加速する太陽   作:サカマキまいまい

7 / 17
2章への移行に当たり、以下のことを評価して欲しいです。

・戦闘描写は分かりやすいか

・心理描写が読者をおいてけぼりにしていないか

・場面転換が分かりにくくはないか

他にも思ったことがあればどんどん書いちゃってください。ぼくの励みになります。これからも宜しくお願いします


BEFORE DAWN

ガァァ!!

 

赤い鴉がデイにぶつかると鴉は炎となり、デイの全身を包んだ。

あっという間に体力ゲージがゼロとなり、デイのデュエルアバターが加速世界から退場する。幻想の世界が砕け散り、五感がその機能を取り戻したのもつかの間のこと。

Here comes a new Challenger!!

一瞬だけ現実世界に戻った天道は、再び仮想の世界へと身を落とす。

 

「はあっ、はあっ」

 

もう何度、地面を無様に転がったことだろう。レベルが上の相手と勝利し続けていたことで、潤沢に持っていたポイントはとうとう、底が見えつつある。

勝利の道筋さえ見えず、だが、天道は決して屈しない。なぜならここでポイントを全損してしまえば、天道が経験してきた加速世界に関するあらゆる記憶は永遠に失われてしまうからだ。

 

━━加速世界にはある残酷なルールがあってね。

 

かつて天道が日景に、ポイントを全損したらどうなるか尋ねた時、彼女は寂しそうに答えた。

 

━━加速世界のことは誰にも知られてはならない。だから機密保持の為に、ポイントが全損した人間は二度とブレインバーストをインストール出来なくなるだけでなく、加速世界に関するあらゆる記憶を失ってしまうんだ。加速世界でのポイントとは「命」そのもの。全損は正しく「死」を意味するんだよ。

 

 

天道が持っている、日景との記憶には総て加速世界が関わっている。故に、天道が加速世界から退場すれば、彼女と築いてきた関係は消失してしまうだろう。

 

それだけはさせない。もう二度と、目の前で零れていく涙を掴めないということが無いように、ただそれだけを心に決めて生きてきたのだから。「本物」の日景に会うまで、俺は決して倒れない。

 

「……やはりお前は『ワーム』、か」

 

膝をつき、拳を握りしめながら言う。

 

「えー、何いってんのさ?君は私が偽物だって言いたいのかい?残念だけど、本物だよ。私はね、初めからポイントが欲しかっただけだよ。君は傷つくかもしれないけど、傷ついたその記憶だって忘れるんだから、別に構わないだろう?」

 

自身の勝利が揺るがないことに慢心したプレイヤーは、攻撃の手を止め、デイにからかうように言った。

 

「いや、確かにお前の容姿は日景そのものだし、記憶すらコピー出来ているようだが、人の心は、魂は、常に一つ。人の持つ最も神聖な部分まではコピー出来なかったようだな」

 

そう言ってデイがプレイヤーを指さした。

 

「はあ?…………ぐぅっ?!」

 

デイに指さされたプレイヤーがまじまじと己のアバターを見た時、彼女に激痛が走った。

 

ジュージュー

 

プレイヤーのボディが内部から溶けてゆく。表面を覆う赤と黄色の中間色をした装甲が剥がれ落ち、さらに内部の肉が黒化し、ドロドロと溶け落ちた。

 

纏っていた衣類は黒く焦げ、ローブとなり、醜悪な白骨化したデュエルアバターを覆い隠した。

 

杖をつき、黒いローブの隙間から見える不気味に輝く白い骨。正しく亡者といった風貌のアバターとなった日景を天道はただじっと見つめた。

 

最後に、プレイヤーの足元に溜まった肉の泥が触手のようにうねうねとのたうち回りながら、骨の隙間を埋めた。

 

デイがちらりと対戦アバターの名前を確認すると、ぺシモン・プレイヤーとあった文字が文字化けし、イヴォリー・ハーヴェスターとなった。

 

「………それがお前の心か」

 

ぽつりと呟いたデイがまるで眼中に無いように、自身の体を確かめていたプレイヤー、否、ハーヴェスターは狂ったように高笑いを始めた。

 

「クッ、あは、アハハハハ!!なんだよ!なんだよこれぇ!結局俺はなんにもないってか?ひぃあはあはは………。最高だ!最っ高にクソ胸糞悪いぜぇ!!」

 

やがてピタリと笑うのを止め、ぐるりとロボットじみた動きでデイに振り向いた。

 

「なんだよ……なんでだまっている?気持ち悪いかぁ?哀れんでいるのかぁ?」

 

がらんどうの筈の眼窩で、蛆のようにのたうつ黒い肉をデイは見た。

 

「お前の事などどうでもいい。………日景はどこだ?」

 

「あっハァ!さて、どこだろうな?俺に勝ったら、教えてやらんでもないぜ?」

 

首をかくんと曲げ、デイを挑発するハーヴェスターを、曲げていた膝をバネのように勢いよく伸ばし、タイヤで加速したデイが前に移動した重心の勢いを利用して殴りつけた。

 

ガッシャァァン!!

 

派手な音をたててバラバラになったハーヴェスターを見て、デイはバイザーの中で眉を潜める。

 

(おかしい。手応えが無さ過ぎる。………まさか!)

 

案の定、ハーヴェスターの体力ゲージは1ミリも減少していなかった。

 

骨の山に向き直ったデイは、黒い触手じみた肉がどくん、どくんと脈打ちながら骨にくっつき、アバターを組み立て直しているのを見た。

 

(まさか。こいつのアビリティは…………)

 

再生されたハーヴェスターが顎をがくんと落とし、骨が擦れ合うような声を発した。

 

「あーあ。ビックリしたー。つーか、俺も今気づいたんだけどよォ。俺のアビリティが開花したみたいだわ。その身に肉はなく(ザ・ヴォイド)

 

━━━物理攻撃を完全に無効化、だってさ。

 

 

◆◆◆

 

ワーム。それは西暦1960年に地球に飛来してきた地球外生命体の総称である。

 

ソレは二つの特徴を有している。

 

ひとつは自身の本当の姿とは別に、人間のあらゆるものをコピーし、コピーした人間に擬態することが出来るという特徴だ。あらゆるものとは、容姿、そして記憶すらも。

 

そして、もう一つの特徴によって、人類は長い間、彼らの存在に気づく事が出来なかった。

 

ソレの存在に人類が初めて気づいたのは、ワームが飛来したずっと後。天道、日影、日下部、日上が合同で立ち上げた会社、ZECTが新型メディアツールの開発実験を行っていた時だ。

 

デジタル化が進み、膨大な情報量が日常生活に流れ込んでくる現代社会に対応するため、仮想空間で超加速させた思考でそれらを処理してゆく。

 

「………夢のような技術だった。当時会社にいた全ての人間が魅了された」

 

床に柔らかい絨毯が敷き詰められ、壁には絵画が幾つか掛けられている。如何にも社長室といった風の部屋で、初老の男が窓から眼下を流れる雲を見つめる。

 

「ですが、その実験の最中に貴方方は出会った」

 

初老の男の背後に立つ、眼鏡を掛けた男が言った。その言葉に男は何も答えず眼鏡の男に、鍵の掛かった引き出しからファイルを取り出し、渡した。

 

「……このご時世に紙媒体ですか」

 

その言葉に初老の男は笑って言った。

 

「この歳になると簡単で便利なものより、存在をしっかりと感じられる不便で確固としたものが好ましく感じる。……老人の戯言と思ってくれ」

 

「月面基地を造り、次世代デバイスの開発に携わり、仮想世界の発展を加速させている会社の会長とは思えない発言ですね」

 

そう言った眼鏡の男は、渡されたファイルを開いた。

 

 

◆◆◆

 

四天の歴史、及びその考察

 

1960年 渋谷に隕石落下。死者300人、怪我人2000人以上。一時は行方不明者1000人を超えるとされたが、倒壊したビルとビルの隙間から発見される。以後隕石落下地点をエリアZと呼称する。

 

1964年 天道、日上、日下部、日影の四天がポスト情報化社会に適合することを目的とした会社ZECTを設立する。「より健全で便利な社会へ」をモットーとし、新型メディアツール、人工衛星、月面基地などを開発。世界的な大企業となる。

 

2017年 肥大化してゆく情報社会に対応すべく、次世代デバイスの開発に乗り出す。その過程において初めてワームの存在を確認する。

 

2025年 一般向けにニューロリンカーを発売する前段階として、ZECTの職員及び、その子供にニューロリンカー接続テストを行う。以後、この試験を受けた子供達100人を記載されない百人(ビフォア・ハンズ)と呼称する。この前後で天道が四天から降格。明確な時期は不明。

 

2030年 ZECTの調査により、前10年の行方不明者事件の少なくとも2000件にワームが関与していると報告される。衛星やロケット打ち上げ技術を利用し、軍事関連の分野に乗り出す。世論の批判を押し切り、日本、アメリカの軍事企業を買収。よりスマートな警備としてゼクトルーパーズを開発。

 

2031年 エリアZにて地質調査に乗り出していたZECTの研究員及び、その警護に当たっていたトルーパーズが全滅。この事件は幹部のみが知るに留まる。

 

2033年 穏健派ワームがZECTに接触。ワームの技術と引換に彼らの安全の保護を求めていた。賛成多数で協定が結ばれる。ワームの穏健派で構成される評議会が設立。マスクドライダー計画、始動。

 

 

2036年 落日の日曜日。過激派ワームが三天が一つ、日下部家を襲撃。ワームとの協定に反対していた日下部総一、その妻日下部さとみが母屋から焼死体で見つかる。娘である日下部日和は行方不明に。瓦礫の中から息子である日下部総司が発見される。ZECTはワームからの襲撃を恐れ、天道家に日下部総司を養子にとるよう要請。天道家の当主である天道鈴が了承し、養子となる。

この事件の前後でワームと共同開発していたぜクターのうち三機が行方不明に。

 

 

 

「………君は、セイタカアワダチソウを知っているかね?」

 

黙ってファイルに入っていた資料を読み進めていた眼鏡の男はその質問に顔を上げた。

 

「黄色い綿のような花を咲かせる、外来植物のことですか」

 

「アレはね、他の植物を枯らす為に根から毒素を出すそうだ。……植物は一見、『静』に見えるが、それは違う。植物とて生きる為に他を殺すのだ」

 

コーヒーが注がれたカップから天井に上り、揺蕩う湯気を眺めながら、初老の男は続ける。

 

「あらゆる生き物は他を殺さずして生きていくことは出来ない。生きるとはその業を背負うということだ。その業を背負い、我々はワームとの生存競争に勝たねばならない」

 

そう言った男の垂れた瞼から覗く眼光は鋭く、氷のように冷たかった。その視線を受け、眼鏡の男は深く礼をする。

 

「ご安心を。失われた三機の行方は未だ不明ですが、試作機の回路を参考にマスクドライダー計画は次の段階へ移行しつつあります」

 

「……そうか。最もあの三機は見つからずとも良い。アレらはワームとの共同開発で作られたからね。今の我々に必要なのは、奴らの手が介入していないぜクターだ」

 

「了解しました。では………」

 

『会長、補佐!緊急です!』

 

部屋のドアのインターホンが押され、眼鏡の男の発言を遮った。

 

「後にしろ!」

 

「いや、構わない。入ってきたまえ」

 

初老の男が許可を出し、部屋に入ってきた男は慌てて一礼すると言った。

 

「試作機ゼロ号が起動し、逃げ出しました。原因は不明、行方を追っている所です」

 

その内容に二人は動きを止めた。

 

「……会長」

 

「ああ。………そうか」

 

何を言われるかびくびくしている研究員に、ZECTの会長は告げた。

 

「分かった。ご苦労だったね。もう下がっていい」

 

「え?……あ、はい!失礼しました!」

 

研究員が去った部屋に沈黙が下りる。

 

「会長、これは一体………?」

 

「試作機ゼロ号は、ワームの技術を模倣して故人である日下部夫妻が共同開発したものだ。故に、ぜクターの指揮権は完全に独立しており、独自の思考で行動する」

 

「と、いうことは」

 

「ぜクターは感じたんだろう。我々には分からない、嵐の幕開けを。もしくはー」

 

 

 

━━━朝日の予感というものをね

 

 

 

 




緊迫感が出したいので、話を短めに、早く更新していこうと思います。

まどろっこしいんじゃーって人は書いてください。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。