噛ませ犬でも頑張りたい   作:とるびす

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ヤムチャ株上げ回。
やったねヤムちゃん、人気が増えるよ!




カプセルコーポレーションを根城にする英雄
荒野の英雄


 よう、俺ヤムチャ。

 

 エアカーに乗っていたのは国王だった。ウーロンとともにZまで生き残った数少ないアニマルタイプの一人だ。

 天津飯は結構びっくりしている。やっぱりいくら天津飯といえども国王が目の前に現れたらそんな反応をするんだな。なんか新鮮。

 

「君たちがピッコロ大魔王を倒してくれたのだろう!?ありがとう…!それしかかける言葉が見つからない…!」

 

「は、はぁ…」

 

 まあ…感謝されて悪い気はしないな。けど実際にピッコロ大魔王を倒したのは悟空だし…。後ろめたい感じはする。

 

「それでだ、君たち二人には是非とも勲章を授与したい。数日後、記念式典に来てくれたまえ。使者はこちらが出そう」

 

「はぁ…どうも…」

 

 勲章……勲章ねぇ…。前世だったら家族で祝うくらいのもんだろうけど…ぶっちゃけこの世界じゃなんのステータスにもなりゃしないんだよなぁ…。まあ貰えるもんは貰っとくけど…。

 そう思ったその時だった。今までずっと黙って話を聞いていた天津飯が突然言葉を発した。

 

「すみません。オレは…辞退させてもらいます」

 

「天津飯?」

 

「オレは今回の戦いで何もできなかった。それなのに勲章を貰うのはオレのプライドに反する。だから、オレの分は無しでお願いします」

 

「そうか…。そこまで言うなら仕方あるまい。ならば君の分は無しとしよう」

 

「はい。ありがとうございます」

 

 か、かっけぇ…!男気に溢れてやがる!流石天津飯と褒めてやりたいところだ!

 確かにここで勲章を貰うことは武闘家のプライドに反するな。よし、俺も辞退しよう!

 

「あの…なら俺も辞退を…」

 

「…いや、君は貰ってくれ。君の活躍は全世界にリアルタイムで中継されていたのだ。こちらから何かを与えなければ我々の沽券に関わる。こちら側からのお願いだ。勲章を貰ってくれ」

 

 あ、はい。なんか妙な吹き回しだな…。ていうか生放送で俺の戦いが流されてたのね。なんか恥ずかしいな。

 

 そこまで言うと、国王はエアカーに乗り込みどこかへ飛んで行ってしまった。ありゃなんだったんだ…。

 

 その後様子を見に来ていたブルマたちと合流。

 俺の姿を見るや掴みかかってきた。

 

「なんであんな無茶してるのよ!死んだかと、思ったじゃない…!」

 

「ご、ごめんなブルマ…心配かけた…だからちょ、ちょっと手加減してくれぇ…!いて、いてて!!」

 

 ブルマからの愛は重かった。うん。

 さて、ピッコロ大魔王を倒した旨を伝えると天津飯に如意棒を渡し、ひとまず俺はカリン塔へ向かった。

 みんなからは止められたが、プーアルを迎えに行かなきゃならないし仙豆も食いたい。だって俺の手足の骨がボキボキだもの。

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 カリン塔に着くや否やプーアルが俺に号泣しながら抱きついた。ホント…カワイイ奴だ。

 

「うわーん!ヤムチャさまー!!」

 

「おいおい…泣くなってプーアル」

 

 プーアルは気が気でなかったという。心配かけて本当に悪いことをした。ブルマにも俺の立ち回りについての小言を結構言われたし…。まあ、反省はもう少し暇になってからだな。

 さて、それじゃささっと登っちゃいますかね!

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 片手と片足だったが6時間で登れた。つくづく超神水のドーピング力の凄さがよく分かる。これでも悟空ほど強化されてないというのだから驚きだ。

 

 カリン様とヤジロベーに迎え入れられた後、悟空が天界に向かったとの情報を得た。これからドラゴンボールは復活か。そりゃよかった。

 取り敢えず仙豆を一粒受け取り、口に含む。ホント…仙豆さまさまだぜ。

 

「ヤムチャよ。悟空とともにこの世界を救ったこと、感謝するぞ!」

 

「まあ、悟空と天津飯だけでもいけた気がするけどな。仙豆をありがとう、カリン様」

 

 お礼を言った後、プーアル(魔法の絨毯)に乗って地上へと降りる。さあ、クリリンと武天老師様に色々と報告しないとな。

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「ありがとうヤムチャ君…。君のおかげで世界は救われたのだ。本当に感謝する…!」

 

「あ、はい…どうも」

 

 国王から差し出された賞状みたいなやつを片手で受け取る。その瞬間けたたましいファンファーレが鳴り響き、会場は拍手喝采の雨あられ。

 

 ーーワーワーキャーキャー!

 

 ーーありがとーヤムチャー!!

 

 ーーキャーヤムチャさまー!!

 

「ど、どうも…どうも…」

 

 さて、一つ言わせてもらおう。

 ドウシテコウナッタ!?

 

 生き返ったクリリンと武天老師様との再会に涙し、悟空が天界で修行するって事だから負けないように5Gまで重力を引き上げた重力室で奮闘していたある日のこと。

 カプセルコーポレーションに国王の使者が来て授賞式の日時を教えていったんだ。美味いものでも食えるかなーと思ってな、いいなーとぼやくウーロンをからかいながら軽い気持ちで行ってみたら…なんだこれは!?

 

 何、授賞式ってこんなに盛り上がるもんなの!?なんかめちゃくちゃ恥ずかしいんだけど。

 

「握手!握手してくれー!」

 

「サインください!サイン!」

 

「あ、はい。ちょ、ちょっと待ってね…」

 

 握手握手サインサイン…どこのアイドルだよコレ…。

 てかこのペースじゃ日が暮れても終わらんぞ。

 早く修行に戻りたいんだが…。

 取り敢えず国王に直訴する。

 

「あのー国王陛下?自分そろそろ帰りたいんですが…」

 

「まあ待ちたまえ。君にはこれから生放送に出演してもらい、君の口でピッコロ大魔王が滅びたことを全世界の人々に報告して欲しいのだ。ピッコロ大魔王が死んだことを信じない無法者たちがまだたくさんいてね…」

 

「アッハイ」

 

 だめだ…断れん…。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「ーーーーでは、見事ピッコロ大魔王を打ち倒したヤムチャさんに出てきてもらいましょう!ヤムチャさーん!」

 

「ど、ども…よろしくお願いします…」

 

「はいよろしくお願いします!さてさて…この度あのピッコロ大魔王を倒したということですが!」

 

「はぁ…いや、俺一人の力で勝ったわけじゃなくてですね、仲間がいたし、運が良かったというか何というか…」

 

「またまた〜謙遜しちゃって〜。それでは戦いの内容を詳しく教えてくださいな!」

 

「は、はい」

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「ーーーーそしてヤムチャさんが迎え撃ったわけだ!」

 

「はい、そうです。あの時は流石に死ぬかと…」

 

「迫り来る化物をちぎっては投げちぎっては投げ!」

 

「まあそうですが…」

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「ーーーーそしてヤムチャさんが迎え撃ったわけだ!」

 

「そうですけど…ていうかこの話さっきしませんでしたっけ?」

 

「今テレビを見始めた人もいますから」

 

「な、なるほど…」

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「ーーーーそしてヤムチャさんが迎え撃ったわけだ!」

 

「はい、そうですけど…あの…」

 

「迫り来る化物をちぎっては投げちぎっては投げ!」

 

「…」

 

「そしてあの化物の群れを一人で打ち倒したと!」

 

「はいそうです」

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「ーーーーそしてヤムチャさんが迎え撃ったわけだ!」

 

「ハイソウデス」

 

「迫り来る化物をちぎっては投げちぎっては投げ!」

 

「ハイソウデス」

 

「そしてあの化物の群れを一人で打ち倒したと!」

 

「ハイソウデス」

 

「そしてピッコロ大魔王との最終決戦!」

 

「ハイソウデス」

 

「互いに互角の戦い、地は割れ、大気は叫びを上げる!」

 

「ハイソウデス」

 

「そして最後の力を振り絞り、見事、ピッコロ大魔王を打ち倒したというわけですね!」

 

「ハイソウデス」

 

「ところでもう一度聴き直したいんですが化物の群れと戦ったときはどのような心境でしたか!?」

 

「ハイソウデス」

 

「なるほど!そんな心境でヤムチャさんは迎え撃ったわけだ!」

 

「ハイソウデス」

 

「確か亀仙流のお弟子さんだとか?」

 

「ハイソウデス」

 

「そしてーーーー」

 

「ハイソウデス」

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「お疲れ様でした!これからのヤムチャさんの活躍にご期待ください!」

 

「ハイソウデス」

 

「それでは皆さん、さようならー!」

 

「ハイソウデス」

 

「……はい、オッケー!お疲れ様でしたー」

 

「ハイソウデス」

 

 ハイソウデ………………はっ!?終わっ…た?

 やばい…途中から何言ってたか分かんねぇや。

 くそ、あのリポーターの野郎同じような質問ばっかしやがって!

 しかも国王の野郎…生放送が24時間あるとか聞いてないぜ!

 延々と繰り返される奇妙な時間を過ごした…。終わりのない終わり、まさにゴールドエクスペリエンスレクイエム…!

 

 もう帰っていいみたいだし…さっさと帰って寝よう。そして修行しよう。うん。

 神様もピッコロも倒したいし。

 

 

 ちなみに後日クリリンと武天老師様からそのテレビのことでめちゃくちゃ笑われた。解せぬ。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 この日より、世界に英雄が誕生した。

 

 世界すべての人が悲観し、諦め、絶望していた時、その男は雷鳴の如く現れた。

 数百の化物に屈せず、街を一振りで灰塵へと変える化物を恐れず、何度痛めつけられても、何度地面に膝をつけても、立ち上がり挑み続け、見事これらを打ち倒した正義と力溢れる地上最強の男。オマケにイケメン。

 

 後の世界の人々に人類最強は誰?と聞けば、そのうちの半分はミスターサタンと答える。

 そしてもう半分はこの男の名前を叫ぶだろう。

 

 その男の名はヤムチャ。

 

 後にヤムチャは人々に神とまで謳われることとなり、ミスターサタンと双璧を成す地球最強…いや、宇宙最強の武闘家となる。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「ヤムチャさまー!CMのお誘いがいっぱいですよ!あと番組レギュラーの勧誘も!」

 

「おい、ヤムチャ!東の都と北の都で開催する武術大会に参加してくれってよ。あと西の都での武術大会には特別ゲストとして顔を見せてくれって」

 

「そうか…全部蹴ってくれ」

 

 どうなってんの…?いや、どうなってんの!?

 授賞式の日から連日こんな話ばっか!ふざけんなよ、俺は武闘家なんだ。芸能人じゃない。そういう面でのお誘いの話は全部丁重にお断りさせてもらっている。武術大会云々については…ぶっちゃけ面倒臭いから。だって普通に優勝しちまうと思うし。

 

 連日のお誘いコールで修行どころじゃなくなったからプーアルとウーロンに対応を頼んでいるんだが…二人でも間に合ってない。

 ピッコロ大魔王の野郎…最後の最後でとんでもない爆弾を残していきやがった!ちくしょうめ!

 

 

 ちなみにCMに関してはカプセルコーポレーションのやつだけ出演している。少しでも恩返しになればと思ってな。

 ブルマからは仕事が忙しくなったとぼやかれたが。

 

 




次回は日常回という名の修行パートですね。
3年という月日は余りにも少なすぎる。

ヤムチャのメンタルというか精神力は豆腐ですからね。24時間テレビには耐えられなかったのです。まあ泣き出さなくなっただけ成長したんじゃないでしょうか(すっとぼけ)

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