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「病んでますわアンタ」
「マジすか」
天さんvs悟空
ヤムチャは今回、心の中で実況でございます。
よう、俺ヤムチャ。
試合を終えた俺はクリリンや悟空たちの賛辞もほどほどに、次なる試合に備えて試合を観賞しつつ精神を統一しようと控え室に入った。するとそこには予想外の人物の姿が。
「…よう、なんかようか?ピッコロ」
「…貴様は覚えているぞ。我が父を散々コケにした…ヤムチャとかいう奴だったな」
入り口付近で緑の人が待ち構えてました。いやほんと目つき悪いよ。こんなのが将来ショタッコロと言われるなんて誰が予想できただろうか。
「貴様と神の会話は聞いた。中々出来るじゃないか。といっても、お前は観客の前で俺に半殺しにされるわけだが」
「お褒め預かり光栄だな。俺の強さにビビったんなら無様な姿を晒す前に降参するのも一つの手だぜ?」
「ふん、ぬかせ」
冗談のわからない奴だなー。まあ父ちゃんに比べたら多少はマシってところかねぇ。
てかこいつは俺に軽口を叩くためにここで待ち伏せしていたのだろうか。そう考えると…かわいいなこいつ。
「まあ次の試合を見てみな。悟空の強さがよーく分かる。天津飯ならそれなりに悟空の力を引き出してくれるだろうよ」
ピッコロの前を通り過ぎ、取り敢えず自動販売機で飲み物を買った後(タダだが)、クリリンとチチのもとへ向かう。
後ろから気配を感じるところをみるとピッコロもついてきているようだ。
試合はちゃっかりと観戦するらしい。
クリリンとチチ、餃子に買ってきた飲み物を渡しつつリングを見やると、悟空と天津飯が中央にて睨み合っていた。どちらとも口には薄い笑みを浮かべている。戦闘狂ですなぁ。
「ヤムチャさん的にはどっちが勝つと思いますか?」
「んあ?んーー…第一印象的には悟空だな。あいつまだ重い胴着を着たまんまだし。けど天津飯の強みは多彩な技だからなぁ…この一年で身につけたであろう新技が悟空にうまくハマれば…って感じか」
「なるほど…ていうか悟空は重い胴着を着ているんですか!?」
「多分」
動体視力はともかく、身体能力じゃ天津飯は悟空に勝てないだろうしね。まあ悟空特有の序盤のナメプを上手く突くことができたらワンチャンあるかもしれんが。
…実は天津飯に一つ入れ知恵をしているんだが…どうなるだろうかねぇ。
どっちにしろ悟空、天津飯、どちらが勝ち上がっても強敵には違いあるまい。
『それでは、試合を開始してくださーい!!』
アナウンサーの開始宣言とともに悟空と天津飯は縦横無尽にリングを駆け回り激しくラッシュを撃ち合う。観客たちには不気味な風を切る音だけが聞こえているだろう。
スピードは…若干天津飯の方が上か。重力室で鍛えたのが効いているのだろう。
速度は重さ、それに伴い攻撃力でもまた天津飯のほうが少しばかり上だ。
天津飯が技を使わぬうちにここまで悟空に善戦できるとはな…やっぱり恐ろしい奴だよ。まったく。
まあ二人には準備運動感覚だろうが。
証拠に両者ともに全く息が切れていない。
二人はなおも激しく拳を撃ち合ったが、リング中央にて拮抗すると距離を取った。
「やるなぁ天津飯!3年前とは比べものになんねぇや!」
「孫、お前もな。しかし俺の本気はまだまだこんなものではないぞ。お前はついてこれるか?」
「へへ、オラだってまだ力は出してねぇぞ!てやっ!」
悟空はリングを蹴って素早く接近し、天津飯はそれを迎え撃つ。
うわー怖いわー…主に人外が怖いわー。
ほら、俺の隣の連中が若干引いてるじゃん?
再度撃ち合いを始めた二人だが、やはり天津飯の方が速い。その優れた動体視力によって悟空の攻撃を上手く捌き、反撃の突破口にしている。まだ両者ともにこれといったクリーンヒットはないが天津飯の優勢だ。
ここで悟空は残像拳を使用し上空へと逃れ、天津飯はそれを追撃する。またもや長い拮抗時間が続くかと思われたがそんなことはなかった。
あっという間に天津飯が悟空を叩き落としたのだ。
悟空はわけなくリングへと着地したが頭を押さえているところを見るとダメージはそれなりに通っている。
これは…天津飯めちゃくちゃ強くなってんな。ヤベェ、マジ震えてきやがったぜ。
「天津飯…やっぱり強い…!」
「あいつは元から世界トップクラスの武闘家だったからな。この三年間でさらに体を叩いたんだろう…化物のいっちょ出来上がりだ。今のあいつはもしかするとピッコロ大魔王よりかよっぽど強いんじゃないか?」
「ヒェ〜…」
さて、そんな化物へと成長した天津飯。
これには悟空もナメプでは勝てないと思ったのだろう。重い胴着を脱ぎ始めた。
勿論、撤去係は俺とクリリンだ。おお、重い重い。
さあ、どうする天津飯…。ここからの悟空は強いぞ…?
「へへ…そんじゃこっからは全力でいくかんな!」
「…!いいだろう、面白くなってきやがったぜ!!こいッ!」
瞬間、悟空が消えた。否、動いた。
この俺の目を持ってしても注意しないと見逃してしまうようなキレのある動きである。
悟空は即座に天津飯に接近すると天津飯の帯へと手を伸ばす。しかし天津飯は見切ったようで僅かに仰け反り、それを掠らせるだけに済ませた。
一見天津飯の回避が見事に映えているが、実際は紙一重の判断によるものだろう。コンマ1秒でも判断が遅れていれば天津飯は観客に無様な姿を晒すことになっていたと思われる。
「あり?今のを躱すかぁ〜。やるなー天津飯!」
「は…よく言うぜ。こっちは躱すので精一杯だ」
天津飯は唸ると悟空に飛びかかる。
しかし重りを外した悟空にはそんな攻撃を躱すことなど造作もないのだろう。ヒラリと天津飯の攻撃を躱すと天津飯の鳩尾へ肘を一撃撃ち込んだ。苦しそうに悶える天津飯。
悟空と天津飯の身体能力の差が浮き彫りになった攻防だったな…。
恐ろしく速い攻防…俺でなきゃ見逃しちゃうね。
ふむ…やはり2年間重力室で鍛えても身体能力面では悟空には追いつけないか。
しかし天津飯の真骨頂はこれからだからな。勝敗はまだわからない。
「これからオレが出す技は…絶対に避けることはできん!そして強力だ!12の目がお前を追い詰める!」
天津飯は腕を組むと、気を練り出す。かなり特殊な技だからな。かなり精密な気のコントロールが必要になる。
悟空は最初四妖拳を警戒したみたいだが、今から天津飯が披露するのは四妖拳ではない。天津飯が繰り出したのは…
「いいっ!?」
『な、なんと天津飯選手…四人に分裂しました!』
そう四身の拳だ。
効果は単純明快、自分をベースにして四人に分裂するというものである。字面だけ見ればかなり強力な技に見えるが、決定的な欠点がこの技には存在する。
それは自分の能力全てがこれまた四分の一になってしまうことだ。このデメリットは大きい。
しかしそれだけメリットとなる恩恵も大きいのも事実。だって人数が増えるってことはできることも多くなるってことだからな。分裂できるキャラが強いのは知ってる。俺は詳しいんだ!
「いいか孫!危ないと思ったらすぐに棄権しろ!」
「今から使う技はかなり危険だ!」
「下手するとお前を殺しかねない!」
「いいな、絶対だぞ!」
天津飯は四人で口々に言うとリングの四方へと陣取る。
そしてエネルギー波を発射。四方より飛んでくるエネルギー波を躱すには…上空しかない。
「上しかねぇっ!!」
悟空は超スピードで唯一の逃走経路である上空へと逃れる。しかしその動きを天津飯の12の目は見逃さなかった。
「捉えたッ!」
そして天津飯が繰り出したのは第3の目から放つ緑色のエメリウム光線…ではなかった。
手を三角形に型取り、悟空へと標準を合わせる。
一人の天津飯が叫んだ。
「気功砲ォォッ!!」
そして放たれたのは凄まじい気の奔流。空中にて逃げ場のない悟空は真っ向からそれに飲み込まれることとなった。
気功砲は命を削るほどの強大な気を消費する技だ。その分威力は高くなるし、それに比例して天津飯の負担も大きくなる。
しかし四身の拳を使用することによって威力を四分の一にカットする代わりに、天津飯への負担も四分の一にカットできるのだ。ついでに威力が落ちているので悟空を殺してしまう心配もない。
こんな荒技、本来なら実現不可能だ。
しかし、この技を実現できたのは一重に仲間との意見交換でクリリンより気のコントロールのコツを教えてもらったからだと思う。それにより気功砲をより早く、最低限の気で撃てるようになったのだ。
ついでに悟空が気功砲を一度も見たことがないということもポイントの一つである。
「くッ!すっげぇ威力だ…!」
空中に飛んでいた悟空が苦しそうに呻く。四分の一とはいえ気功砲をモロに受けてあのダメージ…どんだけタフなんだよ。
「どうだ孫、あと気功砲は三発残っているぞ!降参するか!?」
「へへっ、やなこった!」
余裕の表れだろう。悟空はベーっと舌を出す。天津飯はそれを見て不敵に笑った。まだ悟空は気功砲を受け切れると判断したのだろう。
「ならばもう一発だ!気功砲ォォッ!!」
さらに一発悟空に向けて気功砲が放たれる。上空で再び大爆発が起こり、あまりの衝撃に観客たちは地面にうずくまる。
悟空は気功砲の衝撃によりさらに上空へと打ち上げられてしまう。舞空術が使えない悟空にとってかなりマズイ状況だろう。
かめはめ波を撃つなりすれば方向転換は可能だ。しかし天津飯の12の目はそれを見逃さない。
「さらに…気功砲ォォッ!!」
3人目の天津飯が気功砲を放つ。
ここまでくると悟空もボロボロだ。かなりのダメージを受けていることがわかる。
これは天津飯…勝てるか?
「孫!これ以上は危険だ、棄権しろ!」
「ぜってぇ…イヤだ!オラは耐えてみせる!」
天津飯は少し戸惑い躊躇した。
しかしここで情けをかけるのは悟空に対する侮辱と言える。自身のパフォーマンスをフルに使わずに何が真剣勝負だ……なんて考えてるのかね?
「……耐えろよ!気功ーーーー」
最後の一撃を放とうとしたその時だ。
悟空は両手を広げ額へ付ける。これは…
「太陽拳っ!!」
「ーーーー砲ッ!!」
悟空の太陽拳と天津飯の気功砲が同時に放たれる。少し遅れて空中から爆発音が聞こえた。
俺は勿論目を瞑ってガード。しかし標準を合わせなければならない天津飯はモロに太陽拳を受けてしまい苦しそうに悶えていた。
そして…
ーースタンッ
「へへ…耐え切ってやったぞ…!」
最後の気功砲を耐え切った悟空が地上に降り立った。様子を見るに最後の気功砲によるダメージは受けたみたいだが直撃は避けたようだ。
あー…これは…
「天津飯、おめぇの弱点は二つある。一つは目がよすぎること、もう一つはその四人に分かれる技で力まで四つに分かれちまったことだ」
「く、くそ…!」
ここからの展開は目を閉じてもわかる。
悟空が四人の天津飯をボロボロになりながらも場外に投げ飛ばして終了だ。四人に分裂した天津飯も気功砲に気を使っちまってすっからかん、気功砲を耐えられた時点で天津飯の負けは決定したも同然だったのだろう。
「天津飯惜しかったな。最後の気功砲がクリーンヒットしていれば試合はわからなかったぞ」
「…どうだかな」
天津飯に称賛を送る。中々いい線いってたからな。悟空相手にあれだけ出来れば大したもんだ。
「へへ…最後のアレに当たってたらわからなかったなー…」
悟空が笑いながら言う。体はボロボロ、目は半開きだ…っていうか勝者の方がボロボロってどういうこっちゃ。
「まあ、取り敢えず二人ともお疲れさんだ。ほれ仙豆だ、食え」
「すまない…」
「サンキュー!」
仙豆を食べて全快した二人。
そして例の如く悟空の気が上がった。サイヤ人が羨ましいと思う今日この頃である。もっとも、地球人を辞めるつもりは毛頭ないけど。
さて、そろそろ試合が始まる。
緊張を押し流すように手に持ったジュースを一気飲みし、空き缶をゴミ箱へと捨てに向かった。
すると…
「ヤムチャ」
「ん?どうした悟空」
悟空がいつになく神妙な面持ちで近づいてくる。おいおい…お前にその顔は似合わないぜ?
「気づいてるだろ?あのマジュニアっちゅうやつがピッコロ大魔王の生まれ変わりってことに」
「そりゃーな。いやでも気づく」
大衆に気づかれてないのが不思議なくらいだろうに。
「ミスター・ポポに聞いたんだけどさ…神様とピッコロ大魔王は元々一つの存在だったらしいんだ。そんで一心同体だからピッコロ大魔王を殺したら神様も死んじまう…だからよ…」
「殺すなってことだろ?オッケーだ、任せてくれ」
神様にはあんなことをしたけど一応の恩は感じてる。殺すわけにはいかんだろう。
「気をつけろよ…あいつめちゃくちゃつえーぞ」
「ああ…わかってる」
そんじゃ、行きましょうかね。
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『さあっそれでは、準決勝を開始してください!!』
アナウンサーの声が鳴り響く。
構えるヤムチャに不気味に佇むピッコロ。両者からは確かな余裕が感じられる。
「クックック…あっさりと片付けてやる。生憎だが…このオレの標的は貴様などではなく孫悟空なんでな…」
「…ハッ、それだけの力を持っておいて世界征服?ちっちゃい奴だなお前。考え方が小物だ」
ピッコロの言葉にヤムチャは小馬鹿にしたように応答する。
格下と思っている男からの思わぬ返答にピッコロは眉をひそめた。
「……なんだと」
「もっと大きい視野を持っていこうぜ?そんなのを目標にしてちゃ最後には力を持て余すのは目に見えている。亡き親父の野望に引っ張られる必要はない」
「ふん、くだらん。まさかオレに説教垂れるつもりか?貴様如きに耳を貸すつもりはない」
「貴様如きに…ねぇ」
ヤムチャは地面を踏み抜いた。
瞬間、地面は砕けーーーー陥没し、一つのクレーターを作り出した。
「ッ!?」
「試してみるか?」
危険だ!棄権しろ!……うまいこと言った。
ま、まあ…言いたいことがあるかもしれやせぬがそれは感想欄でお答えしましょう。優しく聞いてね?
前回のヤムチャの行動に不快感を感じたやもしれませぬが基本ヤムチャはあんな感じです。
理由も無しにあんなことはしませぬよ。ヤムチャの行動原理には一つの核がありましてですね。
恐ろしく速い攻防…俺でなきゃ見逃しちゃうね
団長の手刀を見逃さなかった人が言った言葉のパロ。
あの人強いんだって!噛ませ犬だったけど強いんだって!むしろ団長がチート。
四身の拳
分裂できるキャラが強いことは知っています。あたいは賢いんだ!
実際強いでしょう?ブウとか…ドルマゲスとか…フランちゃんとか…ね?
これをこうしてこうすればチート技になるんです。
四身の拳を使って四妖拳…16の腕による狼牙風風拳…なんか気持ち悪いですね。