はたから見れば、2人は明らかに恋人のように見えるだろう。
なんせ、女子生徒をおぶって帰っている男子生徒が、夜道を歩いているのだから。
神「ご、ごめんアル…、重いのにわざわざ。」
背負われている女子生徒、神楽が突然謝る。
兄曰く惚れている奴だが、本人は全くの無自覚なので、本来なら気を使うが……
総「ほんとに重いでさぁ。お前一体何キロだよ。」
生まれつきのドS体質の沖田総悟である。彼に『本来』は通じない。
神「なっ……、そこはお世辞でも大丈夫とか言えないのか!」
総「なんでぃ、事実を言ったまでだろ。」
神「お前……、ドSアルな。」
総「理解していただき光栄でさぁ。」
そう言った、総悟は黒く笑っていた。
2人は再び無言になる。
そんな空気に耐えれなくなったのか、神楽は口を開いた、
神「おっ、お前の兄ちゃん、めっちゃイケメンアルな!」
それが、地雷だとも知らず……。
総「兄ちゃんって……龍のことですかぃ?」
神「そっ、そうネ!手当してくれたアルし、お前とは違ってめっちゃ優しかったアル!あれなら、いい医者になれそうネ!」
総「……なれねぇよ。」
神「へっ!?」
総悟の言葉に驚く神楽。
神「なっ、なんでお前がそんな事言うネ!兄ちゃんのことなんだから、応援してやれヨ!!」
総「てめーに何がわかるってんでさぁ。」
神「……。」
無意識だが、声が低くなり威圧してしまったことに気づく総悟。
総「わ、悪ぃ。」
神「ううん、私も何も知らずにごめんアル。」
弟である彼がここまで怒るんだから、きっと聞いてはいけないことであろう。そして、それは龍が剣道が出来ないことにも関係している。
そう思った神楽は、それ以上聞くことをやめた。
総「いつか本人に聞いてみろ。」
神「お前ら双子は、どっちも心を読み取るの上手いアルな……。」
そう言って笑う神楽。
不覚にもその顔に、ドキッとしてしまったのを、総悟自身も知らない。
神「そういえば、お前の名前聞いてなかったネ。」
総「総悟でさぁ。よろしくな、チャイナ。」
神「チャイナ!?」
総「面白いなまりのある、中国生まれの女。よーく覚えたぜぃ、先輩に敬語も使えねーチャイナさんよぉ。」
神「……お前以外になら使えるネ。」
総「そこには一体、何の格差があんだよ。」
神「ドSかドSじゃないかネ。」
そんなくだらない会話をしながら、でも意外と笑いの耐えない帰り道で、神楽も総悟も楽しいと思っていた。
総「チャイナ、お前、龍の奴のことが好きなのかぃ?」
神「はっ、はぁ!?」
見え見えの動揺をする神楽。総悟は元々、そういうことには敏感なので、すぐに気づく。まぁ、自分のことになると途端に鈍感なのだが…。
総「好きなのか……。」
神「まっ、まだわかんないネ……。好きとカ、そういうこと思ったことないネ!」
総「へぇ、、、。そんなチャイナにいいこと教えてやろーかぃ?」
神「何ネ?」
総「あいつ、彼女いるぜ?チャイナと同じクラスの銀子。」
神「…………。」
黙り込んでしまい、総悟の背中に顔をうずめる神楽。
総悟も、少し言うのはためらったのだ。
だが、すぐに嫌でも気づくことだろう、だったら、今ここで言った方がいいと思ったのだ。
総「チャイナ?」
神「…………。」
総「傷つけたならすまねぇ。別にそういうつもりで言った訳じゃねーんだ。」
神「別に、傷ついてないネ。」
総「……そうかぃ。」
総悟は無言で、自分ちの近くの公園に入った。
ベンチに神楽を座らせて、ちょっと待ってろぃ、と言い
総「ほれ。」
神「……?」
総悟が渡したのは、温かいココアだった。
総「龍が、俺によく買ってくれたんでぃ。あいつは、俺がいっぱいいっぱいになってっと、無言で外連れ出してこれ買ってくれたんでぃ。
……あん時だって、、、」
神「あの時?」
総「…………俺らの親が死んだ時。」
神「!?」
総「いや、正しく言いやぁ、『殺された』時。」
総悟は言ってから、慌てて口を閉じた。
今まで、女子になんて一度も言ったことない事だった。
総「悪ぃな。今のは忘れてくれぃ。とにかく、飲め。俺が奢るなんて珍しいぜぃ?」
神「じゃあ、明日で地球は終わるかもナ。」
総「そこまで言うかよ。」
神楽もそれ以上、踏み込んで聞かなかった。
神「確かに美味しいネ。ありがとうアル。」
街灯に照らされた神楽の笑顔。
――あー、最悪。龍の野郎の言う通りになっちまった……。
その笑顔が、可愛いと思ってしまった。自分のものにしたいと思ってしまった。
龍の奴、ぜってー潰す。
そんな復讐をくわだてながら、
総「そろそろ帰るか。お前の兄貴も心配してるだろ。」
神「そうネ。」
そう言って、再び神楽をおぶる。
自分の気持ちに気づいてしまった総悟は、少し複雑であったが…、それでも他愛のない話をして、神楽のうちに着いた。
――――ピンポーン
?「はーい?」
中から聞こえた声。
神「あっ!兄ちゃんネ。」
威「んー?神楽ー?」
ドアを開けたのは神楽の兄貴、
総「ども。お届けものでさぁ。」
神「なっ!?私は荷物じゃないネ!!」
総「暴れんな!!」
とりあえず、神威に神楽を預ける。そして、
総「なぁ、ちょっと、話あるんだけど。」
神威を連れ出した。
神楽を中に置いてきて、再び玄関に出てくる神威。
総「あんた、春雨高校の神威だろ?」
威「そうだよ。へー、俺って有名なの?銀魂高校の沖田総悟くん?」
総「……。そりゃあ、転校してきて一週間で、学年統治なんてすれば、嫌でも耳に入ってきまさぁ。」
威「ふーん。で?俺に何の用?」
総「見たのは俺の兄貴で、俺が直接見たわけじゃねぇが。春雨高校の奴が、あんたの妹にちょっかい出したらしいぜぃ。」
神威の顔が固まる。……と思ったら、狂気の顔になる。
威「へー、顔とかは?」
総「そりゃあ、何も聞いてねぇでさぁ。」
威「残念。すぐに殺しに行けないじゃん。」
そう言った神威の顔に、総悟は少し恐怖を感じた。
総「兄貴曰く、突発的な行動だから、二度目はねぇと思うが、気をつけろだとよ。」
威「…君のお兄さん、何者?」
総「自慢の天才兄貴でさぁ。」
威「へー、お兄さんにお礼言っといて。」
伝えることだけ伝えて、総悟は神楽の家を出た。
神楽は剣道部のマネージャー。つまり、明日からの朝練も来る。
総悟は、朝練をよくサボるが……
総「明日からは早いでさぁ。」
ぜってー、俺のもんにする。
その気持ちだけが、総悟を動かしていた。
それぞれの青春の形が、始まった。
龍「ただいま……。」
総「お帰りでさぁ、遅かったな。」
龍「さすがに1時間半はきついわ。そういやー、兄貴はどんな奴だった?」
総「あー、チャイナの?」
龍「チャイナ!?」
総「普通のシスコン野郎だったぜぃ。チャイナにちょっかいかけたこと言ったら、すぐに怒ったんでね。」
龍「何、煽ってんだよ。」
総「それから、龍に感謝してたぜ?『お前の兄貴何者だ』って驚きながら。」
龍「へー、それで?何か進展あったか?」
総「…………。」
龍「……総悟?」
総「…………龍、今すぐ死ね。」
龍「はぁ!?」