彼らの掟は『総ての正義であれ』である
泥棒騒動から数日後、無事に復帰したオスマンはハジメとトキオを呼び出し、破壊の杖について話した。若い頃ワイバーンに殺されかけた際に黒肌の男が現れ、見たことのない術でワイバーンを痺れさせ、巫剣の一撃で倒してしまったが、その男もまた出血多量で死んでしまったという。彼の墓標に巫剣を刺したらしい。
「?このままだと巫剣が二本だな」
「一本で十分なのに。なんだろう」
「すまぬ言葉が足りなかった。実は盗まれた方は最近拾ったものじゃ」
「おいジジイ、さっきの話いらんだろ!」
「そう言うな。あの破壊の杖、巫剣はデザインが似とったからのう」
「どれも似てるよ。それより帰る手段、ちゃんと探してるだろうな?」
「しておるよ、でも手がかりすらないんじゃ」
「・・・まぁいい。このルーンを見てくれ」
ハジメは左手に刻まれたルーンを見せる。トキオは胸を見せるかわりにシュヴルーズのスケッチを差し出した。
「これは・・・ガンダールヴにリーヴスラシルのルーンじゃ・・・どうしたんじゃこれ?」
「実は寝ている隙にルイズに・・・」
「災難だったのう。簡単に言えばガンダールヴはブリミルの盾となった使い魔で、リーヴスラシルはブリミルの魔法の器になった使い魔じゃ。どちらにしろ厄介ごとに巻き込まれたことには間違いないのう」
「クソ、アイツもお持ち帰りかよ・・・」
「あの高飛車じゃ、冒険できなさそう」
「なかなか酷な評価じゃのう・・・じゃが彼女が虚無の使い手だとしたら政治的に利用される。それだけは避けたい。すまぬが引き続き守ってはくれんかの?」
「子供を政治利用されたら堪ったもんじゃないな。一肌脱ぐぜ」
二人はその後、担任のシュヴルーズに会いにいった。
「おや、どうなさいました?」
「先生。あなたのスケッチしたルーンについてちょっと」
トキオはスケッチしたルーンがリーヴスラシルだったことを話した。驚きを隠せないでいたが、どうにかして平静を保った。
「というわけで図書館で調べてもらっても大丈夫でしょうか?」
「え、ええ・・・他言無用にします、安心してくださいね」
「感謝します」
授業が始まりそうなので急いで教室に向かう。いつものように地面に座り待っていると、ドアが開き不気味な男が入ってくる。彼はギトーと名乗るメイジだ。
「では、始める。知っての通り、二つ名は『疾風』、疾風のギトーだ」
「臆病風じゃないんだな」
ハジメが挑発するように喋る。
「き、貴様は・・・ちょうどいい、最強の系統が風だということを、そこの平民で試したいと思います」
「いいだろう。貴様の生き恥をここで晒してやるとしようか」
ギトーと対峙するように立つ。氷雨丸を抜き、上段の構えを取った。杖をハジメに向け呪文を唱え、発生した烈風がハジメを襲う。瞬時に無双の構えに切り替え地走撃で烈風を相殺し峯打ち版ツバメ返しからの月影で杖もろとも腕を貫いた。
「ぎぃやぁぁぁぁ腕がぁぁぁぁ!」
「やっぱり臆病風だな」
乱暴に刀を引き抜き、痛みのあまりにのたうち周るギトーを踏みつけて黙らせた。
「授業は中止になりま」
カツラを被ったコルベールが入ってきた瞬間、教室の大惨事に一瞬、空気が凍てつく。
「悪い、コイツ嫌いだから仕留めた」
「ハジメさん、いくらミスターギトーが腹立つからって杖もろとも腕壊したらダメですよ」
「すまん。ところで何の用だ?」
コルベールによれば始祖ブリミルの降臨祭らしく、昼から学院にトリステインの王女、アンリエッタが訪問してくるらしい。生徒全員で正門で出迎えるそうだ。はっきり言って興味ないハジメはトキオと共に教室を出ていく。
「ハジメさん怪我人を医務室に運んでください」
「すまんが運んどいてくれ」
魔法学院に繋がる道中、四頭のユニコーンに引かれた豪華な馬車の中に白のドレスを纏った気品のある顔立ちに薄いブルーの瞳、高い鼻が目を引く美しい少女がいた。彼女がトリステインの王女、アンリエッタだ。
「はぁ・・・」
「ため息ばかりだぞ、その顔を晒すのか民衆に」
馬車の横で馬に跨った短髪で眼光の鋭く、自分の背丈より長い槍を携えた青年がカーテン越し問いかける。
「すいません、ちょっと疲れが」
「縁談のことだろ。まぁわからんわけではないが、堂々としてないと民衆が不安になる。俺と初めて会った時の貴女はもっと落ち着いていたぞ?」
「それとこれとは」
青年は呆れた声で彼女の言葉を遮る。
「ちゃんと対応できたら、ハイランダーの里の話でもしようか?気になるだろ、俺の故郷が」
「えっぜひお願いします!」
正門を通りかかるときには笑顔で歓声に応えることができたため、青年は約束を果たす算段をすることにした。だが彼は知らなかった、この学院に自分の知り合いがいることを。
式典を遠くから見ていたシンセングミの二人は、馬車から降りてくる王女の姿を見て
「なぁトキオ、一つ思ったが」
「どうしたの?」
「どうしてどの国の姫君も紫の髪色なんだ?」
自分達の世界にいたカレドニアの姫君アリアンナも姿形こそ似てないが同じ髪色の紫なのだ。もっと言えばハイラガードの公女も同じ髪色である。
「紫は気品が高いイメージだからかな・・・」
「それと気づいたかもしれんが、あの男」
「うんレオンだよね」
馬に跨るレオンの姿を見つける。
「まさかアイツも・・・」
この心配は杞憂に終わるのだが、それはまだ先の話。
式典が無事に終わり夕食の時間となった。当然メニューも今までより豪華なものであった。いつものお祈りが始まったが、ハジメはそれが嫌いだった。
「ちょっと外に出てくる」
「わかったわ。レオンのところ行くんでしょ?」
外で待機していたレオンと呼ばれた青年に会いに行く。彼は他のメイジ達と話をしている最中だった。
「お前もここに飛ばされたのか、レオン」
「ハジメ!?」
他の護衛達は突然現れた男に警戒するが、レオンの対応から察して警戒を解いた。
「フレドリカはどうした?」
「リッキィならラクーナの実家に行った。その後だ、ここに飛ばされたのは」
「そうか、俺も光の鏡に吸い込まれてここに来た。さっさと帰りたい」
懐からパンを取り出しそれを食らう。
「っでだ。お前の雇い主はどんな奴だ?」
「そうだな。ラクーナより清楚で優しい人だ、だけど悩みやすい体質でね」
「アーサーと対極なんだな。それなら安心した」
ハジメは学院での出来事を話す。トキオも一緒に来たこと、近くの森のオーク退治で誰でも森に入れるようにしたこと、フーケから宝を奪い返したこと、そして自分の雇い主が面倒くさいくらいプライドの高い人物であることを話した。近くで聞いていたメイジ達もその話に興味深々だった。
「俺は・・・宮殿の庭で倒れていたのをアニエスって女が発見して客間に運ばれ、それから王女が会いに来て事情を話したら、護衛の一人として雇ってくれたんだ。だけど貴族達が反対して俺に魔法吹っ掛けてきたからシングルバーストで一掃したんだ・・・っで今ここにいるのが攻撃してきた奴らの一部」
ハジメが彼らの顔を見てみると、かなり引きつった表情をしていることがわかる。思わず笑ってしまった。
「そりゃそうだ。ハイランダーは軟な貴族の倍以上強いからな」
「貴様!侮辱するか!」
「だったらここで死合うか?」
氷雨丸の鯉口を切ると同時に殺気を放つ。
「す、すまん。許してくれ」
「全く、腰抜けが多いと、苦労するな。そうだレオン、今から森に入ってオーク及び危険生物の退治に行くがどうだ?」
「当分帰って来ないだろうし、行こうぜ」
久しぶりの再会を満喫するかのように森へと向かった二人。たった数十分後に帰ってきた時には戦利品を持って帰って来ていた。
最初の仲間、ハイランダーを出してみました。
セリフからお察しの通り、新・世界樹の迷宮の主人公です