加速する太陽   作:サカマキまいまい

5 / 17
更新おくれてすみませんー。春休み満喫中です。先週は沖縄行ってー、今週は大阪行ってました。新学期はじまらなくていいです。ずっとはるやすみがいい。

あ、でもちゃんとプロット作ってきました。もう見切り発車とか言いません


FIRST IGNITION

バキンと世界が凍り、隣にいた日景の気配が消えた。

 

「来たか」

 

同時に天道の体を薄紅で銀の鎧が覆ってゆく。

 

青色の世界が見る間に砂に覆われ、バトルステージが形成された。

 

先程聞いた日景の解説によるとこのステージは恐らく、地属性だろう。

 

一般に砂漠と聞いて連想するような細かい砂で出来た砂砂漠のようだ。

 

デイが自らの足で地面を踏み締めると、鎧に覆われた足がずぶずぶと砂の中に埋まった。

 

(キャタピラもタイヤも使いにくいな。相手にも依るが、機動力は向こうが上か)

 

足音は柔らかい砂に消され聞き取りにくく、砂の混じった風で見通しは悪い。相手に距離を取らせないようにしようと天道は作戦を練っていく。

 

その時、砂風越しにちらりと腕を振りかぶるアバターを見つけた。

 

「っ!!」

 

とっさに転がりその場から離れると、天道の立っていた地面が爆発した。

 

(これは遠隔系の攻撃か?だとすれば少々やりづらいが)

 

冷静に思考しながら砂嵐が晴れるのを待つ。

 

(相手のレベルは1、名前はファンダンゴ・プッシャー。「押す者」か、そして遠隔系なら圧力……か?)

 

 

やがて見えてきたアバターは赤紫のずんぐりとした巨体のアバター。拳にあたる部分は巨大なスタンプになっている。関節がなく、腕は肩の部分でゴムの様に曲がる。

 

「ホォー、貴様中々やるな。初見でオレの攻撃を回避するとは。大抵は面食らった顔をしたまま潰されるんだが」

 

そう言いつつも余裕のポーズで構えるプッシャーに天道は鼻で笑って言った。

 

「フ。それは単に、俺が他とは一線を画す存在だというだけのこと」

 

プッシャーが天道にどのようなリアクションを期待したのかは定かではないが、少なくとも天道のキャラクターは知らなかっただろう。

 

「え?なんかすごいキャラですね」

素に戻ってドン引きした様子の相手と同様に、観戦アバターたちも引いている。

 

「うわー。凄いキャラなんだけど。初めて見るアバターだけど、初心者かな?」

 

「いや、初心者っていう風格じゃないんだが」

 

「『ヒヒイロカネ・デイ』なんて聞いたことないし、あのキャラならすぐ噂になるだろ。ってことはまだ始めたばっかじゃねえの?」

 

ざわめく観戦アバターを気にも留めず天道は言った。

 

「俺を知らないと言うのなら、この戦いを目に焼き付けておけ。さあ、掛かって来い」

 

ややイラッとした様子でプッシャーが返す。

 

「なら、お前も覚えておけよォ。俺は近接タイプに負けは無しってなァ!!」

 

3メートルほど距離が空いたまま、プッシャーが振りかぶった腕が左右になぎ払われる。

 

ゴオォ!!

 

砂塵が舞い、デイを容易く吹き飛ばした。デイの体力ゲージが僅かに減少する。

 

「ぐッ?!」

 

(やはり、プッシャーの攻撃は腕が起点か。成程、相手を近づけさせないことがやつのアビリティだと言うのなら、近接タイプとの相性はいいだろう。だが、)

 

柔らかい砂の上で受身を取り、沈みそうになる地面から素早く起き上がる。

 

(確かに俺に遠距離攻撃の類は無い。だが、太陽の輝きはあらゆる大地を照らす様に、攻撃が届かないなら届かせればよいだけのこと。)

 

プッシャーもまた、その体型通り素早く動ける訳ではなかった。接近したデイにのろのろとその鈍重な体を動かす。

 

しかし、デイの拳が届くあと1歩の所で、プッシャーが再び腕を持ち上げているのを見たデイは体を仰け反らせるが、衝撃が胸部に加わり、きりもみしながら吹き飛ぶ。

 

再びデイの体力ゲージが減少した。だが、デイが焦ることは無い。バイザーの下で冷静に分析を進めていく。

 

(やはり痛みや体力ゲージに反して異様な程吹き飛ぶ。加えて奴の名前……そうか、そういうことか)

 

高速で思考を進めていくデイの様子に気づくことなく、プッシャーがデイに近づく。

 

「やっぱりお前、メタルカラーか?ヒヒイロカネってのは知らないが、いくら固くたって攻撃出来なきゃ勝てないぜ?まあ、俺に近づけなきゃ、そもそも攻撃さえ不可能だがな」

 

ガハハと笑うプッシャーを気にせず、デイはダッシュして近付き、プッシャーが腕を上げた直後に素早く身を翻したが、やはり攻撃が掠り、後退させられてしまう。

 

「まあ、近距離タイプのアバターはプッシャーに相性が悪いよな」

 

「そもそも攻撃ができないんですものね」

 

観戦アバターの多くはデイの劣勢を仕方ないものとするが、中には軽く野次を飛ばす者もいる。

 

「ハッ!おいおい、あれだけ大口叩いといて結局何も出来ないのかよ!」

 

周りのアバター達が非難の視線を向ける。

 

 

 

しかしその声に対し、デイは黙って立ち上がると、右手で乾いた空に浮かぶ黄色い太陽を指さした。

 

「黙って見ておけ。俺という太陽が輝く時を」

 

青いバイザーに隠れて、その表情を窺うことは出来ない。

 

しかし、その声音は聞いている者の脳裏に、彼が不敵に笑う姿を幻視させた。

 

 

 

 

◆◆◆

 

一方でプッシャーも又、何時もとは違った焦燥感めいたものを感じていた。

 

彼はバーストリンカーになって4ヶ月ほどだが、近接タイプを相手に負け無しとは嘘では無い。自らが成し遂げてきた実績が彼に自身を与え、ここ最近のコンディションはピークに達していると言っていい。

 

だが彼は焦っていた。初めはこれが焦りだとは気づかなかった。

 

しかし、例えばデイとの距離を詰めたとき。いつものプッシャーならば、攻撃が出来ないことに焦れた相手が、火中に飛び込むのを待っただろう。

 

この戦いに於けるプッシャーは常に、どこか冷静さを欠いていた。

 

「なんか今日のプッシャー、調子悪くない?いつもなら相手がもっと吹き飛ぶし、全然近づけさせないと思うんだけど」

 

そんな観戦アバター達が話す声が、プッシャーの耳に入る。

 

(ちげぇ、そうじゃねえ。俺が落ち着いていないんじゃない、コイツが俺を落ち着かせないんだ!)

 

錯乱した思考のまま振るった腕ぐ轟音を立てる。

 

 

ドゴォ!!

 

 

 

そして遂に、大振りなプッシャーの一撃をデイが避け、プッシャーの巨体に一撃を叩き込んだ。

 

 

 

◆◆◆

 

この戦いにおいて天道が行っていたことは、何も相手の戦力分析だけではない。

 

(成程な、こいつの攻撃の正体は斥力。腕にあるスタンプから発せられる力が、敵を一定の距離まで吹き飛ばすのか。こいつの様なアバターこそが『遠距離の赤』の典型という訳だ。)

 

(自分に近づく他人を力で遠ざける。自身のトラウマから芽生える、それがバーストリンカーの持つ能力であり、ひいてはデュエルアバターそのものという事か)

 

敢えて最小限に動き、プッシャーの攻撃を受けることで、その攻撃範囲を割り出しながら推測してゆく。

 

(つまり、こいつは深層心理において他人に恐怖を感じ、遠ざけようとしている。ならば俺がすることは出来る限り奴に接近し、心理的に圧迫すること!)

 

プッシャーが腕を降る度に、デイは後方に吹きとばされる。普通ならそこで攻撃を受けないよう距離を取るだろう。

しかし、敢えてデイは前進しプッシャーに対しプレッシャーを与え続けた。

 

相手の様子を伺うと言う行為は、後半での戦闘を優位に運び得るものだが、ともすれば相手の攻撃に後手に回ってしまう。故にデイは心理的に相手を追い詰めることで、このデュエルを優位に立ち回ろうとした。

 

そして結果として目論見通りになった訳だ。

 

焦りはミスを生み、それが更なる失敗に繋がる。知らずデイの術中に嵌ったプッシャーは完全にデイに呑まれていた。

 

ブゥン!!

 

大振りな一撃はデイにやすやすと躱され、重い一撃がプッシャーの腹に与えられる。

 

「ぐっ!」

 

よろめき蹲るプッシャーにゆっくりと近づいていくデイ。己の敗北を悟ったプッシャーが自棄になりデイに向かって突っ込んでいく。

 

「なんで、なんで当たらねぇんだよぉ!!」

 

いくら動きが遅いとはいえ、その巨体がぶつかれば凄まじいダメージとなるだろう。だが、デイは泰然としたまま言った。

 

「さっきも言っただろう。俺とお前では格が違う。ただそれだけのことだ」

 

 

砂嵐が吹き荒ぶ中、拳が巨体に打ち込まれる音がドォンと響いた。

 

 

◆◆◆

 

「なんかすごいキャラだったねー」

「まあ、実際面白かったし俺はコイツの試合を観戦登録しとくわ」

「ヒヒイロカネ・デイ、ね。おい、お前何時ぐらいからバーストリンカーになったわけ?」

 

観戦アバター達がしゃべり、デイに声をかけた。問われたデイは尋ねたアバターに彼の青いバイザーを向け、右手を天に掲げた。

 

1陣の風が辺りを舞っていた砂を攫ってゆき、乾き澄んだ世界でオレンジ色の太陽が強く輝く。

 

 

 

「お前、ではない。覚えておくがいい、俺は太陽。天の道を往き総てを司る男だ」

 

そう言い残し、唖然とする周囲を置き去りに、デイは加速世界から消えていった。

 

 

 

引き伸ばされていた音が元に戻り、世界が鮮やかになる。ふう、と息を吐いた時、天道は殺気を感じた。

 

くいっと曲げた頭の横をハリセンが通過していく。さらに後ろにずらすと今度は眼前を通過していった。迫り来るハリセンを五度ほど躱したところで、溜息をつき諦めた。

 

スパァン!と軽快な音が喫茶店に響く。

 

「いきなり何をする」

 

あくまでも冷静に抗議した天道に反し、向かいの人物ー日景火垂はひどく興奮した様子だった。

 

「なにをしとんじゃア、おのれはァ!」

 

「落ち着け。キャラがぶれているぞ」

 

「誰のせいだと!?おもってるのっ!天の道を……ってリアル割れしたらどーすんのさっ!!」

 

ハリセンをビッと天道に突きつける日景。だがそれでも落ち着いた様子でコーヒーを口に含む天道を見て、ため息をついて椅子に座り直した。

 

尚、これまでの会話は直結による念話によるものなので、傍から見れば二人はひどく滑稽に見えただろう。事実、向かいのサラリーマンや中学生達がちらちらと二人を見ていた。

 

改めて日景が口を開く。(念話を行っているので、もちろん比喩的な意味で)

 

「キミはブレインバーストにおけるリアル割れの危険性を理解していないみたいだね」

 

「それはプライバシーの問題、ということか?」

 

そこで日景は真剣な顔つきをして言った。

 

「違うよ。身の安全という問題さ。以前も言ったけどブレインバーストはゲームであって、ゲームでない。その中毒性からブレインバーストに必要なポイントはどんな手段を使ってでも欲しいという人間は山ほどいるんだよ。それこそバーストリンカーを現実世界でナイフとかで脅してポイントを得ようなんてくらいにね」

 

それを聞いて天道は冷めた目を窓の外へと向けた。

 

「下らないな。プライドの欠片もない」

 

「それだけ切羽詰まっているってことさ。今の加速世界がね。だからこそ注意しなければ。『窮鼠猫を噛む』って言う様に、そういった連中は思いがけない手段に出るからね。相手に道徳を説くより先ず、悪徳を行わせないようにしていくべきだと思うよ」

 

「確かに、そうだな」

 

頷いた天道を見てほっとする日景に、天道は続けて言った。

 

「だがこれだけは譲れないな。天の道とは俺の生き様。それを誇らずして俺は語れない」

 

「……そんなにプライドが大事かい?」

 

呆れた様に尋ねる日景に天道は頷く。

 

「ああ。お婆ちゃんも言っていた。知能があるから人は人であれるのではない。誇りが人を人足らしめるのだ、と。己を誇れない人生など詰まらない」

 

「………そう。それがキミにとって譲れないものだと言うのなら、私が口出ししていいことじゃないな」

 

天道の言葉をゆっくりと噛み締めるように聞き、日景は妥協した。

 

「まあ、私達に限ってはリアル割れの危険は殆ど無いんだけどね」

 

「それはバーストリンカーになる条件とやらが関わってくるのか?」

 

日景は感心したように目を開き、そして天道にウィンクした。

 

「流石、正解だよ。本来、バーストリンカーになるためには現在15歳以下という制限がある。何故か分かるかい?」

 

ふむ、と顎に手を当て暫く考えた天道が口を開く。

 

「そうか、ニューロリンカーが一般に販売された頃か」

 

「せいかい。だからこそ、現在高校生である私達がバーストリンカーだなんて誰も思わないのさ。とはいえ来年からは最年長のバーストリンカーが高校生になるから、油断は出来なくなるんだけどね」

 

なるほど、と頷いた天道はさらに疑問を日景に投げ掛けた。

 

「この際だから聞いておくが、お前は家の方にどこまで関わっている?」

 

いつになく真剣味を帯びた天道の瞳に、日景はやや緊張しながら答える。

 

「いや、殆ど関わっていないよ。知っているのは四天の歴史と、記載されない百人(ビフォア・ハンズ)のことくらいだよ」

 

そして、躊躇いながらそっと最後に告げる。

 

「後は………落日の日曜日」

 

その言葉に、しかし日景覚悟していたのとは裏腹に、天道はマグカップをソーサーに戻しただけだった。

 

「そうか」

 

上目遣いで天道の様子を伺う日景に、天道は特に反応するでもなく言った。

 

「お前がどう思っていたかは知らないが、傷を庇う子犬の様に、一々吠える俺ではない。気にするなとは言わんが、お前が四天と分かった時からお互いにある程度相手を理解していたことはわかっている」

 

いつもよりやや早口で言った天道は、もう1度コーヒーを飲むと言った。

 

「それに俺は何れはZECTに入る。その時にお前と親しければ何かとやりやすい」

 

冗談めかして言ったその言葉に日景も笑顔になる。

 

「なにそれ、私はキミと会社を結ぶ紐か何かかい?」

 

「さあな。とにかく、これから宜しく頼む」

 

そう言って差し出した天道の手を日景は笑顔で握った。

 

 

 

 

 

 

 

何千年も眠り続けていたソレは何かに照らされたような気がしてふと目を覚ました。実体を持てないこの空間で、眼下には夜空よりも美しく煌めく星星がある。

 

生物として寿命を遥かに超えた月日を生きたソレが、砂のようにちっぽけな光のひとつに意識を集中させることは本来ならば難しいだろう。

 

だがソレはその砂粒のひとつの輝きに何故か目を奪われた。しかしそれも一瞬のこと。再び襲ってきた微睡みに抵抗することなく、流される。

 

ソレが最後に思ったのは、無いはずの胸を襲う痛みに対する疑問だった。

 

そうして周りを異形に守られながら、神は静かに眠り始める。いつの日か己を目覚めさせる者の誕生を待ちわびながら。




カブト見直してるんですが、初登場の矢車さんめっちゃ爽やかっすね。それが噛ませとなり、やさぐるまさんになるだなんて…………
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。