噛ませ犬でも頑張りたい   作:とるびす

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決着…ッ‼︎


噛ませ犬vs天津飯③

 よう、俺ヤムチャ。

 

 怖い、主に天津飯が怖い。もろ化け物じゃないですかやだー。

 と、ふざけてる場合じゃないな。

 太陽拳をくらってしまったのは俺の落ち度だ。しかも完全に予想しきれてなかった。ていうか天津飯が太陽拳を使えるのをたった今思い出した。畜生…俺のドラゴンボール知識が薄れてんのか?今まで全然意識してこなかったからな…。

 

 とにかくだ。俺は天津飯に四妖拳の使用(上手いこと言った)を許してしまったわけだが…。俺がドラゴンボールでの天津飯戦を見た中で一番厄介だと思ったのはこの技だ。

 後半における気功波と近接戦が織り混ざった戦闘ならともかく、前半の殴り合いが主となる戦闘では無類の汎用性を発揮する。二本と四本じゃえらい違いだ。なんたって手数が違う。悟空がどうしてこれを破れたのか不思議だよ俺は。

 

 だが、あとあいつが残している技なんて気功砲と排球拳ぐらいだ。気功砲は俺が舞空術を使えるから大丈夫、排球拳は俺の体格的に無理だろうな。そんなスキをみせるわけもないし。

 つまり四妖拳を破ることができたらほとんど俺の勝ちってわけだ。勝負の分け目は、まさに今。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「手が四本って…化け物じゃねぇか」

 

「ふ、れっきとした技なんでな。卑怯とは言ってくれるなよ?」

 

 苦笑するヤムチャに笑いかける天津飯。鶴仙人は勝利を確信しようとしていた。だがヤムチャは諦めてはいないし、天津飯も相手が易々と勝たせてくれるとは思っていない。

 

「いくぞっ‼︎」

 

「っ…!」

 

 天津飯はリングを力強く蹴り、ヤムチャに接近する。腕が二本分増えたことでややスピードが落ちているがそれでも十分すぎるスピードだ。

 

「てや、たぁッ‼︎」

 

「ッ!く…!」

 

 天津飯は四本の腕を左右上下自在に動かしヤムチャを撹乱し、攻撃を仕掛ける。あまりの手数の多さにヤムチャは押され気味、己の最高速の拳速でこれに対抗しようとするが二倍の差はそう簡単には縮まらない。

 

「ま、まるで拳の嵐じゃ…。あやつ、ここまでの使い手じゃったか!」

 

「あわ、わわわ…ヤムチャさんが…!」

 

 徐々にヤムチャの被打が多くなっていく。顔からは汗を滲ませかなり余裕がないことが見て取れる。

 

「こなくそ…っ‼︎いい、加減にしやがれッ‼︎」

 

 ヤムチャは横薙ぎに脚を振るい天津飯からスキを作ると急いで距離を取る。だが彼の背後はリング外。ヤムチャは端へ追い詰められたのだ。

 

「もう逃げ場はないな!惨めに敗けろ!」

 

 天津飯がヤムチャに攻撃を仕掛けようとする。だが…

 

「はいやァァッ‼︎」

 

 ヤムチャは先ほどを超えるスピードで天津飯に反撃した。いきなり速くなった拳速に流石の天津飯もたじろいだ。

 

「なに⁉︎」

 

「背水の陣ってやつだ!狼を追いつめると痛い目にあうぜ、こんな風にな‼︎」

 

 ヤムチャが構えを取る。その構えに悟空たちは声を張り上げた。

 

「「「狼牙風風拳だ‼︎」」」

 

「はいやァァァァァァッ‼︎」

 

 ヤムチャは自らのトップスピードで天津飯に連撃を仕掛ける。その凄まじい勢いに普通の相手ならここで退くことを選択するだろう。

 だが天津飯は、武闘家としての誇り故に、敢えてヤムチャの狼牙風風拳に対抗した!リング中央にて、ヤムチャを迎え撃ったのだ!

 

「おおおぉおおぉおおおぉぉッッ‼︎」

 

 ヤムチャの狼牙風風拳と天津飯の四妖拳が激突した。拳で拳を打ち据え、攻撃は最大の防御と言わんばかりの捨て身攻撃。拳速比べで負けた方には容赦ない連撃が加えられることになる。

 互いに雄叫びをあげ、一歩も退かない。ここで退いた方は負けると直感で感じているのだ。

 

 しばらくの拮抗状態が続いた。恐らくそれほど時間は経っていないだろう。ヤムチャと天津飯は数時間、数日、拳を打ち付けあっているような錯覚を覚えていた。

 しかし、それは突然の一撃によって終わることになる。

 天津飯の一撃が、ヤムチャの腹に深々と突き刺さったのだ。防御も受け身も取れないヤムチャは体をくの字に曲げリングに膝をつく。

 拳速の速さ比べは天津飯が制したのだ!

 

「く、くぅ…!」

 

「俺の、勝ちだな」

 

 天津飯は後ろの二本の手でヤムチャの肩を掴み持ち上げる。そして残った前の二本の手で容赦なくヤムチャの顔や首、胸や腹を打ち付ける。そして連打連打連打連打連打連打連打連打連打連打連打連打連打連打連打連打。

 そのあまりの攻撃の苛烈さに観客一同は目を背ける。

 

「ま、まずい!このままではヤムチャが死んでしまう‼︎止めねばッ‼︎」

 

「は、はい!お伴します‼︎」

 

 亀仙人とクリリンが天津飯を止めようとしたその時だ。

 

「いやじっちゃん、クリリン、まだだ」

 

 悟空が言った。目は真剣にヤムチャと天津飯を見据えている。悟空の物言いにクリリンが憤慨し掴みかかる。

 

「なんでだよ!このままじゃヤムチャさんがーーーー」

 

「ヤムチャに負ける気なんてないぞ。ヤムチャはまだ勝ちをあきらめてねぇ!」

 

 悟空に言われ、クリリンと亀仙人は再びリングを見る。そこには相変わらず天津飯に一方的にやられているヤムチャの姿があった。

 その時、二人は気づいた。ヤムチャの一見ブランと垂れ下がっている腕の……その指先の形状に。人差し指を立てていることに。

 ヤムチャは殴られながらもニヤリと笑った。

 

「どど、ん波」

 

 ヤムチャの指先より発射された細いエネルギー光線は天津飯の頬に直撃した。突然の頬に感じた焼けるような痛みに天津飯は攻撃を中断してしまう。

 そのスキにヤムチャは天津飯の拘束から脱出した。

 

「貴様、どどん波を…!」

 

「三年前にお前の大好きな桃白白から見て、学んだんだよ…!本当は、目にぶつけてやりたかったんだけどな」

 

 再び睨み合う両者。しかしヤムチャの受けたダメージは大きい。体中が痣と傷だらけである。

 それでもヤムチャは目に闘志をたたえ、狼牙風風拳の構えを取る。

 

「さっき分かっただろう、俺の方が強い!何度やっても無駄だ‼︎」

 

「そうかい。なら今度こそ俺を倒してみな!真・狼牙風風拳ッ‼︎」

 

 両者ともにリングを蹴り、中央にて再度激突する。二回目となる殴り合い。圧倒的に天津飯の方が有利だろう。だが、ヤムチャは一歩も退かなかった。

 

「ハイッハイッハイッハイッハイッハイッハイッハイッハイッハイッハイッハイッハイッハイッハイッハイッハイッハイッハイッハイッハイッハイッハイッハイッハイッハイッハイッハイッハイッハイッ‼︎‼︎」

 

「こ、この野郎…!どこからこんな底力を…⁉︎」

 

 ーーーー少しでも速く、少しでも強く拳を繰り出せ。最も効率のいい攻撃を繰り出すんだ。どれだけの力なら、どれだけの速さなら奴を倒せるかなんて考えない。奴が俺についてこれなくなるまで強く、速くすればいいッ

 

 ヤムチャの一撃が天津飯の頬を掠る。ヤムチャの攻撃が通じ始めた。つまり、天津飯がヤムチャの速さについていけなくなってきたのだ。

 天津飯は困惑した。自分の四妖拳が追い詰められていることに。

 圧倒的な状況から、ひっくり返されようとしていることに。

 

「こんな、こんな…ことがーーーー」

 

「ハイヤァァァァァァァァッッ‼︎‼︎」

 

 そして、ヤムチャの拳が天津飯の顎をとらえた。

 一度決まれば流れは傾くものだ。ヤムチャは次々に天津飯へと連打を浴びせ、天津飯を滅多打ちにしてゆく。状況は完全に逆転した。

 ヤムチャの一撃一撃が天津飯の体力を刈り取る。

 天津飯もなんとか防御し、反撃の機会を探ろうとするがあまりの速さになすすべなし。

 試合が決着しようとしていた。

 

 そして、最後の一撃ーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーーぐ、が……⁉︎」

 

 ヤムチャの動きが一瞬。ほんの一瞬だけ、硬直した。

 1秒にも満たないほんの僅かなスキ。

 だが、天津飯がこれを見逃すはずがない。

 

「っ⁉︎もらった‼︎‼︎」

 

 天津飯は前の腕二本でヤムチャの右腕を掴み引き延し、残る後ろ二本の腕を組むと……容赦なく、ヤムチャの右腕に振り下ろした。

 

 ーーゴキィッ

 

 鈍い音がリングに響き渡った。

 

「ぐあぁぁ⁉︎あ、ぐ、が……‼︎‼︎」

 

「キャーーーーーーっ‼︎」

 

 ブルマの悲鳴。

 ヤムチャの右腕の前腕は完全に折り曲がっていたのだ。端から見れば恐らく2度と治ることのない怪我だろう。

 

「はぁ…はぁ…最後の最後で、油断したな!」

 

 天津飯は勝ち誇る。だがヤムチャにそれを聞く余裕はない。右腕を抑え、リングをのたうち回った。

 

 《よくやった天津飯‼︎さあもっと痛めつけてやれ‼︎》

 

 《ま、まだやるのですか?もう十分では…》

 

 その時だ。会場からおおっ⁉︎という声が上がる。ギョッとし、天津飯はのたうち回っているはずのヤムチャを見る。

 そこには折れた右腕を左腕で庇いながら立ち上がっているヤムチャの姿があった。

 

「……こ、れは…俺の落ち度だった…。完全に、テメェの弟弟子のこと、忘れてたぜ…」

 

 意味のわからないことをブツブツつぶやくヤムチャ。だが天津飯は感じた。ヤムチャに降参の意思はないことに。

 

「テメェなんか、左腕で十分だ…!さぁ、きやがれ…!」

 

 《叩き潰せ、天津飯‼︎》

 

 鶴仙人からの命令が入る。だが天津飯は動けずにいた。ここで勝負を決めては、何かが違う気がしたのだ。

 

「お、お前はどこまで……俺はーーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『そこまで!勝者は、天津飯選手ー‼︎』

 

 突然、アナウンサーの声が会場に響いた。天津飯が前を確認すると、いつの間にかヤムチャはリングにうつ伏せて気絶していた。最後の気力を振り絞っての威勢だったのだ。

 

 《天津飯!そやつの足も折ってやれ‼︎》

 

 鶴仙人より追撃の指示が入る。しかし

 

 《……もう、十分でしょう。あの腕の怪我だけでも武闘家生命は絶たれました。これ以上、追撃をすることはありません》

 

 天津飯は確かな自分の意思で鶴仙人の命令を断ったのだった。

 

 

 

 

「ボクがヤムチャさまを病院に連れて行きますー‼︎変化‼︎」

 

 ヤムチャはプーアルが化けた魔法の絨毯によって病院へ搬送された。

 こうしてヤムチャの第22回天下一武闘会は終わりを告げるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヤムチャ現在 8勝3敗

 




ヤムチャが天津飯の目にどどん波を当てなかったのは後の大魔王編が厄介になると考えたからです。


天津飯
作者の大好物。ブウ編で登場した時は「ひゅい⁉︎」って声が出ましたよ!
多彩かつ強力な技を使う。作品を通して安定した活躍を見せてくれた。vsヤムチャとの戦いで「ぶったな!親父にもぶたれたことないのに‼︎」ってヤムチャに言わせたかった…っ!彼も活躍させていきたい。

餃子
今回、ヤムチャの負けた要因第一です。超能力は強力だがおつむが弱い。ヤムチャとのZ戦士最弱争いを繰り広げた。そんなこともあり復活のFにてどちらがより活躍するのか注目されていたが、まさかの戦力外通告。ヤムチャと以外と気があうかもしれない。

真・狼牙風風拳
狼牙風風拳をさらに早くお届けします!





2日連続投稿って辛い…!少し休ませて……え、だめ?
次回シリアスでお届け!
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