宇佐木時麻の短編集   作:宇佐木時麻

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FGO 聖杯探索に星が混ざった結果1

 それは、ほんの少しだけズレてしまった世界線。本来ならば現れる事の無かった星と人が紡ぐ聖杯探索(グランドオーダー)

 

 

 

――特異点F 炎上汚染都市 冬木――

 

 

 

 大聖杯と呼ばれる超抜級の魔術炉心の前に佇むのは金髪の軍服を着込んだ男性。

 本来ならばその場に立ち聖杯を守護するのは騎士王だったはずだ。しかし何らかの不都合か、セイバーのクラスに呼ばれた男は彼のアーサー・ペンドラゴンとは何の関係もない人物だった。

 ならば、その男は英雄に相応しくないか。―――否、答えは断じて否である。

 

「―――来るか」

 

 特異点に現れし人理の守護者の気配を感じ取り、瞼の裏に隠れていた鋼青色の瞳が虚空を射抜く。

 見よ、その眼を。その瞳を見ていったい誰が彼を英雄の落伍者などと言えようか。本来ならば汚染され反転するはずだった光は今も尚曇りなく。

 括目せよ、彼こそ光の英雄。

 それは、 至高 。

 それは、 最強 。

 それは、 究極 。

 それ以外に、形容すべき言葉無し 。

 誰もがその足跡に続きたくなるような輝きを放つ英雄は、腰に携える七つの剣の内の一つを地面に突き立て、これから現れるであろう星見(カルデア)の到着を待つ。

 見定めなければならない。彼等が世界を救うに値するか否か。もしも、万が一俺程度の塵屑に劣るというのならば――その時は、是非もあるまい。

 英雄は待ち続ける。光を愛するが故に、光を守ろうとする者達に敬意を示す。だが忘れるな、英雄と戦うという事は――

 

「勝つのは、俺だ」

 

 ()()()()()()()英雄(怪物)と競い合う事だという事を。

 光の英雄――クリストファー・ヴァルゼライドは待ち続ける。

 

 

 

――第一特異点 邪竜百年戦争 オルレアン――

 

 

 

 本来竜の魔女が呼び出ししファブニールは、巨大な竜の形をした怪物だった。無数の竜を生み出す事の出来るドラゴン、しかしそれは、何らかのズレで同じ名を持つ別の何かを呼び出してしまった。

 そしてそのズレは――最強のドラゴンを呼び出すよりも悲惨な運命をフランスに宿命付けさせてしまう。

 

Zwangvolle Plage! Müh' ohne Zweck!(ああ、苦しい。なんと無駄な徒労であろうか)

Das beste Schwert, das je ich geschweisst,(心血注ぎ、命を懸けた、我が最高の剣さえ) nie taugt es je zu der einzigen Tat!(竜を討つには至らぬのか)

Ja denn! Ich hab' ihn erschlagen!(然り! これぞ英雄の死骸である!)

Ihr Mannen, richtet mein Recht!(傍観者よ、我が栄光を認めるがいい!)

Her den Ring!(宝を寄こせ!) Her den Ring!(すべてを寄こせ!)

 

 合唱が戦場――否、虐殺場にて響き渡る。血と肉と火が本来穏やかだった日常の風景を埋め尽くし、非日常である戦場へと変貌させる。

 進軍する傭兵団の姿は皆奇妙な姿で統一され、誰しもがその唄を高らかに歌い上げる。

 殺し、奪い、仲間の死体を兵器に変えてでも奪い続ける様は、小さな竜の群れ。とても人間のものとは思えない。

 その中で、見晴らしのいい市街地の屋根に昇ったファブニールの名を司る強欲竜団の長である男は高らかに笑う。

 

「ああ、感じるぜ、俺の英雄(ジークフリード)。いるんだろ? お前もこの世界の何処かに。分かるさ、この心臓が教えてくれる。ああ、ようやくだ。ようやく、お前の背中に魔剣を突き立ててやれる。そうだ、英雄が魔剣(おれ)を生み出した。邪竜(おれ)を討ち取り奴はこの世に生まれたのだからッ!」

 

 魔剣(ダインスレイフ)は、邪竜(ファブニール)は、天高く笑いながら篭手剣(竜の爪)を鳴らす。

 彼等は止まらない。英雄にその剣を突き立てるその日まで。いつまでも奪い、殺し、蹂躙しつづける。

 故に、彼らは強欲竜団(ファブニール)

 故に、彼は魔剣(ダインスレイフ)

 怪物であり、光の使徒でもある本気になった男は止まらない――憧れに勝利する、その日まで。ファヴニル・ダインスレイフは止まらない。

 

 

 

――第二特異点 永続狂気帝国 セプテム――

 

 

 

 肉を潰す。

 骨を潰す。

 臓物をぶちまける。

 

「くひひ、」

 

 勇敢に立ち向かって来た男を誉れだと謳いながら殺す。

 子を守るために身を差し出した女を大した女だと褒め称えながら殺す。

 敵討ちを取るために無様な装備を纏った子供をその志に敬意を示して戦士として倒そうなどと言いながら殺す。

 殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す―――

 

「ひっひひひひひッ」

 

 ああ、たまらない、最高だ――!

 

「ハッハッハッハッ、アァァハハハハハハハァッ――!!」

 

 軍神の名を司る星の眷属はもう辛抱溜まらんと言わんばかりに哄笑しながらただひたすら殺す。

 何か理由を聞かされた気がするが、もうそんなことはどうでもいい。

 聖杯? 人理焼却? 魔神柱? ああ、そういえば目の前に立っていた男がそんなことも言っていた気がしたが、些細なことだろう。

 ローマを滅ぼせと言ったか。ああ、いいだろう。それは即ち殺人許可書なのだろう? ならばいいさ、この星が司る意味のまま殺してやろう。

 

「さあ、(ロムルス)に祈るがいい――もっとも届きはしないだろうがなァッ!」

 

 破壊の大王の代わりに呼び出された殺塵鬼(カーネイジ)は止まらない。カルデアなど眼中になくただ街へ人々が集まる場所へと進軍する。

 ただ殺したい――その殺人欲求を満たすためだけに。

 魔星マルスは殺し続ける――

 

 

 

――第三特異点 封鎖終局四海 オケアノス――

 

 

 

 そこは本来、広大な海が広がる世界だった。陸地は精々ところどころに浮かぶ島だけで、大海原を我こそはと船乗り達が駆け巡る。

 はず、だった――

 

「醜悪な蛆虫が、誰の許しを得て星を見上げている? 下等の塵ならば、無様に地べたを這いつくばっているのが似合いだろう」

 

 理が覆される。

 海は凍り、天空神の赴くままに世界は書き換えられる。

 空に浮かぶは天空を司る神の如き力を奮う魔星。彼女が腕を振るうだけで総ては凍てつき、氷の華を咲かせる。

 氷の棺桶の中で苦悶の表情を浮かべる死体を見て、彼女は下等な塵にはお似合いだとその無様さを嘲笑う。

 故に、彼女は気づかない。

 そもそも塵と比べている時点で自分も同じ穴の狢だという事を。

 怪物が殺すことに喜びを覚えるはずがないという、己の卑小さを示していることに気付けない。

 それでも彼女は気づけない。見たくない物には蓋をして、未だ自分は特別なのだという魂の腐った願望を抱き続ける。

 

「さあ、来るがいい、英雄。今度こそ、殺してやろう」

 

 故に、彼女は今も尚勘違いし続ける。

 光の英雄でなければ怖くないという無意識の叫びを無視して、氷河姫(ピリオド)は大海原で虐殺を開始する。

 

 

 

――第四特異点 死界魔霧都市 ロンドン――

 

 

 

「ああ、レディ。もうしばらくお待ちください。必ず貴女をもう一度目覚めさせてみせますので、どうか今しばらく微睡みの中で――」

 

 柩の中で深い眠りに着いた少女の頬を撫でながら、貴族の服を着込んだ青年は悲しく微笑んだ。

 その瞳に宿るは、深い後悔。

 何処までも凡俗でしかない自分が、どうしてこんなことに巻き込まれているのか神様を呪いながらそれでも彼は決断する。

 

「ああ、黙っていろよ。魔術王だか何だが知らないが、余計な口出しはするな。それよりも、お前の望みを叶えたなら、代わりに僕の願いを叶えて貰うぞ」

 

 虚空から聞こえてきた言葉に苛立ちを覚えながら、彼は吐き棄てる。

 ああ、人類などどうでもいい。滅びようが救われようがしったことか。それよりも、愛しい彼女が目覚めない方が何倍も大事だ。

 何処かの誰かよりも、目の前の大切な人を優先する。それは人として至極当然のことで。

 故に哀しき錬金術師(アルケミスト)は気づかない。

 自分にとって彼女と比べる事など出来やしない大切な存在を忘れていることに。

 だが、それ故に彼は揺るがない。たった一つの大切な者を取り戻すべく、伝令神(ヘルメス)は慟哭する。

 嘆きの叫びを虚しく天へと轟かせ――ルシード・グランセニックは光に立ち向かう。

 

 

 

――第五特異点 北米神話大戦 イ・プルーリバス・ウナム――

 

 

 

 そこは戦場だった。

 機械と蛮族が幾度と果てもなく激突する闘争場。己が主の命に応えるべくただ目前の敵を打ち倒さんと衝突する二陣。

 故に、その戦局が変化するのは第三者の介入に他ならない。

 

「ハッ、ハァあ――!」

 

 拳が唸り、弾ける。肉であろうと機械であろうと関係なく、触れただけでまるで内側から弾けたように破裂する。

 一撃必殺――拮抗を保っていた戦場は、突如現れた拳士の影響で一気に加速する。

 拳士がまだ片方の陣営に着けばまだ良かった。それならばまだ行動を予測できる。しかし拳士の行動を彼等の頭脳陣は理解できず困惑する。

 そして、同じ戦場に生きる戦士達は同類だからこそ理解する。

 即ちこの男――何も考えていないのだと。

 

 アメリカを守る? アメリカを滅ぼす? おおそうか、なら話は早い、いざ参ろうか――

 闘争に飢えた拳士は彼らの言い分など気にも止めず武を奮う。目指した果てを見るために。そのためならば例え相手が誰であろうと構わない。さあ、俺に戦場を寄こせ――武の極みに辿り着くために。

 

「応ともこれぞ経絡秘孔――殺人拳の真髄よォ。カカカカッ!」

 

 色即絶空(ストレイド)は止まらない。もはや彼に何の迷いも無い。嘗て焦がれた衝動を手に入れた彼はもはや鋼の英雄にさえ匹敵する。

 故に、戦場に於いて最も危険分子を優先的に排除するのは自然の道理であり。

 

「加減はなしだ――絶望に挑むがいい」

 

 反転せし光の御子――クー・フーリン〔オルタ〕。

 

「お前の気概も分からなくはない。だが、ここでは倒されてもらうぞ」

 

 施しの英雄――カルナ。

 

「奴との決着を邪魔される訳にはいかん。故に、此処で散れ……!」

 

 授かりの英雄――アルジュナ。

 

 この特異点に集いし一線級のサーヴァント達が魔拳を打ち倒さんとこの場だけは手を組んで討伐に当たる。その、普通ならば絶望するであろう逆境に魔拳は、

 

「あは、ははは、ははっはははははははははははハハハハハッ! いいぞいいぞ、やはり戦場とはこうでなきゃいけねえ! これが武の試練というならば、いいぜ来な! だが、あの英雄に習ってオレもこう言おう――それでも、“勝つ”のはオレだってなァ……!」

 

 哄笑する魔拳はそれでもまだだと笑いながら前へ前へ突き進む。人理の守護も崩壊も、もはやこの戦場に置いて何の意味も持たない。

 あるのはただ、戦士の志のみ。さあ括目せよ、これこそ戦士の誉れなり。

 魔拳――アスラ・ザ・デッドエンドは極上の戦場に感激しながら激突した。

 

 

 

――第六特異点 神聖円卓領域 キャメロット――

 

 

 

「――素晴らし過ぎる」

 

 漏れた言葉は、感激の極み。その瞳に映りし姿は嘗ての憧憬そのもの。その完成度、その輝き――光の英雄の降臨に男の眼鏡越しの瞳が更に細まる。

 感激する男の視線の先にいたのは、玉座に腰掛けし青年。燃え盛る炎は嚇怒の念。

 彼は本気で怒りを覚えていた――この地に住まう者達の嘆き、悲しみ。それを訊いて諸悪の根源に対しかつてないほど激怒する。

 何故なら正義とは即ち怒りなのだから――正しき光を抱いて、灰だった男はここに新生した。

 

「邪悪なるもの、一切よ。ただ安らかに息絶えろ――」

 

 轟ッ! と彼の思いに答えるように玉座に炎が奔り、傍にいる者たちを焦がす。されど誰もその炎を怖がりはせず、むしろあの日を思い出し感涙の涙を流す。

 ああそうだ、貴方は正しい。その怒りは何も間違いなどではないのだから。今こそ蝋翼を焼き尽かせ飛翔するのだ我らが天駆翔(ハイペリオン)よ――

 

 故に、彼は気づけない。自分が何の為に英雄になろうとしたのか。誰のために強くなりたいと思ったのか。蝋翼を溶かしながら飛翔するイカロスでは気づけない。

 この特異点を修復するには自信の胸に仕込まれた聖杯を取り除かねばならないのに――敗北を許されない英雄には気づけない。

 だからこそ、天駆翔(ハイペリオン)は突き進む。前へ前へ、過去を一切振り返らず全て燃料へと変えて断崖の果てへと飛翔する。

 

「涙を明日の笑顔に変えんがために――来るがいい、“勝つ”のは俺だ!」

 

 決意を顕にし、何処までも間違えながら――英雄の後継者(デッドコピー)、アシュレイ・ホライゾンは高らかにこの特異点にいる敵に宣戦布告した。

 

 

 

――第七特異点 絶対魔獣戦線 バビロニア――

 

 

 

 そこは、魔術王が絶対に不可能と決定付けた特異点。そこに、全ての星が集う。

 

 ウラヌス-No.ζ(ゼータ) 氷河姫(ピリオド)

 マルス-No.ε(イプシロン) 殺塵鬼(カーネイジ)

 ヘルメス-No.δ(デルタ) 錬金術師(アルケミスト)

 クロノス-No.η(イータ) 色即絶空(ストレイド)

 アフロディテ-No.θ(シータ) 露蜂房(ハイブ)

 

 各特異点にてその暴威を見せ付けていた魔星達は遂にその時が来たのだと皆それぞれの表情を浮かべて佇んでいた。

 ある者はようやくかと笑い、ある者は嘆き、ある者はリベンジマッチと意気込む。

 これほどの戦力。一体だけで特異点の戦力を壊滅できるほどの力を秘めた彼らが集えば魔術王の策略通り、この特異点を修復するなど到底不可能だろう。

 ――否。そもそも彼等はカルデアなど眼中にすらない。

 数多の英雄を従えて? これまで特異点を修復してきた実績? ああ、確かにそれは凄まじい事だろう。まさに英雄と呼ぶに相応しい功績だ。

 だが、彼等は知っている。本当の英雄という者を。例えカルデアのサーヴァントは幾ら集まっても決してヤツには及ばない。

 それこそが、魔星達にとっての英雄。意志のみで現実を覆す正真正銘本物の英雄(怪物)

 故に――

 

「さあ、今度こそあの日の続きを――『聖戦』を始めようではないか、我が宿敵よ」

 

 全ての魔星の頂点に君臨する星が、いま目を覚ます。この時をどれほど待ち侘びたか、太陽を司る眷星神は不敵な笑みを浮かべる。

 まるで幼子が旅行の前日に眠れないとはしゃぐように――迦具土神壱型は笑うのだった。

 

 そして、

 

「ああ、言われるまでもない。だが忘れるな――“勝つ”のは俺だ」

 

 荘厳に響き渡る声と共に、最後の魔獣が光の断罪剣によって討ち滅ぼされる。

 周囲に広がるは数えるのが億劫になるほど打ち倒された魔獣の死体。流れ出る血で地面が赤く染まるほど死体の山で出来たそこは、彼以外に誰も居ない。

 その光景を、守護する砦から見守っていた兵士達は茫然と呟いた。

 

「英雄、だ……」

 

 一騎当千、たった一人で戦局を覆してしまう不屈の闘志。絶望を切り払い希望の光をもたらした姿に、彼等はそれ以外表す言葉を知らなかった。

 彼らの王の賢王とは違う英雄。だがそこに優劣を付けられるはずもない。彼の英雄王が神のように荘厳ならば、鋼の英雄は灼熱の嚇怒を燃やし続けている。

 

「すまない、無事だろうか」

「え……、あっ、はい! 援護、感謝します!」

 

 声を掛けられて思わず兵士の口がごもる。近くに来れば来るほどその意志の強さが瞳から滲み出ていると錯覚するほど凄まじい。

 何というのだろうか、この気持ちは。ああ、この人ならば全てを捧げても構わないとさえ思えるこの幸福は――

 

「そうか、なら此処はお前達に任せていいな」

「はい! 問題ありませんっ!」

 

 上司ではないというのに、自然と敬礼に構えを取ってしまう。任せるという言葉がこれほど嬉しいと感じるなど夢にも思わなかった。

 だからこそ、一人で進もうとするその男の行き先が気になってしまった。

 

「あの、貴方はこれから何処へ……?」

「決まっている」

 

 男はまるで英雄のように揺らぐことなく即答し、遠くを見据えて告げた。

 

「勝利をこの手に掴むため――この『聖戦』を終わらせる」

 

 ――聖戦はここにあり。

 神星と英雄。

 カグツチとクリストファー・ヴァルゼライド。

 嘗て何処かで行われようとしていた戦いの火蓋が切って落とされようとしていた。

 

 

 

――終局特異点 冠位時間神殿 ソロモン――

 

 

 

 

 遂に、人類の終焉は約束された。

 魔術王――否、人類悪、ビーストに敵う道理もなく、ここに滅びは決定した。

 だからこそ、ここに全ての条件は揃う。

 人類の滅び。約束された絶望。故に、救世主は降臨する。

 

 ――創世神話(マイソロジー)は此処にある。

 

 現れしは、黄金の救世主。

 光を愛し邪悪を滅ぼす不滅の焔。あらゆる因果を崩壊させる星辰烈奏者(スフィアセイヴァー)が人類の終焉を阻止すべく舞い降りる。

 

「人々の幸福を未来を輝きを―――守り抜かんと願う限り俺は無敵だ。来るがいい、明日の光は奪わせん!」

 

 それはまさに太陽の化身。

 故に、気づかねばならない。太陽を直視し続ければ失明するように――世界を救済する力を持つという事は、同時に世界を滅ぼせる力を持つという事を。

 

 彼こそ、本来ならば存在しない人類悪。『烈奏』の理を持つ番外の獣。

 人類を救済するために人類を焼却し尽くしてしまう人類悪の救世主――ヘリオス。

 

「“勝つ”のは、俺だ」

 

 激突する人類悪。

 魔神王ゲーティアと星辰烈奏者(スフィアセイヴァー)ヘリオス。

 世界を滅ぼせる二つの熱量が激突する。

 

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