噛ませ犬でも頑張りたい   作:とるびす

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ヤムチャ小物回。
活躍は次話


なんとかかんとか死す!脅威の孫悟空!

 よう、俺ヤムチャ。

 

 俺はジェット機で意気揚々と飛び出したがあることを思い出してすぐにとんぼ返りした。情けねぇ…。

 んでそのあることってのはプーアルだ。理由は二つ。一つはあのまま放置するのはあまりにもかわいそうだから。だって俺が目を覚ますまでずっと看病してくれてたんだぜ?もう一つはとある策略を成すためだ。それを披露するってことは俺の身が危ないってことなんだけどな。

 まあそういうことあって今プーアルも同伴してもらっている。当の本人は俺の腕が治っていることに驚愕していたが。

 

「プーアル。これから俺たちが向かうところはかなり危険だ。心しておいてくれ…。俺はヘタしたら死ぬかもしれんがプーアル、お前だけはどんな手を使ってでも生き残るんだぞ」

 

「……ヤムチャさまが死ぬ時はボクも一緒です!!一人だけ生き残るようなことは…」

 

「気持ちは嬉しい。だがな、二人して死んじゃ本末転倒だ。どちらか一人だけでも生き残れれば二人とも生き返ることができる可能性はある。なら俺はお前に生きて欲しい…な?」

 

 生き残れる可能性もプーアルの方が遥かに上だしな。変身術で小石にでも化けてやり過ごせばいいし。俺よりも長く飛べるし。

 まず俺は戦士だ。本来のドラゴンボールでの役割も命を賭して戦う者だ。死んでしまっても多少は仕方ないと割り切ることはできる。あ、死にたくないよ?俺は。

 だがプーアルはあくまでマスコット。非戦闘員だ。死ぬようなことがあってはならない。もし俺の目の前で死んでしまったら…後悔するだろうな…。

 

 

 

 

 最近ジェット機のスピードを遅く感じる。いや、速いっちゃ速いんだが…悟空の筋斗雲の方が断然速いのが事実だし。どうしても目的地に着くまでにかなりの時間を消費しちまうんだよなぁ。

 だからと言って俺の舞空術がジェット機のスピードを超えるかというとそうでもない。情けない話だが今の状態ではスピードも持久力もジェット機の方が上だ。

 あの白いオーラを纏って飛ぶのは頑張ればできそうではあるんだがすぐにぶっ倒れそう。

 

「ヤムチャさま。あとどれくらいですか?」

 

「うーむ…あと2時間程度か。到着は夜明けになりそうだな。今のうちに休んでおいたほうがいいぞ」

 

「ヤムチャさまが起きているのにボクだけ寝れませんよ。ボクも起きてます」

 

「そうか。無理はしなくていいんだがなぁ…」

 

 プーアル…本当に可愛い奴め。

 

 

 

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 目的地周辺の上空には俺の予測通り夜明けについた。

 真下は広大な密林地帯となっており、この中から人一人を探し出すのはかなり困難なことだろう。

 まあ、俺には気を感知する能力があるからある程度悟空に近づけたら気を察知できると思うが…。

 

 取り敢えず着陸。

 プーアルとともに探索を開始する。

 しかしそう簡単には見つからないもので、数時間の探索後に自力での発見は困難と判断した。

 ならばどうやって見つけるのか?答えは簡単、戦闘の余波を探ればいい。俺の予想では非常に胸糞悪いことだが、クリリンを殺した打楽器魔族は今頃世界中で天下一武闘会に参加した武闘家たちを殺し回っているのだろう。よってここにやってくる魔族は怪獣みたいなやつだったはず。

 んでこの怪獣魔族はヤジロベーとの戦闘になったはず。この戦いにおいて確か怪獣魔族は電撃技を使っていた。うろ覚えだけどな。

 電撃技と聞いて真っ先に思いつくのが武天老師様の萬國驚天掌。あの技には膨大な気力が必要だった。恐らく怪獣魔族もまた同じだ。その時の莫大な気の乱れを感知し駆けつけるってわけだ。

 

「プーアル、探索は一旦切り上げる。悟空の気配を感じ取れるか試してみるから少し静かにしておいてくれないか?」

 

「分かりました!」

 

 よし。それじゃ気を感知していこうかね。

 しかし気を感じ取るってホント便利。

 

 

 

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 ………ZZZZZZZZZZZZZZZZ…ハッ!?

 寝てない、寝てないぞ俺は!!いくら昼下がりで暖かくて昨日の夜一睡もしてないからといってこんな大事なときに寝るわけないじゃないか。ははは……はい寝てました。

 しかしプーアルも起こしてくれればよかったのに。

 

「おいプーア……」

 

「ZZZZZZZZZZZ……」

 

 アッハイ。まあプーアルも一睡もしてなかったからね。仕方ない。しかし二人とも寝てしまうって本末転倒だなこりゃ。

 

 おっと忘れてた。俺が飛び起きたのは少し離れたところで気の爆発を感じたからだ。多分怪獣魔族が来たんだろう。早速向かうことにする。

 

「おい起きろプーアル!見つけたぞ!」

 

「ふぁ…!?ぼ、ボクは寝てませんよ!本当ですよ!」

 

「……とにかく行こうな?」

 

「……はい…」

 

 安心しろプーアル。俺も寝てたからな!どっちが悪いかとかそんなのはないから。

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

  気の爆発があった場所に近づけば近づくほど強い気を感じるようになったが途中でいきなり消えた。

 ヤジロベー…お前って奴は…。

 

 そんでもってしばらく密林を駆け抜けると木のない、少し開けた場所に出た。そこには…

 

「悟空!無事だったか!!」

 

「あり?ヤムチャか?」

 

「なんだぎゃ。オメェの知り合いか?」

 

 悟空とヤジロベーがいた。なんの変わりもなく原作と同じでよかった!プーアルもホッと一安心したようだ。

 

「おめぇいっつもどこからか出てくるな」

 

「今回はお前を追っていたからだ。あんな状態で魔族と戦いやがって…。仮にもクリリンを殺した奴だぞ!?」

 

「でもよ…オラ許せなかったんだ…」

 

「気持ちはよくわかるさ。だがな、それでお前まで死んだら元も子もねぇだろ!!」

 

 叱るところは叱っておく。まあ俺は原作知識があったから踏み止まっただけでコレがなかったら俺もどうしてたか分からないけどな。…って叱れる立場じゃねぇなこりゃ…。

 

 そんな俺たちをよそにヤジロベーは怪獣魔族を焼いていた。なんでも食うんだなお前…。

 俺たちの視線に気づいたヤジロベーはたった一言。

 

「やらねぇぞ」

 

 いらねぇよ!?

 仮にでもさっきまで喋って戦って相手だぜ?しかも色合いがやけに毒々しいし…。

 ほらゲテモノ好きの悟空でも若干引いてるぞ!?あの狼とかムカデとか食う悟空がだぞ!?相当なもんだぜコレは…。

 ……しかし美味そうに食うなこいつ。ちょっと美味しそうに見えてこなくも…あるわけないか。

 

 

 

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 ヤジロベーが怪獣魔族を完食してしばらく経った頃だ。上空よりでかい気を感じた。そこには…

 

「ケケ、見つけたぜ!」

 

 でやがったな打楽器魔族!隣の悟空から怒りの気力が吹き出し始めていた。すると奴は俺を見て、

 

「お!てめぇは今から俺が殺しに行こうと思ってた奴じゃねぇか!!こりゃ手間が省けたな!」

 

 と嬉しそうに言っていた。あー…そういや次のターゲットは俺だったな。

 言ってくれるじゃねぇか。あ?その自慢気な羽根を引きちぎってやろうか。温厚な俺も少しは切れてんだぜ?ともに技を競い合った友を殺された件についてはな。

 だがしかし…今回は俺の出る幕じゃないかな。

 

「ヤムチャ!おめぇは手を出さないでくれ!!こいつは、オラが倒す!!」

 

「分かってる。クリリンの仇、頼んだぞ」

 

 奴への全権は悟空に譲渡。真に切れてるのは悟空だからな。悟空も自分の手で奴を殺らないと気が済まないみたいだし。

 

「ケ、舐めてくれやがって。てめぇもあのハゲのように殺してやるよ!!」

 

「…あのハゲっていうのは、クリリンのことか?クリリンのことかァーーーーッッ!!!!」

 

 うお、名言!?ここでくるか!?

 少しばかり早いような気がするなあー。具体的に言うと9年くらい。

 

 そこからはいじめのようだった。打楽器魔族の攻撃は全く悟空に通じることがなく、逆に打楽器魔族は悟空の一撃一撃で吹っ飛んでしまう。オマケに悟空の動きにも容赦がない。完全に殺る気ですわ。恐ろしや…!

 すると打楽器魔族は恐れ慄き逃走を図る。しかしだ。

 

「おいおいどこに行こうってんだ?」

 

 飛び上がったところを狙い奴の羽を手刀で切り裂く。浮遊力を失った打楽器魔族は地面に真っ逆さまだ。散々人を殺してきたくせにいざ殺されそうになったら逃げるとは…。あのピッコロの兄弟とは思えんな。

 

「すまん悟空。つい手が出てしまった。俺もちょっとイラついてたみたいでな」

 

「いやかまわねぇさ」

 

 悟空はそう短く答えるとかめはめ波の構えを取った。地面に落下した打楽器魔族は惨めに這いつくばって逃げ出そうとしている。

 あー…悟空。思いっきりやってくれ。

 

「ハァァァァァッッ!!!!」

 

「ぎょあァァァァァァ!!?」

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 さて無事に最後まで名前を思い出せなかった打楽器魔族は成敗した。ヤジロベーは消滅したせいで食えなくなったとかブリブリ文句を言ってたが。ていうかあいつ食えたら相当なもんだぞ。

 

 まあそれは置いておいて…

 

「悟空。これでせいせいしただろ。一度ここから離れるぞ!」

 

「なんでだ?」

 

「奴らの親玉がくる!そいつは今のお前や俺より遥かに強い!!今戦ったら殺されるのがオチだ!」

 

「けど…親玉がくるんならそこで倒しちまえば…」

 

「だから、倒せねんだよ!お前が倒した奴とは格が違うんだ!!いいから早く…」

 

「や、ヤムチャさま…!う、上…!」

 

 プーアルの震える声を聞いて上を見上げるそこには巨大飛行船が浮かんでいた。ていうか来るの速スギィ!?

 

「ヤジロベー!そのドラゴンボールをそこらへんに捨てろ!殺されるぞ!!」

 

「なんだってオレが…」

 

「奴の親玉はピッコロ大魔王だ」

 

「げぇっ!?マジかよ!!」

 

 ヤジロベーはそこらへんにドラゴンボールを捨てるとスタコラと茂みに隠れていった。行動が速いのはいいことだ。

 

「悟空!俺たちも…」

 

「ヤムチャは隠れててくれ。オラが奴を倒す!」

 

「…クソ!分からず屋!プーアル隠れるぞ!」

 

「は、はいぃ!」

 

 ヤジロベーは近くの茂みに滑り込むように逃げ込む。

 俺たちが隠れたのと同じくらいのタイミングでピッコロ大魔王が空から降りてきた。こ、こわい…。これが無印最後のラスボスの貫禄か…!ピッコロもピッコロ大魔王も似たようなもんだからな。

 隣のヤジロベーはガタガタと震えている。プーアルには小石になって俺のポケットの中に入ってもらった。これから後のためにだ。

 

「やい!おめぇがクリリンを殺した奴の親玉か!」

 

「知らんわ。ワシは魔族をコケにする貴様をわざわざ殺しに来てやったのだ。感謝しろ」

 

 二人の戦いが始まる。

 

 

 

 

 




特に何をするでもないヤムチャ小物回でした。
毎日投稿はやはり堪えました、はい。
ヤムチャが魔族の名前を覚えていない理由。それは作者が覚えてないからです。


タンバリン
たった今Googleで調べてきました。なんとかかんとかとはこの人。打楽器魔族もこの人。
クリリンを一撃で殺せるくせにあっさりしすぎぃ!!

シンバル
同じくググってきました。画面外でフェードアウト、ヤジロベーの胃袋にinしたお。何気に電撃技が使えるそうで。

ヤジロベー
野生育ちの異端児。ただいま18歳。こいつまじ何もんやで。ヤジロベー最強説に意外とすんなり納得してしまったのは苦い思い出。ヤムチャなんかよりよっぽど役に立っている。

ヤムチャが使った手刀
気を纏わせてそれを高速で流動させることによって切れ味を生み出します。例えるならチェンソー。さらに例えるなら光の流法(モード)輝彩滑刀(きさいかっとう)」。さらにさらに例えるなら山羊。まだまだ発展途上。





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