「……分かった。でも一つだけ頼みがある。俺だけじゃなく、万丈も助けてやってくれないか?」
「当然さ。世界なら一度敵に回してるし、何より俺は、あいつらのヒーローで——あの筋肉バカは、最高の相棒なんだよ!」
◇◇◇
虚数潜航艇シャドウ・ボーダーにて移動するカルデアは新たな
食料の備蓄が尽きかけていた彼らは調査の為に
「此処って……日本?」
高層ビルが立ち上る都会。氷河期でも神代でもない彼らがよく知る現代の光景が広がっていた。
彼らの知る歴史と殆んど変化のない異聞帯に戸惑いつつも、調査を進めるカルデア。独自に調べている内に、マスターである藤丸立香とサーヴァントであるマシュ・キリエライトは街を守護する機械兵《ガーディアン》に囲まれてしまう。
『戸籍情報に登録されていない人物を発見。直ちに拘束します』
「ロボだッ!!」
「言ってる場合ですか先輩! 逃げましょうッ!」
逃亡する二人だが、街全域から包囲されては脱出は困難だった。次第に追い詰められていく中、彼らはある男に助けられる。
「此処まで来ればもう安心だろ。それで、一応確認しときたいんだが……お前達が、カルデアってヤツでいいんだよな?」
異聞帯のサーヴァント、石動惣一の協力を得て彼らカルデアはこの異聞帯の真実を知る。
「えっと、惣一さんでいいんですよね?」
「んっ? おお、それはこの借りてる身体の名前なんだが、俺の本当の名前は知られない方がいい。弱点が少し目立つからな。それに俺はまだこの身体に馴染めてなくて殆んど力を出せないからあまり戦力に数えられても困るしな」
「なるほど、イシュタルや孔明と同じ疑似サーヴァントという訳か」
「ああ、恐らくお前さん達が言うクリプターっていうのは桐生戦兎に違いない。あいつの事は誰よりも理解している」
「仲間だったんですか?」
「ああ、一番最初からの付き合いでな。だからこそ、あいつがこんな馬鹿げた事をしているのを止めてやりたい。正義にヒーローであるアイツが、あんな苦しそうな顔させたくないんだよ」
「コーヒーマッズ!?」
「えぇ、そんなことねぇと思うんだけどなー……ってマズっ!?」
「あはは……惣一って本当にカフェのマスターだったのかい? よく潰れなかったね」
絆を深めていく中、次々と現れる異聞帯のサーヴァント達。
「アイツらが全員笑っていられる世界を作ってくれたんだ。ならカシラであるオレが、戦わねえ理由はねえだろ。……心火を燃やして、ぶっ潰す!!」
『ロボットゼリー! 潰れる! 流れる! 溢れ出る! ロボットイングリス! ブラァ!』
現れるのは、金と黒で彩られた機械を纏った戦士と。
「ようやく、親父が望んだ世界が作れたんだ。お前達の目的も意義も理解している。だが……大義のための犠牲となれ」
『デンジャー! クロコダイル! 割れる! 食われる! 砕け散る! クロコダイルインローグ! オラァ! キャー!』
まるでワニの顎の如き紫の戦士。
しかし、カルデアも諦めず前へ進んでいく。そして彼らはついにこの異聞帯の王とクリプターの許まで辿り着いた。
「お前らがカルデアってのか? 悪いがこれ以上先には進ませねえよ。皆が命を懸けてようやく出来たこの世界は、絶対ぇ守って見せる!」
『ボトルバーン! クローズマグマ!』
「空想樹は破壊させない。この世界は、俺達仮面ライダーが守るッ!!」
『ラビット! ドラゴン!』
『『Are you ready?』』
「「勝利の法則は決まった!」」
◇◇◇
其は、本来ならば存在しなかった歴史。
だからこそ、人理は否定する。どの並行世界にも属さない歪に歪んでしまった切り捨てられた“異聞帯特異点”。
故に、カルデアよ。この世界だけは消してはならない。
忘れるな――ヤツだけは、目覚めさせてはならない。
Lostbelt No.■:眠れる星食 AD.2018 創造破壊新世界 ビルド
異聞深度 F
◇◇◇
戦いは終わった。
カルデアはクリプターに打ち勝ち、空想樹の伐採は完了した。いずれこの異聞帯も消滅するだろう。
だからこそ——
「おめでとう、カルデアの諸君。流石は人理を取り戻しただけの事はあるな」
鳴り響く喝采は、紛れもない福音だった。
「惣一さん! 無事だったんですね!!」
現れたのは、仲間の危機に最後に命を懸けて囮となった石動惣一。その姿を見てカルデアの一同は喜び——ただ一人、気を失った万丈龍我を抱きかかえていた桐生戦兎は震える声で問いかけた。
「どう、して、だ。なんで、お前が居る。お前は、この世界の誕生と共に消滅したはずじゃ」
「ああ、戦兎。お前の言う通り確かに俺はお前に敗れたさ。だけど此処は普通の現実世界じゃない。異聞帯——なら俺もその駒としてなら顕現できたってワケだ。もっとも、殆んど力を失っていたがな。だが、もうその心配はない」
そう言うと石動惣一は背中に手を回しある機械を取り出した。それは万丈や戦兎達が腰に巻いていたベルトに似ていて——何処か破滅を連想させる色合いをしていた。
「さて、カルデア。お前達に勝利の代わりと言っちゃなんだが、面白いものを見せてやるよ」
『オーバー・ザ・エボリューション!』
高らかにベルトが鳴る。
謳うように、嘆くように。世界の終わりを告げるように。
「戦兎。お前には世話になったからな。特別大サービスだ」
『コブラ! ライダーシステム! レボリューション!』
終わったはずの存在が。
星を喰らう破壊の化身の産声が。
「——手始めに、お前が守りたかったこの世界を消してやる」
『Are you ready?』
今ここに、最悪の目覚めを上げた。
『ブラックホール! ブラックホール! ブラックホール! レボリューション!』
『フッハッハッハッハッハッハ!』
「ク、ハハハ、クハハハハハ、ハーハッハッハッハハハハハハハハハハッッ!!」
高らかに、星食の哄笑が世界に響き渡り、同時に崩壊を始める。
世界の頭上。嘗て空想樹が存在したその空間にあるのは、黒い穴。何もかも飲み込むブラックホールが顕現していた。
『嘘だろ!? 自力でブラックホールを発生させた! しかも、この魔力……まさか吸収したエネルギーも自分の力に変えているっていうのかよ!! なんて出鱈目だッ!!』
『ぜ、全員直ちに退却しろ! これは所長命令だ! こんな惑星クラスの化物に勝てるはずがない!!』
喰らう。食らう。食い尽す。何もかも、この世界の全てを。
守る為に全てを投げ打って戦い続けてきたヒーローの前で、ヒーローが守ろうとしたモノ全てを無に帰す。
「……ルト」
声が震える。身体の震えが止まらない。
それは圧倒的な力を前にした恐怖ではない。どうしようもなくその身と心を焦がす——憤怒の炎だった。
「エェェボルトォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!」
許さない。
消えてなるものか。
美空、紗羽さん、幻さん、かずみん、他の皆——この世界で、スカイフォールの悲劇もなくようやく平和で暮らせていた皆の命を弄んで。
お前だけは。
お前だけは——
「チャオ♪」
必ず、今度こそ滅ぼしてやる。