碧く揺らめく外典にて   作:つぎはぎ

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はじめまして、つぎはぎと申します。
この度、初めての作品を投稿をさせてもらうこととなりました新参者ですが、是非ともよろしくお願いします。

前々からFateの一番好きなお方をヒロインとした作品を書いてみたいという欲求があり、形にしてみました。人によっては忌避されるかもしれませんのでご注意を。

では、どうぞ!

あ、誤字脱字があれば遠慮なく


序章:その英雄は

何処と無く、懐かさしさがこみ上げてきた。

 

そこは世界に繋がっていて

 

歩けばいつかは着く道の果てで

 

常に満たされているところだった。

 

僕は其処を尊んでいる。

 

其処には父の父がいて、一部で、全てだった。

 

会ったことはない

 

だけど、会いに行けば其処にいてくれる。

 

そういう方で、場所だった。

 

偉大で、尊大で、寛大な方。

 

時に荒々しく、静かで、奪い、恵んでくれる。

 

そんな方の子供の子供だった。

 

そんな方がいる場所で死ねる。

 

とても幸せなことなんだと思う。

 

父の父がいてくれる。看取ってくれる。一人じゃない。それが、幸せなことなんだと思えた。

 

と言っても、僕の腕の中には最愛の人がいるから一人で死ぬ訳ではない。

 

愛した人と死ねるから、それは寂しいわけではない。

 

 

 

 

 

ーーーーーでも、ごめんね。

 

やってしまったことに後悔はない。

 

もう一度、同じことがある機会が訪れたとしても、僕はきっと同じことをしてしまうだろう。

 

それが僕なんだ。

 

人知れず、歴史に残るわけもなく、ただ、君の夫になっただけが人々に伝わっただけの者。

 

僕の矜持、それがこの結末へと導いてしまった。

 

だからごめん。

 

僕は君に相応しくない男なのかもしれない。

 

それなのに君は、僕と結ばれてくれた。

 

慈悲深い、というわけではない。君は自分の言葉を覆さないだけなんだろうね。

 

 

 

ごめんね

 

本当にごめんね

 

 

ありがとう

 

本当にありがとう

 

 

それを言いたかった。

 

でも言えない。

 

口が動かないし、そもそも水の中だから何を言ってもきっと伝わらないだろう。

 

 

 

伝えたかったなぁ…

 

 

君にーーーーーって

 

 

 

 

 

○ ○ ○ ○ ○

 

 

 

どこまでも碧く澄んだ光景が途切れた。映った景色は無味で特に語るべきことはない天井だった。

少しして働き始めた脳が、先ほどの光景が夢であったことへと理解した。カウレス・フォルヴェッジ・ユグドミレニアはベッドから体を起こし、ワシワシと自身の髪を掻いた。

 

「…昨日の今日でこれか」

 

カウレスが見たのは自身が契約を交わしたサーヴァントの過去だ。サーヴァントの過去を見られるのは契約により因果線が繋がった証拠であり、マスターの特権とも言える。神話の時代を生きた英雄の過去、その一部を垣間見るというのは魔術師でなくとも見たいと思う人は数知れないだろう。

 

「具体的じゃなかったけど…、なんとなくあいつの願いが分かったような気がする」

 

見えたのはどこまでも澄んだ碧。碧の正体は水だった。いや、水は水でも海水だ。夢の中だったが海水独特の潮の匂いが鮮明に鼻に残っている。

海中でゆっくりと沈み、海面から降り注ぐ陽光が体を包み込む感覚。その感覚の中で青年は眠りそうになっていた。

 

後悔はない。

 

しかし、懺悔したいことがある。

 

そして、伝えたいことがある。

 

それが己のサーヴァントの願いなんだろう。

 

 

「まぁ、決めつけるのは早計だな」

 

カウレスは眼鏡をかけて立ち上がる。まず、サーヴァントと腹を割って話そうか。昨日、というよりも数時間前に召喚したことをふと思い出した。

 

深夜の2時、ルーマニアの都市トゥリファスを睥睨するユグドミレニア城では“聖杯大戦”のため、サーヴァントの一斉召喚を行った。四人のマスターはそれぞれ用意した触媒で目当てのサーヴァントを引き当てようとしていた。

 

一人は触媒をケースに入れたままで不明。

 

一人は先端が青黒い色に変化した古びた矢。

 

一人は中に染みが残ったガラス瓶。

 

最後ーーーカウレスが用意したのは人体図が描かれた古びた紙。右下には殴り書きで『理想の人間』と書かれている。

 

全員が魔法陣の上の祭壇へと置いて詠唱を始める。

 

“素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。手向ける色は“黒”。降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ

 

ーーー告げる。

 

汝の身は我が下に、我が運命は汝の剣に。

聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うなら応えよ。

 

誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者”

 

 

ここで他の三人と違い、カウレスのみが二節、詠唱を加えた。それは狂化のための追加詠唱。カウレスはクラス“バーサーカー”を召喚することを決められており、そのため一人だけ詠唱を加えなければならなかった。それに不満は無い。それも当然だ。自分は未熟で姉の予備に過ぎない。マスターの証である令呪が自分に現れたのは偶然にすぎない。とにかく、マスターとなったからにはユグドミレニアのため、死ぬ覚悟をしなければならない。

マスターの中で魔術師として格が最も低いのはカウレスだ。サーヴァントは召喚されたマスターによりステータスが変動する。未熟のカウレスが召喚したサーヴァントはステータスが低くなる可能性があるため、彼のクラスは必然的にバーサーカーとなったのだ。

 

 

“されど汝はその眼に混沌を曇らせ侍るべし。汝、狂乱の檻に囚われし者。我はその鎖を手繰る者”

 

 

“ーーー汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!”

 

 

そうして、“彼ら”は降り立った。

 

この世に英雄として崇められ、死後、座へと昇華された奇跡。魔術を超えた最高級の神秘達がーーー英霊として招かれた。

 

ーーーそれはいい。そこまではよかったとカウレスは頭を抱えた。

 

問題は己のサーヴァントだ。当初召喚しようとしていた英雄の名は“フランケンシュタイン”。神秘が薄れた時代に生まれた近代の英雄。それを喚ぶつもりで触媒を姉の知己のフリーランスの魔術師から買い取った…はずだった。

 

しかし、呼びだされた英雄は予想を裏切っていた。

 

召喚された英雄は四人。

 

燦然と輝く鎧を着込み、大剣を手にした銀灰色の髪の青年。

弓と矢を手にし、草色のマントを身に纏った青年。

 

派手に着飾った笑顔満面な中性的な少年。

 

そしてーーー簡素な衣服を着た穏やかそうな青年。

 

 

ここで結末を語ろう。

 

 

 

カウレスはフランケンシュタインではなく、違う英霊と契約を交わしてしまったらしい。

 

 

 

「…あー、バーサーカー? いるか?」

 

『うん、ここにいるよ。カウレス君』

 

カウレスの呼びかけに外見同様に穏やかな声が頭に響いてきて、思わずカウレスは苦笑してしまう。

 

“バーサーカーと会話できるとは…”

 

これでは昨日のみんなの表情は当たり前か…。

一斉召喚したことでサーヴァント達は協力するマスター達の目に当然入り、自分のサーヴァントの様子にそれぞれが反応を示した。

 

一族の長はため息を隠せられず、

 

姉はどの様な表情をしていいか困惑を浮かべ、

 

嘲笑を隠さない中年がいて、

 

反応は特になく自分のサーヴァントに釘付けの女性がおり、

 

少年は興味も示さずその場から去った。

 

後の二人はどうでもいいとして、前の三人の反応はそれもそうだと納得した。

 

契約したサーヴァントが取った行動はまず自己紹介。

 

 

“こんにちはマスター、この度バーサーカーとして召喚させてもらいました。魔力の流れからマスターは君だと思うけど間違いはないかな?”

 

 

次に握手。

 

 

“そうか、よろしくね。なんの因果か二度目の生をありがとう! 聖杯を手に入れるために奮闘するから共に頑張ろうカウレス君”

 

 

そして、自分の身を案じた。

 

 

“ところで体は大丈夫かい? 召喚で魔力を大量に消費したと思うけど疲れとか痛みは?”

 

 

これがサーヴァントではなくて普通の人ならお節介な奴なんだなと思うだけ。しかし、彼はサーヴァント。何よりバーサーカーなのだ。

バーサーカーとは狂い、暴れ、時知れずに自滅する理性なき獣。小なり大なりまともな会話などできる筈がないのだ。だが、彼は会話ができる。理性があり、まともな思考、判断能力を有している。バーサーカーとは真反対だ。

 

そんなバーサーカーは自分の前に現れた。霊体化を解き、光の粒子が形を取る。

現れたのは碧色の青年。簡易な碧色の服に穏やかな表情が静かな波を思い浮かべれる、そんな人だった。

 

「カウレス君、おはよう。もうすぐお昼だ。よく眠れたみたいだね」

 

「あぁ、そこそこは眠れたみたいだよ」

 

それでもバーサーカー。こんなのがバーサーカー? 色々言いたいことはあるし、疑問に思うことはたくさんあるがそれでも自分の呼びかけに応え、剣となると誓ってくれた英雄だ。不満を口にしてはいけない。

 

「それでバーサーカー、もう一度確認しておきたいことがある」

 

「それは僕のクラスと真名かな?」

 

「あぁ」

 

一応、もう一度確認しておこう。数時間前は予定とは違い、焦っていたこともあったせいか認識の齟齬があるかもしれない。そのために互いにもう一度名前を確認しておくべきだ。心の中でそう言い聞かせ、まず自身の名を語る。

 

「俺の名前はカウレス・フォルヴェッジ・ユグドミレニア。ユグドレミニア一族で“黒”のマスターとして聖杯に選ばれてしまった魔術師だ。そして、お前のマスターだ」

 

確認のため“黒”のバーサーカーに手に刻まれた令呪を見せる。三画で構成されたそれを見たバーサーカーは反芻するように頷くと、片膝をついて頭を下げた。

 

「君はカウレス・フォルヴェッジ・ユグドミレニア。この度バーサーカーとして座から地上に馳せ参じ、マスターである君の願いと僕の願いのため、この身を剣とも盾とも成しましょう。そして、僕の真名はーーー」

 

 

 

『ヒッポメネスと、申します』

 

 

 

その真名を二回聞き、間違いではないとカウレスは天を仰いだ。

ヒッポメネスはその様子に“まあ、当然か”と乾いた笑いを漏らした。




というわけで、原典の夫殿をサーヴァントに。
ネットから頑張って調べてある程度能力も決めていますが、矛盾が発生する恐れあり。
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