加速する太陽   作:サカマキまいまい

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ごめんなさい!!予約投稿ミスってました!


INTERVAL───under the moon

━━ドサッ

 

「天道くん!」

 

気絶した天道に駆け寄ろうとした日景はその腕を拘束された。必死に藻掻く日景だったが、その小柄な体は宙に浮き細い足が虚しく空気を蹴った。

 

「ふん。口は達者なようだが、まだ未熟なガキか。………A班はこのまま俺と残れ。B班は女の護送、C班は適合者の護送に回れ」

 

「「了解」」

 

 

ワームとの闘いが終わり、天道が気を失った後。日景は天道とは別の車に乗せられZECTの本部まで連れていかれようとしていた。

 

丁寧ではあるが有無を言わせず日景を車に乗せたトルーパーに日景が食ってかかる。

 

「待って下さい!私も天道くんと一緒に行きますっ」

 

座席から立ち上がろうとする彼女の肩を抑え、トルーパーが言う。

 

「気持ちは分かるが、君に出来ることは無い。彼の身柄は我々が責任を持って預かる」

 

マスクごしに曇る声にはしかし、真摯に相手に向き合う想いがあった。

 

日景は俯くと、ぐっと唇を噛んだ。

 

「私を……何処へ連れていくつもりですか?」

 

「君には特に怪我は無いようだから、このまま私達と来てもらおう。その後は……」

 

「いや、予定変更だ。彼女は私が連れていく」

 

「え?は、ハッ!了解!」

 

「こちらの車に乗ってください、日影嬢」

 

三島の冷たい手に掴まれた日景はびくりと体を震わせた。

 

 

「まさか、君があの『日影』の娘とは」

 

「日影火垂です。あの……母は」

 

「実に冷静だったよ。今回の件について知っているようだった。つまり──」

 

三島の更なる言葉を、日景は俯いたまま首を振って遮った。

 

「いえ、大丈夫です。母は、そういう人間ですから」

 

「そうか。ならば一つだけ忠告しておく。これからお前達が踏み込む領域に光などない」

 

その的はずれな忠告に思わず笑みが零れた。外は徐々に平穏を取り戻し、静かに冷たくなっていっていた。

 

 

 

そんなこと───とっくに知ってるよ

 

 

 

 

 

しんと静まりかえった廊下の冷たい板張りの上を歩く。

 

「只今戻りました」

白い襖が張られた戸に手を掛けると、中で身じろぎする音がした。

 

「入りなさい」

 

「はい。失礼します」

 

薄暗い部屋の主が座る前には、計っていたかのように日景が座る為の座布団が一枚置いてあった。

 

閉じていた目が開かれ、襖の間から部屋に忍び込む月の光が部屋の主を淡く照らした。

 

ほっそりとした体を気だるげに椅子に預け、腰まである艶やかな黒髪が床に無造作に広がっていた。

 

彼女の正面に日景が座るなり、彼女の母親にして日影家の当主である日景梅雨(ひかげつゆ)が口を開いた。

 

「それで?」

 

「それで、とはなんですかお母様?」

 

梅雨は咥えた煙管からゆらゆらと天井に昇る煙を見上げ、火垂は畳を見ていた。親子の視線が交わる事はなく、お互いの言葉のみが寒々しく部屋に響く。

 

「決まっているでしょう。《偽りの天》のことよ。アレは私達が影となるに相応しい王かしら?」

 

その問に火垂の瞳に怒りが顕になる。

 

「まさか………その為に私を見捨てたのですか?」

 

「見捨てた?まさか。分かっている事を聞かないで欲しいわ。私達は自分達に課せられた役目を果たしただけ」

 

目を見開いた火垂が黙って俯くのを、梅雨は褪めた目で見た。

 

(やっぱり駄目だったわね。ゼクターはこの子の下に訪れなかった。三天に与えられたゼクターは失われて久しい。その中で唯一ゼクターを掴んだのが彼とは皮肉だけれど。………成程、我らの旗本になるには十分。けれど、王には届かない)

 

溜息を吐いて立ち上がった梅雨はその顔を見ることなく部屋を後にし、その直前で火垂に言った。

 

「日影家当主として、貴女に三週間の謹慎を命じます。いい機会です。日影について学びなさい。そして誇りなさい、この家に生まれたことを」

 

「私達は影。太陽と対等にある者達なのですから」

 

 

 

その者達に光が届く事は無い。

 

 

 

 

 

「…………………………………」

 

麦わら帽子を目深に被り、ぎゅっと羽織っていたマントを手繰り寄せた。

 

「寒い………………」

 

それでも、プレイヤーの座るこの朽ちた鉄塔に吹き荒ぶ風は、容赦なく彼女から暖かさを奪っていった。

 

「大丈夫」

 

突然耳元でそう囁かれ、硬直した体が優しく抱き締められた。

 

「エンブレイスオール」

 

暗い夜から、光がふたりを包み込んだ。その光は強く輝くことはなく、けれど穏やかに、しっかりとプレイヤーを包み癒した。

 

(この心意技は…………)

 

「エンブレイサー………………」

 

プレイヤーは自分の肩に、こてんとエンブレイサーの顎が置かれたのが分かった。

 

「久しぶり」

「さっき会ったじゃん………」

「あんなのノーカンだよ」

 

どちからともなく、くすりと笑った。

 

「ごめん。あんなこと言って」

「ううん。いいの。結局貴女は救われたみたいだったから。………でも、またなんかあったみたい?」

「…………うん。楽じゃ、ないなあ」

 

ふっとした一瞬の沈黙の後、抱きしめられていた体が、ぐいと引っ張り上げられた。

 

「きゃあ!」

 

不安定な足場。吹きつける強い風。エンブレイサーとプレイヤー、二人の体がゆらゆらと揺れる。ちらりと遥か下の大地が見えた気がした。ぞわりと足から背中に悪寒が走った。

「大丈夫」

 

はっとエンブレイサーの顔を見る。そこには不思議な微笑みがあった。静かな微笑み。けれど、その微笑みはプレイヤーの心を激しく打った。

 

そうだ。そうだった。私は独りじゃない。何をくよくよ俯いていたんだろう。起きてしまった過去は変えられない。喪ったモノは還ってこない。けれど、変わらずあり続けるものが、新たに出会うものが、私にはある。あの人のおかげで。

 

気づけば、二人は微笑みあっていた。

 

「エンブレイサー」

 

掠れた声で彼女を呼ぶ。

 

「一つだけ、決めたことがあるんだ」

 

すうと息を吸った。

 

「何処にも居場所が無くて、加速世界(ここ)へやってきた子供たちの為に、レギオンを作る。何びとも侵せない聖域を作り上げる」

 

笑みを消したエンブレイサーが問い掛けてくる。

 

「それは、あの人と同じ願い。あの人の為に?」

 

その問に私は笑顔で言った。

 

「ううん。それが、私の本当にやりたいことだから!」

 

パアッとプレイヤーの体が輝いた。

 

「これは…………」

 

私達は独りじゃない。だから、1人では手に入らないものも、誰かと一緒なら掴めるって、そう信じてる。

 

だから、手を伸ばし続ける━━━━!

 

光が届かないなら、掴んで見せる!

 

 

プレイヤーの心の叫びが、その身から光となって溢れ、加速世界を照らした。

 

 

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