不本意ながら奴隷を買うことになった《凍結》 作:こめぴ
どうしてこうなったのでしょうか…
わたしは今メアさんに頭を洗ってもらっています。
髪の毛を丁寧に、優しく洗ってくださいます。
今までのわたしの髪の扱いとは正反対です。
優しすぎてきちんと洗えているのか不安になるくらいです。
「気持ちいい?」
「………」
メアさんに聞かれ無言で返しましたが、はっきり言いましょう。
むちゃくちゃ気持ちいいです。なんでただ髪を洗っているだけなのにこんなに気持ちいいのでしょうか。
メアさんはどんな顔をして洗っているんでしょうか。今目をつぶっているので見えませんが、絶対に目は開けません。
さっき目を開けたらむちゃくちゃ痛かったです。
もうあんなの嫌ですから開けません。
なんで洗ってもらっているのか。
それは洗いっこを提案されたからなのです。
もちろんわたしは遠慮しましたよ?
「奴隷であるわたしが奉仕されるなんてあってはいけません。」と。
ですがメアさんは洗いっこするといってきかないのです…。あんなに頑固だったんですね。最終的にはジン様から言われているといわれ、なにも言えなくなりました。奴隷にとってご主人様の命令は絶対なのです。
「じゃ、流すね」
桶に組まれていたであろうお湯が頭にかけられます。
強すぎず、弱すぎない勢いでとても心地いいです。
「次は体ね。」
背中にひやりとしたボディーソープの触覚が。
「ひゃんっ!」
「あらごめんなさい。冷たかった?」
「だいじょうぶです。続けてください。」
メアさんのきめ細かな肌の手のひらが背中を這っていて、とても気持ちいいです。でもそんな私の感情に反して体はビクビクしてしまいます。
いままで体に触れられる時は何かひどいことをされるときのみでしたから、何かされるのではないかと思ってしまいます。
「だいじょうぶ、なにもしないから。安心して?」
体に触れているメアさんには震えがばれてしまったようです。不思議なことに母のような声に体の震えは治まってしまいました。
それを見たメアさんは安心したように笑ってまた洗い始めました。
もともとわたしは自分から話すことはないですし、おそらくメアさんもそうなのでしょう。自然と石鹸が泡立つ音のみが響いています。
ふと、メアさんがわたしの傷跡を避けて洗っていることに気がつきました。
わたしの背中には覚えている限りでは、鞭打ちによる細い傷が数10本、薬や酸をかけられて変色しているのが数カ所、他にも殴られたりしたアザや、えぐられて凹んだ部分もあります。
もしかしたら気づいてないだけでもっと多いかもしれませんし、少ないかもしれません。自分で背中は見れませんから。
「メアさん、傷はだいぶ前に受けたものなので染みもしませんからだいじょうぶです」
そう言うとメアさんはわかったと恐る恐る傷がの場所も洗っていきます。その表情は心なしか暗そうです。
またその表情…。
むしろ傷を抉ってくれるくらいじゃないとわたしとしても落ち着かないのです。別にMというわけじゃありませんが、わたしの経験上。
手持ち無沙汰なわたしはやり方も大方わかったので体の前部分を洗っていきます。
「それじゃ、流すわね」
暖かいお湯が背中を流れていきます。
泡が流れていき、全身にあった違和感がなくなっていきます。
………
わたしの肌ってこんなにしろかったでしょうか。
自分で言うのもなんですが、健康状態が心配になるくらい白いです。
いつもすこし黒っぽかったのは汚れていたからなのですね。
いまさらですけど、そんな状態でご主人様と接していたとはお恥ずかしい限りです。
「じゃ、交代ね」
わたしは立ち上がり、メアさんと位置を交換しました。
わたしはメアさんがやっている様子を思い出しながら、メアさんの髪を濡らし、シャンプーを泡立てて、髪を洗っていきます。
「あっ!」
メアさんの髪に指を引っ掛けて引っ張ってしまいました。
「すいません。初めてなので勝手がわからず…。」
「だいじょうぶ。きちんとできてるから。初めてにしては上出来よ?」
「はい…」
気を使わせている感じしかしないのですが…とりあえず頷いておきます。
「あの、やはりご自分でやったほうがいいのではないでしょうか。」
「いいのよわたしがやって欲しいんだから。洗えてる洗えてないじゃなくて、わたしがアイラちゃんにやってもらいたいの。わかった?」
もちろん、洗えているほうがいいけどね。
そういってクスクス笑うメアさんが鏡越しに見えます。
わたしはそれに渋々納得しました。
一通り洗い終わったので流していきます。
強すぎるのもどうかと思い、すこしずつ水を流していきましたが、どうやら弱すぎたようで、泡がいくらか残っています。
「すいません。水の勢いが弱かったようで泡が残ってしまいました。もう一度流しますが、いいですか?」
メアさんが頷いたのを確認して、すこし強めに流します。
よし、今度はきちんと流せたみたいです。
次に背中です。
ボディーソープを泡立てて洗っていきます。
なんで洗っているわたしが気持ちいいのでしょうか。肌がすべすべしていて気持ちいいです。
この柔肌を傷つけないように、傷つけないように慎重に洗っていきます。
もちろん最初は命令だからとやっていましたが、いつの間にか、メアさんの肌を堪能している自分がいました。
背中を流し終わるといきなりメアさんが立ち上がって
「さあアイラちゃん、お楽しみの湯船よ!」
とわたしの手を取り湯船に歩き出します。
メアさん…キャラ、ぶれてます。
あのメアさんがあんなに喜ぶなんてすごいものなんでしょうか。
「熱いからゆっくり入ってね。いきなり入ったら火傷しちゃうかもしれないから。」
とりあえず片足の指先をお湯につけてみます
「っ!」
なるほど…たしかにこれは熱い。
横を見るとメアさんはもう肩まで沈んでいます。
はやくないですかね。結構熱かったと思うんですが。
わたしはわたしのペースでやっていきましょう。
とりあえずすこしずつ慣らしながら足を入れていく。両足は入りました。そこからお尻、腰、腹、胸とすこしずつ沈んでいき、肩まで浸かることができました。
「は〜〜〜〜〜」
なるほど、これは凄まじいです。脱力感がすごいです。おかげで変な声が出てしまいました。顔も自然ととろんとしてしまいます。
「どう?お風呂、すごく気持ちいいでしょ?」
あなたが作ったわけでもないでしょうに、なぜかドヤ顔のメアさんです。
でもお風呂の凄さは認めなければなりませんね。いつまででも入ってられそうです。お湯加減も最初は熱く感じましたが慣れた今ではちょうどいいです。
メアさんは頭に畳んだタオルを乗せ、お湯をパチャパチャと首にかけています。
本当に絵になりますね。
再びこの場に沈黙が流れました。
感想、アドバイスお待ちしております。