呪言を操り敵を弱体化及び状態異常にすることに特化した後衛職
グリモアで術式を使えるようにすれば、攻撃役もそこそここなすが物理戦は苦手
休日である虚無の曜日。ルイズがハジメに剣を買ってくれるらしい。彼はいらないと言ったがワガママを譲らないうえにトキオの後押しがあったため、結局折れてしまった。三人で行くことにしたため馬を二頭を借りて街へ出ることになった。街の大通りでは多くの人間が行き来しており、スリが出てくることも予想できた。財布はハジメが持つこととなった。
「スラレても、こんなもんスルとは思えん」
「メイジのスリもいるわ、気をつけなさい」
「没落貴族って奴だな」
ハジメの肩をぶつかる男が通り過ぎようとしたが、その男の腕を握り力尽くで捻じ伏せた。自分の財布を男から奪い返す。
「いい根性してるな。その腕を圧し折ってやろうか?」
「すんません、もうしないから勘弁してください!」
「衛兵を呼べ。引っ張ってもらう」
数秒後衛兵が駆けつけ、スリは連行された。ハジメは六花氷樹海で出会った盗賊のことを思い出した。あの時、衛兵が樹海から撤退していたにも関わらず、盗賊は衛兵に変装しており、それを見破ったことがあった。ハジメが斬りかかったがあっさり躱され捕まえることができなかった苦々しい思い出だった。
「どこにあるんだ?」
「裏路地よ、治安悪いから行きたくないのよ」
裏路地に入ると焙れ者達がこちらに目を光らせていた。声をかけ銭を要求したものがいたが、極力眼力で対応したがそれでも騒がしい連中には無手で締め上げ黙らせた。
「ここか」
武器屋に入ると店主がパイプを吹かしていた男が対応する。ルイズ達を見ると、猫撫で声で対応する。
「旦那、貴族の旦那、うちは真っ当な商売をしてまさぁ」
彼女が声を発しようとしたが、トキオが鈴を鳴らして頭を封じ声を発せなくさせた。ここからはハジメが話した。
「剣を見たい、出してくれ」
「かしこまりました」
奥から持ってきたのは豪華な装飾を施した大剣。主人曰く有名な錬金術師、シュペー卿が自ら鍛えたものらしい。だが、そのウソはハジメには通用しなかった。指で刃をなぞるとため息をした。
「オヤジ。そこのメイスで殴ってみていいか?」
「は・・・はい」
樽の中に入ってあるメイスを抜き、思いっきり叩いてみると見事に粉砕された。
「名剣は一般武器より弱いのか?このくらいの仕事の品を店に並べれば、表通りに店を構えられると思うぞ」
氷雨丸を抜き、主人に見せると驚いた表情で刀身を見つめる。
「素晴らしすぎる・・・どこで作られたんだ!?」
「旅先の店だ。本気で商売しようと思うなら、詐欺じゃなくて品質で勝負するんだな」
どこからか声が聞こえてくる。壁に掛けてある剣からだった。
「ははっ!良い目してるな!アンタ剣士だろ、俺を買ってくれよ!」
「喋る剣か。世界樹にはなかったな」
手に取ってみると刀身こそ錆びているが、刃が生きていたため、砥げばさっきの鈍らよりも十二分に使えることがわかった。
「オヤジ、これを買う。ナイフと片手剣、さっきのメイスもな・・・良いよな?」
ほぼタダでその三つを買うと店をあとにし、三人は大通りを歩いていた。その時には封じも治っており、喋れるようになっていた。
「なんで呪言使うのよ!私が選んであげるのに!」
「あなた、武器の買い物したことある?素人相手じゃカモられるわ」
「それに忘れてないか?俺達が冒険者だってこと」
「あ・・・」
ルイズは忘れていた、彼らが元の世界では世界樹の迷宮なるものを登り冒険していたことを。彼女は知らないが竜を退治したこともある。
「それはそれとして、お前の名は?」
「俺はデルフリンガー。よろしくな兄ちゃん」
「よろしくデルフ。それと・・・尾行はよろしくないぞ、お二人さん?」
「へ?」
背後からキュルケとタバサが現れた。
「いつからわかってたの?」
「俺達が最初に大通り入ってから。学院出てから追跡方法は知らんがな。まぁそれはいいとして、質屋ないか?ここの現金を受け取りたい」
ルイズの案内のもと、質屋に着いて早々、自分の財布を取り出すと、十数枚の硬貨を鑑定に出す。これはエンと呼ばれる通貨で、ハジメ達の世界で流通しているものだ。予想通りと言ったところか、大量の金貨がトレイの上に置かれていた。
「美術品としての価値もあるだろ?」
「へい、見知らぬ土地の通貨でしかも金貨も銀貨も本物の金銀なんです」
一気に懐が温かくなり、近くのパブに入り料理を注文する。三人から五人に増えたためテーブル席に座ることにした。
「っでね、私がタバサが貴方とトキオの話したら急いでシルフィード呼んで飛んでくれたの!」
「へぇ竜に乗ってきたのか。タバサ、今度俺も乗せてくれ」
ハシバミサラダを黙々と食べる彼女は何の反応も示さなかったが、OKサインを出していたことをトキオにはわかっていた。
「来たな俺の頼んだ兜焼き」
大皿に堂々と乗った大きな魚の頭。ハジメ曰く、魚で一番が美味いとのこと。
「おぅみんな、俺の突いていいぞ?」
「さっそく」
タバサが頭の身をフォークで刺し口に運ぶと、一瞬だが笑みが浮かんだ。
「おいしい」
「だろ?まさか箸まであるなんて思いもしなかった。ほらほら遠慮するな」
同級生ではまず見られない気前のいい姿。少々短気なのが欠点だが、それをカバーできる程の男気と器量を持ち合わせていた。ルイズは最初、乱暴者だと思っていたが彼らと交流していくことで本質を見ることができることを知った。
「どう、ハジメちゃんのこと」
少し取り残されがちなキュルケに声を掛けるトキオ。
「素敵な人ね。強いし気前いいし、カッコイイし」
「私、あの人に救われたの。暗い監獄から助け出してくれたのよ」
「そうなの?詳しく聞いてもいい?」
「帰ったら話してあげるね」
こうして、学院生活の温かい思い出が刻まれた。
楽しかった虚無の曜日から数日後、いつものようにハジメとトキオは昼食を食べに食堂へ向かったが、メンバー全員通夜に出席したように暗い顔をしていた。
「どうしたオヤジさん?」
「ハジメか・・・実はな、シエスタがモット伯って貴族に仕えることになったんだ。だが、どうして評判最悪の奴に仕えなきゃいけねぇんだ!」
「なるほどな。オヤジさんの言うことだから、相当だな。俺らがそいつをぶん殴って連れ戻してくる」
「えぇ!でも相手が」
「俺は彼女の、いや、皆の暗い顔は見たくないんだ。心配するな、竜殺したことあるから」
学院の校門に向かい、準備しているとタバサが声を掛けてくる。モット伯の居場所を知っているらしく、シルフィードに乗せていってくれるらしい。
「兜焼きのお礼」
「気に入ってくれたみたいだな、頼んだぜ」
ボウケンジャーの本領を次回で発揮していきたいと思います