不本意ながら奴隷を買うことになった《凍結》   作:こめぴ

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どうも閲覧数は変わらないのにコメントがいっぱい来て驚いたこめぴです。

のんびりと頑張っております。

では本編へどうぞ。


第29話「本音」

 

「よいしょ……」

 

アイラの部屋に到着した俺はアイラをベットに寝かせてやった。部屋に入る直前、年頃の女の子の部屋に勝手に入っていいのだろうか、なんて完全にお父さん目線のことを思い浮かんだが緊急事態なので構わず入ることにした。

 

なんだかんだアイラの部屋に入ったのは初めてアイラをここに連れて来た時以来だ。アイラのことだからなんの特徴もない部屋なのかなと思っていたが、ちゃんとアイラの私物も多く、アイラの部屋なんだなと感じることができた。

様々なぬいぐるみに加え、初めてアイラと遊んだ時に買ったぬいぐるみも飾ってあり、何故だかすこし嬉しく感じる。俺が買ったわけじゃないんだがな。

 

他にも書斎から持ってきたであろう本や、自分で買ったであろう本などたくさんの本がある。本を見て勉強していたのだろう、紙に本の内容がまとめてある。

本をよく読むのは感心するし、勉強熱心なのもまたいい。

 

他にもアイラらしいものがあるが、さすがに部屋の中をジロジロ見るのもダメだと思い自重した。もう手遅れだとは思うが。

 

 

ベットで寝ているアイラは先ほどと同じく顔が赤いのに加え、呼吸も荒くなってきている。見ているだけでどれだけ辛いのかわかってしまう。

 

「とりあえず……水とタオル持ってくるか。」

 

 

 

 

キッチンに行って冷たい水とタオルを持ってきた。ついでに果物数個と、ちょうど薬を買いに行ったやつが帰ってきていたので薬も受け取った。

あとやはり体を冷やしてはだめだし、起きた時にお腹空いているだろうと思って簡単なスープも作ってきた。

かつてこんなに万全な体制で熱を出した奴隷を看病する主人がいただろうか、いやいないだろう。

 

とりあえずタオルを濡らし、絞ってアイラの額に乗せてやる。

 

「……ん。……ジン様?」

 

「お、起こしちゃったか。」

 

どうやら起こしてしまったらしい。絞った時にわかったけどあの水相当冷たいからな。それで起きたのかもしれない。

 

アイラはまだ意識がはっきりしていないのか目の前のなにもない空間を眺めている。一応俺のことは認識しているようだが。

 

「どうだ?すこしは良くなったか?」

 

「まだ…よくありませんね…」

 

あまり良くないらしい。こいつのことだから大丈夫とかいって仕事に戻ろうとするんじゃないかと思っていたが、そんなことできないほどにつらいのか。

 

「まあ、ちゃんと寝て早く良くなれ。」

 

「……はい。」

 

「ここにスープとか皮をむいた果物置いとくから腹減ったら言ってくれ。食べさせてやる。」

 

「もしかしてずっとここにいるんですか?」

 

「いやだったか?嫌なら出て行くが。」

 

「嫌ではないのですが…。お仕事の方は?」

 

「仕事はバーリルがやってくれた。」

 

「バーリルさんが……。」

 

納得したように呟くが、多分意識が朦朧としているのでおうむ返ししただけだろう。

 

「何かしてほしいことないか?何か他に持ってきてやろうか?額のタオル温まってきてないか?なんかしてほしいことがあったら言ってくれ。やってきてやるから。」

 

「え……えっと…。」

 

いかん。一気にまくし立てたせいでアイラの頭から湯気が出ている。そんなに頭使わせたらだめだな。

 

「まあ、とにかく何かしてほしいことがあったら言ってくれってことだ。」

 

「わかりました……」

 

とかいってるけど多分なにも言わないだろうな。悪いからとか思ってそうだし。

 

「俺はここにいるから安心して寝ろ。」

 

そう言って俺はアイラの手を握った。この方が俺がここにいるってよくわかるだろうしな。俺が子供の頃も熱が出た時は母親がこうやってくれて、とても安心したのを覚えている。

 

「はい…。ありがとうございます。」

 

うん、安心したいい顔だ。このままいけば眠れそうだ。

 

そう判断した俺はアイラから手を離そうと力を抜いたが、逆にアイラの方から握ってきた。

 

「アイラ?」

 

「……手を握ったままにしてもらえませんか。手を握っているとなんだか安心するんです。」

 

目はほとんど閉じていて、寝かけているのだろう。片方だけで握っていたのを、もう片方の手も握ってほとんど寝言同然にそんなことを言ってきた。

そんな状態で言ったことだから本心なのだろう。だから俺は手を握ったままでいることにした。

 

「人肌とはこんなにあったかくて……、安心するものなんですね。人と触れ合うことが少なくて知りませんでした。」

 

「そう思ってもらえてなによりだよ。ほら、しゃべってな

いで早く寝なさい。」

 

「雪遊び、買い物、料理、新しいことをいろいろやらせてくれた。あんなに愛情を向けられたのは初めてでした。ここにきてからの日々は今までの人生の中で最も幸せでした。」

 

今までで初めて聞くアイラの本音。俺たちもアイラが来たことでさらに日常が楽しくなった。

 

「私がこんなに幸せな日々を過ごせたのはあの時ジン様に買ってもらったからです。今こんなに幸せなのはジン様のおかげです。私は…そんな…ジン様のことが……」

 

アイラはそこまでいって話さなくなった。完全に眠ってしまったんだろう。

 

 

正直そんなに感謝されているとは驚きだ。自然と口角があがってしまう。

 

俺からすると確かにアイラを買ったのは俺だが、その後については俺はそんなに関与してないつもりだ。後押しのようなものはしたが、それは俺が好きでやったこと。感謝されるいわれはない。

 

「でもまあ、受け取ってやるか。」

 

そう誰に向けてでもなくつぶやいて、母親の腕の中の赤ん坊のように安心した顔で眠るアイラを見守り続けた。

 

 

 

 

 

「ジン様?アイラちゃん?入りますよ?」

 

ただいまの時刻は夜の7時。ちょうどご飯の時間です。

熱のアイラちゃんはともかく、看病をしているジン様も全然来ないので心配で様子を見にきました。

 

ドアを開けて中に入ると部屋の中は暗いです。どうやら寝てしまったようですね。

眩しくて起こしてしまうのもだめなので明かりはつけずに中に入りました。全然見えないほど暗いってわけでもないですし。

 

 

「あらあら……」

 

ベットにいたのはアイラちゃんのの手を握りながら床に立て膝をつき、乗り出すようにして彼の胸に頭を置き、ぐっすり寝ているジン様の姿だった。

 

「寝てしまったんですね。」

 

ここで起こすのは無粋というものでしょうか。このままにしておきましょう。

 

「あ、でも。」

 

風邪ひくといけないのでジン様に毛布をかけておきました。

 

「おやすみなさい、ジン様、アイラちゃん。」

 

そう言って私は起こさないよう静かにドアを閉めました。

 

 

 

 

 

翌日介護の甲斐あってアイラちゃんの熱は下がりました。

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