碧く揺らめく外典にて   作:つぎはぎ

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更新を止めてしまい申し訳ありませんでした。季節の変わり目ゆえに体調を崩して数日寝込んでました。
また更新を開始しますので、お読みになっていただければ幸いです

では、どうぞ。


都市にて

「表に出ろ!魔術師らしく、正々堂々と名乗りを上げたらどうだ!?」

 

「断る!自己紹介は他所でやれ、この筋肉ダルマ!」

 

  都市シギショアラ深夜。シギショアラの一角で現在二つの戦いが繰り広げられていた。一つはサーヴァントの戦い。“赤”のセイバーと“黒”のアサシンの戦闘中に“黒”のアーチャーが参戦。“黒”のアサシンは手傷を負ったまま撤退。“赤”のセイバーは“黒”のアーチャーに突貫し、両者引かぬ戦いが行われている。

  そしてもう一つはマスター同士の戦い。“赤”のセイバーのマスター獅子劫界離と“黒”のアーチャーのマスターフィオレが魔術合戦を繰り広げていた。フィオレが最初は有利だったものの、命懸けの殺し合いを幾度となく潜り抜けてきた獅子劫の機転を利かせた反撃に窮地に追いやられる、が。姉を助けにきたカウレスの助太刀にフィオレは窮地を救われた。

  マスター同士は互いに建物の影に隠れ、相手の動向を窺っていた。

 

「…カウレス。アーチャーから撤退するよう提案されたわ」

 

  アーチャーから念話で撤退することを勧められたフィオレはカウレスに告げた。フィオレはアーチャーの提案に反感の意なく賛成。カウレスもその案に賛成の意を込めて頷く。

 

「賛成だ。さっさとトゥリファスに帰るべきーーー」

 

『カウレス君!!シギショアラから早く撤退して!!』

 

「…バーサーカー!?」

 

  突然の念話に思わず声を出してしまう。“黒”のバーサーカーは現在トゥリファスのミレニア城塞で待機しているはず。ミレニア城塞で何かあったのかと懸念したが…。

 

『“赤”のライダーと“赤”のアーチャーがそちらに向かっている! アーチャーとフィオレさんと一緒に逃げろ!!』

 

「はぁ!?」

 

  “赤”のライダー、アキレウスと“赤”のアーチャー、アタランテが此方へと向かっている。大英雄と神域の弓兵の進行にブワッと冷や汗が滲み出る。

 

『なんで分かるんだよ!?』

 

『今()()してるからだよ!!』

 

『……はぁ!?』

 

  トゥリファスではなくシギショアラにバーサーカーはいる。指示を破り、独断行動をしているバーサーカーに経緯を問いただしたいがバーサーカーの方は念話の余裕が無くなってきているようだ。

 

『説教は帰ってから聞くよ!! 早く逃げて!! あと宝具をーーー』

 

  ブチっと、念話が途切れバーサーカーの声が聞こえなくなる。フィオレが自分の様子におかしいと気づき、心配そうに見つめている。

 

「カウレス?バーサーカーがどうしたの?」

 

「…姉さん! “赤”のライダーとアーチャーがこっちに向かっている!」

 

「なんですって…!?」

 

  カウレスはバーサーカーの安否の確認を後にして、撤退を選択した。今は被害を少なくするためバーサーカーの言うとおり逃げることを優先する。

  魔術礼装を身に纏ったフィオレに捕まり、シギショアラの街から逃走する。逃げる際、獅子劫界離が何か叫んだが無視する。

 

「…無事に逃げろよバーサーカー!」

 

 

○ ○ ○ ○ ○

 

 

  “赤”のセイバーと“黒”のアサシンの戦いが始まる少し前、“赤”のライダー、アキレウスと“赤”のアーチャー、アタランテは深夜のシギショアラの街並みを、周りと比べて一際高い建物の屋上から見下ろしていた。

 

「…容易には見つからぬか」

 

「相手はこちらの女帝さんとは違いまともな暗殺者らしいからな。暗殺する前から見つかるヘマはしねえってわけか」

 

  アサシンのクラス別スキルに『気配遮断』がある。名の通り気配を感じさせず行動できる。気配遮断のスキルは暗殺する瞬間までスキルの効果は消えない。アーチャーの察知能力が優れたものとしても隠れるアサシンを見つけるには難しい。

 

「姐さんは夜の闇の中でも目が利くだろうけど、俺には全く見えねえな」

 

「ならば汝はアサシンの根城に帰るがいい。アサシンの討伐は私だけで充分だ」

 

「そういう訳にはいかねえさ。あんたが心配って前にも言ったろ?」

 

「そうか」

 

  一瞥もくれずアーチャーは夜の帳に感覚を研ぎ澄まし続ける。二度目の口説き文句も彼女には響かない。アーチャーを見習い暗闇に動きがないか監視するが何も起こらず。そろそろ違う場所に移動するように提案しようとした時、遠く離れた場所から魔力の波動を感じ取った。

 

「姐さん」

 

「…あちらは確かこの街の名所である時計塔があったな」

 

  両者共、時計塔がある方向にサーヴァント同士の戦闘の気配を感じた。シギショアラで戦闘を行う者は限られている。“黒”の陣営のサーヴァントか、別行動をしている“赤”のセイバーかだ。

 

「いくぞ」

 

「応よ!」

 

  二人が屋上から飛び降り、次々に建物の屋上を走り、飛び移り、駆けていく。その速さは一般人には捉えきれず、何かが通ったとしか認識されない。どの英雄よりも疾い大英雄と狩人はものの数分で時計塔付近に到着する、予定だった。

 

「むっ!」

 

「ちっ!」

 

  二人が次の建物へと飛ぶ最中、住宅地の真ん中にある公園の上を通り過ぎていた。その公園の中央に建てられた巨大な噴水から、水が弾丸のように噴出された。握り拳程の水の塊がライダーとアーチャーへと襲いかかる。すぐに水の塊に気づき弓で撃ち落とし、槍で払う。撃ち落とし、払われた水は形を失い、地面へと落ちていく。大地が水を吸い、湿らせるーーー前に水が霧へと変化した。

 

「おいおいアサシンの仕業かこれ?」

 

「・・・・・」

 

  二人が公園へと着地すると背中合わせになりながら周りを見渡す。夜の公園は水から変化した霧に包み込まれていた。公園に立つ少数の街灯がぼやけて公園を照らす。ひんやりと一層に冷えた空気がアーチャー達の頬を撫でた。

 

「否、アサシンの仕業ではない」

 

「あ?じゃあなんだこれ?」

 

「足下を見よ」

 

  アキレウスが足元を見ると、公園に敷き詰められたタイルの上に水が流れてきていた。タイル全てに水が流れ、公園全体に水が張られた状態になった。耳をすますと大量の水が湧き出す音がする。恐らく公園の噴水から大量の水が溢れ出ているのだろう。

 

「心してかかれ、ここは既に()()()の狩場ぞ」

 

「…そういうことかよ!」

 

  ライダーに笑みが生まれる。水を使った戦い。その戦い方こそアキレウスが聖杯大戦で最初に戦った男の戦い方だった。つまり。

 

「あんたがここにいるってわけか“黒”のバーサーカー!」

 

  自分を殺せる男の一人がここにいる。アキレウスは自然と槍を握る手の力が強くなる。返事は水面からだった。水面から剣の形を模した尖った水が飛び出す。それを後退しながら槍で、矢で払い飛ばす。水の剣は水面が見えなくなるまで飛び出し続ける。その様子は雨が空からではなく、地面から降り注ぐようだった。

  神性を持つ者にしか傷つけられない大英雄は嵐の様に、しかし鮮麗に槍を使い、全ての水の剣を破壊していく。

  俊足の女狩人は水面から剣が飛ぶ前に走り抜け、霧を生み出した“黒”のバーサーカーであり、生前の夫の居場所を探す。だがーーー

 

「なに?」

 

  コロコロと曇る霧の中から丸に近い物体が転がってきた。それはあらゆる文明や地域が行き来する現代だからこそ目にできる、違う国の果物。

  聖杯の知識では、パイナップルという名の果物だ。

 

「なんだこれ?」

 

  見当違いというか場違いな物の登場にライダーは槍の石突きで軽く突く。しかし、それは町の商店なら目にできるどこにでもあるようなものだった。

  ライダーは異常でもない何でもないものだから、蹴って飛ばそうと足を振りかぶるが。

 

「離れろ!」

 

  アーチャーに肩を引っ張られた。アーチャーの行動に目を見開くがライダーは直後、アーチャーの行動の意味を理解した。

 

  バァン!!!

 

  パイナップルが突如膨れ上がり、破裂する。固い皮の中から弾き飛ぶ果肉と果汁は甘い匂いを漂わせるがーーーその果肉と果汁に込められた()()を察知し、一雫も浴びないようにアーチャー達は後ろへと下がる。

  破裂したパイナップルの果実と果汁は地面のタイルや遊具へと飛び散りーーー触れたタイルや遊具はまるで銃弾でも受けたように罅が走り、破砕された。

 

「ありゃあ…」

 

「小細工が得意だと言っただろう。あれは果実に魔力を込め、爆発させ己が武器としている」

 

  アーチャーはあの一見巫山戯ているような攻撃手段を知っている。

 

  果物の中に含まれる豊富な水分を使い、爆弾として扱う技は海神の孫にして、水に特化したヒッポメネスだからこそできる技術だ。

  果実の水分を魔力で凝縮、皮を硬化させて破裂しないようにし、固めた水分を無数の粒とさせ、撹乱し、沸騰させる。そして時間経過後、皮の硬化を解き、爆発。爆発した果汁と果肉は鉄のように硬く、破裂した勢いは現代の携帯兵器ーーー手榴弾の如く。

  魔力が含まれているからサーヴァントにも通用する。世にも珍しき果実で作製される爆弾となる。

 

「…ふざけているのか?」

 

「いや、巫山戯ていない。あやつは本気だ」

 

  それを示すように幾つかの果物が投げ込まれてきた。

 

  桃、葡萄、梨、苺、杏、無花果、石榴、柚子、檸檬、メロン、蜜柑

 

  世界各地にある果物が戦場に投げ込まれる光景とはどんなものか。

 

  滑稽?

 

  だが、その滑稽さを演出する果物達は全て、爆弾。現代の手榴弾と同等の威力を誇るものが十数個も迫るのを想像してほしい。

  英霊にも通用し軽傷で済む程度の威力だが、塵も積もれば山となる。全部をまともに喰らえばーーー重傷は免れない。

 

「ラァ!!!」

 

  光景こそ巫山戯ているが洒落にならない攻撃手段にライダーは槍を振るい一斉に切り飛ばす。飛ばされた途端に破裂する果実達、果肉と果汁が鉄片となり周囲に突き刺さり地面が剥がされ、抉られる。

 

「シッ!!」

 

  アーチャーは全て射ち落す。目にも止まらない連射は全て的確に命中し、破裂させて彼女の元に届くことはない。寧ろ一つの果実が破裂することにより、連鎖的に周りの果実も爆発する。

 

「ああ、クソ! 姿を見せるつもりはないのかよ!?」

 

「集中しろライダー。…ほら、来たぞ」

 

  二人の足元には新たに水が流れこんでくる。水流達が急に波立ち、水の槍や剣へと変わって突き上がってくる。しかもその槍と剣に変わった水は全てーーーライダーの()へと狙いを定めている。

 

「面倒、だなっ!」

 

  疾り、砕き、捌く。一番速い脚を持つ男には迫る水の武具は遅すぎた。

  回避することも対処することも問題ない。問題なのは、攻撃してくる相手の姿を見つけ出せないこと。

 

「姐さん!!」

 

  ライダーは嗅覚、視覚、聴覚と索敵能力に長けるアーチャーに頼る。だが、アーチャーは顔を顰めるしかできなかった。

 

「これが厄介だ…」

 

  アーチャーに再び、幾つもの果物が霧の中から投げ込まれる。それを射ち落すのは容易いことだがーーー甘ったるい匂いが周囲に満たされる。

  芳ばしい果実の匂いがアーチャーの鋭い嗅覚を刺激する。あの果実は魔術で中身を操作されている果実に過ぎず、砕けば中の果汁が空気となって混じるのは当然だ。それが霧に混じってはアーチャーの嗅覚を邪魔立て、バーサーカーの居場所を悟らせない。

 

「ちっ! 挑発の一つ二つに乗りそうな相手では」

 

  ライダーは舌打ち混じりに厄介な相手を誘い出そうと挑発を考えたのだが。

 

  ーーーそういえば、相手はアーチャーの夫だったよな?

 

  ライダーの口角は軽く上がる。それはまるで悪戯を思いついた少年のような笑みで、若者の軽い調子なノリの笑みのようなものであった。

 

「姐さん、近くに来てくれ!」

 

「む? どうした!」

 

  ライダーの呼びかけに水流を避けながらアーチャーは迅速に駆け寄ってきた。疑いもせず、アーチャーはライダーを見上げると。

 

「ちょっと我慢してくれよ?」

 

「なに?」

 

  ライダーはアーチャーの返答を待たず、

 

 

 

  アーチャーを抱きかかえた。俗に現代で言う、お姫様だっこと言う抱え方で。

 

 

 

  「はははっ! よくもアタランテとの逢いびきを邪魔してくれたなヒッポメネス! 折角もう直ぐで口説き落とせたところなのによ!!」

 

 

 

「……なにをしているか汝は」

 

  冷たい視線がライダーを貫く。そんな視線を受けたライダーは役得ばかりにアーチャーを抱え直そうとしたが、アーチャーは器用にライダーの腕からすり抜けた。呆れたようにため息をつくアーチャーはライダーに非難の視線をぶつけようとしてーーー

 

 

 

  周りが不自然過ぎるほどに静かになったことに気づいた。

 

 

 

 ○ ○ ○ ○ ○

 

 

 

「カウレス! バーサーカーとの連絡は!?」

 

「ダメだ、全然返事がない!!」

 

  カウレスとフィオレの“黒”のマスター二人はシギショアラからトゥリファスへと繋がる車道を車で爆走していた。フィオレが魔術礼装で器用に運転し、助手席に座るカウレスが念話で先ほどからバーサーカーよ呼びかけるが、繋がっているはずなのにまったく返事がない。

 

「くそ、なにを…って、姉ちゃん前、前!!」

 

「え? きゃあ!?」

 

  フィオレが運転する車がいつの間にか対向車線へ逸れて、対向車とぶつかりそうになりギリギリで正しい車線へと戻る。

  フィオレとカウレスが同時に安堵し、そして先ほど“黒”のアーチャーと相談したことを思い出し、苦悩する。

 

『バーサーカーの援護へ行きます。ですがもし、彼が“赤”の陣営へ寝返るようなことがあった時にはーーー』

 

  自害を、令呪を持って命令させる。

  聖杯から与えられたサーヴァントへの絶対命令権。参画で形成された令呪は、三度しかサーヴァントを縛ることができない。

 

  なぜアーチャーがこんな事を提案したのかは、誰もが分かる。

  “赤”のアーチャーはバーサーカーの妻、アタランテ。バーサーカーの聖杯へ願う悲願は『妻との再会』。敵サーヴァントととはいえ、彼方にアタランテがいる以上バーサーカーが単独行動を取ることは考えられた。

 

  そして、裏切ることも想定できた。

 

  彼がシギショアラへ単独で動き、現れた理由は未だ不明だが“赤”のアーチャーの名前が出た時点で万が一の、最悪の事態を考えたらアーチャーの作戦は最もだ。

 

  そして自害を命じるのはマスターであるカウレス。カウレスはバーサーカーが裏切るようなことがないようにと祈りつつも、もしかしたら…という不安が先ほどから何度も交差している。

  手の甲に刻まれた令呪を指で撫でて、車窓から映るシギショアラの夜景を眺めーーー

 

  いきなり魔力を()()()()()()疲労感に、体勢を崩した。

 

「カウレス!?」

 

  姉の声を聞きながら、なんとかカウレスは体勢を直した。

 

「な、なにしてんだバーサーカー…?」

 

  トゥリファスにはホムンクルス達より精製された魔力が“黒”のサーヴァントへと供給されているが、それと同時にマスターからも送られている。トゥリファスから離れている以上ホムンクルス達から送られる魔力は乏しく、近くにいるマスターの魔力が先に供給されているのだが。

 

  明らかにバーサーカーは宝具発動に必要な魔力と同等以上の魔力をカウレスから搾り取っている。

  魔力の枯渇による疲労感に魘されながらカウレスは徐々に意識を失いかけていた。

 

 

 

 ○ ○ ○ ○ ○

 

 

 

  この現代において、人々の生活は保障されている。それは神秘からかけ離れ、人々の知恵と物理法則によって約束された科学の力によって民衆の生活基盤が向上したからである。

 

  その生活基盤とは主に何なのか?

 

  電気製品の使用と衛生技術を満遍なく配備するための電力、熱を精製し調節する為のガス。

 

  そして、最も忘れてはいけないーーー()()()()である。

 

  民家一つに対し、水道が設置されている現代において水道は蜘蛛の巣のように地下に張り巡らされている。

  それはシギショアラも例外ではない。古き中世の街並みを色濃く残す都市であるが、広大な土地に比肩するように集まった市民の生活を充実させる為に水を供給する水道管はーーー人々の想像以上に多い。

 

  ならばもし、万単位の人間を養う為の水量が、キロ単位に張り巡らされている水道管の水がーーー全て襲ってきたらどうなのだろう?

 

 

 

 

 

「なんだ?」

 

「・・・・・」

 

  ずしん、ずしんと拍を置いて揺れる地面にライダー達は立ち止まった。

  公園からの襲撃、それを難なく抜け出したライダー達は“黒”のバーサーカーを見つける為公園を抜け出した直後、シギショアラの街の地下から振動が響いてくる。

  ライダーは振動に対し警戒し、アーチャーはずっと自らの足元を注視している。

  揺れは拍を置くごとに大きくなり、そして拍も徐々に間隔を短くしていっている。それもアーチャーとライダーがいる位置に向かって、早くなっているような…

 

「ライダー」

 

  アーチャーの呼びかけにライダーが振り返る。アーチャーは至極真面目な顔で告げた。

 

「走れ、とにかく走れ。私はバーサーカーを見つける。とにかく頼んだぞ」

 

「え? おい、姐さん?」

 

  ライダーの返事を待たず、アーチャーは近くにあった五階建てのマンションの屋上へ駆け登った。そして、ビルからビルへ飛ぶように移動していきあっという間にライダーの前から姿を消した。

  ライダーはアーチャーは自分に何を頼んだのか思案しているとーーー

 

  近くにあったマンホールの蓋が月まで飛ぶような勢いで吹き飛んだ。

 

  空いたマンホールからはーーー濁流と思わしき程の大水流が噴き出した。

  それも一つではない、連鎖的に道路にあるマンホールの蓋が次々に吹き飛び、その全てから鉄砲水の如き大水流が流れ飛び出た。

 

「これは…!」

 

  そして、大水流達は命を宿したように一つに繋がりーーー大渦となった。

  地下から大渦が現れた。言葉にすれば何を言っているのか分からない、だがライダーにとってそれは大法螺とは思わない、思えない。

  実際その光景を前にして、戦場を駆けた男の口の端がひきつく。

 

「…マジかよ」

 

  普段のライダーなら、この様な光景を目にしては戦意が昂ぶり、先ほどみたいに敵を挑発して戦闘を楽しむだろう。

  だが彼は見てしまった。その大渦の中にーーー爆発する果実が十数個も混ざって掻き回されているのを。

  さらにだ。それが目の前のやつだけではない。

 

  後ろにも、右にも、左にも、大渦がライダーへと迫ってくる。

 

  もし一つにでも呑み込まれたら、体を掻き乱された挙句に果実達が爆発し、四肢が飛散するのが目に見えている。

 

「やばーーー」

 

  彼の呟きが最後まで言われることはなかった。文字通り波打つ大渦と大水流は、爆発する果実を孕んだ状態で一斉にーーー不埒にも夫の前で妻に触れた大英雄に襲いかかってきた。

 

「うおおおおおおおおおおおおお!!?」

 

  そして“赤”のライダーが地下から次々に襲いかかってくる大水流に追われる鬼ごっこが開催された。

 

 




なんか雑な気がする…、色々と修正する部分があった為、後日修正しようと思います。
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