンサーを分け隔てなく照らした。

 そして光が収まった頃にはヤムチャは目を押さえリングに蹲っていた。

 

「目が…目がぁ…‼︎」

 

 どこぞの大佐ではないがヤムチャは太陽拳の閃光により一時的に視力が低下していた。気を探りながらであれば天津飯に攻撃することもできるが、とても咄嗟ではできなかった。

 

 しばらくするとヤムチャの視力は回復し、急いで前を見やる。そこには苦悶の表情を浮かべながらも背中の肩甲骨を腕の形に変化させ計4本となった腕を携えた天津飯の姿があった。

 

「こりゃ…参ったな…」

 

 ヤムチャはただ苦笑するのみであった。

 





前半にうだうだ言っていた気についての考察ですがヤムチャが勝手にそう思っているだけですからね!


繰気弾
ヤムチャの必殺技といえば?と聞かれると意見が狼牙風風拳と二分するらしいですね。ヤムチャの技の少なさが見てとれます。
シェン(神様)を倒せなかったり、カカオに何もないように突破されたりと不遇な扱い。というか自業自得?まあヤムチャの必殺技だから仕方ないね!
作者の解釈では普通の気弾より外骨格となる気をより強固に、そして完全にコントロールできるものが繰気弾と解釈しております。

太陽拳
みんな大好き太陽拳さんだよ!こいつの汎用性の高さを思ったらやべぇマジ震えてきやがった。
真太陽拳なるものがあるらしいですが…なんやそれ。

四妖拳
天津飯が化け物と言われる所以。
四妖拳って無限の可能性がありますよね。二つ掛け合わせて「W気功砲‼︎」みたいな。なんで一回しか使わなかったし。
カイリキーみたい(小並感)

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