今回は八雪です。
添い寝って感じで書いてみました!
感想とかもらえると嬉しいです、よければぜひ。
『んん…… え?』
『あら、起きたのね。もっとしっかり永眠しないとダメよ?』
『よし、わかった落ち着けけ』
『あなたが落ち着くべきではないかしら』
『あぁ、そうだな。うん、よし』
『目覚めてしまったわね……』
『おう、お前の顔見たらばっちり目覚めたわ』
『それは、いつかの意趣返しかしら?』
『さぁな。んで何でお前、俺の隣で寝てんの?』
『……ダメかしら?』
『質問に質問で』
『そうしたいと思ったからよ』
『……直球で来られるのも、なかなかだな』
『なら、こういうのはどう?』
そして私は、赤く染まった頬を見せるようにそっぽを向いている比企谷君の横顔に手を伸ばし―
「夢……?」
いつもより心地よい朝の目覚め。
冬の寒さを忘れたような穏やかな日差しが、私の顔に射し込んでいる。
しかし、それを考慮に入れても、体がなんだか熱い。
これは…… と思うと先ほどまでの記憶がよみがえってくる。
「夢……? 比企谷君と……?」
思わずもう一度、口に出してしまった。
寝ている間に見る夢と言うのは不思議なもので、大抵は起きてしまうと、どんな夢を見ていたかも思い出せない。
儚い、と言う字を思いついた人は素直に凄いと思う。
でも、今朝の場合は別だ。なにしろ、私は夢の内容を覚えている。
なぜかしら? それに。
(まあ、比企谷君と添い寝だなんて、そんな機会も理由もあるわけが無いのだけれど)
今度は口に出さず内心で思うに留めて、夢の中の彼を思い出しながら、私は学校へ行く支度を始めた。
『悪い、今日は依頼が来るまで寝てていいか? 数学のテスト勉強で夜遅くなってな……』
『はぁ、しょうがないわね』
『すまん、ありがとな』
『寝るなら、こっちの日が当たる所で寝なさい。そのほうが暖かいでしょう』
『おう、そうさせてもらうわ』
『……ええ、そうなさい』
部活を始めてから、今日は先に彼が現れた。
友達の少ない私や比企谷君とは違い、由比ヶ浜さんは少し遅れてくることもある。
それにしても今日は来るのが早かった彼だが、おそらくは早く仮眠を取りたかったのだろう。
いつもなら、なんだかんだ言いながら由比ヶ浜さんと一緒に来るのだから。
(いい寝顔、ね)
よほど頑張ってテスト勉強をしたのだろうか、現れた時からいつも以上に目のどよーんとしていた彼は、私の言う事にも特に言い返したりせず、自分の椅子を窓際へ持ち運び、窓へ肩を預けるようにして眠り始めた。
ちょうど私から見て左斜め後ろの位置で、目を閉じているからだろうか、普段より幼く見える顔を微かに上下させている。
きっと、いつもなら比企谷君は定位置で机に突っ伏していたはず。
でも、今日は窓際の、言うなれば私の近くで寝させた。
……朝に見た夢を再現したかったからと言うわけではない。断じて。
読みかけの本を閉じ、陽だまりの彼を見る。
(そう、これは彼が体調を崩さないように、仕方なくよ)
わずかばかりの葛藤はすぐに終わり、私は自分の足を覆っていた膝掛けを手に取り、彼を起こさないようにそっと肩に、それをのせる。
その時、少しばかり比企谷君の表情が、ふっと緩んだ。
「ごめんなさい、起こしてしまったかしら?」
小声でそう問いかけるも、彼は何も反応せずゆっくりと寝息を立てるのみ。
眠りを妨げなかったことに、ほっと一安心した私は、もう一つ気になることを見つけた。
(これも、仕方なくよ。そう、進んでやるわけではないのだから)
僅かに肩が揺れたせいで少しだけずれた膝掛けをみて。
そのまま落ちてしまわぬよう、肩に乗せなおして。
私は、彼の横に椅子を移動させた。
こうすれば、彼が動いてしまってもすぐに対応できるもの。
必要に迫られてのことなのだから、いいわよね?
(あなたを見ていると、私まで眠くなってきたわ)
眠気を自覚すると、急速に眠くなってきた。
くあっ、っと少しばかりあくびが出てしまう。
……今日はちょっとだけ、いつもと違う日。
そういうことにしてしまおうかしら。
彼が陽射しの中で眠るのも、私がそれを見て眠気に誘われているのも。
それらを体現する私と彼の位置は、いつもとは大きく異なる。
由比ヶ浜さんが入ってきたら驚くかもしれない。
けれど。
(ごめんなさい由比ヶ浜さん、隣で眠るだけだから…… だから、許して頂戴)
思いながら私の意識も、うららかな陽気に誘われて沈んでいった。
その後しばらくして、彼女達の大切な親友が元気に部室に入ってくるも、珍しく二人が隣り合って寝ている光景を見て、自分も真似したくなって二人の近くで眠り始めるのだが、それはまた別の話。
(おわり)