噛ませ犬でも頑張りたい   作:とるびす

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感想欄で色々言ってしまいましたが…悪いな、ありゃ嘘だ。



予期せぬパワーアップ(なおピッコロ大魔王には勝てない模様)

 よう、俺ヤムチャ。

 

 結構本気でカリン塔を登っているのに後ろから付いてくるヤジロベーに恐怖を隠せない。

 どんなもん食べてたらそこまで強くなれんだよ。是非ともご教授していただきたいものですな!!どうせゲテモノばっかりだろうけど!!

 まあ満身創痍の悟空や非戦闘員のプーアルを振り落さないように丁寧に登ってるってのもあるけどな。

 

 さて、登り始めて数時間が経過した頃か。見覚えのある楕円形の空間が見えてきた。

 昔はなんていうか…富士山登頂成功!みたいな達成感があったけど今となっては近所の禿山を駆け上がった感覚だ。成長って怖いね。

 

 中に入るとカリン様が出迎えてくれた。概ねの事情は把握しているようだ。ならば話が早いな。

 

「取り敢えず悟空に仙豆を。話はそれからで」

 

「うむそうじゃな。すでに用意してある」

 

 カリン様はどこからか仙豆を取り出すと悟空の口の中に入れる。毛の中から出していたように見えたが…毛がいっぱいついてそうで喉がもぞもぞした。

 

「カリン様助かった!仙豆がなかったらオラおっ死んでたぞ!」

 

 全快した悟空は体を適度に動かし、調子を確かめる。

 …気の総量が上がってるね。うん。これだからサイヤ人って奴らは嫌なんだ…。

 まあ絶望に打ちひしがれる前にやらなければならないことがある。

 

「…カリン様。この通り、今の俺たちではピッコロ大魔王には勝てない。けどあいつを放っておいたら世界はめちゃくちゃになってしまう」

 

「…じゃろうな」

 

 カリン様も事態を重く見ているのか沈痛な趣でうなづく。圧倒的力にねじ伏せられてしまった悟空は悔しそうに拳を握りしめていた。

 

「今や武天老師…あの神龍でさえピッコロ大魔王に殺されてしまった。この世が奴の手に落ちるのは時間の問題といえよう」

 

「…!亀仙人のじっちゃんが…」

 

 …やはりお亡くなりになられていたか…。

 おまけに神龍。確かにここで神龍を殺すという選択肢はピッコロ大魔王にとって最善手だった。この1日でピッコロ大魔王は魔封波を使える(かもしれない)俺を除くすべての懸念を抹消したのだ。

 奴が世界を征服して最初に行うのは…確かピッコロの日?とかいう特別日を定めてクジで抽選した地区を吹き飛ばしていくことだったと思う。

 だが奴は今回、その前に俺の抹殺を企てるはずだ。その際一番に狙われるのは…西の都。ブルマの家で住所登録してしているからな。こらそこ!居候ここに極まれりとか言わない!

 つまり西の都に奴が到着する前になんとか迎え撃たなくてはならないわけだ。

 いや、その前に天津飯の特攻が先か?てかあいつは生きてるんだよな?ここで原作とズレが生じるとは思えないが…。

 

「この豆粒が仙豆か!?なぁにがご馳走だぎゃ!!騙しやがったなこのヤロー!」

 

 場の雰囲気をぶち壊す奴が約一名。

 ヤジロベーが掴みかかってきた。ええい、今良い案を練っているところなんだ!邪魔な事この上ねぇ!

 するとヤジロベーは走って仙豆が入っている壺に駆け寄る。

 

「クソっ!こうなったらヤケ食いしてやらぁ!!」

 

「ちょ、やめいッ!!」

 

 仙豆を爆食いしようとしたヤジロベーを蹴り飛ばす。

 思いの外吹っ飛んだヤジロベーは下の階に転げ落ち、頭を打って目を回していた。

 取り敢えず仙豆を一粒だけ食わせてやろう。これで仙豆の凄さが分かるはずだ。これから運搬役として頑張ってくれよ?

 ふぅ…これで仙豆不足は回避か。

 

 

 なおも掴みかかってくるヤジロベーをぬらりくらりと躱しながら上の階へと登ると、ちょうどカリン様が悟空に超神水の説明をしていた。

 悟空はそれを軽く快諾。カリン様に超神水を持ってくるようにせがむ。

 超神水…ねぇ…。強化方法としては興味があるがここで毒に負けて死んじまったらなぁ…。

 多少のリスクは必要なんだが…うーん、実に悩ましい。

 

 カリン様が毒々しい液体をお猪口に注いだ。見た目モロ墨汁ですな。ちなみに指の一舐めでヤジロベーは死にかけた。これはあかんわ。ただの毒液としか思えねぇ…。

 試しにヤジロベーに飲んでみた感想を尋ねてみることにする。

 

「そんなに辛いのか?お前に忍耐力がなかったとかじゃなくて?」

 

「な、なら…お、おめぇも飲んでみろよ…」

 

「お、おう…」

 

 死にそうな顔をしているヤジロベーからお猪口を受け取る。無臭ではあるがそれが逆に怖い。ちょびっと…口の中に液を含んだ。特に味は無かったので飲み込んでみる。

 ………!?

 

「んんっ!?」

 

「「「!?」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………………水…だな」

 

 新事実。超神水は水だった。

 いやホントだぜ?なんの味もしねぇし匂いもしねぇ。飲み込んでみたが全く苦しくもならなかった。

 試しにお猪口一杯を全て飲み干したがこれでも体にはなんの負担も来ない。変化といえばなんか力が漲るような…。

 

 どうやら俺には超神水の毒を超える毒耐性が付いているようだ。隠れた才能ってやつか。

 まあそれらは冗談として…どういうこっちゃ?

 

「おいヤジロベー。普通の水じゃないか。お前もう一回舐めてみろよ」

 

「お、おう…………ギェェェェェェッ!!!」

 

 うーん…超神水は平常運転だな。おかしいのは俺か。

 俺ってそんな特別な耐性とかあるのか?特別…といえば転生する前に神様にさりげなく頼んでおいたチートともなんとも言えない特典だが…。関係なさそうだよなぁ。もう運が良かったで片付けてしまっても良いかな。

 

「た、たまげたのう。お主、超神水を飲んで平気じゃったのか」

 

「ああ。力が泉から湧き出してくるみたいな感じだな!こいつぁ良いもんだ」

 

「ふむ…とても耐えられるような男には見えぬがのう…」

 

 アッハイ。まあパワーアップできたのならノー問題だ。

 けどなぁ…うーん…。

 

「どうしたのだヤムチャ。随分と不満そうじゃが…」

 

「確かにパワーアップしたことにはしたんだが…とてもじゃないけど今の俺にピッコロ大魔王を倒せる気がしないんだ」

 

 要するに思ったよりパワーアップしてない。いや力やら気の総量とかは結構上がってると思うんだが悟空のようにピッコロ大魔王を圧倒できるかというと…疑問符が付いてしまう。

 これが俺の限界なのか超神水の限界なのか…はたまたその両方なのか…。

 まあどっちにしろ悟空には超神水を飲んでもらわねぇと。

 

「んじゃ、オラも飲んでみっか!」

 

 軽い感じでそう言うとぐいっと超神水を呷った悟空。だがその瞬間、悟空は叫び声をあげながら悶絶する。う、うわぁ…。

 

「ご、悟空!危ないと思ったらすぐに吐き出すんだぞ!?いいな!?」

 

「い、いやだ…!ぜってぇに、吐きださねぇ…!」

 

 …悟空はこんなに苦しみながら力を上げようとしているのに…俺ときたら…!ちくしょう…!

 

「カリン様。仙豆を食わせても駄目なのか?」

 

「超神水は命を削り力を得る水じゃ。仙豆には寿命を延ばす効果などありはせんからのう。効果はないじゃろ」

 

 うむむ…やはりダメか…。悟空頑張れ!

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 夜が明け、陽がその姿を雲の隙間から現した頃だった。依然として苦しんでいる悟空を見守っていた俺に無線が入る。ちなみに大気圏外でも無線が入るように通信機をブリーフ博士に改造してもらっている。

 

「こちらヤムチャだ。どうした?」

 

『大変よ!今テレビでピッコロ大魔王が新国王に就任したって!』

 

 無線の相手はブルマだった。ちなみにブルマたちには武天老師様と同時にこちらの情報を送っていた。

 キングキャッスルは既にピッコロ大魔王の手に堕ちたか…。思ったよりも早いな。

 

「それで、奴はなんと?」

 

『それが…あんたを殺すために魔族の大軍団を西の都に送り込むって…!しかもそれを聞いた天津飯さんが魔封波を使うって!』

 

 …なるほど。自分からは手を汚さずに部下…というか息子たちを使って俺を殺しに来るか。まあそうだろうな。予想はしてた。自分から魔封波を使える奴を殺しに行くような真似はしないよな。

 

「わかった。こちらから出向いてやることにしよう。西の都に奴らを向かわせるわけにはいかないからな」

 

『だ、大丈夫なの…?ヤムチャ…死なないでよ?』

 

「当たり前だ。朗報を待っててくれ」

 

 無線を切る。さてと…出向いてやるとしますかね!

 

「カリン様。俺は奴らと戦ってくる。悟空には俺の行き先を伝えておいてくれ。キングキャッスルだ」

 

「うむわかった。…世界を救ってみせよ、ヤムチャよ」

 

「ああ。……念のため聞いておくが…ヤジロベー、お前も来るか?」

 

「誰が行くか!俺は死にたがりじゃねえ!」

 

「そうかい。ピッコロ大魔王を倒して英雄になれれば美味いものが食えると思うんだけどなぁ…。プーアル、魔法の絨毯に変化を頼む」

 

「わかりました!変化!」

 

 少しでも気は温存しておきたいからな。プーアルにはエレベーターになってもらう。そしてしばらくの間ボラとウパに預かってもらうことにしよう。流石に決戦場所には連れて行けない。

 

 袋に入れれるだけの仙豆を袋に詰め、腰にかける。うーん…この安定感。仙豆のもたらす効果は回復だけじゃないな。心に落ち着きをもたらしてくれる。

 さて、準備は万端だ。悟空と一緒の方が何かと良かったんだが…仕方ないな。俺が死ぬ前に駆けつけてくれることに期待しよう。

 

「…いくぞっ!」

 

 プーアルが化けた絨毯に乗ると、絨毯は一気に下降する。雲の隙間から差し込む朝日は雲海を照らし、なんとも幻想的な風景を作り出していた。しかしそれに心を奪われる余裕はない。ひたすら地上への到着を待った。

 

 十数分後に地上へ到着。起きたばかりのボラ親子がこちらに気づいて出迎えてくれた。

 

「…プーアル。お前はここで待っててくれ。ピッコロ大魔王を倒せ次第、すぐに迎えに行くからな」

 

「…分かりました。どうか、どうか無茶だけはしないでくださいね?」

 

 …保証しかねるなぁ…。だってヤ無茶しないとどうにかなるビジョンが思いつかねぇもん。

 

「無茶はするさ。だけど絶対に帰ってくる」

 

 そうとだけ告げるとホイポイカプセルを使いジェット機を出す。1時間もあれば死地、キングキャッスルに着くことが出来るだろう。

 ボラ親子、プーアルの声援を背に受けジェット機に乗り込んだ。

 

 

 俺は…死ぬかもしれない。

 もちろん死ぬのは嫌だ。怖いし…痛いしな。

 だけど…何もせずにただ仲間が戦ってくれているのを傍観するのはもっと嫌だ。

 原作の俺はもっと嫌だ!

 死ぬ気で戦ってやろうじゃないか!

 戦士とは…死ぬことに見つけた!!

 

「ヤムチャ、いっきまーす!!」

 

 掛け声とともにエンジンを起動させた。




戦士の戦死…うまいこと言った!

散々超神水は飲ませないと言っておきながら飲ませるバカは私です。
超神水の毒にやられなかったのには理由がありますよ?ええもちろん。

キングダムハーツ2を今頃になってやり込み始め小説投稿が遅れるバカは私です。ええ私ですとも!

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