あー頭痛いー
よう、俺ヤムチャ。
久しぶりにみんなで集まってワイワイしよう!ということでカメハウスに集合していた時だった。
たった今、一つのデカイ気が地球に侵入してきたのを感知した。恐らく…というより確定だろうが、来たなアニキ!
カメハウスに悟空と悟飯がまだやって来てなかったので試しに孫家へ連絡を入れてみると、チチさんいわく「武天老師様の元へ今向かったばかり」とのこと。
なるほど、時系列的には合っているな。原作正常運転でZ突入だ。
アニキの動向を気で細かく確認。するとラディッツはピッコロの元へと移動を開始した。一番ラディッツに近かったのはピッコロだったらしい。ここも原作平常運転か。
さて、原作では埃を巻き上げるだけの技と一蹴されたピッコロだが…どうなるのかね?いざとなればすぐに駆けつける準備はできている。ピッコロを助けることになるのかは知らんが。
まあ気楽に情勢を見守っていこう。
互いの昔話に花を咲かせ、場の雰囲気も最高潮に達そうとしていた時、悟空がやって来た。悟飯も一緒だ。
主役のお出ましにみんな歓喜し、悟飯の存在に目を剥いていた。わかる、わかるぞ。俺もドラゴンボールを初めて読んでいた時はそうなったもんだ。
おっとっと…会話に夢中になりすぎてた。ピッコロとラディッツの戦況はどうなってるかな?
…………………………っ!!?
「ファッ!?」
「うわっ!?」
「うっさいわねー!何よ急に!」
驚きのあまり思わず声が出てしまった。いやそれほどまでに驚いたんだよホント。
だってもうラディッツの気が消えかけてんだもん。もはや虫の息と言っていいほどだろう。
いやー…薄々は感じてたけどピッコロさんが強くなりすぎちゃってるなこれ。これから先の物語の展開としては有利だが俺にとっては脅威でしかない。ああ恐ろしい…俺ってあんなのといつも殺り合ってんだぜ?命があるのが不思議でならないな。
さて、それはさておき…恐らくあともうちょっとでラディッツは息を引き取る。そう、弟とも会えずにドラゴンボールから退場するのだ。そしてスカウターの通信機で全て筒抜けなナッパとベジータに「弱虫ラディッツ」とせせら嗤われるんだろう。
哀れな人生だな。
主人公の兄貴という恵まれた立場にありながら原作でも呆気なく他界。ドラゴンボールファンからも「ラディッツ?ああ、あのZ最弱のザコwww」とか言われる始末。「宇宙一の誇りを持った強戦士」と自分の種族を誇りながらも誘拐、命乞い、不意打ち、命乞い(二回目)と小物臭い言動に走り、界隈では卑怯者扱い(実際卑怯者)…。
そしてこの世界では何の見せ場もなく、弟にも会えず…その弱虫としての人生を終える…。
噛ませ犬にもなれやしない…哀れな……人生…。
……はぁ…何だかねぇ…。
うーん…こう、なんか…言葉にできねぇな。
一言で言うと……同族の匂いを感じた。
同情心が湧き水のようにコンコンと溢れ出してくるんだ。なんかちょっとかわいそうに思えてきたじゃないか!
けどさぁそんな俺に自問自答するけど…ラディッツを生かしてどうしろってんだよ。ベジータみたいにいいヤツになるなんて保証はないしそもそもどうやって手懐ける?下手したら1年後に物の見事に裏切ってあっち側に行くかもしれねぇじゃん
残念だが…ラディッツには今回は縁がなかったと思ってもらうしかあるまい。なんとかあいつを制御できる術があればよかったんだけどな。制御する術が…あれば………っ!?
この時、俺に電流が走る!
あるよ!ラディッツを制御して無理やり仲間にする方法!アレを使えばラディッツを確実にこっち陣営に引き込めるし仲間たちの修行相手(サンドバック)になってくれるはずだ!メリットも十分!
そうと決まれば…!
「すまん、ちょっと行ってくる!」
『ヤムチャ(さん)!?』
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地球に到着しそこらへんにいた戦闘力5のゴミを片付けた後、オレのスカウターは一つの大きな戦闘力を捉えた。戦闘力は350程度…所詮オレの敵ではないが弱小民族である地球人の星にしてはヤケに強い。恐らく我が弟カカロットだろう…そうタカをくくった。
だがいざそこまで行ってみると、そこにいたのは緑色のおかしなヤツだけだった。万に一つにもこいつがカカロットなんてことはあるまい。少し言葉を交わしてみたが話にならない。ヤツは敵意満々であった。
仕方ない、カカロットに会うまでの準備運動のつもりで軽く相手をしてやろう…。
ば、馬鹿な…!?
ヤツのエネルギー波によって予想外のダメージを受けた…!どういうことだ、戦闘力350程度ではせいぜい埃を巻き上げる程度の威力しか出ないはず…!
試しにヤツの戦闘力を測り直してみた。そしてスカウターが叩き出した数値は…っ!?
戦闘力1700…だと…!?
「そんな…ありえない…!こんな星にオレより強いヤツがいるわけが…!」
「ふん、ほざいてろ。それとも遺言はそれで十分なのか?」
「…う、うおおぉおおおぉッッ!!ダブルサンデーッ!!」
ありえない。そうだ、これは何かの間違いだ。恐らくスカウターが故障していたんだろう。
でなければこんな辺境の星にいる下等種族なんぞにこのオレが遅れをとるわけがない!
現にヤツはオレが今放ったダブルサンデーによって…っ!?
「…何かしたか?」
む、無傷…!?
オレのダブルサンデーを受けてマントとターバンが吹き飛ぶだけだと!?なんてヤツだ!
「今度はオレ様の番だ。ズアァッ!」
「ぐぼぉはッ!?」
キツイ…!なんという重い一撃だ…!
だ、ダメだ…!オレには勝てん!そうと決まればとる手段は逃亡しかあるまい。緑色のヤツから背を向けて逃げる。ヤツをなんとかまいて潜伏せねば。ヤツの相手はナッパとベジータに任せよう。
必死に逃げながらもスカウターを通してベジータとナッパに救援要請を出してみる。
「お、おい聞こえるか!オレだ、ラディッツだ!頼む地球に来て助けてくれ…!オレには手に負えん…!カカロットも恐らくすでに死んでいる!」
頼む…出てくれ…!
『…無様だな、ラディッツよ。貴様それでも誇り高き戦闘民族サイヤ人か?』
『弱虫は相変わらず治ってねぇみてえだなおい』
出てくれた!これで助かる!
「助けてくれ!このままではヤツに殺されてしまう!お前たちが来るまでオレはなんとかしてこの星に潜伏ーーーー」
『おいちょっと待てラディッツさんよ。お前、なぜオレたちがお前を助けに行くていで話をしてやがる』
『オレたちがてめぇなんかの救援のためにわざわざ辺境の星まで行くわけねぇだろ!弱虫らしく野垂死にな!』
こ、こいつら…オレを見殺しにするつもりか!?
「そ、そんな…!頼む、同族のよしみだ!助けに来てくれ!」
『へっ、貴様と同族だと?反吐がでるぜ!お前みたいな弱小サイヤ人など必要ない、以上だ』
『へへ、そういうこった!あばよ!』
ブツッという音ともに通信が切れる。
オレは…見捨てられた。
「おい、どこへ行くつもりだ?」
「!?」
いつの間にか緑のヤツが先回りをしていたようだ。くそ、オレは…まだ死にたくない!
生き残るためならなんでもしてやる!
「す、すまなかった!この通り謝るから見逃してくれ!」
頭を岩に擦り付けながら謝罪する。
オレにプライドなんてものはない。
「断る。貴様も中々高い戦闘能力を持っているようだからな、いずれオレ様の計画の邪魔になるかもしれん。ここで殺す」
ダメなのか?
ち、ちくしょう…ちくしょう!
こうなったら、最後まで足掻いてやる!
「ダブルサンーーーー」
「爆力魔波ッ!」
凄まじい衝撃と熱波と共に視界がぐるぐると回る。周りの風景がどんどんスローになり、そして堕ちた。体はもはや一ミリたりとも動かせない。だんだんと視界が暗くなってゆく。
オレは…死ぬのか?
…くそぅ。
オヤジ…オレは、あんたのようには強くなれなかった…。
襲い来る眠気に身を任せようとしたその時だった。オレの口の中に何かが入れられる。そして何者かがそれを無理矢理咀嚼させた。すると…
「……は!?」
体が全快していた。な、何が起こったのかさっぱりわからなかった。不思議と体から力が湧いてくる感覚すらある。いったい何が起こったんだ?
ふと前方を見ると
「ヤムチャ…その男はお前の味方か。ちょうどいい…二人まとめて片付けてやる」
「ストップ、ストップだピッコロ。今日はお前と争う気は毛頭ない。頼むから静かにしてくれ」
緑色のヤツと山吹色の服を着た男が何やら言い争っていた。なんだかわからんがパワーアップした俺の前ではどんな相手も敵なしよ!面倒だから両方まとめて吹き飛ばしてやろう!
「くははッ、くたばれ!ダブルサンーーーー」
「てめぇも少し黙ってろ!!」
瞬間、視界から男が消えると同時に頭部へ強い衝撃を受けた。結局最後まで何が何だかよくわからない状態でオレの意識は今度こそ暗転したのだった。
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「で、結局その男はなんなんだ。貴様らの仲間なのか?」
「いいや、俺も初めて見るな。ただこの尻から生えてる尻尾を見るに悟空と同族なんだろう。何もわからんまま殺すのは惜しいと判断したんだ。わざわざドラゴンボールを使って生き返らせるのもめんどくさいしな」
ピッコロの方に話を合わせる。
いやーまさかほとんど無傷でラディッツを倒してしまうとは…ナメック星人怖い…。
あとついでにドラゴンボールの話を漏らした。これでスカウターの向こうのベジータたちにドラゴンボールの存在が知れ渡ったな。
自ら地球に危機を呼び込む英雄の図だ。笑ってくれても構わない。
「孫悟空の同族か…。そういえばそいつ、通信機のようなもので仲間と話していたぞ。無様に助けを請いていたな」
な、情けねー…!これが弱虫ラディッツか…。
「ふむふむ…その通信機とやらは…これか!おっ、これ電源がついてるな。向こうに通じるのか?」
ちょっと離れたところにスカウターが落ちていた。エネルギー波の余波によってラディッツから外れていたらしい。パッと見では壊れてないようで一安心だ。
早速拾って…
「お〜い聞こえてるか?お猿さんたちよぉ」
スカウター越しにベジータとナッパを煽った。
会話術において初手煽りは有効。俺がこの世界に来て学んだことの一つだ。
『…誰だ?ラディッツでもラディッツと戦っていたやつとも違うようだが』
えーっと…声音的にベジータかな?
久しぶりに聞いたよその声。
「地球最強の戦士ヤムチャ様だ、脳みそに叩き込んでおきな。
さて、突然だがそちらの御宅のラディッツさんはウチが預かった。返して欲しけりゃ…」
『そんな一族の恥さらしなどいらん。煮るなり焼くなり好きにしろ』
「アッハイ」
かわいそうなラディッツ…。
『それよりもさっき面白い話を聞いたぞ?なんでも死んだヤツを生き返らせる…ドラゴンボールだったか?』
「ああ。なんでも願いを叶えてくれるウチの最終兵器がどうかしたか?言っとくがやらんぞ?」
『貴様の意思は関係ない。1年後に貰ってやるから覚悟しておけよ?貴様はいたぶりながら殺してやる。サイヤ人を侮辱した罰だ』
ブツッという音ともに通信が切れた。
よし、これであの二人組みが地球に来てくれるな。ボコボコにしてやんぜ!サイバイマン?あんなの雑魚だろ。眼中にないね!
さて、やることもやったし気絶しているラディッツを連れて帰ろう。感動の兄弟の再会といこうじゃないか。
おっとっと…その前に西の都に例のブツを取りに行かねえとな。ラディッツを手懐けるには必須だ。
あ、そうそう。
「ピッコロ、お前も付いてきてくれ。話し合うことがある」
「断る。貴様らと慣れ合うつもりはない」
ツンツンしてんなおい。
はぁ…しゃあねぇな。
「あとでいくらでも相手になってやるからさ?な?頼むよピッコロ!ホントマジで!」
「…チッ」
渋々ながら付いてきてくれるようだ。流石ピッコロさんやで!…まあピッコロの耳ならラディッツの通信も聞こえてただろうし、そこそこ強かったラディッツにあそこまで言える二人組みはそこそこ脅威とでも思っているのかな?
サイヤ人御一行様、地球招致成功。ベジータが地球に来ないと色々と困るからね!仕方ないね!だからヤムチャを責めないであげて!
ラディッツ捕獲はドラゴンボール小説界では結構メジャーなんですね。それだけみんなラディッツが大好きなんだ!私ですか?ナッパが好きです。
どうでもいいけどピッコロさんって可愛くない?
ラディッツ
説明不要ッ!私に何を語れと?
そういえばラディッツとナッパがフュージョンするんでしたっけ?えっと…ラッパ?