不本意ながら奴隷を買うことになった《凍結》   作:こめぴ

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フィーバーが終わってしまったこめぴです。
ランキング様々ですな!

ではがんばっていきましょう。




第16話「パーティーの準備は万全に」

「ジン様。お手紙が届いております。」

 

いつものように仕事をしているとバーリルがやってきて一枚の紙を俺に渡す。こいつも最近やっと俺の仕事を勝手にやらなくなった。何度も何度も言ったことが効いたのだろうか。

 

俺には手紙を交換するような友達や知り合いはいない。ということは手紙の内容はアレだろう。だいたい予想はつく。そして読む前から憂鬱になってくる。

 

手紙を受け取って封を開ける。予想通りの手紙の内容だった。

 

 

「公爵のお子様の10歳の誕生日パーティーへの参加状」

 

 

 

「はぁ……。」

 

思わずため息がでる。あまり俺はこういうパーティーは好きではないのだ。あの誰もが相手の顔色を伺い、陥れようとする高度の仮面舞踏会のような場所はきらいだ。まあ、立場の問題もあるので参加はするが。基本的に下の身分の人間は上の身分の人間のこういった参加状を断ることはできない。

 

というかなぜ貴族のやつらはことあるごとにパーティーを開きたがるのだろうか。騒ぎたいのだろうか。それにこういうパーティーは最終的には何のパーティーとか関係なくなる。例えば誕生日パーティーだと最初はおめでとうございますとか言っているが、しばらくすると自慢大会になる。その姿は外から見ていると本当に醜く見える。結局はみんな他者の上に立ちたいのだろう。

 

 

何てことを考えながら手紙を見ていると他にも幾つか書いてあった。

 

 

開催日は今日から2週間後か。開けておかないと。スケジュールを書く手帳に書き込んでいく。

服装のことは書いてないがまあそれなりの格好をしていけば問題ないだろ。そういう服はちゃんと持ってる。

時間は夜。深夜と言ってもいい時間帯だ。というかそんな時間に10歳の子供を起こしておいていいのだろうか。子供を祝うつもりなどないことがヒシヒシと伝わってくる。親の口実に使われるとはこの子供も可哀想だな。

 

他にも幾つかあるが俺には大して関係ないから割愛。

が、ここで今の俺には見過ごせないことが書いてあった。

 

 

「奴隷所持者は持参」

 

 

そうだった……。こいつ奴隷マニアのやつだった。ちなみにどこぞの侯爵とは別人である。

奴隷は世間的に見ればマイナーだが貴族からすれば結構メジャーなのだ。しかも1度買うとはまってしまってマニアになる奴が多い。やっぱり絶対的に下の人間がいると安心するんだろう。そいつらは奴隷を物としか考えていない。全くこの国も腐ったものである。

 

 

確かにこいつのパーティーでは奴隷を連れてくるやつが多かった気がする。今まで奴隷とは無縁だったから無視していたが、俺も奴隷持ちの身になってしまった。連れて行かないといけない。

ちなみに連れて行かないという選択肢は一瞬で消えた。

こいつはあの侯爵と仲がいい。あいつのことだお気に入りの俺のことはかなり色々話しているんだろう。もちろん奴隷を買ったことも。だから誘われたのかもなこのパーティーに。

 

ここで心配になるのがアイラのことだ。

この屋敷の人間は仕事仲間と割り切っているのである程度は関われるのだが、あいつは基本的に人見知り。知らないやつしかいないパーティー会場なんかに連れて行って大丈夫だろうか。まあ、連れて行かないという選択肢はもう潰れているから連れて行くしかないのだが。

 

 

うんうんと頭を悩ませる。無駄ということはわかってるが、悩まずにはいられない。

 

 

「どうかしましたか?手紙の内容になにか悪いことでも?」

 

悩んでいるのを見かねたバーリルが俺には話しかけてくる。ちょうどいい。こいつの意見も聞いてみるか。

 

「いや、確かに悪いって言えば悪いがそこまでじゃない。

ほら、これだよ。」

 

手紙を見たバーリルは顔をしかめる。そういえばこいつ奴隷がどうとか嫌いだったな。思いっきり顔に嫌悪感丸出しだ。

 

「ああ、あのお方ですか。ということはアイラを連れて行くのですか?」

 

「それなんだよなぁ……。連れて行って大丈夫だろうか。」

 

「確かにアイラは人見知りがすごいですしね。それに雰囲気や考え方は同年代より大人ですがまだまだ子供ですし。心配なさる気持ちはよくわかります。」

 

「だからといって連れて行かないとあいつに色々言われそうだし……。どうするかなぁ。まあ、連れて行くしかないんだけど。」

 

バーリルは自嘲気味にこぼす俺に苦笑いで返す。

 

「それに、アイラの精神面でも心配事があります。」

 

「精神面?」

 

「奴隷マニアが主催するパーティーなんですから他にも奴隷マニアは来るでしょう。そこで前の主人と会わなければいいのですが……。」

 

確かに。最近のあいつは表情も豊かになって前より雰囲気も柔らかくなった。これはきっと今までの経験で負った心の傷が治ってきている兆候だろう。まだまだ傷は深そうだが治ってきているのは間違いないとマラードも言っていた。

 

そんなあいつが今前の主人となんかあったら過去がフラッシュバックして心の傷が元どおりになるどころか悪化するかもしれない。そんなことにはさせれない。

 

「バーリル。過去のアイラの主人がパーティーに来るか調べられるか?個人の特定も出来たらしてくれ。でも最優先は来るか否かだ。できるか?」

 

バーリルは手を顎に添えすこし考えると

 

「なんとかなると思います。すこし時間はかかりますが、パーティーまでには間に合うと思います。」

 

「よし。なら頼んだ。」

 

「承知しました。」

 

 

 

 

 

結果から言うと来ないことがわかった。それと嬉しいことに何人か個人の特定も出来たようだ。もちろんできてないやつもいるが。今更ながらアイラがこんなにたくさんの主人に買われていたのかと驚いた。

まだ14だぞ?この数は正直異常だ。わかっているだけで10人もいる。

 

さて、これでアイラを連れて行くことは確定。もう本人にも伝えておいた。明らかに動揺していたがご主人様の命令だと思い承諾していた。

 

 

そして当日である。

俺はパーティー用のスーツを着てアイラもガッツリするとなにか言われそうなのでそこそこドレスアップしている。

メアに可愛い可愛いと抱きしめられて顔を赤くしてるアイラ可愛かったです。

 

移動はもちろん馬車で。中では相変わらずの沈黙。もうこの沈黙も苦ではなくなっていた。むしろ落ち着く。

 

会場に近づくにつれ、道を走る他の馬車を見かけるようになった。あいつらも多分パーティーの参加者だろう。よくもまあこんなに来るものだ。

 

到着し中に入る。さすが本物の貴族。大豪邸である。俺の屋敷とは比べ物にならない。シャンデリアとかどこを見てもキラキラしている。召使いの数も多い。出迎えに来た奴だけでうちより多いんじゃないだろうか。

そのうちの一人に案内され会場へ到着した。

 

会場にはもう30人ほどいた。男も女もいた。奴隷マニアには女もいるようだ。やはり主催者の挨拶より前に料理に手をつけるのはマナー違反なので誰も手をつけずに他の貴族と談笑している。その傍らには薄汚れた格好の若い男女が。光り輝く豪華な衣装で楽しそうに談笑をする二人組みと薄汚れた二人組み。まるで光と闇のようだった。そういった組み合わせがこの場では何組もできている。本当に異質な空間だ。

 

 

 

あのあと俺は何人かに話しかけられた。曰く

 

「おや、ジンさんじゃないですか。奴隷を買われたんですか?」

 

とニヤニヤしながらいってきたり、

 

「奴隷をドレスアップされるなんてさすがですね。考えていることが違う。」

 

と明らかに馬鹿にしながら言ってきたり、

 

「随分と汚い女ですね。もう捨てどきですよ?」

 

といらないアドバイスをされた。

 

最初の二つのようなものは平民の出ということもあってよく言われるから慣れているが最後のは結構危なかった。

30メートルくらい助走をつけてドロップキックをかましたい気分である。もちろんそんなことはできないので自分で言うのもなんだが嫌味なくらい完璧な営業スマイルで返しておいた。あいつらは俺が怒らないのがつまらなかったのか舌打ちをして元の場所に帰って行った。

そういう態度はきちんと隠しなさいよ。

 

隣のアイラを見るとやはり悲しそうに、申し訳なさそうにしている。アイラは何も悪くないのに。そんな顔をさせてしまったことが一番悲しかった。

 

 

特に話すような奴もいないので立って飲み物を飲みながら周りの奴らを眺めていた。俺は自分でいいやつと認めたやつとしか進んで関わらない。そんなやつはこんなパーティーには誘われないから結果的に俺はボッチになってしまうのである。

 

 

 

ガチャン、と扉が開いた。反射的にそちらを向いてしまう。入ってきたのは50歳くらいの男と30歳くらいの奴隷の女だった。まあ、さっきから何人も入ってきているので俺はすぐに興味をなくして視線を戻したがアイラはなぜかあいつらを凝視していた。さらに言えばその女の奴隷を。

 

その表情は俺が今まで見た中で最も驚いている顔だった。目をこれでもかというほど見開いて口も中途半端に開いている。

 

その口から出た言葉は俺にもかなりの衝撃を与えた。

 

 

 

 

 

「………………お母さん。」




ちょっと展開が早すぎるかな?と思っている今日この頃です。

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