宇佐木時麻の短編集   作:宇佐木時麻

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アカン、完全にスランプに突入してもうた……!
最近ラノベを書こうと思って文章力上げるために色々写していたら、そもそも文章が書けなくなるという事態に陥りました。
誰か、ヘルプミイイイイィィィィッ!!


ハイスクールD×D 英雄は何処へ往く

 貧民層(スラム)と呼ばれる街外れに位置する地域。そこは血と闘争だけが法と化した獣の住む檻の中だった。

 元は舗装されていたコンクリートで出来た道は無残に破壊され、並び立つ建造物は今や雨風を凌ぐだけの廃墟と化している。とてもではないが人が住まう環境とは思えない。

 そんな中を、一人の男が悠々と闊歩していた。服装はアロハシャツに丸レンズのサングラスを掛け、五分刈りの頭を掻く様はどう見ても貧民層の住人にはない気品があった。ただ奪うだけの獣でもなく、ただ奪われるだけの弱者でもない。言うなれば()()()()人間だ。

 普段ならばそのような人間など格好な獲物だ。しかし今回だけはチンピラも乞食さえもその男と関わらないように道から避け家の中に閉じこもっていた。

 此処は貧民層。暴力だけが全てを決定させる弱肉強食の世界。故に彼らは察していた。どういう存在から奪い、如何なる者から奪われるのか、そういう危機的察知に敏感だからこそ彼らは男が如何なる存在なのか言葉にしなくても理解していた。

 

 ――これは、捕食者だ。ただ喰らい飲み干す、食物連鎖の頂点に君臨する覇者。彼にとって我らなどテーブルに並べられた料理でしかないと。

 

「しっかし、臭くて寂れてる場所だなァおい。こんなところに長居してたら服まで臭っちまいそうだぜ。後でこの服は捨てるとしようかねー。あーあ、結構お気に入りだったのによォ」

 

 有象無象の視線など眼中にすらなく男は臭いを払うようにアロハシャツを叩く。サンググラの奥から覗かせる鋭利な眼を細めながら、こればかりは何処であろうと変わらない晴天を仰ぎ嘆息する。

 

「果たして、こんなところに本当に居るのかねー。伝説の神滅具(ロンギヌス)使いとやらは」

 

 暇潰しにしても今回ばかりは失敗だったかねー、と独りごちていると、ふと男の嗅覚が漂ってきた匂いを瞬時に察する。

 新鮮な血の匂い。しかしそんあものはこの貧民層においては日常茶飯事だ。しかし今回だけは何かに導かれるように男は歩みを進める。

 向かった先で見つけたのは、小さな王だった。数多の死体で出来た玉座に座り込み、奪ったであろう金属品を袋に詰めている。しかしその姿は周りで椅子と化している骸となった男達と比べ、どう見ても小柄な子供にしか見えなかった。

 体格差があり、且つ集団で挑まれて無事なはずがない。しかし少年の格好を見るからに付着している血は返り血のみで、怪我をしている様子はない。

 

 ただ普通の子供と違う点を上げるとすれば、それは少年の手に握られている黄金に輝く槍の存在だろう。

 赤い鮮血でその身を染めながらも、決して輝きが鈍る事はない。むしろ少年を祝福するかのように太陽の陽射しに閃めいていた。

 

「――jackpot(大当たり)

 

 漏らした声は、歓喜の産声か。

 背後から聞こえてきた声に反応して少年は振り返る。黒髪に黒い瞳、しかし瞳は貧民層に住んでいるにも関わらず澄んでおり、まるで深遠を覗き込むように底が知れなかった。

 

「……おじさんは、敵?」

「おじさんって、出来ればそこはお兄さんと呼んで欲しいなーて。もしくは帝釈天さまでも可!」

「…………」

「無視ですかそうですかそうかいそうなんですねの三段活用。くぅ~、最近の若者は年上を敬う心を忘れてるなァおい! ……とまぁ戯れ言はこの辺にしといて、どうして見ず知らずの俺が敵だと思ったんだ?」

貧民層(ここ)じゃ昨日の味方が敵になるのも当たり前だし。それにおじさん、人間じゃないでしょ?」

「――へぇ」

 

 すぅっ、と帝釈天と自称した男の瞳がサングラス越しに睥睨する。

 空気が僅かに重くなった。しかし少年はそんな重圧を感じないように受け流していた。

 いや、そもそも――障害とさえ感じていなかったのか。

 

「おじさんみたいなのが前にやって来た事があるし。その時はカラスの翼が生えたのと蝙蝠の翼が生えてたけど」

「HAHAHA! 俺を堕天使や悪魔と同扱いかよ! まあ人間にしちゃどっちも人外なのは違ぇねえか!」

 

 突如腹抱えて哄笑し出した彼に少年は疑問符を浮かべながら頭を傾げた。

 その様子が更に帝釈天を刺激する。この少年からすれば、神である帝釈天ですら小癪なカラス共と同じ扱いなのだろう。人間ではないという点ならば。

 

「あ~久しぶりだぜ、こんな愉快な気分になったのわよォ。それで、そのカラス共はどうした?」

「……別に。あいつら神器使いは危険分子だから排除するとか良く分かんない事言いだして妹弟達に襲ってきたから――いつものようにしただけ」

「いつものようにねえ……」

 

 いつものように、というのは少年の回りに散らばっている骸と同じ結末を迎えたのだろう。ここは貧民層、理由もなく襲われるなど日常茶飯事だ。それよりも一つ気になる情報があった。

 

「どうやら、このガキ以外にも神器使いがいんのか」

「……おじさんも、あいつらと同じなの?」

 

 ギリィッ、と黄金の槍を握り締める手に力が込められる。

 その眼に宿るのは、強い意志。済んだ瞳の奥底から燃え上がる業火は決して揺るぎない決意を顕にしていた。

 だからだろうか。その様子があまりに愛らしいかったから、ついちょっかいを掛けたくなった。

 帝釈天はわざとらしく嘲笑の笑みを浮かべると、目前の少年に向けて告げた。

 

「だとしたら、おまえさんがどうする?」

「――禁手(バランス・ブレイク)

 

 返答は、破滅の輝光だった。

 周囲に散らばっていた屍が力の解放に巻き込まれ跡形もなく消失する。少年の殺意に呼応するかのように大気が軋みを上げ、帝釈天の肌に突き刺さる。

 その様子を見ながら、彼は笑っていた。愉快に軽快に、びっくり箱でも見るように。アロハシャツを翻しながら、サングラス越しに見つめる睥睨された瞳は喜悦に歪んでいた。

 力の解放と共に舞い上がった土煙が、渦を巻いて一点に収束していく。それは急激な力の上昇によって大気が吹き飛ばされ真空となった空間に回りの大気が戻ろうとして起こる現象。

 やがて煙は晴れ、その中心で佇む少年の姿を見て、ポツリと呟いた。

 

「英雄、という奴か」

 

 それも千年に一度現れるという逸脱者。努力や才能といった凡人ではどう足掻いても到達できていない境地に初めから辿り着いているまさに運命に選ばれたとしか表現できない存在。

 それも、今まで帝釈天が見てきたどの英雄よりも凄まじい素質を兼ね備えている。「所有するものに世界を制する力を与える」とされる伝説の神槍の正統後継者に相応しい。

 

「『原型・神葬の聖槍(ロンギヌスランゼ・アークタイプ)』」

 

 土煙の中から現れた少年が手に持っていたのは、黄金の神槍。生身の人間ならばそれを直視しただけで魂が焼け焦げてしまうほど聖性を発するその姿を前に帝釈天は笑みを浮かべる。

 

「俺はあいつらの一番上で、お兄ちゃんだ。俺があいつらを守らなくちゃいけないんだ。だから―――」

 

 構えは刺突の構え。足を大きく広げ、顔面を地面寸前まで近づけて槍を構えるその体勢は豹の如く。地面から見上げる双眸は男の姿を捉えて逃さない。

 帝釈天は何も語らずただ右手を突き出して手の甲を少年に見せつけ、人差し指だけをくいくいっと曲げる。

 ”とっとと掛かって来い――”。その挑発に少年は眼を見開き、踏み込んだ地面が陥没するほどの勢いで跳躍した。

 

「おまえが、死ね―――ッッッ!!」

 

 繰り出される突撃は、流星そのもの。

 黄金に輝く神槍が少年の姿を掻き消すほどに輝き、少年の踏み込みは武術でいう縮地と呼ばれる移動術と同義であり、誰にも教わる事なく身に付けたその素質は天賦の才と言えるだろう。

 並の者ならば躱すことなど理解する間も無く即死させる一撃。

 

「いい攻撃だ。だが、()を殺すには才能だけじゃ不可能だぜ? クソガキ」

 

 だが、その刺突は決して帝釈天に突き刺さる事なく寸前で回避され、振り切った無防備な少年の頭にポンっと男の掌が置かれていた。

 

「――、ッ――――!!」

「HAHAHA! 照れんなよクソガキ」

 

 それを瞬時に察した少年が神槍を横に薙ぎ払うが、帝釈天は既に間合いにはおらず、少し離れた廃墟の柱があった箇所の上に佇んで笑っていた。

 少年が次こそはと再び槍を構えるが、帝釈天はやめとけと手をひらひらと動かして静止させる。

 

「今のおまえじゃ何百回やっても俺には傷一つつけらんねぇよ。素質だけで殺せるほど俺は弱くねえってさっきのでおまえさんも理解してんだろ?」

「……だから、どうした」

「はァ? 言っても分かんねえのかよ。無駄だって言ってんだよ俺は。それともそんなことも分かんねえくらい頭アッパッパーかクソガキ?」

「無駄だとか、そんなことは関係ない」

 

 ギリィ、と少年の握り締める槍が力みによって震える。少年の眼には不安と恐れが宿っていた。力に酔っているわけでも、現実を理解していないわけでもない。

 目の前の存在との力量差をはっきしと理解した上で、それでもなお挑もうとしている。

 それは何故か? ――そんなものは決っている。

 

「俺以外に誰が、あいつらを守るっていうんだ。俺が逃げたら、誰があいつらを守るんだ。別に、勝てると思って戦っているんじゃない。勝たなきゃいけないから、戦うんだ……!!」

 

 全ては、守る者のため。

 この貧民層において、ただ奪われるだけの弱者である彼らを守るために、少年は戦おうとしていた。

 その姿に、帝釈天の口角が吊り上がった。

 

「――――く、か」

 

 ――ああ、何となく分かった気がする。

 今まで他の神々が英雄に力を貸している様を見てなんと愚かなと嘲っていたが、その気持ちが僅かに理解できた。

 なるほど、これは()()()()()

 この人間がどういう生き様を見せるのか。どのような死に様を迎えるのか、見たくなった。

 この人間の―――英雄譚を見てみたい。

 

「呵々、カカカカッ、ヒャーハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハァァァァッッ!!」

 

 愉悦が零れ落ちる。神としての本質がざわめき、少年の持つ神槍にも劣らない覇気が大気を震わせる。

 眼前で荒れ狂う神気を前に、少年は覚悟を決めた表情を浮かべ槍を構える。その姿に更に笑みが深まる。

 帝釈天は哄笑を止めると、目の前の小さな英雄に向けて言った。

 

「クソガキ、おまえ世界に興味はねえか?」

「……は?」

 

 唐突に告げられた言葉に少年は首を傾げる。

 

「おまえほどの才能が在るなら世界でも充分にやっていけるぜ? なんでこんなくそったれなところにいつまでも燻っているんだよ」

「……俺がいなくなったら、あいつらが死んじまう。それに、俺はずっとここで生きてきた。ここが俺の居場所だから……」

「そうかいそうかい。――なら契約しねえか?」

「契、約……?」

「そう、カミサマとの契約。カミサマは基本嘘つきだが、契約にだけは絶対だ。おまえん所のガキ共を俺が引き取ってやるよ。温かい寝床に飯、なんなら教育だって受けさせてやるよもちろん、対価は貰うけどな」

「……おじさんは、俺に何を求めている?」

「なに、簡単なことだよ」

 

 帝釈天は柱の上から飛び降りると、少年の目前に居りさった。そして彼と視線が合うようにしゃがみ込み頭に手を乗せ、

 

「―――おまえの覇道を見せてみろ。俺はおまえの紡ぐ英雄譚が見たくなった」

 

 高らかな笑顔を浮かべながら、彼は少年に言った。

 その言葉に、少年は思案するように眉を潜めたが、やがて決心したようにこくりと頷いた。

 

「その、覇道っていうのが何なのか分からないけど……あいつらを助けてくれるなら、何だってしてやる。ただし、もしあいつらを傷つけるような真似をしたら、絶対にお前を殺す」

「HAHAHA! 言っただろう? カミサマの契約は絶対だって。他に嘘ついてもそれには絶対に嘘つかねえよ俺は。とりあえず、契約成立だな」

 

 呵々、と帝釈天は笑うとみすぼらしい格好の少年にお土産で買っておいた服を懐から取り出すとそれを被せた。

 「わっぷ」と歳相応の驚いた声を上げて少年がそれを受け取ると、おずおずと上に羽織る。

 その仕草が先ほどまでとは違い愛らしかったから帝釈天は失笑すると、ふと未だ少年の名前を聞いていなかった事を思い出した。

 

「そういうや、おまえ名前は何ていうんだ? いつまでもクソガキが味気ねえだろ」

「……ない」

 

 ポツリと、聞き逃してしまいそうな声量で再度少年は呟いた。

 

「名前なんて、ない。生まれてすぐに捨てられたから」

「へぇ、じゃあ仲間からは何て呼ばれてんだよ」

「お兄ちゃん。俺が皆の中で一番年上だから」

「呵々! そいつは難儀だなァ。そうだな、何なら俺が名付け親になってやろうか? うんそうだなそれがいい!」

「……何でもいいけど、人の話聞いてからにしろよ」

 

 不服そうに少年が愚痴を零すが、もはや帝釈天の耳には入っていなかった。

 子供に名前を付けた経験などなく、初めてだったのでどうしようかな~と色々思案していると、ふと視界に少年に羽織らせた漢服が目に止まった。

 それを見て、この少年が名乗るに相応しい名前を思いつく。

 

「よし、決めた。―――曹操。お前は今日から曹操と名乗れ。覇王には相応しい名前だろう」

 

 彼を見上げる瞳は曇りなく、何処までも透き通っている。

 この少年――二代目曹操となる覇王の物語を、見てみたくなった。

 

 

 

     ◇

 

 

 

 中国の仙人が住むとされている山脈の奥深く。誰も入らぬ未開の地と化したその場所で、爆撃で受けたかのように焼け野原と化した広場に二人の男性が立っていた。

 一人は丸いサングラスを掛けた五分刈り頭をした上半身は裸で短パンを着た半裸の男性。

 もう一人は学生服の上に漢服を着込んだ、黒眼黒髪の()()

 

「だァ~、もうやんねえ。あー疲れた。ったく、何が最後に稽古をつけて欲しいだ。とんだくたびれ損じゃねえか」

 

 男性はもう一歩も動かないと宣言するように大の字で寝転がった。その様子を見ていた青年は苦笑すると手に持っていた槍を落とした。

 

「十年掛けて、傷一つか。ままならないものだな」

「な~にがままならないだ、クソガキが。何の神秘も宿していない棒きれだけでこの俺様に傷付けておいて何様だよこんちくせう。数十世紀生きている自分が情けなくなるだろうが」

 

 男性はしばらく愚痴を続けると、やれやれと嘆息しながら起き上がった。そして目前で荷物を背負って出ていこうとしている青年に向けて言った。

 

「それで、おまえさんはこれからどうする気だ?」

「……まだ。俺には覇道がなにか分からない」

 

 だから、と青年は静謐に微笑を浮かべ、

 

 

 

「―――手始めに、世界を救ってみるよ」

 

 

 

 傲岸不遜に、大胆不敵に、青年――”曹操”は宣言した。

 

「……呵々ッ」

 

 その様子に、男性――帝釈天は口角を吊り上げ喜悦を浮かべる。

 それでこそ、この男だと。

 それでこそ、俺の見込んだかいがあるのだと。

 

「手始めにしちゃ、随分壮大じゃねえか」

「といっても、まだ何も考えていないんだけどな。どうやって救うか、まあ大きい事を考えていればその内小さな事を見つけられるかもしれないし、とりあえずの第一目標に過ぎないさ」

「まあ、やってみろよ。案外おまえなら楽勝かもしれねえぜ?」

「仮に、(あんた)を殺すとしても?」

「神を殺す英雄譚ってのも珍しいしな。まっ、俺様は死なないけど」

 

カカカ、くくく、と二人の笑い声が木霊する。するとそこへ、「曹操ォ――!」と彼の名前を呼ぶ声と共に一人の少年が飛び込んでくる。

 

「なにしてるんだよ曹操! もう皆準備万端で、残りは曹操だけなんだよ! ほら、そこの胡散臭い駄目男なんか無視して早く行こうよ!!」

「ああ、悪かったなレオナルド」

「HAHAHA! 誰が駄目男だチビ助。また女装させんぞォ――!」

「いやァァァァ!! 犯―さーれーるー!!」

 

 逃げろォおおお! と叫びながら走り去っていくレオナルドと読んだ少年を見つめながら、曹操はそっと嘆息した。

 

「……本当なら、俺一人で行くつもりだったんだけどな」

「まあ仕方ねえだろ。言っとくが俺は契約違反はしてねえからな? あいつらがお前に付いて行くか決めたのはあいつら自身だ。俺に文句を言っても意味ねえぞ」

「分かっているさ。……まったく、あいつらは普通の生活を送れるようになったのに、どうして俺なんかと一緒に来たがるのかね」

「愛されてるからだろ。それに、英雄の元には英雄が集うもんなんだぜ?」

 

 故に諦めなと帝釈天が哄笑すると、曹操はやれやれと諦めたように苦笑混じりの笑みを浮かべる。そして、ふと告げた。

 

「帝釈天。一つだけ、何がしたいか決めたよ」

「何だよ?」

「まず、仲間を集めてみるよ。あんたが俺にしてくれたように、俺も特別な力のせいで迫害されている奴らを守ってみる。余計なお世話かもしれないけどな」

「……そうかい、まあ言っとくが俺が助けたのは面白そうだったけどな」

 

 帝釈天は訂正はしたが、否定はしなかった。夢物語だと笑わなかった。

 もし、仮にそれが実現できたら。それをなせたら、彼は間違いなく英雄だろう。

 

「で、何て名前にすんだよその組織名は。英雄教団とかか?」

「いや、一つ考えている名前があってな。人間も怪物も関係ない、神に、運命に抗う者達――『バベル』っていうのは、どうだろうか?」

 

 嘗て、まだ言語が一つしかなかった時代。

 そこで人々は互いに手を取り合って神にも負けないよう一つの塔を建てようとした。

 それは確かに神の怒りに触れてしまったかもしれない。それでも、彼らは手を取り合って彼らだけで天からの救いに頼らず生きようとしたのではないか。

 そう思うからこそ、曹操はその名前こそが相応しいと感じた。

 

「……そうかい、おまえがそう思うなら、それでいいんじゃねえの」

 

 それを横目で見て理解したからこそ、帝釈天は微笑みながら頷いた。

「曹操ォ――!」と彼を呼ぶ声が遠くから響く。声の方を向けば、そこには彼を待つ貧民層の頃から苦難を共にしてきた仲間達の姿が。

 特別な才能があろうがあるまいが、たとえ奇形だろうと化物だったとしても、彼らは互いを信じ、励まし合う真実の絆の姿がそこにあった。

 故に、もう迷うことなど何一つ無く。

 

 

 

「それじゃあ、行ってくるよ、おじさん」

「おう、精々暴れてこい、クソガキ」

 

 

 

 別れの言葉は端的だった。

 それでいいのだ、これが永遠の離別になる訳でもない。歩く後ろ姿に嘗ての姿を思い出し、懐かしみながら彼らの後ろ姿を見えなくなるまで帝釈天は見送った。

 

「……あーぁ、これじゃあアザ坊の事も馬鹿に出来ねえなァ」

 

 帝釈天が曹操を拾ったように、同時期に白龍皇を拾ったと噂されている堕天使の総督の事を思い出し苦笑交じりの笑みを浮かべて天を仰ぐ。

 爛々と輝く太陽は、まるで嘗てのような憎たらしい晴天だった。

 

「まあ、精々気張れやクソガキ共。おまえらの未来は険しいが、まあ何とかなるだろ。今回ばかりは碌でなしなこの神仏様がおまえらの旅を祝福してやんよ」

 

 だから、抗ってみせろ―――俺のガキならな。

 

「さあ―――退屈せずに済みそうだぜ。なあ、曹操?」

 

 太陽を握りつぶすように陽射しを手で遮り、サングラス越しに睥睨した瞳で彼らの行く先を眺めながら、帝釈天は嘲笑の笑みを浮かべた。

 




何番煎じか分からないハイスクールD×D曹操改変。
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