ミズガルズの精鋭、ハルケギニアへ行く   作:MP5

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ブシドー
 刀を振るう攻撃に特化した前衛職。攻撃こそピカイチだが防御面が危ういため、パラディンやペットといった防御職と組ませることが多い
 


三話  身の程知らず

 気分を害したハジメはオスマンに会いに行っていた。丁度コルベールもいたため、これを機に先ほどの騒動を話す。

「ジジイが悪いわけじゃないが、礼儀知らずの自分を過剰評価するバカ共が多すぎる。社会が腐敗する典型的なパターンだ」

「そんなことが。貴族のボンボン共には手を焼いておるのじゃ、しかし、親が親だけに無駄に過保護なことがあっての」

「親は確かに子を守りたくなる。だが、その親が子供に誠意をもって接すればの話だがな」

 もっともなことを言われ黙り込んでしまう二人。

「トキオの親父なんかは酷かった。最初は化け物扱いして母親ごと独房に入れてから十数年後、娘にカースメーカーの才能があるとわかったら手のひらを返して娘と呼んだ。あの子は賢いよ、俺がどうしたいか聞いたら、家に残らずミズガルズ図書館で働くことを選んだんだ。要は都合よく親を名乗る奴は、親じゃないってことさ」

「・・・どうすればいいのでしょう?」

「簡単だ、学院生活での様子をありのまま話せ。うるさく騒ぐなら退学させればいい、俺が親ならアンタらを信じるさ」

 あまりにドライな回答に舌を巻く。ミズガルズでも同じようにしたのだろうか。

「もしかしてミズガルズでもそのようなことを?」

「俺は孤児だ、幼い頃からミズガルズの施設で育ち剣術を習い、任務先でトキオと出会った。親なら子供を責任持って育てるべき、そう考えてるだけだ」

 コルベールは彼の意外な返答に驚きを隠せなかった。オスマンだけは納得いった顔だが。

「それと。どうしてアンタほどの男が教員してるんだ?」

 そう言ってハジメは出て行った。その鋭い眼光は薄毛の彼の能力を見抜いていたのだった。

 

 

 

 

 教室は大惨事になっていた。原因はルイズが『錬金』の魔法を使い、失敗して大爆発が起きたらしい。多くの使い魔及び前列にいた生徒達に被害が及んだ。幸い軽傷で済んだが罰として掃除を命じられたのだった。悔しさのあまり、ルイズの目には涙が浮かんでいる。

「『ゼロ』ってそういうことなのね」

「成功率ゼロって意味よ、私ばっかり何でこうなるのよ!」

「これは私の勘だけど、別の才能があるかも」

「どういう意味よ!?」

 腹立つ感情をトキオに向ける。しかし、彼女はゆっくり話した。

「別の何かに特化してる可能性・・・私なら呪言、ハジメちゃんなら剣術ってところかしら。例えるならね」

 昼飯に間に合う時間帯で、どうにか瓦礫を片付け終わった。

「食堂で手伝いあるからまたね」

 トキオは食堂に向かい、陰でいつものローブではなく給仕服に着替える。厨房ではハジメが昼食を食べ終え、満足気に料理長の男、マルトーと交流していた。

「よぉトキオ、似合ってるじゃないか?」

 マルトーの言葉に反応しハジメが彼女に目線が向くと、赤面状態になり勢いよく抱きしめた。

「トキオかわいいぞ!」

「ハ、ハジメちゃん、目線目線!」

「あっ・・・」

 二人は恥ずかしそうに小さくなる。それを見ていたメイド達とコック達は大笑いし場が和んだ。

「すまんトキオ。詫びではないが手伝わせてくれ」

「じゃあ、シエスタと一緒にデザート配って。見てるから」

 黒髪ショートカットとそばかすが特徴的な少女、シエスタとともにケーキ配りすることになった。ケーキを乗せたトレイを持った男の姿を見てクスクス笑う生徒達。怒らないよう我慢していたが、こめかみがピクピク動く。

(ここは我慢だ俺、落ち着くんだ・・・)

 金髪にフリルをついたシャツを着た気取ったメイジの少年を見つける。この時あのハリネズミの主だとわかったが、仕事中なので声を掛けないことにした。

「なぁギーシュ、お前、今誰と付き合ってんだ?」

「教えろよ、ギーシュ!」

(ギーシュか・・・ハリネズミを大事にしてくれる人間ならいいが)

 シャツのポケットに差してあるバラを抜き、自分をそのバラに例えて酔いしれる。人格を疑ってしまったが、彼のポケットから紫の液体入りのビンが落ちた。ハジメはシエスタにトレイを持たせると、それを拾い

「ほれ、落としたぞ」

 振り向く素振りをしないギーシュにそれを前に出すと、彼は自分のではないと答える。取り巻きがモンモランシーなる人物が作ったものだと答え、彼女と交際してると結論づけた。ギーシュは真っ当から否定しているが、彼の背後に栗色の髪の少女が立っていた。すると彼女は泣きだし、ギーシュは弁解するが平手打ちを食らってしまう。それで終息するかと思いきや、今度は見事な金色の巻き髪の少女が歩いてくる。またしても都合の良い弁解をして収めようとするが、さっきより高威力の平手打ちを食らった。

(飛んだとばっちりだ、シエスタ下がれ)

 目で合図しその場を去ろうとするが、ギーシュに止められる。

「待ちたまえ」

「アンタのだって認めるか?」

「君が壜を拾ったおかげで二人のレディの名誉が傷ついた、どうしてくれるのかね?」

「・・・俺のせいとでも?どう考えても貴様が悪い、場違いだ」

 友人達からの野次が飛び、ギーシュは赤っ恥をさらした。

「君は確か、『ゼロ』のルイズの使い魔だったな。主も主ならつか・・・」

 ハジメは睨みながらギーシュの胸倉を掴み

「黙ってろクソが、二股した貴様に名誉なんざない。否定するならここで俺と喧嘩したって構わん、あのハリネズミの主だからマトモだと思っていたが、検討違いだった」

 乱暴に投げ捨てた。

「ヴェストリの広場で待つ、ケーキ配ったら来たまえ」

 ギーシュはそのまま食堂をあとにする。取り巻き達に道を聞き、ハジメはヴェストリの広場に向かおうとするが、仮主であるルイズ、一部始終を見ていたシエスタが止めに入ろうとするが制止を振り切った。丁度トキオも厨房から出てきて二人に声を掛ける。

「大丈夫よ、ハジメちゃんはキマイラに圧勝したことあるから」

 

 

 

 

 ヴェストリの広場は魔法学園の敷地内、「風」と「火」の塔の間にある中庭の事である。西側に位置する中庭は日中でも日が射さない為、決闘にはうってつけの場所だ。

「諸君!決闘だ!」

 ギーシュがバラの造花を掲げると、大勢の野次馬達からの盛大な歓声が湧き上がる。怒りがピークに達していたハジメは腰の刀、氷雨丸を抜く。

「さっさと始めろ」

 バラの造花を振るうと、その花びらが媒体なのか、人間と同じくらいの甲冑姿の女戦士を模したものを召喚する。

「なんだこれ?まさかゴーレムじゃ」

「御名答、平民でも知ってんだ?」

「アホか。俺はそいつの数百倍デカい奴を相手に戦ったことあるぞ!」

 先手必勝とばかりに下から上へとゴーレムを斬り上げ、上段の構えを取る。ゴーレムがチーズの如く斬り裂かれた。

「青銅か・・・脆いな」

 ハジメの口元が歪む。以前禁忌の森で戦ったゴーレムと違い非常に弱く、数で攻めても安心できると読み、すぐに全てに対応できる構え、無双の構えを取った。

(・・・嘘だ、あっさり斬られた・・・こうなったら数で)

 ギーシュは焦って複数体のゴーレムを召喚し攻撃させる。しかし、バラバラで連帯の取れていない攻撃は児戯に等しくハジメに当たらない。それどころか身体同士が複雑にぶつかり合い、身動きの取れない状態になった。

「奥義、抜刀氷雪」

 本来なら居合の構えからなる奥義を上位互換である無双の構えから放たれた冷気で一網打尽にしてみせた。ハジメの戦闘力を前にギーシュは腰を抜かし動けなかった。

「どうした、最初の余裕がないぞ?だったら・・・地獄で詫びな!」

 とどめの無双連撃を放とうとしたその時、横から主を庇うようにハリネズミが現れた。一寸で技を止め、意味を理解したハジメは刀を収めた。

「ヴェルダンデ・・・どうして?」

 ハリネズミ改めヴェルダンデが全身を使ってジェスチャーで説明する。主と戦っている相手は自分の命の恩人であり並外れた実力者であること、感覚を共有していたおかげで駆けつけることができたこと、そして明らかに主に非があることを訴えた。

「それ本当なのかい?」

「あぁ。それについては話してやるが、負けを認めるか?」

 首を縦に振り、造花を収めた。

「ちゃんと二人に謝れよ、難なら俺も一緒に行くから」

「大丈夫、そこまで子供じゃない」

 拍手と喝采が周りから送られ、決闘が終わった。一匹の使い魔のおかげで無傷に済んだのが奇跡だった。この時、遠見の鏡で見ていたオスマンとコルベールは胸をなで下ろしたそうだ。

 

 

 

 

 その日のうちに被害者に謝罪したギーシュは、自室でハジメの話を聞いた。彼からしてみればその内容の多くは信じがたいものであった。

「人間が魔物に・・・」

「幸いそこのハリネズミは違う。だから安心しろ」

「よかった・・・」

「それとこいつはイタズラ好きでな、時々噛んだりハリで刺してくる。何、そこまで強くないから安心しな」

 ヴェルダンデを撫で、今度は世界樹を冒険していた人々の一部を紹介した。最初に話したのは自分の職業であるブシドー。構えが様々あり、それぞれ違う特色があること、攻撃的で防御はほとんど考えていないことを話した。

「そういや、メイジって剣振ったりしないんだって?身体鍛えておいた方がいいと思うぞ?精神力尽きたらお終いだ」

「そういう野蛮なことは」

「考えてみろ、武器も使えて魔法も使える。死角がほとんどないと無いし、戦いの選択肢が増えると思わないか?」

 ハジメの抜刀氷雪を見たギーシュはその言葉に納得する。もっとも、あれは魔法ではなく、錬金術を応用したちょっとした手品だが。

「それに、俺は本来抜刀氷雪は使わん。これで使えるようにしているだけだ」

 懐から取り出したのは手のひら大の宝石。これはグリモア石と呼ばれるもので、装備していれば修行なしでも行うことができる。

「これ以外にも多くのグリモアがある。興味があるならこれをやる」

 野生の勘、レイジングエッジ、ヘヴィストライクのグリモアを渡す。

「手元に持ってるだけで効果が発揮される。強くなりたいなら、相手したっていいぜ?」

 この日から彼はハジメの舎弟ポジションとなった。




初めて世界樹の迷宮をやる際は、絶対に一人旅は無茶ゲーになります
5人パーティーを作って挑んでください
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