とある飛空士への遭遇   作:gfyama

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第2話

雨筋の洪水が屋根を激しくならし雨どいへと渦を巻いて流れ落ちていく。

アラートハンガーからは正面の滑走路を伺うことも出来ない程の大雨だった。

 

『全国的な大雨は未だに猛威をふるっており、雷の影響で国外との通信が不通となっております。なお・・・・』

 

「カミナリねぇ・・・」

そんなんで不通になるかい、と胸にしまいつつ、ソファーから男は起き上がった。

寝ながら聞いていた携帯ラジオの音量を下げ、ひとつアクビをした。

浅黒く焼けた肌に短く刈り上げた髪がよく似合う男だ。

180センチちかい長身にOD色《オリーブドラブ》の飛行服を身につけていた。

「新庄一尉、だらしないですよ」

隣で携帯ゲームをしていた若干丸顔の青年が顔を引きつらせて笑った。

この先輩は顔立ちはいいのだが振る舞いが残念なことで隊のみならず基地全体で有名だった。

そのせいで四十路に差し掛かるというのに女っ気が無い。

「うっさい!妻帯者!」

妻帯者と怒鳴られた日向薫(三等空尉)は顔立ちは平々凡々だが、極度と言ってさしつかえないフェミニストだ。実家ではハムスターや猫などを数十匹飼っている。

また、温和な表情から女性に言い寄られるタイプだ。

「また...だから結婚してませんから!?」

新庄真(一等空尉)はへいへいと答えて机上のリモコンを取り、テレビをつけた。

気象隊の報告で雲の動きは分かっているが確認したかったのだ。

地方キー局に合わせたがラジオと変わりばえしないので大手局にチャンネルを回した。

見出しでは【ナゼ続く大雨!?】の文字が踊っていた。

『ーー通常の雨雲は常に移動しているのです。しかし、ここ3週間全く移動していません』

『つまり?』

バラエティー番組でよくみる司会者が続ける。

『つまりですね。オカルト・・・とは申しませんがそれに近いモノではないかという考え方があるのです』

『在日米軍が撤退した直後ですし、一部では北の新兵器ではないかという噂までーーー』

新庄はここまで見てスイッチを切った。

性格上こういった憶測だらけの番組はキライだった。

「なあ、どう思うよ?」

ずい、と乗り出して日向にせまる。

「どうと言われても・・・まあ、何にせよ早く止んで欲しいですね。国外と連絡つかないのも困りますし...」

新庄が頷きかけたところでパタリと雨音が止んでいるのに気がついた。

外を見ようと窓のブラインドへ手を掛けた。

強烈な光が飛び込んできた。

目を細めて防ぐ。

そこは見事な夕焼け色に染まっていた。

いや、今は3時だ。夕焼けには早い。

それに、空のどこにも雲がなかった。

日本全土を覆い隠す程の雲が一瞬で消える筈がない。

オカルトの文字が脳裏をよぎる。

しかし思考する時はなかった。

待機室一杯に広がるベルの音。

訓練以外ではほとんど聞かない、コックピット待機なし、危険度の高い発進。

「ホットスクランブル!!」

2人は既に待機室を飛び出していた。

クッション材張りのドアを体当たりして開け、隣接するアラートハンガーに飛び出た。

整備員が機に取り付くのを横目にタラップを駆け上り、上段で機体上部をチェック。

異常無いことを確認しコックピットへ収まった。

機内のGスーツと酸素マスク、ヘルメットを装着し電源をいれた。

アラートハンガーの対爆ドアが整備員の手でゴロゴロと開けられていった。

コンソールの計器類が電子音を立て立ちあがる。

ハーネスで身体を固定し計器をチェック。

そのままスターターをオン。

クゥゥンとうなりをあげた、タービンの回転数があがるのを確認し点火。

「ワン・チェック」「ツー・チェック」

2人がイーグル<鷲>に息吹きを吹き込んだのは同時だった。

1番機新庄からハンガーを出る。

外は夕日が沈みはじめていた。数分で暗くなるだろう。

「マジか・・・8月の3時だぞ・・・」

ターボファンエンジン2機の有り余る推力がスロットルに手をかけずとも機体を進ませる。

誘導路を通り過ぎ、滑走路に進入した。

3000mの滑走路に向かい合いブレーキをかける。

新庄は2番機日向が続いていることを確認。

「ブロッケン・ワン・テイクオフ!」

ブレーキを解除、スロットルをミリタリー、アフターバーナー点火。

暴力的な加速が襲いかかる。たちまち機体が軽くなる。

新庄は機首をあげ、迎え角をとり離陸した。

 

 

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