碧く揺らめく外典にて   作:つぎはぎ

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それでは二話目。
前々から書き溜めてたやつをちょくちょく投稿。
FGOのリーダー? お気に入り? アタランテ一択で。
ブリュンヒルデさん来たから、後は是非ともモーさんと蝉様に来ていただきたい。あと、天草さん。


小休憩か戦前か

“ヒッポメネス”

 

ギリシャ神話にて出てくる英雄、というには英雄らしいことは語られていない。

彼の名が語られるのは英雄“アタランテ”の物語だ。

 

“純潔の狩人 アタランテ”

 

月の女神 アルテミスの聖獣である雌熊に育てられ、アルゴー船の大冒険では唯一の女性として参加し、カリュドンの猪を討伐したなど輝かしい伝説を持つ。

 

ヒッポメネスはそのアタランテの夫となった。

 

夫となった経緯は見方によって小狡いと言われるだろう。

アタランテは父であるイアソス王に婚姻をするよう迫られたが彼女は一つの条件を提示した。それは『自分と徒競走をして勝った者の夫となろう。しかし、負けた者には死んでもらう』という条件だった。

 

数多くの男が彼女を手に入れようかとしたがーーー結果は死だった。彼女はそれほどまでに速く、早く、疾かった。生まれた直後に捨てられ、獣同然に育った彼女に足で追いつけられる者はいない。

 

だが、それを破る者はいた。それがヒッポメネスだ。彼は如何様に彼女に勝ったか。単純な走力で勝った? 否、違う。ヒッポメネスは女神に助力を仰ぎ、三つの果実を貰ったのだ。

 

それは黄金の林檎だった。

 

ヒッポメネスは走り出した直後、途中途中に林檎を後ろに投げ、黄金の林檎に釣られたアタランテを追い抜き、誰も達成できなかったことを遂に成功させた。

 

それがヒッポメネスの偉業だ。

 

女神に力を借り、アタランテに策略で勝った男、それがヒッポメネス。卑怯と言う者もいれば、小賢しいと言う者もいる。

 

怪物を倒したのでもなく、国を守護した訳でもなく、残虐極まる行為で人々に恐れられたわけでもない。

 

それがヒッポメネスという英雄であり、ヒッポメネスという神話の人物であった。

 

 

 

「…こんなところだよな」

 

カウレスはインターネットの電源を切り、背もたれに体を預けた。本を読み、世界と繋がる電子の海から情報を引き出しても己のサーヴァントの特徴はこれに行き渡る。

 

“ヒッポメネスはアタランテの夫となった”

 

それが彼が英雄である事実。言い換えればアタランテという狩人の英雄がいなければ彼は英雄として座に招かれなかったかもしれないということ。知名度はかなり低いと言っても間違いない。その証拠にステータスなんてどうだ。

 

クラス:バーサーカー

真名:ヒッポメネス

ステータス:筋力D 耐力C 敏捷B 魔力C 幸運B 宝具C

 

敏捷と幸運は高い、これは黄金の林檎から由来するのだろう。女神に目をつけられ、林檎を貰えた。この事実だけを考えれば高いことが考えられる。だから、ヒッポメネスの宝具は必然的にーーー

 

「あれ? 待てよ、それって…」

 

重大な事実に気づき、思わず立ち上がろうとするが直前に部屋のドアからコンコンと叩く音がした。

 

「あ、あぁ、誰だ?」

 

「やっほー! 失礼するよカウレスくん!!」

 

返事の直後、ドアを開けて入ってきたのは派手な装飾を身に纏う中性的な少年、ライダーだ。ライダーは笑顔満面でカウレスの部屋に入ると、キョロキョロと部屋を見渡し始めた。

 

「ねえねえ! ヒッポメネスいる? 今から町に遊びに行こうと思うから彼も誘おうかと思ってね!」

 

「お前…また」

 

ライダーの真名はアストルフォ、イングランド王の息子にしてシャルルマーニュ十二勇士の一人である。明朗快活な少年だが理性が蒸発していると例えられるほどにポジティブでうっかりな性格なのだ。事実、今、目の前で隠すべき真名を口にしている。

 

「あ! ごめんね! …うん、バーサーカー、バーサーカー。 よし! それでバーサーカーを誘いたんだけどダメ?」

 

「…あー、いいよ。でも話したいこともあるから夕方には帰ってくるようにしてくれ」

 

「分かったよ、ありがとう! それでバーサーカーは?」

 

「バーサーカーなら城の見張り台にいると思うぞ? あいつ暇さえあればそこに行くし」

 

「そうか、じゃあ誘っていってきま〜す!」

 

ライダーはバタバタと部屋から去っていった。部屋は自分一人となり、小さくため息を吐く。バーサーカーこそ弱点らしき弱点は無いが真名が明かされることだけは勘弁願いたい。それをまさか味方から明かされるかもしれないかと思うとヒヤヒヤしてくるというものだ。

 

これから起こる“聖杯大戦”の行く末に不安を感じずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

“聖杯大戦”

 

これを引き起こしたのは紛れも無い“黒”の陣営、ユグドミレニアの一族だ。

ユグドミレニアの一族とは魔術回路が貧弱、あるいは衰弱が始まり魔術回路が貧弱になりつつある一族を寄せ集め、成り立っている一族だ。初代が選んだ魔術系統を極めるのではない。浅く広く、幅広く、魔術を吸収して魔術師の悲願“根源の渦”へと至ろうとしている。

 

数が多いだけ。それだけが取り柄だった一族が聖杯戦争を引き起こした。それはなぜできたのか?

 

理由はユグドミレニア一族の長、ダーニック・プレストーン・ユグドミレニアにある。

 

ダーニックは見た目こそ二十代後半だが実年齢は八十を超えている。彼は六十年前に起こった“冬木の”聖杯戦争の参加者である。彼は聖杯戦争の最中、偶然にも聖杯戦争を引き起こしている原因である“大聖杯”をとある山中で発見した。

彼はその大聖杯を盗み出した。旧ナチス軍と協力し、“冬木の”大聖杯を作った御三家と帝国陸軍を出し抜いて日本から持ち去った。そのあと旧ナチス軍を欺き、自身が管理する都市トゥリファスに大聖杯を隠し、六十年以上を掛けて聖杯をトゥリファスの地脈と接続させた。

 

ユグドミレニアは大聖杯を使い、魔術協会への叛逆を決意し、新たな協会を結成すると宣言する。

 

この為に大聖杯を奪い、六十年という時間耐え続けてきた。七体のサーヴァントを召喚し、魔術協会を打倒する。

 

…その予定だった。魔術協会の魔術師がユグドミレニア一族の本拠地であるミレニア城塞の地下に眠る大聖杯の予備システムを開放するまでは。

 

大聖杯は状況に応じ、令呪の再配布など聖杯戦争に関する補助を行う。この場合、一勢力に七体のサーヴァントが統一されたため、もう七体のサーヴァントを召喚可能とした。

 

故に“聖杯大戦”。

 

“冬木の”聖杯戦争の形式と異なり、七対七のサーヴァントがぶつかり合う。最小にして最も苛烈で大きな戦争が始まる。

 

ユグドミレニアの一族と魔術協会の魔術師が火花を散らす、“黒”と“赤”の魔術戦争。

 

それこそが“聖杯大戦”だ。

 

 

 

 

 

「……バーサーカーか」

 

聖杯大戦がどういうものなのか、聖杯によって与えられた知識とマスターからの確認で把握した。大まかではあるが、なぜ聖杯大戦が引き起こされたのかの経緯も理解した。

サーヴァントとして頼られたなら応えるべき。曲がりなりにも神話に名を残した英雄なのだ。それが予定とは違い、望まれて喚ばれたわけではなくとも、マスターの願いと自身の願いのため獅子奮迅しようと決意した。

 

バーサーカーこと、ヒッポメネスはそう考えたのだ。

 

彼は間違いなく自分自身こそ聖杯大戦で最弱のサーヴァントなのだと考えている。会って間もないが己と轡を並べて戦うサーヴァント達の真名を聞き、格が違うと納得した。

 

剣士のサーヴァント セイバー。最優のサーヴァントと言われるだけあり、万能の力と技能を有するクラス。真名は知れずとも隠しきれぬ英雄の覇気を纏っていた。

 

槍兵のサーヴァント ランサー。俊敏にて最速を担うクラス。この“黒”の陣営で『王』として君臨し、此処ルーマニアにて最高の知名度を誇る守護者。

 

弓兵のサーヴァント アーチャー。遠距離戦を得意とするクラス。そのクラスの英雄を彼は生前に知っていた。会ったことはなくとも数々の英雄を育てた大賢者である。

 

騎兵のサーヴァント ライダー。数多くの宝具を有し、空中を駆けるクラス。会ったばかりではあるが気が合い、マスターの許可さえあれば町へと遊びに行くことが多い友人。

 

魔術師のサーヴァント キャスター。名の通り魔術師のクラス。常に仮面を着け、表情も心中も読めはしないが彼が造るゴーレムには感嘆の一言に尽きる。

 

暗殺者のサーヴァント アサシン。マスター殺しを得意とする暗殺者のクラス。聞いた話だと近代に生まれた殺人鬼らしい。

 

そして、バーサーカー。狂戦士のクラス。理性なく、ひたすら戦場で命尽きるまで暴れる。それがヒッポメネスに与えられたクラスだ。

 

「バーサーカーらしきしたことは…あれか」

 

ヒッポメネスがバーサーカーとしてカテゴライズされる逸話は存在しなくもない。

 

ヒッポメネスは妻アタランテと神が奉られている神殿で体を交わり、神の怒りに触れて獅子に変えられたと伝えられている。

 

それは紛れもなく不敬であり、信心深い者からしたら狂った所業とも思えなくもない。

 

彼のクラス別スキル“狂化”は極めて低い。

 

“狂化:E-”

 

恩恵は筋力も耐久が『痛みを感じにくい』だけだ。当初予定していた狂化のステータス向上はできていない。

 

「…そんなことした覚えはないけどね」

 

ヒッポメネスは生前そんなことした覚えはない。この逸話は後の世の人が語った創作に過ぎない。彼が妻と共に獅子になったのは違う理由だ。

 

それは彼と妻しか知らない物語の中にしか存在しない。

 

人知れず時間の中に消えていった、語られぬ英雄譚。

 

純潔の狩人無しには英雄と認められない彼は、果たしてどのような偉業を成したのか。

 

それをこの聖杯大戦にて語ろう。二度目の生を与えてくれたマスターに、勝利と聖杯の二つを携えて。

 

「お〜い! ヒッポメネス〜!」

 

見張り台の上に佇んでいたバーサーカーは下から響いてきた友の声に振り向いた。見下ろすとライダーがこちらに手を振っていた。二度目の生にて初めて得た友人 アストルフォ。そんな彼に苦笑いしながら、見張り台を降りて近づいた。

 

「ライダー? 真名は呼ばないでくれって言っただろう」

 

「あ、ごめんごめん。君のマスターにも言われたばかりなのに忘れちゃってたよ」

 

「カウレス君に? 彼に何か用があったのかい?」

 

「うん! これから町に遊びに行こうかと思ってさ! 君を誘おうかと思ってまずマスターの許可を取りに行ったのさ!」

 

「それはまず僕に許可を取るべきじゃない?」

 

まあ僕がいいと思ってもカウレス君が許してくれなきゃダメだけどね、と追加してからアストルフォと共に城塞内へと戻っていった。

町に遊びにいくことは問題無い、しかしまず服に着替えなければならないので服を置いているライダーの部屋へと向かうことにした。

 




聖杯戦争説明回? 的な話。
フランちゃんには申し訳ないけど退場してもらいました。でも、実力はフランちゃんと変わらない…かも?
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