不本意ながら奴隷を買うことになった《凍結》   作:こめぴ

2 / 31
ほそぼそとがんばっているこめぴです

ではどうぞ


第2話「帰りの馬車にて」

「買ってきました」

 

面倒だが侯爵に報告した。

 

「ほーほー。そいつかー。お前趣味悪くね?」

 

「まあ、安かったんで」

 

「金にケチなお前らしいな。でもな?奴隷はもっとちゃんと選ばないと!そもそも…」

 

なんか奴隷教室が始まった。

奴隷についてこんなに語れるこいつは人間として結構終わってるのではないだろうか。

ところどころでてくるえげつない言葉に彼の奴隷がびくっとする。これからそれが自分に起こると想像してるんだろうか。ふと自分の奴隷がどんな顔をしているか気になった。俺もそんなことをすると思われているんだろうか。

もしそうなら本当に心外だけど、こんなとこに来てる以上そんなことを思われてもしょうがないと思う。

そう思ってちらっと見てみるが、彼女の顔はなにも変わっていなかった。初めて見たときと何も変わらない表情だった。まるでそんなのなんともないかのように。

もしかしたらこいつはそんなこととっくに経験済みなのかもしれない。いや、この傷のひどさからしてそれ以上のことをされていた可能性だってある。

一般的な家で生まれ、普通に育って、今となっては貴族になって報われている俺には奴隷が受ける仕打ちの辛さがどれほどのものなのか想像することはできない。したくもない。こいつを買った立場である俺にはこいつに同情する資格なんてないのかもしれないが、やっぱり隣のこいつに同情せずにはいられなかった。

 

 

あのあと俺は「俺、これからあれなんで」なんて自分でもどうかと思うごまかし方で逃げてきた。

長くなりそうだったしな。あそこまで奴隷について語れるなんてドン引きである。

向こうもえ?なにそれみたいになってたが、俺ははやくそこから立ち去りたい一心で勢いで押し通った。もちろん奴隷は連れてきている。後が怖いが俺の精神衛生上こうするしかなかった。さすがにこんなことで手を出してきたりはしないだろう。

 

そして今は帰りの馬車の中。俺は普段歩くのが好きなので基本歩いて出るが、あんなとこに行く姿を見られたら色々と厄介なので馬車を使った。貴族になったといえども一応本業は商売なのだ。商売は客、つまり地元の人間の信頼が命。奴隷売場に行く奴の店になんで行きたくあるまい。いや、俺だって行きたくて行ったわけじゃないが。

 

さて、そんな俺の乗っている馬車の中の様子はというと、

 

 

「……………」

 

「……………」

 

沈黙。

 

ひたすら沈黙である。

 

いや、すこしはこの沈黙を紛らわすように話しかけるとかないのだろうか。

年端もいかない少女に求めるにはちょっときついかもしれんが、どうしてもそう思ってしまう。

 

もしかしたら……

 

「なぁ…」

 

俺はあることが頭に浮かんでこれをかけてみる。

 

「……なんでしょう」

 

よかった。

話すことはできるようだ。

 

奴隷になる経緯は幾つかある。

自分、または親の借金の肩代わりとして売り飛ばされる者、金が無さ過ぎて自分自身しか得る者がない者、あと最後に、これが一番ひどいが、女の奴隷がご主人に孕まされ、生まれた者。

一番最後のやつは基本言葉を教えてもらうことなく奴隷になる。親はそんな余裕な精神状態じゃないし、ご主人なんてもってのほか。

まあ、そいつらは言葉がわからんから雑用もできないし、話せないからご主人が満足するような反応もできないので…まあ、察してくれ。

 

 

まあそんなこんなでもしかして話せないんじゃないか?なんて危惧してたわけだけど、そんなこともなくて少し安心した。

言葉がわからなかったらもうどう対応すればいいか、どうやって使っていけばいいかお手上げだったしな。

 

「あの…なんでしょうか」

 

彼女が話しかけてくる。

どうやらすこし考え込んでしまったようだ。

彼女は相変わらずの無表情だが、目にすこし警戒しているのが見える。

んー。

こっちはなにもする気がないのにそんなに警戒心を持たれるとやりずらいな…

 

「用を話す前にさ、とりあえず警戒しないでくれないか?

やりにくくてしょうがない」

 

「はぁ…わかりました」

 

うん、全く解いてないよね

 

「いや、だから…

もういいや。そういえば聞いてなかったな、名前。

なんていうんだ?」

 

「お好きにお呼び下さい」

 

「いや、そういうの考えるのめんどくさいからさ。名前教えてくれないか?」

 

「…固定された名前はありません。ご主人様が変わるごとに名前も変わりましたから。」

 

「そーゆうもんなのか?だが、名前はそいつがそいつでいるための者、極端に言うなら人間の識別番号のような者だと思ってる。だからそう軽々と変えることはできない。

本当の名前はなんだ?あるんだろ?」

 

「あったような気がしますが…すいません、名前がどんどん変わってしまったので忘れてしまいました」

 

そういったときのこいつの顔は心なし悲しそうに見えた。

 

「…まあいいや。前のご主人様はなんて呼んでたんだ?それでいいや」

 

「固定したい呼び方はありませんでしたが主に『ごみ』『豚』『これ』などと呼ばれてました」

 

「はい却下。俺はあいにくそんな風に呼ぶ性癖は持ち合わせてない。」

 

ていうか俺が結局名前考えるのか…

 

「それじゃ、今日からお前の名前はアイラだ。あくまで仮だけどな」

 

「わかりました」

 

「だけどあくまで仮だからな。本当の名前、早いとこ思い出せよ?思い出したらそっちで呼ぶから。わかったな?」

 

「……」

 

「わかったな?」

 

「…善処します」

 

なんでこんな渋るんだ?自分の本当の名前思い出したくない事情とかあるのか?

 

 

そんなこんなしてるあいだに家に到着した

 

 

 

 




開き直って名前はパッと思いついたやつにしました

ではまた
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。