よう、俺ヤムチャ。
誰こいつ?風貌的にはサイバイマンに見えないこともない。けど変に頭身は高いしなにより茶色。
サイバイマンを若葉と例えるならこいつは枯葉だな。
そしてこの目つき。人なんか簡単に殺せるぞって目をしてやがる。つまり悪人の目だ。邪悪な…なんつーか魔族っぽい気も感じるし絶対ろくな奴じゃない。2ポンドかけてもいいぜ。
取り敢えず睨み合うだけじゃ何も始まらない。俺から話を切り出してみることにする。
「お前…魔族だな。狙いは俺か?ドラゴンボールか?」
「誰が貴様なんぞを狙うか!このジンジャー様の狙いはドラゴンボールだ!そしてよく見れば…貴様、ヤムチャだな?おとなしくドラゴンボールを渡すというのなら見逃してやらんこともないぞぉ?うん?」
やはり狙いはドラゴンボールだった。どーせロクな願いじゃないんだろうな。俺にはわかるぞ。
そして今思い出したんだが…この時期に魔族って1匹ばかり心当たりがある。
確か…ガーリックJr.だったか?あの不老不死で青白いやつ。あれ、スラッスラとかいう巨大化するナメック星人だったっけ?うーん…部下の顔じゃ判断できんな。スラッスラだと時期的にアウトだが…気の大きさ的には多分違うだろう。今の俺からしたらあまり脅威でもなんでもない。ガーリックJr.のほうだな。
そんじゃ…ちょっくら情報を聞き出してみよう。敵の下っ端というのは貴重な情報源だ。俺はそこまで考えてるからあっという間に敵を倒すことなんてしないのさ。俺マジ賢将。
「ふっ、誰に向かってそんな口を利いているんだ?俺は地球最強の戦士、ヤムチャ様だぞ?どこぞの馬の骨とも知らない魔族が偉そうに口を利くんじゃあない!」
まずは挑発。これ基本。
「地球最強の戦士ぃ?寝言は寝てから言うんだな!確か貴様、ピッコロを倒したとか世の中では言われているが…そのピッコロは既に死んでいるわ!我々ガーリック三人衆の他2人とガーリック様直々の手によってな!」
は?ピッコロが殺された?そんな馬鹿な話があるもんかい。こいつら如きの力でピッコロを殺せるんなら苦労はしねぇよ。ナメック星人舐めんな。
しかしこいつの話を聞くんなら仲間は最低二人以上、親玉のガーリックJr.を含めると三人以上か…よし、ちょっくら気を探ってみよう。
すると…かなり強い邪悪な気が遠方に四つ。ここからちょっとだけ近いところで争っている…あ、一つ消えた。南無。
「さあ、殺されたくなければドラゴンボールを寄越せ!ヘッヘッヘ…今なら半殺しに済ませてやってもいいぞぉ?」
「うーん…そうだな。もう十分だ。貴重な情報をありがとう下っ端魔族さんよっ!」
「なに…ぐぼぉっ!?」
軽く一発。下っ端魔族の顔を小突いてやった。
すると下っ端魔族は俺から見て多少オーバーに紫色の血をぶちまけながら吹っ飛んだ。
おっおっおっ?もしかして俺強い?もしや俺に自分が気づかないうちに凄まじいパワーアップを遂げてるとかいう王道展開きてる?…やったぜ!
いや、いやいや、早計だな。一旦落ち着け。クールダウン、クールダウン。これまでに似たような展開はあったぞ。そしてその全てがロクでもない結末を迎えた。学習しろ、学習するんだ俺。
ほら…あれだ。俺が強すぎるんじゃなくて敵さんが弱すぎるという線もあり得る。
あーホント…スカウターというものが喉から手が出るほどに欲しい今日この頃。ラディッツよ、さっさと持ってきてくれ。
「くそ…貴様よくも…!」
思考の渦に飲み込まれ、考えることに没頭していたが下っ端魔族のうめき声によって再び意識を入れ直す。
そうだよ、戦いはまだ終わっていないのだ。
「殺してやる…!殺してやるぞ…!貴様はオレを怒らせたッ!!」
「御託はいいからさっさとかかってこいよ。殺すと思った時には、既に行動を終わらせろヘボ魔族!」
精神攻撃も忘れない。このヤムチャ、格下相手でも容赦なし!だってさぁ…あいつの声を聞いてるとどうにも卑怯な手を使いそうでならないんだよ。懐からショットガン取り出したり、オイルを撒いて火を付けたりな。なんでだろう?
すると下っ端魔族は全身に力を込め始め「ショウガヤキーっ!!」と叫び…膨れ上がった。…ツッコミどころ満載である。まさかジャギじゃなくてアミバだったとは。まあここは置いておこう。
どうにも俺にはヤツの体のバランスが悪いように見えるが…多少不格好でも戦闘においては大きなアドバンテージとなるのだろう。現に見た限り格好からして筋力は増しただろうし、気も膨れ上がっている。
いやーなかなか面白いものを見させてもらった。
それにしてもショウガヤキー…生姜焼きねぇ?あ、思い出した!確かにいたわこういうヤツ!確か他にも「ノドアメーっ」だか「ウナジューっ」だとか「マヨネーズ!」とか言うヤツらもいたよな!いやー思い出せてよかった。うん。
「へっへ…この姿になって原型をとどめていられると思うなよ?さあ、死ねッ!!」
勝手に一人で納得していると下っ端魔族がなにやら喚きながら手を背後にやる。そうして下っ端魔族が何処からか取り出したのは…二本の刀。それをなにやらしたり顔で俺の前へと掲げた。
なるほど、筋力をあげて剣速を上げたのか。けど言ってしまえばそれだけ。ムキンクスにならないだけマシってところか。
「はっはっ!切り刻んでくれる!」
ブンブンと刀を振り回しながら言った俺へと近づいてくるが…俺は軽く腕を振り、
下っ端魔族の体はまだしばらく首から上が失われたことに気づかず、なおも刀を振り回していたが、やがてどちゃりと膝をつき、地面へと崩れ落ちた。
…呆気ないなぁ。新技を見せる暇すらなかった。
今のはこれまでも散々使ってきたヤムチャ流手刀だ。あの気を手刀の表面に纏ってチェンソーのように流動させるヤツ。圧倒的回転エネルギーの前にはちょっとそこらのパワーアップなど意味を成さないのだ!
新技は…これとはまた違う手刀なのだ。いや、アレは手刀か?
さて、どうしようかね?
下っ端は片付けたが親玉のガーリックJr.は未だ健在だ。それに他にもあと2人、魔族の下っ端がいるようだがそちらはピッコロの方に行っているらしい。俺の記憶が正しければ先ほど誰か1人死んだはずだ。
ちょっくら気を探ってみると…もう1人の気がみるみるうちに減っていた。ピッコロが遅れをとるはずがないのでボコボコにされてるのは残る魔族の1人だろう。ピッコロさんが魔族を痛ぶってるよ…かわいそうに…。
さて、俺がこの四星球を持っている限りガーリックJr.は願いを叶えることはできない。
つまり今現在、あいつは不老不死になれてないというわけだ。不老不死じゃないガーリックJr.なんてただのニンニクだろう。多分俺1人でも勝ててしまう。てかピッコロさん1人でも大丈夫なんじゃ…?
どうしよっかなー、俺とピッコロでやっちまうかなー?Z戦士全員で一気に攻め込むってのもいいな。こっちの方が確実だろうし。戦力的には圧倒的なんだよな、我が軍は。けど少しばかり大人気ない気もする。うーん…どうするかねぇ。
あ、消えかけてた魔族の気が消えた。ピッコロのヤツがとどめを刺したようだ。
それに伴ってなのかガーリックJr.の気が大幅にアップ。瞬間的なものならばピッコロと並んだ。
…よし、帰るか。
え、なんで帰るのかだって?
ガーリックJr.じゃピッコロに勝てないことがよーく分かったからさ。ピッコロの気の大きさ的に推測すると服(兼)重りをまだ脱いでないみたいだし
あ、ガーリックJr.の居城からドラゴンボール回収しとかねぇとな。6個も一箇所に集めてくれるなんてありがたいものだ。
最近の魔族は優しい。
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ガーリックJr.には野望があった。
かつての
前世は神という強大な力の前に敗れ去ったが、現代の神はそれに大きく劣る上に、自らの力も
まずは神を殺す。しかし神殿への侵入は容易なことではない。
神殿の周りに常時展開されている結界は神の意に沿わない者を通さない力を持つ。ガーリックJr.の存在は神にとって意に沿わないことであることは火を見るより明らかだ。無理に突撃して神に存在がバレてしまうのもできれば避けたい。ならばどうするべきか…
そして浮上したのがピッコロの存在である。
かつては世の中を恐怖のどん底に突き落とした悪の大魔王、ピッコロ。彼と神は一心同体であるためピッコロを殺せば神もまた死ぬ。
神自身を無理に殺すよりピッコロを殺して間接的に神を殺した方が容易だろう…とガーリックJr.は考えた。考えてしまった。
そして六つのドラゴンボールを手に入れ、いざ最後のドラゴンボールを手に入れようと動き出そうとした時だ。
残る一つのドラゴンボールが凄まじい速さで移動しているのをガーリックJr.たちのレーダーが捉えた。
いざ出発しようとしていたこのタイミングでそのような不可解な動きを始めたのには何か理由があるはず。自分たちの計画に感づいた何者かがドラゴンボール確保に動いているのだろうか…もしかすると神の手の者なのかもしれない…とガーリックJr.は深く勘ぐってゆく。神の手の者であれば事を重く見た神がドラゴンボールを破壊してしまうという最悪のケースも考えられる。ならば即、最後のドラゴンボールを何としても奪わなければならない。
そしてガーリックJr.が立案したのは…最後のドラゴンボール確保とピッコロの殺害を同時に行うというものだった。
これならば全て行動を迅速に、効率よく行うことができる。今最も重要とすべきは時間と順序の良さだ。神がドラゴンボール確保に奔走しているのならばその隙をついてピッコロを殺せばいい。
ドラゴンボール確保はガーリック三人衆筆頭のジンジャーに任せた。実力は折り紙付きであり、神の手の者であろうと決して遅れはとらないだろう。
そしてピッコロ殺害は残る三人衆のニッキーとサンショに任せる。ガーリックJr.はその近くで高みの見物である。自ら手を下すのもいいが、部下によっていたぶられている様を愉しむのもまた一興。
これらの同時作戦が成功すればほぼこの世を取ったようなものだろう。ガーリック三人衆に指示を出しニッキー、サンショとともにピッコロの元へと向かいながらガーリックJr.は内心笑い出したい気持ちでいっぱいだった。
………いっぱい、”だった”。
結果的に言うと作戦は大失敗であった。
ドラゴンボール確保作戦は肝心のドラゴンボールを確保するどころか瞬殺で返り討ちというなんとも情けない結末を迎えたのだ。
一方のピッコロ殺害チーム。
開幕に放たれたピッコロの気功波によりサンショが吹き飛んだ。決め台詞?の「ウナジューッ!」すら言うことも出来ずリタイア。それを見たニッキーが慌てて「ノドアメーッ!」と叫びパワーアップ、ピッコロを迎え撃ったがそれでも歯が立たずボコボコ。
いたぶられた挙句にこれまた気功波により吹き飛んだ。ガーリック三人衆揃って呆気ない最後である。
さて、ニッキーが吹き飛ばされたあたりから冷や汗が止まらないガーリックJr.。今の形態では決してピッコロには勝てないと即座に判断しパワーアップ。体格を数倍に膨らませた。
序盤こそはピッコロを体格差で徐々に押し始め、いい気になっていたガーリックJr.であったがピッコロの「さて、本気を出そう」の一言から戦局は完全にひっくり返った。
それからの戦闘には特に特筆するべき点はない。ただピッコロがガーリックJr.をいたぶり、殴り殺しただけだ。なお死体はもれなく消滅させた。
ピッコロはゴミを見るかのような目で荒野に散る三つの燃えカスを見ると…ぺっと唾を吐きその場を後にした。
一週間後にはヤムチャへの襲撃を計画している。それに備えて修行をしなければならない。全てはいつかなす世界征服のために。
こうしてガーリックJr.の野望は人知れず潰えた。魔凶星が近づいたところでガーリックJr.は復活することはできない。なぜならもう死んでいるからだ。唯一の救いは魔族であるピッコロに殺されたが地獄に行けるということぐらいだろう。
一方その頃、悟空はいびきをかいて寝ていた。
この話で伝えたかったこと。
→劇場版もあるよ!ガーリックJr.は犠牲になったのだ…犠牲の、犠牲にな。
ガーリックJr.
劇場版ボスにしてこの扱い!ヤムチャでさえ活躍しているというのに…。彼はピッコロの肥やしになりました。
神様を殺すとドラゴンボールが消滅するということを知らない子。実はそこまで賢くないのかもしれない。
ジンジャー
またの名を北斗神拳伝承者ジャギ様。しかしどこかアミバの面影も残しておられる。ヤムチャの一閃により首チョンバ。地味にガーリック三人衆筆頭であり最強の魔族。
生姜焼き
ニッキー
おかま口調。ガーリック三人衆のいい人。口調的にはピッコロと気が合うんじゃないの?ブルー大佐的な意味で。ボコボコにされた挙句消し炭になりました。かわいそうに…
のど飴
サンショ
…?なんだこいつ。ひと言も発することなく消し炭になりました。
鰻重