噛ませ犬でも頑張りたい   作:とるびす

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4話目……!



たった一人の最終決戦

 よう、俺ヤムチャ。

 

 天さん楽勝でした。キャーテンサンカッコイイー! まあ、当たり前っちゃ当たり前か。

 うら若きナメック星人もそれなりによくやったとは思うが、地力が違いすぎた。本気を出していない天津飯にあしらわれているようじゃまだまだ鍛錬不足だな!

 ……とは言うものの…まあ、村一番と言ってもナメック星全体で見れば一般戦士クラスであろう若者ナメック星人でも天津飯と競り合うこのポテンシャルだ。ナメック星人もサイヤ人に勝るとも劣らない化け物である。同化なんていうチート技もあるし。

 

 天津飯の圧倒的ストイック武闘(排球拳)を目の当たりにして暫く呆気にとられていた長老だったが、やがて少しばかり興奮しながら天津飯を讃える。

 

「まさかこれほどまでに圧倒的とは……!心技体ともに素晴らしい!お主らこそドラゴンボールで願いを叶えるに相応しい者たちだ!」

 

 そしてこのべた褒めである。天津飯ってすげー。

 なるほど……別にホモの気があるわけではないが、ランチさんが天津飯に惚れ込んでいる理由がよーく分かるな。

 俺ももし鶴仙流の門下に入っていたらその漢気に惚れ込んで「天の兄貴ィ!」とか言って慕ってたりするのだろうか。面白そうなIfだ。

 

 長老は快くドラゴンボールを持ってきてくれた。

 流石、本場のドラゴンボールは馬鹿でかいもので、そのまま持つのは苦労しそうだ。よって餃子の超能力で浮かせてもらう。

 ……俺も超能力覚えようかな…。めちゃんこ便利そうだし。未来予知なんかできたりしてな! 時止めなんかもかっこいいよな!

 

 さて、ドラゴンボールを手に入れた今、この村に留まる理由はない。フリーザとかベジータよりも早く集めねぇと。

 ふと、何を思うでもなくドラゴンレーダーを見てみた。

 玉は全部で7つ。問題は……。

 

「フリーザの野郎が既に2つドラゴンボールを手に入れているってことなんだよなぁ」

 

 速い、速すぎますよフリーザ様。圧倒的に速さが足りすぎてしまっている。

 ていうかね、まず機動力に差がありすぎるんだよ! あっちは戦闘力の感知に気を使う必要もないし、ナメック星人たちの試練を受ける必要もない。虐殺すればいいだけだもんね!

 ふざけんなよこのど畜生がァァ!!

 

 一応長老さんたちにフリーザの存在は伝えておいた。あちらが望めばハイパーコールドスリープ装置に入らせた後にホイポイカプセルに収納してあげることもできたが…ナメック星人たちは頑なに断った。

 殺されても最期まで抗うんだと。ホントとんでもない種族だな…敬意を表すぜ。

 

「色々とありがとうございました。どうか……気をつけてください」

 

「ふぁっふぁ……あなたたちが心配することではありませんよ。あなたたちの願いが叶えられることを願っています」

 

 ちょ、長老…!

 天津飯はあちらが決めたことだからと、だんまりを決め込んでいる。餃子はチラチラと落ち着かない様子であった。

 すまねえ長老! あんたたちは絶対にドラゴンボールで生き返らせてやるから…!

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 とまあ。

 こんな感じで1個目のドラゴンボールGETだぜ☆

 今はドラゴンボールを宇宙船に保管しに向かっているところだ。

 あそこには守護神ラディッツがいるのでフリーザなんかが来ない限りは大丈夫だろう。

 ベジータは知らんがな。

 

 

 そして数時間かけて到着したのだが……どういうわけかラディッツがいなかった。

 おーい…守護神ラディッツー…?

 

 天津飯、餃子とともに星全体をサーチにかけてみるがラディッツの気は少しも感じられなかった。

 あの野郎……気のコントロールを上達させてやがるな! あと死んだという線も考えられる。周りに戦闘の跡は見受けられないがな。

 

 ……ま、まあ、あいつの処遇は悟空たちが帰ってきてから考えるとしよう。ホント……何してんだよあいつ。意味わからんぜ。

 引き篭もりかと思ったらいきなり外出しやがって。アグレシッブなのかインドアなのかはっきりしろよな。

 

 

 

 

 しかし、それにしても悟空たちが遅いな。

 あいつらなら試練も楽々だと思うんだがねぇ…? もしかして村ごとに内容が違ったりするのか? けどまあ。あっちには我らが頭脳(5歳)がいるし案外どうにかなるっしょ。

 

 しかしどこにいるかは気になるもので、試しに悟空の気を探ってみた────その瞬間だった。

 

 悟空の気が爆発的に弾けた。

 

「──うぉわッ!?」

 

「ど、どうしたヤムチャ!?」

 

 思わずひっくり返ってしまった。

 天津飯と餃子が慌てて俺に駆け寄ろうとしたが、二人も悟空の巨大な気の畝りを感じたのだろう。その方向を見ながら目を見開いた。

 

 驚くのも無理はないと思う。巨大な気と巨大な気が遠方で激突している。

 なんだよ…なんだよこれ…!

 

「あいつはよぉ……昔っから、ホント俺の言うことを聞かねんだよ…!! クソバカ野郎!!」

 

 なんで、なんでフリーザと戦ってんだよ!!?

 あれほど戦うなって念押ししてただろうが!!

 

 

 

 ───────────────────────────────

 

 

 

「──ッ!? べ、ベジータ! これは…」

 

「……間違いない。カカロットの野郎だ…!」

 

 なぜあいつがこの星に来てるんだ? いや、今はそれよりも…だ。

 くそ……なんなんだこの馬鹿げた戦闘力は…!! このオレどころかフリーザの野郎を完全に超えてやがる!

 おのれぇ、最下級戦士のくせに…! この超エリートであるベジータ様をいとも簡単に抜き去りやがった!

 

 相手はまず間違いなくフリーザだろう。その周りにザーボンの野郎の戦闘力を感じるが、カカロットとフリーザの巨大な戦闘力の前にはハエ同然だ。今は気にすることではない。

 ドドリアの戦闘力を感じないが……おそらく死んだんだろう。もはやどうでもいい。

 

「嘘だろ……最下級戦士が…!?」

 

「ちくしょうが…! どいつもこいつもこのベジータ様の先を行きやがってぇ…!」

 

 もっと…もっと戦闘力を高めなくては! 何人たりともこのオレを超えることは許さん!

 

 ………いや、待てよ? こいつは結構大きなチャンスになるんじゃないか?

 確かにカカロットの野郎の戦闘力は気にくわないが、それであのフリーザと潰し合ってくれるのならこちらにとっては儲け物だ。

 

 それにフリーザもフリーザで今はカカロットに手一杯なはず。この隙にドラゴンボールを奪い取ることができれば形勢を一気にこちら側へ引き込むことができる!

 クック……我ながらいい案だぜ…。

 

「ナッパァ!すぐに出るぞ!」

 

「嘘だろベジータ!? まさかあそこに行くわけじゃねえだろうなァ!?」

 

「そのまさかだ! 急げッ間に合わなくなっても知らんぞォォッ!!」

 

「く、くそ…! オレは危なくなったらすぐに退くぞ! 分かったな!?」

 

 ナッパを追随させ最高スピードでカカロットとフリーザの元へ向かう。

 貴様らに願いは渡さん! 願いを叶えるのは、このベジータ様だッ!!

 

 

 

 ───────────────────────────────

 

 

 

 あわわ……大変なことになっちまった…!

 

 オレの目の前では悟空とフリーザとか言う奴らの親玉が一進一退の凄まじい攻防を繰り広げている。いや、若干フリーザの方が有利か?

 

 どうしてこんな事態にまでなってしまったんだ。防ぎようはあったはずだ!

 やっとの思いで手に入れた巨大なドラゴンボールを掴む力が自然と強くなる。

 思えばこのドラゴンボールを手に入れるまでは何もかもが順調だった……。

 

 

 

 

 

 なんでもピッコロ大魔王そっくりの長老さんが言うには「知恵も勿論試験対象ではあるが、何度突っぱねられても決して荒事を起こそうとしなかったお主達の誠実さも、同じく試験対象だったのじゃよ」とかなんとか言って、今までの態度が嘘だったかのように快くボールをくれた。

 オレと悟飯は若干困惑したが、悟空は「おっ、くれるんか!」と喜んでボールを受け取っていた。色々と大きい奴だよ、お前は。

 

 そしてその帰り道のことだったんだ…オレたちの上空をフリーザ一味が悠々と飛び去って行ったのは。

 そりゃもう唖然としたよ。あんな化け物は見たことがなかった。ピッコロ大魔王やターレスが可愛く見えるくらいだ。

 オレと悟飯は蛇に睨まれたカエルのように動けなくなってしまった。当たり前だ……次元が違いすぎる。到底 手の届きようのない絶望だった。

 ふとドラゴンレーダーを確認してみると、奴らは既に2個のドラゴンボールを確保していて、次なるボールの元へと向かっていた。

 はは……やになっちゃうよな…。

 

 その後3人で話し合った結果、悟空と悟飯の強い要望により奴らの顔だけでも拝んでいこうってことになって……急いで移動を開始したんだ。

 今思えばこの時なんとしてでも止めるべきだったんだろうな…。今更ではあるけど。

 

 奴らのすぐ手前に到着し、岩山に身を潜めながら村の状況を隠れて見やる。

 そしてそのあまりの光景にオレたちは絶句するしかなかった。そこで繰り広げられていたのはただの虐殺だった。

 

 そこには確かな絶対悪が存在していたんだ。

 まずフリーザ一味は老いたナメック星人二人を殺した。ボールの在り処を吐かせようとしているのだろう。しかしそれでも口を割らない長老と子供二人に業を煮やした連中は、ついにその矛先を子供たちに向けた。とんでもないクズ野郎だ。

 

 しかしその直前にやって来た強そうなナメック星人たちがフリーザ一味を蹴散らし、さらには長老が一瞬の隙を突いて奴らのスカウターを破壊した。これには正直、助かったよ。

 そして強そうなナメック星人たちはオレたちとまではいかないが相当な使い手で、このまま奴らを倒しきるとまではいかなくても、多少のダメージを与えてくれるんじゃないかという希望まで生まれた。

 

 それは淡い希望だったけど……な。

 

 ピンク色の奴が動き出した瞬間、ナメック星人たちは瞬く間に殺されていった。

 それを見て諦めてしまった長老がドラゴンボールを渡したが、それでも奴らは長老と子供たちを殺すつもりだったらしい。

 奴らは庇う長老を尻目に片方の子供を殺し、長老は首をへし折られて死んだ。

 そして最後に残った子供に手をかけようとする。

 

 とんでもない……ゲスどもだ。どうしてあんなことを平然とやってのけることができるんだ。あんな奴らが存在していいはずがない。

 もう見ていられなかった。できることなら助けてあげたい。しかしそれは叶わないんだ。

 出て行けば間違いなく殺される。あのピンクの奴や、スカしたイケメン野郎はともかく、オレたちとフリーザとの間には明確な差があった。

 

 流石の悟空も自分を抑え込んでいる。

 昔の悟空なら構わず立ち向かっていっただろうが…今ここには自分の息子がいる。危険な目に会わせるわけにはいかないんだろう。

 いい判断だと思う。悟空は親になったんだ。

 

 だけど…悟飯は抑えきれなかった。

 悟空は怒りに身を任せようとしていた悟飯を抑えていたのだが、ついに悟飯がその拘束を脱出した。

 

「止めろォォォッッ!!」

 

「ヘゲェッ!?」

 

 そして悟飯渾身の蹴りがピンク色の奴の頭に突き刺さり……弾け飛んだ。

 文字通り、ピンク色の奴の頭は悟飯の蹴りによって消し飛んだのだ。

 あいつは怒るとヤバイってのは聞いてたけど、まさかここまでだったなんて。

 しかも悟飯は自分の肉体も、感情も制御できていない……まさに諸刃の剣だ。

 

 

「完全に怒ったぞ! お前たちなんか僕一人で倒してやるッ!!」

 

 悟飯はナメック星人の子供を後ろに庇いながら吼えた。紛れもない怒りがひしひしと伝わってくる。

 ピンク色の奴が殺されたことに連中は動揺していたが、すぐに悟飯へと凄まじい敵意が向けられた。フリーザが人差し指の照準を悟飯へ合わせようとしている。そうなるとオレも悟空もじっとしているわけにはいかなくなった。

 

 すぐさま飛びかかり、オレはスカしたイケメン野郎、悟空はフリーザへと蹴りを放つ。

 だがイケメン野郎は悟飯一人ではないと早々に目星をつけていたらしく、オレの攻撃をひらりとかわした。勘のいい奴だぜ……?

 

 一方のフリーザは、悟空の蹴りを掴んでいた。どんな反応速度だよ…! そしてそのまま悟空を先ほどまでオレたちが隠れていた岩山へと投げ飛ばした。

 岩山へと突き刺さった悟空を一瞥し、フリーザはオレたちを値踏みするように観察する。

 

 ヤバイぜこいつ…想像以上にヤバイ…!

 すぐに頭の中で策を練るが、撤退の他には何も思いつかなかった。

 奴らに勝つヴィジョンがまるで見えないのだ。悟飯はやっと自分がしでかしたことのマズさに顔を青ざめている。……後悔は後にしてくれ。

 

 退く以外に選択肢はない。

 ならばどうやって奴らから逃れる? 悟空と悟飯は分からないが、少なくともオレはどう足掻いてもあのフリーザからは逃げられそうにもない。

 ならば……オレが囮になるしかない…か?

 

 それが1番確実だ。太陽拳と気円斬で奴らを牽制しまくればなんとかなりそうではある。

 ……まず間違いなく生き残れないだろうなぁ。あっという間に殺されちまう。

 だけどこのままじゃオレどころか親友とその息子まで殺されちまう。悩んでる暇はない。

 

 ……オレ、結婚したかったなぁ…。

 未練たらたらではあるが、決心して叫んだ。

 

「悟空ッ!悟飯を連れて────」

 

「3倍界王拳ッッ!!」

 

 オレがかっこよく一世一代の囮を引き受けようとした、その時だ。

 崩れた岩山から悟空が勢いよく飛び出しフリーザを殴り抜けた。これにはフリーザも耐え切れず家々を突き破りながら吹っ飛んでいく。

 ご、悟空……お前どんだけ強くなったんだよ…?

 

「クリリンと悟飯はドラゴンボールとその子を持って宇宙船まで逃げてくれ! こいつらはオラが倒す!」

 

 た、確かに今の悟空ならフリーザを倒せるかもしれない。多分今の悟空なら3倍以上の界王拳も使えるだろうし……。

 

「わ、分かった! 勝算があるんだろ!?」

 

「へへ……まあな。悟飯を頼む!」

 

 悟空ならなんとかしてくれる。不思議とそういう気持ちになった。それにこのままここに残っても、足手まといだろうしさ。

 さあ、いざ逃げようと悟飯とナメック星人の子供の腕を掴んだ……その時だった。

 

 フリーザの気が倍に膨れ上がった。

 思わずその方向を振り返ってしまう。そこには……先ほどとは似つかないほどに筋骨隆々な体型となったフリーザの姿があった。

 

「いきなりやってくれるじゃないか…。こうなってしまっては今までのようには優しくないぞッ!!」

 

「へへ…きやがれ! 5倍界王拳ッ!」

 

 ……ご、悟空…。大丈夫…だよな?

 信じているぞ…?

 

「ザーボン、奴らが逃げるッ! 絶対に逃すんじゃないッ!!」

 

「は、はい!」

 

 クソ……野郎が追ってきた。

 なんとか宇宙船まで逃げ切れればラディッツがいる! そうすれば確実に勝つことができる! 絶対に逃げ切ってみせるぞ!

 


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