噛ませ犬でも頑張りたい   作:とるびす

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ピッコロ大魔王編、完結ッ!




天津飯は白目をむきそうだったらしい

 よう、俺ヤムチャ。

 

 前回のあらすじ、俺の仲間がみんなかっこよすぎる。以上。

 天津飯といい悟空といい…ホントかっこよすぎんよ。俺が女だったら間違いなく惚れてたね!トゥンク待ったなしだ。

 ん?いやいやもちろん俺はノンケだよ?

 

「悟空…来てくれると思ってたぜ…!」

 

「おう!とりあえず…ホイ!」

 

 悟空は俺と天津飯に仙豆を投げ渡した。これはありがたい。

 

 受け取るや否や仙豆を口に放り込む。すると疲労が吹き飛んで傷がみるみる塞がっていった。うーん…癖になりそうだ。

 天津飯は何だこれは…みたいな目で仙豆を見ていたが俺の腕を治した豆であることに気づくと、呑み込んだ。

 

「ふぅ…なるほど、こいつはいいものだ…」

 

「だろ?さてと…形勢逆転…ってところか?ピッコロ大魔王」

 

 悟空から蹴り飛ばされたからだろう。口から流れている少量の血を拭っているピッコロ大魔王に呼びかける。

 散々煽られ邪魔をされ、挙句に蹴られたピッコロ大魔王の心中は穏やかなものではない。

 見ると背筋が凍りつくようなそれは恐ろしい憤怒の表情を浮かべていた。

 

「どいつもこいつも…このピッコロ大魔王様をコケにしよって…!!殺してやる、ただし、楽には死なさんぞッ!!」

 

 ピッコロ大魔王は叫ぶと俺たちに向かって突っ込んできた。慌てて迎撃態勢を整える俺と天津飯だったが…

 

「でぇりゃぁぁ!!」

 

「ガッ!?」

 

 悟空の蹴りにより再び吹っ飛んでいった。今度は王宮の柵に当たったためかなり痛そうだ。

 

 急ぎ立ち上がるピッコロ大魔王だったが悟空の追撃の方が態勢を立て直すよりも早い。

 段違いのスピードで猛撃を仕掛けていた。

 その一撃一撃がピッコロ大魔王を追い詰めてゆく。

 ていうか…

 

「なあ天津飯…」

 

「…なんだ?」

 

「もう…悟空一人でも、いいんじゃないかな…」

 

「…」

 

 完全に傍観状態の俺たちだった。

 しかし状況は段々と悪い方向へと向かってゆく。

 ピッコロ大魔王が寿命を削るリスクを冒してまでフルパワーを解放したのだ。圧倒的な悟空有利の状況は消え去った。

 二人の実力はほぼ互角、均衡状態が続く。

 

 くそ…何かしたいとは思っているが…あの嵐にも見える殺り合いに介入できるほど俺たちはまだ化物ではない。

 しかし仙豆で回復したんだ。何か…何かしてやりたい。

 安全圏からちょくちょく嫌がらせのように攻撃を仕掛けられる方法はないか?……うん、あった。

 

「…そうだ。俺たちにはあの技があるじゃないか!」

 

「…?」

 

 左腕で右手首を掴むと一気に気を練り上げていく。

 二種類の気を別々に強化していき、コーティングが完了したら掌に具現化させる。まあ、言わずと知れた俺の繰気弾だな。

 これなら安全圏からピッコロ大魔王に嫌がらせができる!

 

「なるほどな…ふっ!」

 

 天津飯も同様にして気を練り上げ繰気弾を作り出す。完成度としては俺のより数歩遅れている。だか2日前に覚えたにしてはやけに出来がいい。

 本来ならここでパルパルっと天津飯を妬むところだが今は頼れる仲間だ。褒めておいてやろう。

 

「「繰気弾ッ!!」」

 

 二人でほぼ同時に繰気弾を発射する。

 元々悟空にやや押され気味だったピッコロ大魔王は俺たちの繰気弾による乱入により疲労を蓄積させていった。

 悟空も幾分か戦いやすくなったのか、ピッコロ大魔王に対する攻撃はさらに苛烈さを増してゆく。

 

「いける!いけるぞ!」

 

 天津飯が叫んだ。

 それはフラグだぞ、天津飯よ。

 

 瞬間、ピッコロ大魔王は目から怪光線を発射し、悟空の右脚を炙り、封じ込めた。

 さらに悟空の攻撃が止んだ隙に俺たちの繰気弾を迎撃し、繰気弾は地面に叩き落とされてしまった。

 

「奴め…まだ隠し玉を残していたか…ッ!」

 

「来るぞ天津飯!」

 

 そう俺が叫んだ瞬間だった。

 ピッコロ大魔王は俺たちの目の前にあっという間に迫り、その長い足での薙ぎ払いで俺たちを吹き飛ばした。

 

 顔を蹴られふらつく意識をどうにか保ったが直後に頭を何者かに掴まれる。

 あ、これって…原作での天津飯ポジション!

 

 ーーゴキィッ!

 

「ぐ…ッがぁ…!?」

 

 瞬間、左腕に鈍い激痛。

 どうやらピッコロ大魔王が俺の左腕を握り潰したようだ。天下一武闘会の天津飯戦といい…俺の左腕はよく折れるな…。

 

 しかしこれで繰気弾は使えなくなってしまったわけだ。ついでに元から使えないけど魔封波も。

 つまり…俺はピッコロ大魔王に対する対抗策を全て失った事になる。

 

「さあ小僧…動くなよ…。動いた瞬間コイツの頭は弾けとぶことになるぞ」

 

「ち、ちくしょう…」

 

 悟空が悔しそうな声を上げた。

 くそ…ここまで来て足手纏いかよ…!

 

「悟空…!俺のことはいいからこいつを…」

 

「貴様は黙れ!余計なことを言うんじゃない!」

 

 ーーゴキィッ!

 

「ぐぁあぁぁッ!!」

 

 今度は右脚を蹴られた。感触と痛みからして多分折れている。これでは狼牙風風拳も風風脚も使えない。

 

「いいか…動くなよ…」

 

 ピッコロ大魔王は怪光線で悟空の左脚と左腕を焼いた。

 いやらしいやり方しやがって…!

 

「ずあぁぁッ!!」

 

「ふんッ!」

 

「グハァ!?」

 

 背後から天津飯の声が聞こえた。

 どうやらピッコロ大魔王に背後から不意打ちを仕掛けたが一蹴されてしまったようだ。

 だが一瞬の隙をつき、手刀でピッコロ大魔王の手を斬りつけることができた。虚をつかれたのかピッコロ大魔王は俺を地面に落とす。

 

「チッ…。クハハハ…せめてもの情けだ。貴様ら三人、同時に消してやろう!」

 

 そう言うとピッコロ大魔王は地面蹲る俺を蹴り、悟空から離れたところまで吹き飛ばした。

 そしてググッと蹲ると、莫大な気を練り出す。

 やばい…コレはマジでやばい…!

 

「天津飯…!悟空を頼む!」

 

「わ、わかった!」

 

 俺たちが空に舞って数秒後だった。

 眩い閃光、そして爆発。

 キングキャッスルはピッコロ大魔王の一撃により灰塵と化した。

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「はぁ…はぁ…大丈夫か?」

 

「は、はい…なんとか…」

 

「ひぃぃ!?」

 

 悟空救出は天津飯に任せ、俺が救出したのは空に飛んでいた飛行機の搭乗員二人だ。

 TV局とかその辺関係の人たちだろう。見殺しにするのは憚られた。

 少し下の方に悟空を抱えた天津飯の姿がある。

 

「今から地面に下ろす。そしたら全力でこの場を離れろ…いいな?」

 

「は、はいぃ!」

 

 痛みで頭が朦朧としながらもなんとか地面まで辿り着いた。

 するとTV局のクルー二人はスタコラサッサと走っていく。カメラをはじめとした機材が全部吹き飛んだからな。ここにいる理由はもうないのだろう。

 

 しかし…思った以上にこっぴどくやられてしまった。悟空が来たら楽勝なんて思っていたが…。

 

「参ったな…俺はもう戦えない…。天津飯も気をかなり消耗してしまっている。悟空もボロボロだ。やばいな…どうすれば……ん?」

 

 今頃になって気がついたが、ピッコロ大魔王からの追撃がない。

 用心深い奴のはずだ。俺たちが避けた避けれなかった関わらず、生死は確認しようとするはず…もし生きていてもここで追撃をかければ俺たちを一網打尽にすることもできたかもしれない。

 恐る恐るピッコロ大魔王の方を見やってみると…

 

「はぁ…はぁ…くそ…!!」

 

 かなり疲弊していた。

 原作じゃ何回か爆力魔波を使ってたはずなんだが…。俺の介入によって原作よりもピッコロ大魔王が疲弊した…と見ていいのか?

 心当たりは…ある。

 俺と天津飯が先ほど全滅させた魔族300体。恐らくあれではないか…と推測した。

 ならば…まだ勝てる希望はある!

 悟空の力と天津飯のサポート、俺の隠し玉があればいける!

 

「天津飯!悟空を思いっきりピッコロ大魔王に向かって投げろ!悟空はかめはめ波で加速するんだ!そして奴を貫け!奴に勝つには最後の一撃に賭けるしかない!!」

 

 悟空にかなり危険なことを任せるが…俺がバックアップすれば…!

 

「はぁ…はぁ…いくぞ、孫ッ!!」

 

「おう…!」

 

 天津飯は悟空の脚を持ち、ジャイアントスイングの要領でグルングルンと回し始める。

 もちろん俺も手持ち無沙汰ではない。ピッコロ大魔王が余計なことをしないようにかめはめ波で攻撃。

 

「波ァーッ!!」

 

「小癪ッ!」

 

 俺の片手かめはめ波では完全に力不足。ピッコロ大魔王の一撃で空中に霧散してしまう。

 だがそれでいいんだ。

 

 徐々に加速してゆく悟空と天津飯。

 そして、投合!!

 それと同時に悟空は残った片手からかめはめ波を放ち加速する。

 

「この一撃に全てを賭けるッ!!」

 

「ハッ、小癪な!弾き返してくれるわっ!!!」

 

 ピッコロ大魔王は腕を伸ばし掌を組むと迎撃の構えを見せる。

 この瞬間、俺たちの勝ちは決定した!

 

「ハイィ!!」

 

 ここで俺の最後の隠し玉を発動する。

 最後の隠し玉、それは…ピッコロ大魔王が地面に叩き落とした繰気弾だ。

 あの繰気弾は死んでなんかいない。ずっと時が来るまで地面の中で待機していたのだ。この、来るべき時の為に!

 

 地面から飛び出した繰気弾はピッコロ大魔王の腕に下から当たり、衝撃によって上へと跳ね飛ばした。

 つまり、ピッコロ大魔王の今の態勢は悟空に対して腹をさらけ出している無防備な姿。

 

 最後に、ピッコロ大魔王が驚愕の目を俺に向けた。

 それだ、それを待ってたんだよ。

 

「おのれぇぇぇっ!!」

 

「つらぬけーー!!」

 

 ーーズンッ!

 

 そんな音ともに悟空は体ごとピッコロ大魔王を突き抜けた。

 ピッコロ大魔王はさも信じられないといった表情で自分の体にできた空洞を見つめていたがやがて苦しげに笑いだす。

 

「な、なんてことだ…こ…このピッコロさまが…やられるとは…!見事…と言うほかあるまい…ク、クク…」

 

 黙って奴の話を聞いておく。

 こんな奴でも辞世の句ぐらいは言わしてやろう。武闘家としての情けだ。

 

「だ、がな…このまま終わると、思うなよ…!」

 

 ピッコロ大魔王は空へ向かって卵を吐き出す。

 その卵は空の彼方へと消えていった。気がすっからかんの状態じゃどうすることもできないし…どうする気もないから別にいいが。

 

「悪の血を…絶やしては、ならんぞ…!うっ…!!!」

 

 そこまで言い終えると役目を果たしたかのように、爆発して空へと環っていった。

 

 勝った…か…。

 

「おつかれ。せっかくオレがピッコロ大魔王を倒してやろうと思ったのによぉ」

 

「…ヤジロベーか」

 

 全てが終わったのを見計らってだろう。普通に出てきたヤジロベーだった。よく言うぜこいつ。

 

 取り敢えず痛む体を引きずりながら転がっている悟空と天津飯を回収。一同座り込んだ。

 

「孫悟空…本当にお前はよくやってくれたな。ヤムチャも…すごい奴らだよ」

 

「お前も相当だぜ…天津飯」

 

「へへ…オラたち、ボロボロだけどな…」

 

 ひとまずここは解散して回復に務めることになった。悟空はカリン塔で、俺と天津飯はカメハウスで皆に説明を兼ねて。

 

「じゃあな悟空。また後で会おう」

 

「おう…」

 

 悟空を見送った後、天津飯に肩を貸してもらいながら廃墟を歩く。途中、如意棒が転がっていたので回収しておいた。

 

「ところで…お前はどうやってこの短期間でそこまで腕を上げたんだ?天下一武闘会の時と全然違うぞ」

 

「あー…まあ、色々あったのさ。納得はできないパワーアップだったけどな」

 

「そうか…。あの魔族の群れと戦っているお前を見た時、最初はお前と信じられなかったな。お前だと確信した時、思わず白目をむきそうになったよ」

 

「そうかよ…ん?白目…?………そうだ。白目で思い出したけどさ…今度、再戦しようぜ。サシの真剣勝負で」

 

「……ああ今度な。今のオレでは歯が立たないだろうが…」

 

 天津飯に白目をむかせてないことに気づいたんだ。うん。

 さて、ブルマたちは来てくれてるのかねぇ…。プーアルも後で迎えに行かなきゃな。

 

「…ん?なんだアレは?」

 

「あ?どうした天津飯」

 

 天津飯が指差す方向を見ると一機の飛行機が俺たちの上空から着陸しようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヤムチャ現在9勝3敗(モブ魔族はカウントなし)

 

 




疲れ疲れました。
テスト期間中に書くものじゃありませんね。うん。

さてvsピッコロ大魔王はサポートに回りましたが、これからヤムチャがサポートをする機会はかなり減ると思います。なぜなら…?

なおピアノは爆力魔波に巻き込まれて死にました。南無。

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