噛ませ犬でも頑張りたい   作:とるびす

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無印最後の戦いが始まる…





大先生「桃…白白…?」

 よう、俺ヤムチャ。

 

 取り敢えず俺の実力、容姿云々の話は置いといてみんなの到着を待つことにした。

 しっかしみんなどんぐらい強くなったんだろうな…ワクワクするとともにちょっとした緊張感を感じる。ヤバい腹がいてぇ…。

 

「ようみんな。久しぶりだなぁ!」

 

 ……ん?誰だこいつ。

 俺たちの前に現れたのは頭にターバンのような物を巻いた青年一人。背は俺より少し下くらいか。

 話し方からしてこの中のメンバーに親しい人がいるのだろう。誰だ?

 

「ヤムチャ、知り合い?」

 

「さあ?武天老師様の方じゃないか?」

 

「ワシはこんな男知らんぞい」

 

 あれ、知り合いなし?

 すると青年は笑いながら俺に話しかけてきた。

 

「ヤムチャー、ちょっと前に会ったじゃねぇか」

 

「え、マジ?えっと確か…」

 

 ちょっと前…ちょっと前…ターバンを巻いた青年…。

 ダメだ、心当たりがない。ターバン…ナム?いや違うな。なら…

 

「あー、あれだ。パイクーハン!」

 

「違う違う。あ、これ巻いてるから分かんなかったか?」

 

 そう言うと青年は頭に巻いていた布を解いてゆく。布が外れてゆくたびに飛び出すのは癖のある黒髪……あ。

 

「嘘だろおい…悟空かお前…」

 

「おう!」

 

 …おったまげー。

 いや、確かに悟空は無印の最後でめちゃくちゃ大きくなったけどさ…これはヤバい。

 身長が2倍…下手したら3倍くらいになってんじゃねえのこれ。

 ドラゴンボールの神秘を感じたね。サイヤ人か?サイヤ人だからなのか?(ベジータから目をそらしつつ)

 てか2年前はちょっと前じゃねぇよ。

 

「よっほー。ちょうどそこでみんなと会ってさ」

 

「武天老師様、お久しぶりです」

 

 そこへ大して身長の伸びてないクリリンと天津飯、餃子が登場。うーん…みんないい感じに仕上がってるな…。こりゃ一筋縄ではいかなそうだ。

 その後悟空へ感極まったクリリンが抱きついたのだが…うん、並ぶとやっぱり際立つな。何がとは言わんが。

 

 

 

 

 

 さっさと受付を済ました俺たちは控え室へと入ってゆく。そこで亀仙流の胴着に着替えておいた。やっぱりこれを着ないと始まらないよな。

 

 途中チチが現れ悟空を罵倒すると何処かへ行ってしまった。

 いや、懐かしいね。もうあの時から7年経つんだから…うん、あの頃は本当に辛かった。

 だけどあの頃からの地道な下積みがあるから今も俺は頑張れている。チチの登場で少し初心に戻ることができたぜ。

 

 ……っと、そんな俺たちへ熱い視線(殺気)を飛ばしてくるナメック星人が約一匹。言わずと知れたピッコロさんだ。

 そんな緑の体晒してたら案外気づくと思うだけどなぁ…。物の見事に悟空と天津飯以外はみんなスルー。餃子は気づいていいと思うんだが…。まあ、いっか。いずれ分かることだし。

 

 んでもって予選の抽選開始。

 くじは餃子が弄ったらしく、みんなバラバラのブロックだった。俺と悟空はブロックが一緒だったがトーナメント表では当たらないのでセーフだ。一瞬ひやっとしたがね!

 

 俺たちは圧倒的な強さで勝ち進んでいった。

 俺に至っては相手が俺の顔を見るだけで降参する始末。なんとも張り合いがない。

 そんなことを思いながらリングを降りていた、その時だ。

 

『おお〜〜!!』

 

 何処かのリングで歓声が上がった。

 ちょうど近くにいたクリリンに何事か聞くと、どうやら餃子の試合で何かがあったらしい。

 ああ…桃白白か…。と言うことは餃子は負けたのか?共に腕を磨いてきた身としては悔しいものだ。そして残念でもある。

 

 取り敢えず様子を見に行ってみた。

 そこには…

 

「餃子…お前…」

 

「天さん…ボク、勝っちゃった」

 

 舌を出してデロンとリング上でのびているサイボーグ桃白白と、茫然として天津飯と顔をあわせる餃子の姿があった………ふぁ?

 マジか…餃子のやつ、桃白白を倒しやがった。ここで早速原作とズレが生じたか。困ったような…嬉しいような…。

 まあ何はともあれ、桃白白乙!

 

 

 

 外に出て一同、予選通過の旨を武天老師様に報告していた時だ。背後から何やら耳障りな笑い声が聞こえたので振り返ってみると、小憎たらしい笑みを浮かべた鶴仙人が立っていた。

 その姿を見て天津飯と餃子の顔つきが厳しくなってゆく。

 

「フフフ…裏切り者どもめ。貴様らはサイボーグとなり最強となった桃白白に殺されるのだ!泣いて詫びても許さんぞ!」

 

『…』

 

 俺たちは何とも形容しがたい気持ちになった。何ていうか…1周回って憐れだな。

 その後も何やらごちゃごちゃと言っていたので、可哀想になったのだろう…天津飯が口を開く。

 

「鶴仙人様…申し上げにくいのですが…白白さんは餃子が倒しました。今頃…白白さんは病院で治療を受けているのではないでしょうか」

 

 治療…又の名を修理という。

 どうやら餃子のサイコキネシスの一撃によって回路やらなんやらが色々とショートしてしまったらしい。命はあるようだが。

 

「な、何の戯言を…餃子如きが桃白白を倒せるわけが…」

 

「それならば本選出場者のリストを見てくれば良いじゃろ。ワシも先ほど見てきたが桃白白という名前はどこにもなかったのう…」

 

 若干嫌みたらしく武天老師様が言った。鶴仙人乙!

 

「ば、バカな…そんなバカなことが…」

 

 鶴仙人はなにやらブツブツと呟きながら人混みの中へ消えていった。なんとも哀愁漂う姿であるが、同情する気にはならないな。悪に堕ちた者の末路というわけだ。

 天津飯と餃子はその姿をとても気にしていたが、余り気に留めないよう言っておく。二人はもう鶴仙流ではないのだ。いつまでも奴の呪縛にとらわれる必要はない。

 けどなんていうか…桃白白には悪いことしたと思う。見せ場をことごとく潰しちまったからな

 

 

 

 さて、本選の抽選が始まるとの連絡が入った。どのような結果になるのか…非常に楽しみである。

 ついでに餃子にはくじを弄らないよう言っておいた。くじを弄って好成績を残しても自慢にならんからな。ん?予選?あれは原作通りだからいいんだよ。

 

 勝ち残ったのは俺、悟空、クリリン、天津飯、餃子、神様(シェン)、ピッコロ(マジュニア)、チチ(匿名希望)の八人である。

 八人のうち三人が偽名ってヤバいな。

 そして対戦の組み合わせは…

 

 第一試合 天津飯vs餃子

 

 第二試合 悟空vsチチ

 

 第三試合 ピッコロvsクリリン

 

 第四試合 俺vs神様

 となった。

 

 お気づきだろうが組み合わせは原作とほとんど変わっていない。唯一変わっているのは桃白白の代わりに餃子が入ったことぐらいだ。

 まあ、内心ホッとした。神様には恩があるが…やはり色々と思うところがあってな。戦っておきたいと常々思っていた。

 

 

 早速第一試合が始まる。組み合わせは天津飯と餃子。

 元鶴仙流同士の対決という原作でもなかった展開が大いに楽しみだ。まあ、どっちが勝つかは大体わかるのだが。

 

 銅鑼の音ともに試合は開始する。

 餃子は空中に舞い上がり、中央を起点として常に天津飯と距離を置きながらどどん波と超能力で戦っている。

 餃子の戦い方としてはかなり有効的だろう。餃子自身、肉弾戦ではひっくり返っても天津飯には勝てないということを重々承知した上での戦法である。端から見れば天津飯を追い詰めているように見えなくもない。

 しかしだ。天津飯の強さはそれのさらに上をいった。

 どどん波も、超能力も、当たらなければどうということはないのだ。

 

 天津飯の驚異的な動体視力と瞬発力を持ってすればそれらを躱すことは容易い。

 残像拳で姿を撹乱しながら餃子との距離を一気に縮めた天津飯は、突如今までの倍近くのスピードで餃子の背後に回ると首に一撃手刀を入れた。その一撃により餃子は気絶。天津飯の勝利となった。

 終わってみれば天津飯の圧勝だが、餃子もかなり強くなった。あいつも鍛えればまだまだ伸び代があるのだ。

 

 ふと、観客席を覗いてみた。するとそこには難しい顔で試合を見ていた鶴仙人の姿があった。試合が終わった後も難しい顔のままその場を去って行ったが、先ほど会った時よりはトゲトゲしさが若干薄れた気がする。

 奴も奴なりに元弟子の成長が気になったのだろうか?俺には奴の胸の内を知る由はなかった。

 

 

 第二試合は悟空とチチの対決だ。

 チチの動きはかなりキレていて、その練度からも牛魔王がいい師であったことがよくわかる。まあ…悟空には勝てなかったけどな。

 その後めでたく結婚。いちゃつく二人を見て少しイラっとした俺は相当捻くれている。クリリンが羨ましがっていたので軽く頭を小突いてやった。妬ましい…!

 ふと、チチが俺の方を見た。

 

「あー!いつぞやかの変質者だべー!!」

 

「ふぁ!?」

 

 騒ぎ立てるチチに狼狽する俺。

 事の真相をクリリンたちに追求され、しどろもどろに説明しながら俺は思った。小っちゃいバタフライだなおい。

 

 

 第三試合はピッコロ対クリリン。

 一応エールを送っといてやろう。

 

「クリリン…奴は相当強い。勝てなくても…骨は拾ってやるからな」

 

「ヤムチャさん…エールのつもりなんですか?」

 

 いんや全く。

 

 試合は序盤、中々の拮抗状態となり、パワーとスピードのぶつかり合いとなった。ピッコロ相手に引けを取らないところを見るとクリリンもかなり強化されているみたいだ。

 しかし徐々にピッコロがクリリンを圧倒し始める。原因は多彩な技と圧倒的スペックだ。手が伸びたり目から怪光線を出したり…やっぱナメック星人ってズルいわ。

 それでもクリリンは奥の手の追尾気功波や舞空術を駆使し、必死にピッコロへ食らいつく。

 そしてピッコロも若干引くくらいの粘りを見せたが強力な一撃に敗北。ピッコロが準決勝へとコマを進める。

 

 ボロボロになって戻ってきたクリリンへねぎらいの言葉をかけながら仙豆を渡す。幾らでも持ってきてるからな、じゃんじゃん食べてくれ。

 

 

 さてさて…お待ちかねの第四試合。俺の相手は人間に憑依した神様だ。手加減はしない。徹底的に叩きのめしてやる。

 取り敢えず二人揃って武技館の入り口に立つ。

 

 途中、俺に何かを言おうとしていたクリリンが俺の顔を見て何やらビビっていた。どうしたし。そんなに俺の顔は歪んでいたか?

 確かに…なんだろうか…かなりの思いがこみ上げてくる。この湧き上がる激情…これは…!

 

「それでは、いい試合にしましょう」

 

 神様が何やら言ってくる。

 ……そうだないい試合にしような。

 

「ええ、こちらこそ。それと、忠告ですが…」

 

「?」

 

 俺は不敵に笑いながら言い放ってやった。

 

「足元に注意した方がいいですよ?」

 

 




最近暑いですからね、熱中症にはお気をつけください。
次回「七転八倒!」ぜってぇ見てくれよな!

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