自分に合ったものを選ぶのが定石だ
ハジメがレオンと森に入っている同時刻。トキオは夕食を終えたルイズと一緒に部屋で待機していた。
「遅いわねハジメ」
「そうね、オーク狩りでも行ってるのよ」
探偵オースティンの事件簿を読みながら答える。
「それ、面白い?」
「知り合いの探偵が難事件を解決していく物語よ、オースティンは実在するから半分ノンフィクションよ」
「友好関係広いわね」
本を閉じたかと思うと、今度は鈴に手を伸ばした。ドアの向こうに誰かいるらしい。
「私が開けるわ。下がってなさい」
ノックの音が聞こえた。長めに二回、短めに三回。
「どちら様?」
「私はルイズの旧友です、開けていただけませんか?」
「どうぞ」
ドアを開け、入ってきたのは黒いローブをまとった少女。彼女は驚いていた、何故なら目の前に別の人間が立っていたからだ。
「ウソだったら呪うわよ」
「ウソではありません」
「その声は・・・姫さま?」
フードを外すと、昼間見かけた姫君、アンリエッタがいた。トキオは鈴から手を離し席を外そうとする。しかしルイズの使い魔だから同席しても構わないと言われ、黙って感動の再会を見ることにした。
「あなたの使い魔さん、人間だって聞いたけどまさか本当にそうだとは思わなかったわ」
「あと一人いるのですが、別室で暮らしています。お会いになったことありますか?」
「いえ、それよりも再会を喜びましょ?」
白々しい動きに苛立つトキオが王女に問う。
「こんな暗い時に来るなんて、本当は事情があったんじゃないかしら?」
「・・・わかりますか?」
「これでも人を見る目があるから」
アンリエッタは訪れた本当の理由を話した。それは、ゲルマニア皇帝との結婚を阻止して欲しいということ、そのためにアルビオンにいるウェールズ皇太子に会って手紙を取り戻してほしいという。しかし、アルビオンは戦場になっているらしく本当はルイズに行かせたくないらしいが信じられるのが彼女しかいないらしい。友情を重んじるルイズは二つ返事で了承したが、トキオは反対した。
「あなた、それは友情を利用した政治的行動よ。本当に行かせたくないなら、レオンを使えばいいわ」
「え?レオンをご存知なのですか?」
「彼とは友人よ、実力も知ってるわ」
「彼は確かにワルド相手に決闘で勝ったことがあります。ですが、平民の彼を行かせるなんて」
「・・・私の知っている国の王女は、危険と知りながらも冒険に出る覚悟を持った立派な子よ。それに対してあなたは自分では行こうとしない臆病者。そんなあなたに友情を語る資格はないわ」
鈴の音でルイズの頭を封じ黙らせる。
「それでも行かせるなら、あなたに呪いをかけて無理矢理撤回させる。いいわね?」
呪言を唱えようとしたその時だった。廊下から気配を感じる。
「姫にトキオ、どうしたそんなところで?」
「結構気まずい空気だな、何があった?」
大きな袋を片手に持ったハジメとレオンが入ってきた。
「ハジメちゃん」
「せっかく手土産持ってきたのに、場の空気が悪いぞ?」
「実はね」
トキオがさっきまでのいきさつを話した。男二人も思わず頷く。
「信用されてなかったか、仕方ないか異世界から来たからな」
「見た目と違って疑り深いのは上に立つ人間として反省するべき点だな」
HPが底をつきそうなアンリエッタだったが、今まで頭封じで喋れなかったルイズが復帰し、姫を包護する。
「アンタ達は知らないだろうけど、姫様は私にとって特別なの。だからお願い、行かせて」
自分の言葉で必死に訴えかけるルイズにトキオも折れる。
「・・・無理をしない。そして、私達も同行するを条件にするならいいわ」
「姫。俺も行かせてもらう、ハイランダーとして見過ごせない」
「レオン・・・わかりました。使い魔さん達、友人のこと、よろしくお願いします」
ウェールズと会った時にアンリエッタからの使者だとわかるように、手紙と国宝である水のルビーをレオンに預けた。
「ミズガルズの名に懸けて誓おう。まぁ一回その話は置いといて、これを見てくれ」
袋から取り出したのは薬を作る際に使う薬草と他にオークが使っていた剣や斧といった武具、宝箱を開けて手に入れた大小様々なグリモア石が入っていた。
「正直言ってグリモアがここでも手に入るのには驚いた。この世界は驚きで溢れてるな」
「グリモア?」
「あぁこの石だ。これには様々な戦闘術や錬金術、はたまた野生の勘も入ってることがある面白いものでな」
そのうちの一つをアンリエッタに手渡した。
「え・・・聞きなれない音楽が聞こえてきました」
「それは氷劇の序曲のグリモアだ、キリ番だからあげる」
この反応からしてグリモアの存在を知らないのであろう。それもそうだ、魔法にしか頼らなかったのだから、その類のものしか調べていないのだ。世界樹を冒険したハジメ達はもったいないと心の奥で呟く。
「プレゼントありがとうございます」
「いいんだよ。それよりさ、そろそろ帰った方がいいんじゃないか?」
「あ・・・」
時間的に危ういと感じたアンリエッタは、急いで部屋に戻っていった。部屋の様子を陰で見ていたギーシュは
入れ違うように現れ、修行という名目で任務に参加することとなった。
当日早朝。朝靄が立ち込めるなか、馬に跨り学院を出発した。ギーシュは頭の上にヴェルダンデを乗せ、後ろにはルイズが乗っている。ハジメの馬には既にトキオが乗っているからだ。
「兄貴。この方は?」
「レオン。ハイランダーと呼ばれる槍の名手で、俺の友人だ。王女の護衛でもある」
「よろしくな」
肌に感じるオーラに身震いする。自分の兄貴分であるハジメが友人と称する人物だ、相当の手練れであろう。
「よ、よろしくお願いします」
「ハジメ。出来の良い弟分だな」
「バカ言え、まだ魔法も剣も未熟だ。だが、ソードマンとしてはなかなか見込みがあるぞ」
「確かに世界樹の魔物を使い魔にしてるしな」
このヴェルダンデ、実は世界樹暮らしから変わったことが多い。例えば薬草を早く見つけたり、戦闘スキルもペットとほとんど同じことができるようになっていたり、そのおかげか普通のハリネズミの倍以上に強くなったりと、凄まじい成長があったそうだ。
「首輪作ってグリモアを下げられるようにしたんです、どうですか?」
「おっやるな。野生の勘と傷舐め、みがわりのグリモアとはどうしたんだ?」
「実は休みの日に彼が山に入ってキラービー倒したことがあって、その時にグリモアが落ちてたんです」
ここで語り忘れていたが、グリモアを装備した状態で戦っていると連動してか、時々自分のスキルの入ったグリモアが落ちることがある。
「どうした?」
ヴェルダンデがギーシュの股間辺りに降りてきた。その直後、突風が吹き荒れる。それぞれの得物を手に臨戦態勢をとる。
「ハジメ!」
「わかってる」
朝靄から羽帽子を被った一人の長身の男が現れる。レオンは前にでる。
「俺の監視か?グリフォン隊隊長、ワルド」
「ひどいなレオン、僕は監視役じゃなくて姫殿下の命令で同行しに来たんだ。君達だけでは心もとないらしい」
「前々から気に食わんが・・・仕方ない、いいか」
「ワルド様!」
「「「は?」」」
ギーシュを除く三人が声を揃える。ルイズの満面の笑みを浮かべ駆け寄ることから、ワルドと名乗る男はよっぽど信頼されているのだろう。
「老け顔男と幼女・・・世も末だな」
「あぁ」
「同感」
白い眼で二人を見つめる。
「えっ僕が何かしたかい?」
「いや、犯罪因子の塊だと思って」
ハジメ曰く、普段温厚なレオンが棘のある言い方をしているときは、大抵クソッタレか犯罪者らしい。それでもくじけず親睦を深めようとワルドはハジメ達と交流しようとするが、ルイズとギーシュ以外冷ややかな反応しかしない。完全に信頼されていないようだ。
「トキオさんはルイズの姉君のようなことをされていたとか」
「学院がきっちり教育してないから、礼儀を教えてんの」
ルイズはワルドの乗るグリフォンに移っており、完全にのろけている。ギーシュによればこの男はメイジの少年達の憧れの存在であり雲の上の人物らしいが、決闘したレオンから言わせるとアーサーの数倍イラつく面倒な奴らしい。
「ハジメ殿はギーシュに剣術を教えているとか。ぜひ見てみたい」
「斬るぞ」
氷雨丸の冷気で威嚇するが、それに屈しない姿勢から、実力はあるとみた。
(この男、姫の一行にいたかな・・・まぁいいか、邪魔するなら斬るだけだ)
なんかこのハリネズミすごくね?
そう思ったら感想を書いてください
今後も世界樹ネタを多く使っていきたいと思います