非ログイン状態でも感想が書けるようにしました。これから魔改造化が進んでいきますので、これは原作を貶めている、とか余りにもご都合主義が過ぎる、とか感じられましたら、遠慮なく(出来れば優しく)指摘して頂けるとありがたいです。
対決するひとりのアバターの体力ゲージがゼロになり、対戦が終了した。静寂を保っていた観戦アバターたちが一気に騒がしくなる。
「す、すげえ。マジでアイツすげえよ。これで十連勝目だぞ!」
「しかも今まで確認された試合総てで無敗だろ。新記録叩き出すんじゃねーの」
今現在、加速世界で注目の的となっている、とあるバーストリンカーの観戦者として参加しているバーストリンカー達が興奮した様子で言い合っていた。
彼らの視線は、青く澄んだ氷の上で悠然と佇み、天に右手を掲げているデュエルアバターに集中していた。
傍から見れば完全に浮かれている様に見え、その鼻につく態度を嫌う人間も多いが、彼女━━日景火垂はあの態度が常であることをよく知っている。浮かれているだけだったらどんなに楽だったろうなと思うくらいには。
天道が加速世界で目立つだろうとは思っていたが、まさかここまでとは思わなった。唯でさえトップランカー達が、伝説のメタルカラーとしてデイを注目しているのに、あのキャラなのだからその噂は天井上りだろう。
純色の王達が率いるレギオンがまだ絶対的では無かった頃からバーストリンカーとして活動している日景の知名度は元から高かったが、最近の彼女の注目のされ方は「あのヒヒイロカネ・デイの親ってどんなだろう?」というものだ。それが彼女としては少し複雑だった。
「彼の対戦を観戦するバーストリンカーも随分増えたわね。ねえ、プレイヤー。彼が貴女の子なんでしょ?」
「ア、アハハ。うん。そうだよ」
顔馴染みのデュエルアバターがまた日景、プレイヤーに声を掛けた。嘗ては彼女のレギオンにプレイヤーを誘ったことがある位の仲であり、プレイヤーのそれ程多くは無い加速世界での友人の一人と言っても良いかもしれない。
何を言われるのだろうと思わず見構えたプレイヤーの予想に対して、彼女は優しく微笑んだだけだった。
「よかった。やっと信頼出来る人を見つけられたんだね」
「え?」
そうしてプレイヤーの頭を麦わら帽子越しに撫でた。
「貴女の親がいなくなってしまってから、貴女はとても苦しそうだったわ。でも、もう一度夢を追いかけるのでしょう?」
「……うん。あの人の代わりに、あの夢を叶えようと思うんだ」
「そう。貴女ならきっと大丈夫よ」
「ごめんね。わざわざ誘ってくれたのに」
「いえ、貴女が進む道は貴女だけのものだもの。私があれこれ言うことじゃないわ」
何故か少し複雑そうな顔をして、彼女はプレイヤーを抱き締めた。
その肉体は所詮
何故か体が熱くなった。
ふと思う。
確かに
決して争いだけの世界じゃない。乾ききった砂だらけの世界で、たった1粒でも輝くものが確かにある。
だから私は、例え借り物で、仮ものの願いでも、その優しさを無くしたくなくて、今も貴女の願いを追い続けているんだ。
そう思った。
リー、リー、と草むらに潜む虫達が落ち着いた演奏を奏で、暗く冷たい夜に優しい雰囲気を漂わせる。
その中を足取り軽く歩いてゆく人影がある。鼻歌を歌いながら夜道を歩いていたその影の足取りが道半ばでぴたりと止まった。虫達も演奏を止め、辺りがしんと静まる。
歩みが止まったのは彼女の行く手を遮る者がいたから。
辺りが静かになったのは恐怖で音を発せられなくなったから。
「……なあ、不公平だと思わないか?なんでお前達ばかりが持っているんだ?なんで俺は何も無いんだ?俺は好きでこうなった訳じゃないのに。だから、さ。俺にくれよ、お前の総てを」
遮った異形がシューシューと擦過音の混じった声をあげた。
闇夜にそれの肉が溶ける音がぐじゅぐじゅと生々しく響いた。
◆◆◆
あらゆる精密機器が詰め込まれ、床を大量のコードが覆っている部屋で、機械の一つが突如アラートを発した。
「所長!大変です!ぜクターの信号波を確認しました!」
警報を発した機器の前に若く、目の下に隈が出来た男が駆け寄り、モニターを見て貫禄のあるでっぷりとした男に報告した。
「とうとうか!どの機体だ?ザビーか?」
若い男の報告に興奮した様子で、重い体を揺らしながら同じくモニターに駆け寄る。
キャッチした電波の周波数がグラフとして表示されていくモニターに、視線が釘付けになりながら、若い男が答える。
「いえ、それがどれとも一致しません。………いえ、これは?!発信地は第三実験室!試作機0号が起動します!」
その予想だにしない答えに驚く男。
「バカな!あれがどれだけ古い型だと思っている!……とにかくアレが保管されている部屋の映像を出せ!」
「一番モニターに映像出ます!」
そこに映されたのは黒いカブトムシ型の小型の機械がレンズを赤く輝かせ、計測器のケーブルを引きちぎって、今まさに部屋から出ていこうとする姿だった。
「なっ?!本当に起動したのか!なんで?!」
「とにかく不味いぞ、これ以上ぜクターは失われられん!今すぐ部屋にロックを掛けろ!」
男の指示に、遠隔操作によってぜクターが保管されていた部屋の扉、窓に、何重にもロックが掛けられる。
ガシャンガシャンガシャン!!
密閉された部屋の中を戸惑う様に旋回するぜクターを見て、研究者達がほっと胸をなでおろしたその時、ぜクターが壁に体当りし、そのツノで部屋の壁に大穴を開けた。
それをモニター越しに見ていた研究者達が口をあんぐりと開けている中、ぜクターは悠然と外へと飛び出して行った。
「し、信じられん。対ぜクター用の鋼鉄製の壁だぞ……」
「対象、ロストしました」
「あ、ああああああ。ポンコツとは言え、最後の1機が。上になんて報告すればいいんだ………」
どうやら彼らの目の下にある隈が取れるのは随分先のことになりそうである。
◆◆◆
3時限目の途中で、保健室から出た天道は俯いたままこちらに駆けてくる日景を見つけた。
このままではぶつかってしまうだろうが、敢えて天道はその場を動かず、自分にぶつかってよろめいた日景を掴んだ。
「日景か。下を向いて走るなどお前らしくもない。生徒の代表ならばもっとそれらしく振舞え。お婆ちゃんも言っていたぞ、頂点に立つものはその下に入るもののためにも常に誇らしくあれ、とな」
何時もであれば、何らかのツッコミが入るだろうが日景は肩を震わせ、天道を恐る恐る見上げただけだった。
「どうした?何かあったのか?」
「あ、うん、いや。少し気分が悪くなって。君こそなんでこんな所にいるのさ?」
「クラスメイトが家庭科の調理中に落ちてきたボウルで頭を打ってな。軽く脳震盪を起こした恐れもあるから付き添いに来てやったという訳だ」
「それでなんで君が付き添いに来るのさ?」
日景のその問に天道はフッと笑った。
「単純な話だ。頭を打った女性をここまで運べるほどの力があり、女性を丁寧に扱える人材が俺を置いて他に無かっただけのこと。うちの男どもは女性の扱いがなってないからな」
やれやれとややオーバーに肩を竦める天道を見て、漸く日景はぎこちなく笑った。
「なにそれ。私のことはあんまり丁寧に扱っていないみたいだったけど?」
「野に逞しく生える花は、余計な手出しはせずに見守るもの。だが」
そこで天道は不敵な笑みを優しい微笑みに変えた。
「まあ、萎れかけの花には水をやらんでもないぞ」
そうして日景に背を向け、言った。
「疲れた時は立ち止まって見るのも悪くない。今まで見えなかったものが見えるからな」
天道からはもう、日景の表情は分からない。
だがガラッと保健室のドアが開く音がして、いなくなったと思った日景の声が背後から聞こえた。
「………ねえ、それじゃあ放課後に生徒会室に来てくれる?出来れば直結で、君に話したいことがあるんだ」
その声に振り向いた天道が見たのは、日景ではなく保健室から出てくる小春だった。
「あれ?待っててくれたんですか、天道君?」
「……日景を見なかったか?」
小春の質問に答えず、逆に尋ねた天道を不思議そうに見て小春が答えた。
「ええ、見ましたけど。保健室に入ってきましたよ。少し苦しそうでした。何かあったんですか?」
「いや、なんでもない」
そう言いながらも尚、閉じられた保健室の扉を見続ける天道に、小春は少し拗ねたような顔をした。
「なんか最近の天道君はずっと生徒会長さんのことを目で追ってないですか?」
その声に我に帰った天道は小春の顔を見て苦笑する。
「そうか?」
「ええ、そうです。彼女のことが気になって仕方ないって感じです。………確かに彼女を天道君に紹介したのは私ですけど、もう少し私の事を気にかけても良いんじゃないですか?」
珍しく愚痴を言う小春のつややかな髪を撫で、天道は両手をあげた。
「そうだな。今度近くの喫茶店でケーキでも奢ろう」
それで勘弁してくれ、と言外に告げる天道に小春はくすりと笑った。
「残念ですが、物で私は釣られませんよ………なんて冗談です。誰かが苦しそうにしていたら心配になるのは当たり前ですよね。生徒会長さんには早く元気になってもらって、また皆を振り回しながら進んで行って欲しいです」
そう言って微笑む小春に天道も頷いた。
「ああ、そうだな。……それより頭は大丈夫だったか?」
「その言い方はあらぬ誤解を生みそうですが、ええ少し瘤になっただけでした。わざわざ来てくれてありがとうございます」
「そうか、大事でなくて良かった。だが、平衡感覚に異常があると大変だな。帰りも連れて帰ってやる」
その言葉に小春は顔を一気に真っ赤にさせると、あわあわと首と両手を左右に振った。
「い、いえいえ。もうだいじょうぶですっ!私は天道君と違って目立つのは無理なので!」
「遠慮することは無い。お前にはもっと構ってやろうと、ついさっき決めたのでな。決めたことをすぐに投げ出すなど男が廃る」
「あー!ごめんなさいー」
しかし小春とじゃれ合いながらも、天道の頭の中ではずっと日景の声が聞こえていた。
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製造コード1089がプログラム[世界樹の種]にアクセスを求めています
認証クリア
製造コード1089からレポートが提出されました。
レポートを解凍します
レポートを展開中…
加速暦bc20086において
外見が試作機ゼロ号に酷似している。スペックはオリジナルより遥かに劣っているが、容姿は偶然の一致を遥かに超えた類似性を示す。尚、ヒヒイロカネとは太古に失われた技法で作られるとされる伝説の金属である。このアバターのボディがどのような性質を持つかは不明。しかし、戦闘データから興味深い事実を把握。後述のレポートを参照。以下、スペック提示
Name:Hihiirokane Day
Color:metal
Special:Unknown
危険度認定………
レベルF
情報が少なすぎる。今後も調査を継続。
接続を切断します……
◆◆◆
放課後。すべての授業を終え、天道は生徒会室の扉の前に立っていた。そこでやや逡巡し、やがて扉を開いた。
「や、待っていたよ。来てくれてありがとう」
天道が口を開く前に、既に天道を待ち構えていた日景が言った。そうしてずいっと天道にニューロリンカー同士を繋ぐケーブルを差し出した。
「待て。ここなら俺達以外人は居ないだろう。わざわざ直結をする理由がどこにある?」
距離を置いた天道を見て、日景はいつになく殊勝な態度で頭を下げた。
「ごめん。でも上手く言葉じゃいえなくて。ダメ、かな?」
「……分かった」
了承し、ぐいっと日景に首を向けた。
だが、それは日景の媚びた目に流された訳ではなく、その目にある淀んだ光に気づいたからだった。
故に、
「ありがとう」
そうにっこりと嗤った日景がケーブルを天道のニューロリンカーに突き刺し、
「バーストリンク」
そう言いつつ、口がイタダキマスと動き、
ゴオオオォ!!
いつの間にか世界が変貌し、
「スローレイヴン」
プレイヤーがデイに突きつけた杖から生まれた光り輝く鴉が、デイを襲った時。
天道は予測していた中でも最悪の事態が起きていることを悟った。
日景が天道に直結対戦を挑んだ意図は明白。即ち、天道の持つポイントを全て奪い、加速世界から退場させ、
━━━天道の持つ日景に関するあらゆる記憶を奪うこと。
圧倒的なレベル差を前に、デイの体力ゲージは一気に五割を切った。荒野をデイの重い体がごろごろと転がる。
それでも欠けることなくあり続ける桜色の鎧を身に纏い、デイは煙を上げながら地面からゆっくりと立ち上がった。
「ふうん。まだ立ち上がるんだ?今のでもう分かったでしょうに。君はこれから全てを奪われるんだよ?」
「………否、例え絶望的な戦いでも、奪われる訳にはいかない。俺は知らなければならない。真実というものを」
こうして天道の人生の中で最も絶望的な戦いが幕を開けた。
ちゃんと最初から最後までプロット作ったんですがー。魔改造すぎて嫌になる人も出てくるかもしれません。二つの作品を決して汚すことなく、この二次作品を終わらせたいと思います。
P.s.
旧式とか試作機とかプロトタイプっていいよね(グッと拳を握りしめながら)