シルフィードに乗ったタバサらが先導し、アルビオンに向かっている途中、コロトラングルの背に乗ったハジメとトキオは違和感を覚えた。目線の先に目的地付近で軍艦のようなものが空を飛んでおり、しかも数が多い。
「そういえば、ここじゃ飛行も魔法か何かだったな」
「ハジメちゃん。まさか」
「ぶっ壊すぞ。このガラクタ達」
コロトラングルに試しにアイスブレスを吐くよう命じてみると、複数を氷塊にし撃墜してみせた。世界樹の防具一式のすごさが身に染みてくる。砲弾がこちらに向くが、射程で勝るこちらに攻撃なぞ当たらない上に一方的に攻撃できるため大した問題ではないのだが、少しスピードが遅いことに気がついた。
「奴らもだがコイツ飛ぶの遅いのか?」
昔レオンが見かけた閃光の鳥の話を思い出す。しかし、同時にふと思い出した。
「一瞬しか見てないって言ったからサイズわからんか」
大方数を減らしたところで敵軍艦は撤退を始めた。好機とみなし、一気に目指す。
「突っ込むぞ!」
コロトラングルで結婚式場に突撃し、その勢いのまま着地する。そこで見たのは対峙するワルドとレオン達だった。
(ぐっ、万事休すか)
ワルドは焦っていた。式の途中で謀ったウェールズ暗殺をギーシュの使い魔に感づかれ体当たりで杖を弾かれ、挙句、レオンのロングスライトを直撃しかけたのだ。その後レオン率いるメンバーと戦っていたが、編在を出し攻撃しようとした矢先、エイもどきの化け物による突撃と同時にハジメ達がさっそうと現れたのだ。いくら彼でも3人の実力者を相手にするのは厳しいものがあった。
「よぅ、先日は邪魔されて最悪だったぜ」
「やはり気がついてたか」
「予想通り、ロリコンは腹黒が多い。いくら増やそうが俺達が相手じゃ厳しいだろ」
「甘い!レコンキスタの艦隊がこちらに来ているのだ!」
「あぁあのガラクタ船か・・・さっき大半撃墜して逃げて行ったぞ」
穴のある方向を見る。確かに何一つ見えない。
「諦めるか、ここで〆られるか、どっちでもいい。選べ!」
氷雨丸を抜き、静かに構えた。今まで以上に漂う殺気に、思わず身震いしてしまった。
「くそ!次こそは・・・」
途端、ワルドの目の前に、ハジメ達を誘った光が現れ、彼を包み込んだかと思えば、姿が消えてなくなった。
「なんだと!?」
「キャッ!?」
「うおっ!?」
世界樹を旅した3人にも同じ光が現れ、彼らをどこかに誘っていった。この事態にルイズ以外の生き残ったメンバー全員、呆然とするしかなかったのだった。
「もう、どうなってんのよ!」
しばらくして風竜の主がいないことに気がつく。しかし、どうすることもできなかった。
ハジメが目を覚ますと、そこは見慣れた場所だった。自分達の屯所がある、ミズガルズ図書館の別館だ。
「よし、成功だ!やったぞ!」
両手を上げて喜ぶ男、イサミとシンセングミの隊士一同。
「やったぜハジメちゃん!連れ戻すのに苦労したぜ全く!」
「局長、これは!?」
大量破壊兵器ギムレーを武装解除し、胴体に例の鏡がついた機械が庭に堂々と置かれている。
「エトリアの遺跡、グラズヘイムにあるマークって機械にフレドリカがなんとかならないか相談したらよ、召喚装置ってもんの設計図を作って、みんなで一斉に作ったわけよ。っで、複数実験して転送してきたのが偶然、ハジメちゃん達が当たったってわけ」
「ありがとうございます、局長」
「良いってもんよ。でも、付録が来ちまった」
捕獲されたイノシシの如く、裸になって全身を縛りあげられたワルド。さすがのハジメも哀れにしか見えなかった。
「コイツから聞き出したいことがあるから、借りてもいいな?」
「はい」
こうして、無事かどうかは不明だが、自分達の世界に帰ることができた。不安になったハジメは左手の籠手を外すと、何の烙印も刻まれていなかった。恐らく、とんでもない方法で帰ったため、契約破棄になったのだろうとハジメは思い、もう一度籠手をつけ直した。
「さてと・・・話してもらえるな髭野郎」
「こ、ここは?」
「知らねぇのか?ここはミズガルズ図書館って有名な知識の宝庫だ」
「さぁ・・・貴殿も私のことを」
「はいはいしょっちゅう名乗ってるだろ?ワルド君よぉ」
イサミの声が呆れていることがわかる。
「俺さぁヨシワラ屋って店で予約した女の子待たせてんの。速く喋ってもらえないか?」
このシンセングミ局長の目は笑っているように見えるが、眼光までは笑っていなかった。降参した彼は自分達のいた世界の話をする。
「つまりアンタのいた世界じゃ魔法って便利なモン使える野郎が威張り散らしているのが正義ってか?冗談じゃないよ、そんな世界にハジメちゃん達がいたってことかよ?」
「その通り。だが、杖が無くては魔法は使えん。とりあえず縄を」
「だーめに決まってんだろ?っと、そろそろ行くか。トシ、続き頼んだぞ!」
隣の部屋にいた冷たい印象の美男子が入れ替わるように入ってきた。彼はトシゾー・ヒジカタ、シンセングミの副長を務める男だ。
「大方聞こえたからわかる。・・・しかし不幸だな君も、サイトウ君は指折りのブシドーだ。生半可な実力で挑むのは自殺行為だってわからなかったのか?」
「ぐっ・・・」
「まぁそんなことはいい。詳しく話してほしい、そうすれば悪いようにはしない」
「話か。まぁいいか」
長い取り調べの後、ワルドは地下牢に入れられ、トシゾーは調書を記すことにした。それをハジメに見せると、彼は納得した顔で返した。
「トシさん。確かに月が二つある世界でした、しかも格差社会が厳しい」
「カレドニア公国及び周辺諸国とは、大きく違うみたいなのは確かだ。しかも魔法を使えない連中を殺しても罪に問われない・・・彼らは社会の成り立ちを知らないまま、暮していることがわかる。馬鹿な連中だな」
「はい。同感です・・・なんでしょうか?」
「??サイトウ君、外が騒がしいな」
集まる隊士達の視線の先には、大振りな杖と一緒に青髪の小柄な少女が眠っていた。ハジメを兄と慕っていたタバサだった。
「おい、しっかりしろ!」
「知り合いかね?」
「彼女はタバサ。トキオの数少ない友人だ」
「ほぅあの子の友達か?そっか友達作れるようになったのか、感心したな」
普段冷静な彼も半ば驚いている。
「彼女を医務室に運びます」
「わかった。翌日聴取する」
翌日の朝。見たことない部屋に寝かされていたタバサは、自分の枕元に座る青年の姿を見て驚愕する。
「布団はお気に召されたかな?私はトシゾー・ヒジカタ。安心したまえ、サイトウ君の仲間だ」
「兄様の、味方?」
「信じ難いだろうが、ここは君の知ってる世界とは異なる。地位こそあるが基本的に平等かつ魔法が存在しない。しかし、巫術ならある」
巫術の話なら探偵オースティンの事件簿とトキオから聞かされているため、どのようなものかは想像できる。
「杖は?」
「それなら、道場の中に保管してある。ところでだが、君達はサイトウ君達と何をしていたか、教えてくれ」
彼女は任務のこと、学園生活のこと、トキオから聞いた話で盛り上がったことを話した。ワルドが裏切ってルイズと王子を殺そうとしたことも話した。
「・・・そうか、あの髭は処刑か懲役以外になさそうだな。婚約者すら手にかけようとしたんだ、情けはいらないよ」
トシゾーは一息置き、本題に入った。
「実は、君に道場に来てもらいたい。杖を返すついでに試験を受けてもらう」
「試験?」
「シンセングミに入らないか?トキオさんが推薦してくれたんだ」
推薦状を見ると、確かに彼女が書いたものだとわかる。タバサは急いで支度し、トシゾーに連れられ道場に向かった。広い道場の真ん中にいたのは、ブロンドの分厚い鎧を身に纏い、斧と大楯を持つ少女。彼女はエミリア・モント、3番隊のパラディンだ。
「さて、タバサ君。君には彼女と戦ってもらいたい、無論、彼女はそんな軟じゃないから気を引き締めていきたまえ」
トシゾーが杖を彼女に返し、両者準備ができたことを確認する。
「始め!」
号令と共にエア・カッターを唱え牽制する。しかし躱すどころか真正面から攻撃を受け、大楯の一撃、シールドバッシュを当てた。後方に飛ぶことで衝撃を吸収できたが、それでもダメージは大きい。
(生半可な攻撃は無意味)
今度はウインディ・アイシクルを唱え勝負を決めようとするが、フリーズシールドのスキルで無効化される。
「読み通り」
すかさずエア・ハンマーで攻撃し、叩きつぶした。だが、彼女の体力の半分くらいしか減っていないことに気付く。エミリアは笑ったかと思えば仰向けに倒れた。
「そこまで!タバサ君、合格だ」
トシゾーの一喝で勝負は終わりを告げる。
「すまなかった。魔法というものを知りたくてトキオさんに推薦状を書かせたのだ、許してほしい」
「いい。兄様とトキオが一緒だから」
「副長~頑張ったわたしにご褒美は~?」
「朝飯の時間だ、さっさと行きたまえ」
3人は朝食を食べに食堂に向かった。
3番隊に新しく入隊したタバサはハジメ、トキオとともにイサミに呼ばれた。
「体はいいのかい、お嬢ちゃん?」
「大丈夫」
「なら良いんだ、実はな仕事の依頼があってだな。珍しい客だぞ」
襖が開いたかと思えば、ゆったりとしたシックは色彩の服にカールのかかった髪、キセルを咥えた男が現れた。
「本当はレオン君に頼みたかったけど、知り合いを紹介されてきたんだ。よろしく」
「どなた?」
「小説で知ってると思うけど、オースティンよ」
こうして、無事に帰ることに成功したハジメ達だったが、今度はタバサを元の場所に帰す方法を探すのであった。
そして逆パターンである