実力は確かだが粗暴なのが玉に傷のブシドー
意外に友人が多い
CⅤ 咲野俊介
月が二つある。一人刀を振るうハジメがまず夜空を見上げた感想だ。
「これも報告書に書いておくか」
上段の構えからのツバメ返しの繰り返すと、見計らって小さな小屋に戻る。
「先生。アンタ寝なくてもいいのか?」
「いやもう少し」
目の前にある大きな金属の箱。コルベールはその箱を工具を用いながら組み立てている。
「これは何だ?」
「これが完成すれば、魔法の使えない人でも生活が豊かになるものです。醜い派閥争いよりも、これの相手の方が有意義ですから」
「そりゃ楽しみだ。俺のいた世界でも似たようなものがあったな」
「なんと!?詳しく話を」
「落ち着け、その話は明日でもいいか?」
「す、すいません」
どうやら彼は生粋の職人のようだ。そう感じたハジメは刀を抜き、彼の前に見せた。
「その代りと言っては難だが、これはとある街の職人が鍛えたものだが、素材はなんだと思う?」
「すごい冷気を感じますが、魔法が掛かっているわけではないですね。鋼ですか?」
「氷竜の翼骨だ。しかもとびきり強い竜のものだ、俺と仲間で倒した記念でね」
鞘に戻ると少し誇らしげに話す。当時、トキオをはじめ、他三人の仲間とで協力しあい氷竜を倒した時に逆鱗と共に入手したものを一緒に売り払った際に手に入れたものだ。その攻撃力はお墨付きで、これで他の竜も退治したこともコルベールに話した。
「ほぅほぅ、もしかしてその防具も?」
「この胴と兜は違う。これは・・・おっかいない獣を倒した際に得た素材で作ったものだ・・・すまんが話は後でいいか?」
「あ・・・そろそろ夜が明けますね」
結局一眠りもできなかったハジメとコルベールであった。一方のトキオは、ルイズに自分達のことを話す。ミズガルズ図書館での仕事のこと、カースメーカーが特殊で誰もが呪言を使えるわけではないこと。そして、世界樹と呼ばれる巨大な樹の存在を話した。
「ねぇ、世界樹ってトキオから見てどんなものなの?薬草や食材、果ては鉱石まで産出するなんて、聞いたことないわ」
「基本的には無害だと思うわ、人々の支えになってるのも確かだしね」
彼女は世界樹の良いところを話したが、黒い側面までは話さなかった。
「明日授業は?あるなら寝なさい」
ベッドに入った彼女の傍らに座る。なかなか寝付けないルイズを見て、トキオは呪言で彼女を寝かしつけた。
「呪言の使い方、これなら問題ないわね」
翌朝、寝起きの悪いルイズを優しく起こすと今度は着替えさせるよう命じられるが、鈴を鳴らすしぐさを見せると怯えた表情で急いで着替えた。
「私はあくまで使い魔じゃなくて同居人。もっとも、ここの生徒じゃないから家事くらいは手伝うわ」
「あ、ありがと・・・」
トキオと入れ替わるように入口前で待っていたハジメと合流する。彼の表情に曇りこそないが爽やかさもない。
「仮とはいえ一緒にいることくらいはできる。トキオと仲良くできたか?」
「トキオの鈴にトラウマが・・・」
「なるほど、封じを受けたか。君が変に突っ張ったんだろ?」
「なんでそうなるのよ!」
「彼女と旅してるからだいたいわかる。確かえっと・・・」
「ルイズ・フラ・・・」
「長そうだからルイズでいいな。改めて名乗るが、ハジメ・サイトウだ」
「ハジメね、もしかしてアンタ名前覚えるの苦手?」
扉からトキオの呪言が効かなかった色気のある女性と、使い魔だろうか真っ赤で大型のトカゲが現れる。ルイズとトキオより高いが、ハジメに比べると低い。彼女はルイズを見て微笑んだ。
「おはよう、ルイズ」
ルイズは露骨に彼女を睨む。
「おはよう、キュルケ」
「仮使い魔のハジメだ、よろしく」
「仮?」
「こいつに召喚された日に、ここのスケベジジイと対談してな、契約しない方針で決まった。とはいえ腕に自信あるから、君の足元にいるサラマンダ―相手にしても、ひけは取らんと思うぞ」
鯉口を切り冷気を放つが、すぐに収めた。ハジメはキュルケと呼ばれた女性の実力を肌で感じる。
(できる・・・エミリアやゲンナイと比べても遜色ないだろうな)
「失礼した」
最初は人間を召喚したことを笑おうかと思ったが、彼のただならぬオーラを感じ考えを改める。
「あなたのいた場所でもいたの?」
「いたさ。ただ、サイズがさらにデカい」
サラマンダ―がハジメにすり寄ってくる。彼はサラマンダ―の頭を撫で、完全に手なずけてしまう。
「怖がらせてすまなかった。もうしないから安心しろ」
その様子に二人は驚くが、ハジメは
「朝飯食ったか?」
「「あ・・・」」
この学園の食堂は広く、百人は余裕で座れるほどの広さがあった。出される食事も豪勢であり、いかにも地位の高い人間が好みそうなものが並んでいた。世界樹を探索していたときの食事とは大きく違う。
(一見、品格がありそうだが多くは苦労知らずのボンボンばっかりだろうな・・・コルベール先生を見習うべきだが、俺が言っても平民扱いだろうが・・・クソッタレ)
コルベールからこの世界のことを聞かされたが、内心反吐が出るようなものだった。魔法が使えない平民は一生平民であり、魔法の使える貴族に虐げられることがほとんどらしい。生まれついた時から運命が決められた世界。身分関係なく登用し、実力があれば隊長に就けるシンセングミのしくみと相反していることを改めて知った。
(飯食う前もブリミルやら女王やら宗教色が濃いな・・・いざ守れるのは自分自身と仲間だけだ、ブリミルとやらではない)
世界樹の激戦区を生き抜いたハジメにとって神は存在しない。世界樹を作った男、ヴィズルを思い出す。これも聞いた話だが、彼は研究によって世界樹の暴走を止めようとしたが結局それをハジメの友人のパーティーに託した。
(トキオは飯食ったかな?賄いとかもらっていればいいが)
その頃トキオは調理場で賄いをもらっていた。手伝いをしたお礼らしい。
トキオと合流した二人は教室に入り、こちらに注目するが一部除いて顔色を悪くする。呪言がよっぽどキツかったようだ。
「何か悪い事したかな?」
「さぁ、何もしてないだろう」
そう言いながら辺りを見渡すと、フクロウのような一般的な動物はもちろん、目玉に翼とつけた生き物や足の多いトカゲ、昔倒した魔物によく似た個体もいたが、特に気になったのは金髪の美少年といる黄色いハリネズミ。ふとハジメを見つけるとこちらに寄ってきた。間違いない、ハイ・ラガードの世界樹の迷宮で幾度もなく助けた個体だ。
「久しいな、イタズラ好きめ」
「元気そうだね」
トキオが抱っこすると、挨拶がわりのハリ攻撃を仕掛け、主の元へ戻っていく。性格も変わっていないらしい。
「変わんないね」
「そうだな」
使い魔のいたずらに怒りの表情を見せない意外性に生徒の一部が呆然と見つめる。どうやら自分達が危険人物のように見えたらしい。
(誤解・・・解けたか?)
紫色のローブに身を包み、帽子を被ったふくよかな中年の女性が教室に入ってくる。彼女は教室を見渡すとにっこりほほ笑んだ。
「皆さん、春の使い魔召喚、どうやら大成功のようですね。このシュヴルーズ、こうして春の新学期に様々な使い魔達を見るのがとても楽しみなのですよ」
生徒達が全員席に座る様子から先生のようだ。しかし、ハジメ達を見た次の発言により場の空気が一気に変わる。
「おやおや、変わった使い魔を召喚しましたね?ミス・ヴァリエール」
この時、生徒達の大部分が笑い出した。ハジメはゆっくり彼女に詰め寄り、問いただす。
「さっきの発言、少し軽率ではないでしょうか?教職なら、言葉の使い分けくらいしっかりするべきです」
「す、すいません」
「それともう一つ、学院長は今どちらに?」
「学院長室かと・・・いったい何を?」
「あなたのことではない、一発ぶん殴って来るだけです」
この男は危険だ。彼の覇気を感じたシュヴルーズはどうにか説得して止めようとする。
「それだけはいくらなんでもダメです。失言ならミス・ヴァリエールに謝ります、それで許してください」
「・・・わかりました。俺もカッとなってしまい申し訳ありません」
「い、いえ、私の方こそ」
どうにか丸く収まったが、それをぶち壊しにする野次が飛ぶ。
「平民が悪いぞ!土下座して謝ったらどうだ!」
それを言ったのは少し肉のついた男子生徒だった。さすがのハジメも堪忍袋の緒が切れ、素早く間合いを詰めると顎の付け根を掴み、握力を持ってへし折ろうとする。シュヴルーズは魔法で彼を止めようとするがトキオが制止した。
「いいかよく聞け、生き残る条件の一つに出しゃばらないことがある。命が惜しければその減らず口はやめろ、良いな?」
乱暴に放すとそのまま教室を出て行った。その様子を見たトキオは男子生徒に自分達が使う薬、ハマオプライムを渡した。
「貴族は偉いかもしれないけど、品格・力・精神力が全てそろって初めて敬愛されるものよ。だから野次はやめなさい」
「は・・・はい・・・」
この男子生徒、マリコルヌは呪文をしばらく唱えられなかった。
この時、本を読んでいた水色の髪の小柄な少女は二人の事を見ていた。彼らの力は本物であり、自分がもし本気で戦っても返り討ちにされるだろう。彼女は二人から技術を習うことを決意する。
(力が欲しい・・・)
残り三人のボウケンジャーも出す予定です、どの職業かはお楽しみに