では、どうぞ
ジークと“黒”のライダーはブカレストに向かうこととなった。
それを知ったのはカウレスとフィオレが話し、空中庭園を五日後に攻めると決まった次の日だった。
フィオレは魔術師を辞めることに決め、カウレスに一族が受け継いできた魔術刻印を継承することにした。その継承の儀式は部外者に知られてはならないため、協力者の形を取っているジークと“黒”のライダーはトゥリファスを出ることとなった。
ルーラーはその立会人として少しだけトゥリファスに残り、終わり次第ブカレストに向かうことになる。
「そういうことだから余計な騒ぎを起こしたらダメだよ〜、アストルフォ」
「ははは、マスター含めてみんなボクに喧嘩売ってんなコンチクショー!」
がぁー!と怒る
抑える風景を呆れながら見ているのはジークやルーラー、フィオレ達“黒”の陣営とホムンクルス達だった。
“黒”のライダーが起こした騒動は大なり小なり沢山ある。それを知っているからこそブカレストでジークと二人になると何を起こすやら…。
前まではバーサーカーがストッパーとしていたものの彼はトゥリファスで残るため、ジークとルーラーの二人でライダーを監視しなければならない。その事をジークに厳重に注意しているのを…真横に本人がいるのに続けていてこうなった。
「まあまあ、ある意味信頼の表れだよ、これも」
「こんな信頼あるかー!」
「落ち着いてくださいライダー、私は信じていますよ」
穏やかな笑みを見せる“黒”のアーチャーに、ライダーは涙目で顔を明るくさせるが。
「最後まで悩んでたけどな、見張りをつけるべきか否か」
「君もかー!!」
カウレスの一言で台無しとなった。ポコポコとアーチャーへと殴りかかるライダーを宥めるバーサーカーの姿に僅かに微笑んだフィオレは、咳払いを一回した。
「私達が合流次第、空中庭園へ向かいます。今のうちにホムンクルス達へ別れを告げておいて方がいいかもしれませんよ?」
驚き、ジークは顔を固めた。フィオレの言う通り、ブカレストに向かえばトゥリファスに戻る予定はない。
ここで、ジークはホムンクルス達との別れとなる。
「ライダー、みんなに別れを言ってくる」
「うん、好きなだけ言っておいでよ」
そう言ってジーク達はホムンクルス達の元へと向かった。
ホムンクルス達はそれぞれジーク達に別れを告げていく、その様子をサーヴァント達とマスター達は眺めていた。
「ジークも友達が多くできたみたいだねぇ」
「うん! あとはさっさと“赤”の連中をぶっ飛ばしてジークを自由にさせるだけ!」
「ええ、敵も一筋縄ではいかないでしょうが対策は充分な筈。後は各々がーーー」
「割り振れられた役割を、全うするだけです」
“黒”の陣営において残る三騎のサーヴァントとルーラーが自ずと己の役割を語る。
「ボクは宝具の解放で道を切り拓く。そして、空中庭園の迎撃機システムを破壊する!」
「私は“赤”のライダーを。彼を斃せるのは私だけでしょうし」
「私は空中庭園の内部を突破し天草四郎を。途中で“赤”のアサシン、“赤”のキャスターとの戦闘も考えられるでしょうがなんとかします」
ライダー、アーチャー、ルーラーと続き、最後にバーサーカーの番が来た。
近くにいたマスター達、カウレスとフィオレ、少し離れた場所にいたゴルドもバーサーカーへと視線がいく。
流れから、いや、必然的にバーサーカーが相手しなければならないのはーーー
「僕は“赤”のアーチャーを相手する」
だったのだが、すんなりと告げられた。
マスターであるカウレスがその様子に一番驚いていた。バーサーカーの表情はとても変わってなかったから。悲しみも、躊躇いも見えなかった。
ただ、見えたのは受容。その事実を受け入れ、抗うことが見えなかった。
バーサーカーの言葉にサーヴァント達は疑問を抱くこともなく、頷いた。
「ではその手筈で間違いないですね? 勝てばすぐに他の者の手助けを、それで構いませんね?」
返事は首肯。それで戦いの再確認は終わった。同時にジークの挨拶が終わり、ライダーがジークへと駆け寄った。
「では、俺達はブカレストに向かう」
「はい、私も用事が終わり次第向かいますので…くれぐれもライダーを頼みます」
「ああ」
「もうその下りはいいってさぁ!」
○ ○ ○ ○ ○
ジーク達が去っただけなのにやけに静かになったミレニア城塞内部では、一つの継承が行われようとしていた。
フィオレの私室で、三騎のサーヴァントと姉弟が揃っていた。
「本当によろしいのですね?」
「ええ、ここで行わなければ手離したくなくなりそうで」
行われるのは、魔術刻印の継承。
本来受け付けられた魔術刻印は簡単に受け継げれるものではない。しかし、カウレスはフィオレの代用として育てられてきた魔術師。幼くして体を調整されてきた。
受け継がれる魔術刻印は体に大きな負担をかける。それこそ体に支障をきたし、激痛を伴うこともある。何代にも渡って継承されてきた神経を他人へ移すのだ。生半可なものではない。
ゆえに、サーヴァント達が此処にいる。
魔術にも造詣が深いアーチャーと治癒が可能なルーラー、そして海を根源とする神の血を引くバーサーカーがいる。
サーヴァント達は移植の補助のためにいた。
「さて、二人ともいいかな」
補助の主導は肉体治癒や水の属性に富んだバーサーカーだった。
「いきなり七割の刻印とかな…」
「…不安かい?」
「貧弱な魔術回路を持ってればな」
言葉の割には平気そうな返事だった。肩を竦めるカウレスを見て、一度は笑ったバーサーカーはすぐに表情を引き締めた。
「さてーーーはじめるよ」
溶けるように広がり、融けるように熱を取り戻していく。
目の前に映るのは何百年も続く先代達の妄執だった。
なぜお前が、あり得ぬ、やめろ。巫山戯るなと叫び続ける。今までの歴史を穢し、宿願を遠ざけるつもりか。
鬱陶しいほどの叫びにカウレスは眉を顰めるように顔の一部を動かした。
ーーー黙れ
その言葉に静かになるわけではない。だが、そこには絶対の意思が含まれていた。
関係ないと突き進む。迫り来る不快など振り払う。その度に痛みが走り、意識が飛びそうになったが。
ーーその調子、その調子
なんて場に似つかわしく声なのだろう。会った時から思っていたが、時折その声に緊張感を剥ぎ取られそうになった。
だけど、その声は穏やかな波を足下まで運んだ。
さっきまであったのは妄執が降り注ぐ無味だったのが、いつの間にか爽やかに晴れた海辺へと姿を変えていた。
全くと、ため息が溢れそうになる。
でも、突き進んだ。せめてもと自分がしっかりしなければ。それでちょうど釣り合いが取れるものだ。
ーーーああ、だからかもな
だからこそ、自分はこの英雄を引き寄せたのかも。
なんて事を考えながら歩き続けた。重みに感じていたものは知らぬうちに流れ落ち、一歩ごとに進む足は確実に目的の場所へとたどり着くことだろう。
地平線の彼方まで続くと思っていた砂浜も終わりが見えてきた。
そこには少女がいた。少女の手には引き紐、引き紐の先には首輪をされた老犬もいた。
そうか、と納得する。優秀で、いつまでも後ろについていくと漠然と決めていた姉が、何でいつまでも人間のままで留まっていたのか。
忘れられるはずがないよな。
そう呟きながら少年は少女へと近づいていった。少年が近づくのを見て、少女は悲しそうな顔を浮かべる。
ーーーもう、終わりなのね
ーーー終わりじゃねえよ
少女の手にあった引き紐を奪い取った。
ーーー継ぐってことは、こいつも引き継ぐってことだ。…安心してくれよ、ちゃんと面倒みるからさ
そう朗らかに笑って見せた。少しだけ驚いた表情を見せたが、すぐに笑顔になった。
ーーーじゃあ、よろしくね
ーーーああ
受け取った引き紐の先にいた老犬は無邪気に一度吠えて見せた。それを見た姉弟は、昔のように笑ってみせた。
目を開くと、何てことはなかった。三騎のサーヴァントと横に目覚めたばかりのフィオレがいた。
カウレスは目を擦ろうとしたが、体中に感じる異物感に腕を上げることさえできなかった。
「っつつ…」
「どうやら、上手く成功したようですね」
安心したように微笑む聖女の言葉にカウレスは魔術刻印の継承が済んだことを思い出した。
血が銅になっているような鈍重感に抗いながら、自分の肉体に魔力を巡らせて、再確認した。
「…本当にできたみたいだな」
「おめでとう、カウレス君」
パチパチと拍手をしていたのは自分のサーヴァント、バーサーカーだった。少しばかり褒められて嬉しいのか、顔を背けて短く返事した。
「ああ」
「では、これを」
ルーラーはカウレスの胸板に布を巻きつけた。巻かれたカウレスは体を責めていた痛みが和らいでいくことのを感じた。
「聖骸布です。いざという時に取っておいたのですが今は貴方が使うべきでしょう。多少の痛みなら緩和させることができます」
「すまない、ルーラー」
多少は動けるようになったもののバーサーカーの手を借りなければ体を起こすことができなかった。同じようにフィオレはアーチャーの手を借りて体を起こしていた。
「立派でしたよ。カウレス・フォルヴェッジ・ユグドレミニア。そしてもちろん、姉であるフィオレ、貴女も」
ルーラーの言葉にフィオレは首を横に振って否定した。
「いいえ。今はカウレスだけを褒めてあげてください。私の、自慢の弟なんですから」
カウレスは緩みそうになる口元を抑えるも、赤くなる顔を隠せなかった。
○ ○ ○ ○ ○
継承も終わり、ルーラーはジーク達が向かったブカレストへと向かっていった。ミレニア城塞では現在忙しなくホムンクルス達とゴルドが城塞の復旧作業を続けていた。
ホムンクルス達はフィオレ達の契約により安全の保証をされ、とりあえずはこの城塞の働きながら住まうこととなった。戦闘用、魔力補給用と鋳造されたホムンクルスは肉体の不調を訴える者も未だ存在し、その度にゴルドが眠っている最中であろうが引っ張り出されていた。
そんなゴルドがホムンクルスのリーダー格たるトゥールに引き摺られ、悲鳴が響く城塞の廊下を扉越しから聞いたカウレスは苦笑いだった。
「ゴルドのおっさんも災難だな」
「でもセイバーを召喚した時に比べればイキイキしているように見えたよ」
「そりゃあ寝不足だからだ。目が血走っていただろ?」
シャリシャリと器用に果物ナイフでリンゴの皮を剥いていたバーサーカーは、ベッドの高さに合った椅子の上に剥いたばかりのリンゴを置いた。
剥かれたばかりのリンゴに手を伸ばすカウレスだが、腕を上げた瞬間に顔を顰めた。
「聖骸布でも完全には痛みは緩和できないみたいだねぇ」
「だな。…まあ、これぐらいは耐えないとな」
フィオレはこの痛みに耐え続けた。受け継ぐと宣言した以上、これも背負い続けるのだ。
結果として今は八割の魔術刻印を継承した今、自分の魔力は前に比べて上昇している。この魔力量ならばバーサーカーも気兼ねなく戦わせることができる。
作戦が決行される残り四日間でどれだけ体に馴染ませることができるかで勝率も変わってくる。ゆっくりと体を休ませることがカウレスにできる最良の行動だ。
「はぁ、あと四日はこの状態かよ」
「暇なら枕元までパソコン持ってくる?」
「流石にそこまで暇に飢えてねえよ」
枕に顔を沈めたカウレスはため息をついた。バーサーカーはその様子に笑うと椅子に座り、剥いたリンゴを一口食べた。
カウレスは特に気まずくもない空気の中で口を開いた。
「やれるのか?」
「“赤”のアーチャーのことかい?」
もう名前では呼んでいなかった。敵として立ちはだかる弓兵のサーヴァントとして、 バーサーカーは見ていた。
「ああ」
「もう戻れないからね。ここで彼女を突破しないと君達の明日は止まってしまう。終わりを迎えない、固まった世界は受け入れるべきではないんだ」
固まった世界。あらゆる価値観が灰燼となり消え去った世界は何が起こるのか。
天草四郎はその先を見据えているのか、それとも争いを無くすことだけを見ているのか。
それは分からない。だが、バーサーカーは全人類の不老不死の先には、停滞しか待ち受けていないと考えていた。
そこまで考えて、バーサーカーは申し訳なさそうに頭を垂れた。
「ごめんね、カウレス君」
「何がだよ」
「約束、果たせそうにないや」
約束が何を指しているのかをすぐに理解できて、カウレスは呆れ顔になった。
「聖杯を勝ち取ることか?」
「うん。こんな形に進むことになったけど、恐らく僕は“赤”のアーチャーに勝てても君に聖杯を渡すことはできない」
五日後に空中庭園に乗り込み、無事に大聖杯を奪取できたとしても大聖杯は魔術協会の魔術師に回収されてしまう可能性が高い。ルーマニアを出てしまえばユグドレミニアの勢力は弱まり、どう足掻こうともカウレス達は大聖杯を取り戻すことはできないだろう。
「そんなの今更だろ。…というか、今だから言えるが俺は聖杯を手に入れれるなんてこれっぽっちも想像できていなかった」
カウレスは“赤”の陣営に勝ち、最後の身内同士の戦いになった場合、真っ先に脱落するだろうとしか思い描いていなかった。
バーサーカーが理性を保ち、話せれるからこそ希望的想像を考えてきたがどうにも良い結果は浮かんでこなかった。
「せいぜい姉さんと戦って、バーサーカーはやられてしまって俺はなんとか生き残る。…それがまともな終わり方だろうなと思っていたさ」
「そうなんだ。まあ、それが普通なんだろうけどさ」
バーサーカーは怒らなかった。それはなんとなく受け入れていた。勝つつもりではいたがどうしようとも根本的な実力の差で聖杯は遠ざいていくことを、何処かで妥協していた部分もあったのかもしれない。
「じゃあ僕も今更だけど…、“赤”のアーチャーがアタランテと分かった時点で聖杯戦争のことそっちのけで彼女のことしか考えていなかった」
「だろうな」
誰が見てもそうだろう。気づかなかったのはセイバーを失い自信喪失だったゴルドや興味がないセレニケ、ロシェぐらいだ。他の全員、ホムンクルス達もそれには気づいていた。
「まぁなんというかどちらもやる気ないというかなんというか、聖杯大戦に乗り気じゃなかったわけだ」
「だね〜。…でも」
「得れるものがあり、目指すべき場所が分かった」
カウレスは魔術の道を進むことを決め、
最小にして最大の殺し合いのなか、道のりを見出せた。それが一つの主従が手に取った唯一の鈍い栄光。ありふれて目立たないが、勇気ある人間の選択だった。
「…
「…いいのか? 相当に嫌がっていただろう」
「出し惜しみは無しさ。やるべきことをやろう」
椅子から立ち上がり、バーサーカーは部屋の扉まで向かった。
「じゃあ、ちょっとだけ夜風を浴びてくるよ」
「ああ。…お休み」
「うん、お休みなさい」
閉められた扉をしばらく眺めてからカウレスはぎこちない動きで腕を持ち上げて、手の甲に刻まれた二画の令呪を見上げた。
「これの使い所、間違えないようにしないとな」
それがサーヴァントのマスターたる魔術師の、最大の補助だから。
カウレスは近づく決戦の日まで、あらゆる状況を予測し、使う令呪の内容を思考し始めた。
○ ○ ○ ○ ○
「ふっ!!」
上から下へと振り下ろし、勢いを失わないように体を捻り逆手に持った小剣を横に薙ぐ。薙いだ小剣は振りかぶり過ぎ、隙を見せた。
三連に刺突した槍は眉間、喉、胸を目指した。しかし、目につけた場所から僅かにズレてしまった。
魔術を起動させ、槍の形に変えて離れた大地へと突き刺した。離れた位置すぎると、すぐに形は崩れて水は地面に染み込んだ。
詠唱を紡ぎ、体に魔力を巡り満たす。一動作限定の破格の一撃を移動に利用し、一歩の踏み込みで城塞の壁を飛び越えた。
一通りの動作を再確認し、“赤”のアーチャーの動きを思い出す。 弓を引く動作、走法、回避行動、視線誘導、気配の隠し方。
ありとあらゆる情報を思い出し、“赤”のアーチャー自身に教わった戦い方を引きずり出す。
そして脳内で己と彼女の模擬戦を行いーーー負ける。
負けた要点を振り返りーーー負ける。
もう一度迫りーーー負けた。
何度も、幾度も振り返るがその度に矢が喉や額、心臓を貫かれるイメージが克明に想像できた。
そんなこと、分かっている。
相手は神域の狩人。ギリシャ神話において勇者が集まったアルゴー船の乗務員、アルゴナウタイの一人であり、カリュドンの猪に一矢を刺した女傑。
それに名誉など一切無いただの神の血を引いた男が、追いつくはずがない。
分かりきっていることを確認することはない。
それでも剣を振るい、槍を持つ理由がある。
最初から、出会った時から目的は変わっていない。
だが、加わったものがあった。
現代において得た友と、友が向かおうとする道の想い。
報われるべきだったのに、自ら手を下した過去の残骸達。
そして、涙を流させても尚、伝えなければいけない言葉があった。
もう引かない。例えどんなに血に塗れ、屈辱に押し潰されそうになり、心が裂かれそうになっても、選んだ信念があるのだから。
「重心がなってませんよ。脇を閉め、足を広げなさい」
突然声を掛けられて、驚きながらも振り返ると
「夜中に風を切る音がしたのでやってきてみれば、貴方が槍を振るっていたもので。余計な言葉を申し訳ありません」
どうやら弓兵の聴覚が槍を振るう音を拾ってしまったらしい。そんなことはないと、バーサーカーは首を横に振った。
「いえ、かの賢者から助言を頂けるなんて光栄です」
ギリシャ神話において、世界において最強の大英雄ヘラクレスを育てた賢者に教えて貰えるなど名誉の他ない。
言われた通りに、バーサーカーは脇を閉めて足をひろげた。自然に低くなった姿勢でもう一度槍を突く。大した変わりではなかったものの槍先はブレず、心なしか鋭さを増した感覚を覚えた。
槍の冴えを見て、アーチャーはバーサーカーの心境の変化に気づいた。
「どうやら、貴方も良きマスターに会えたようですね」
「ええ、二度目の生で失えない友が多く得れました」
カウレスにアストルフォ、ジークとどうにも放っとけない友が瞼の裏に浮かびあがった。
槍をもう一度放ち、素早く構え直す。
「互いに妙な縁を持って召喚されましたよね」
「はい。同じギリシャの英雄として召喚され、あちらには生前に深く関わった者がおり、マスターは自らの生き方を見つけれた者同士。奇縁ではありましょうが決して悪いものではなかったでしょう」
悪いはずなんてない。苦しくもあったが、決して後悔なんて抱くことなんてない出会いだ。
「アーチャー。以前にあなたが僕に言ったことを覚えていますか?」
「ええ、もちろん。貴方は、“赤”のアーチャーに殺されると」
「今はどうでしょうか?」
「残念ながら、今もそれは変わってません」
やはりかと苦笑した。しかし、アーチャーはですがと言葉を続けた。
「一つだけ、突破口があります」
にこやかに笑うアーチャーは厳かに、そして未来を見据える予言者のように言った。
「英雄となっても、一人の男として抗い続ける貴方にしか得られない力を与えましょう」
決戦は粛々と。そして、彼の物語もまたーーー