《近藤side》
龍「あいつら今、大事な時期だからさ。邪魔しないでやって……ね?」
「「「「「「「キャーーーー!!」」」」」」」
「わかった!ごめんね、龍くんっ。」
龍「うん、ありがとう。」
朝練を終えた、俺を含めた4人は一緒に教室に向かっていた。
例え、朝練で疲れていても女子生徒は容赦しない。今日の担当のトシは、特に憂鬱な気持ちで教室に来たのだが……
龍「おぅ、朝練お疲れ。」
……既に龍が追い払っていた。
高「珍しいな。龍、担当じゃねぇだろ?」
龍「昨日の代わりってことだ。」
総「ちっ……、土方を殺してくれるかもしれねぇ、大事な奴らなんだぜぃ?」
土「総悟ぉ……てめぇ!!」
トシが総悟を追いかけて行った。
あいつら本当は仲いいのにな……。
そんなことを思って、笑って見てたら、龍が話しかけて来た。
龍「なぁ、どうだった?総悟の奴。あいつ、朝弱かったと思うけど。」
近「えっ!?あ、あぁ。そういえば、今日は別人のようだったな。大会でもそうなってくれるといいんだけどな…。」
総悟はとにかく朝が弱い。実力は確かなものだが、朝一の試合になると、途端に勝率が下がる。
龍「今日大丈夫だったなら、今度からも大丈夫だ。今日の朝、あいつ甘いもん嫌いだけど、チョコレート食わせたんだよ。めっちゃ嫌がったけど、めっちゃ甘いやつ。」
――それだけで目覚めよくなるなんて、単純だな……。
そう言って笑う龍。
龍はよく見ている。弟の総悟をじゃない、“剣道部を”だ。
中学生の頃、まだ龍が選手だった時から、対戦校の選手の癖や弱点などを見つけていた。あいつは、それが得意だった。
それが高校に入り、外から見る側になってからは、味方の事もよく見るようになった、……いや、味方の事の方がよく見るようになったと思う。
総悟が、朝弱いことを龍に言った事はないし、総悟自身も自分の兄貴に行ったりしないだろう……あいつの性格上。
つまり龍は、たまに応援をしに見に来た試合を見て、気づいたんだろう。わずか数回の訪問で……。
土「おいっ、龍!!てめぇ、弟なんとかしやがれっ!!」
龍「はぁ?自分でなんとかしろよ…。」
なんやかんや文句を言いながらも、トシと総悟を止めに席を立った龍。
高「あいつ、マネージャーより使えんじゃねぇの?」
その龍の空いた席に、高杉が来た。
高「確か、1年の時の新人戦で、お前の相手の弱点見つけたのって龍だろ。」
そうだ。去年の新人戦決勝。龍のアドバイスがなけべら勝てていなかったかもしれない。
龍『次のお前の相手、左から竹刀振った後、隙ができる。右利き特有のくせ持ってる。』
―――だから、左から竹刀振らせるように誘発しろ。
言われてすぐに実行できた俺も、すごいと思うが、
近『お前、いつから来てたんだ?』
龍『ついさっき。ちょうど次のお前の相手が試合してた。』
一試合見ただけで、相手の弱点を的確に見抜く龍は、もっとすごい。
近「そういや、お前やトシがケガ隠してる時も、龍にだけはバレてたな。」
どんなに小さなケガでも、どんなに隠しても、龍は見つけていた。
高「……あいつの事情が事情だからだろ。ケガに関しては、過剰に反応しやがる。」
女子生徒を追い払ったのも、疲れているトシのためだろう。俺らの気付きにくいところで、俺らを支えてくれている龍。
自分は二度とすることの出来ない、竜にとって何よりも大切だったはずの剣道。
二度と出来ないのに、他の奴のためにそれを見に来る。
近「あいつは……、どんな気持ちなんだろうな。」
―一体どんな気持ちで、俺らを支えているんだろうか。
――一体どんな気持ちで、俺らを見ているんだろうか。
龍「高杉ー、どけろー。」
高「嫌だ。」
龍「はぁ!?何のわがままだよ。」
高「気分だ、気分。朝練疲れたんだよ。沖田、別人のようになりやがって。」
総「てめぇが、弱ぇからだろー。」
高「てめぇ!」
龍「喧嘩すんな、2バカ。これやるから。」
高「っしゃあ。残念だったな、沖田ぁ。」
総「なっ……!?俺にもくれー!」
龍「ほらよ、トシと近藤もいるかー?」
喧嘩を止め、手作りだという疲労回復食を配る龍。
甘いのが苦手な俺らでも食べやすい甘さ。
土「おぅ。」
近「ありがとな。」
―――おまえは、自分と同じ目に遭わぬように支えていることを、
龍「ん?まずかったか?」
近「あっ、いや!あいかわらずうめぇよ。」
龍「よかった。」
――――そうやって笑うことを、
―――――お前はどう感じているんだろう。