この物語の主人公の前世(という設定)の武将は調べてみると「この武将って末路はμ'sとは真逆にあるけどなんかラブライブと親和性があるかも?」なんて思い浮かんだので抜擢しました。だれを選んだのかはすぐに明らかになります。そこまでマイナーな御仁ではありません。
では、どうぞお楽しみください。
時は天正10年(1582年)3月11日、場所は甲斐国天目山。天下統一事業を推し進めた戦国大名である織田信長の嫡男、織田信忠を総大将とした世に言う「甲州征伐」の最後の舞台だ。
この甲州征伐のターゲットは、「甲斐の虎」と呼ばれ、最強の戦国武将の一角であった武田信玄の跡を継いだ武田勝頼である。彼は信玄と、彼が滅ぼした諏訪頼重の娘である、諏訪御料人の間に生まれた。しかし、かつて敵国だった国の姫の血を引いた勝頼は、その出自から、重臣や一門衆との折り合いはあまりよくなかったという。歴史上に名高い「長篠の戦い」で重臣を何人も失うという大敗北を喫するが、それから7年もの間、織田や徳川の攻勢を凌いでいた。
しかし北の隣国である越後を支配する上杉家の後継者争い、「御館の乱」において盟友、北条氏政に弟である上杉景虎の支援を頼まれるが、敵方の工作によりそれを反故にしてしまい、妻の実家の北条家とも争うことになってしまった。
そして1582年に入り、一門の一人である木曾義昌が織田に寝返ったことで彼を道案内とした甲州征伐が始まった。勝頼は将兵を集めて抵抗するが織田、徳川、北条の大軍を前に兵士たちは逃げ出し、一門衆筆頭の穴山梅雪の寝返りをきっかけに家臣団は信濃の高遠城で玉砕した弟の仁科盛信や真田昌幸といったわずかの忠臣を除いて崩壊してしまった。
勝頼は、居城を捨てて重臣の小山田信茂を頼るが、その信茂は突如織田軍に寝返り、勝頼は天目山に逃れる。そしてやってきた滝川一益の軍勢を相手に最期の戦いを挑み、43人しかいないのにも関わらず、1000人ほどの損害を与えるが、持ちこたえることなどできるわけがなく、彼と息子の信勝は天目山の奥深くに潜り込んだ・・・。
「うむ、実に見事な武者姿よ。それでこそ武田の跡取りにふさわしいな。」
「ありがとうございます、父上。最期にこのようなものを賜ることができてこの信勝はまことの果報者でございます!」
「よく似合っていますよ、信勝。私も母として鼻が高いです。」
勝頼はその最期に際して、息子の信勝に武田家の正統な後継者の証である家宝の「楯無の鎧」を着せたという。これは武田の正当な後継者ではなく、あくまでも信勝が成人するまでの代理でしかなかった勝頼の最後の役目であった。
「それにしてもすまないな。わしが不甲斐ないばかりにこのようなことに巻き込んでしまった・・・。それに桂、お主は実家に帰ることもできたであろうに。」
「よいのです、勝頼様。私はあなたの妻であり、血こそ繋がってはおりませんが信勝の母でもあるのです。覚悟はできています。」
勝頼の妻、桂(桂林院、または北条夫人。本名は不詳なので作者が勝手に名前を付けた)は兄の氏政から、戻ってくるようにと使者を送られたが、これを断り、自らの髪を切って形見として使者に持たせて送り返したという。
「では勝頼様、私は先に逝きますね。」
「ああ・・・。」
「勝頼様・・・、今までありがとうございました。あなたの妻となれたこと、私の生涯の誉れでした・・・。」
桂は自らの喉に持っていた懐刀を突き立て、自害した。享年19歳。
「父上・・・。」
「ああ。介錯はわしに任せよ・・・。」
「父上、あなたは誰が何と言おうと私にとって最高の武将であり、私の誇りでした。父上の子として生まれることができて幸せでした。」
「わしもお主のような立派な息子を持てて幸せだったぞ・・・!」
「ありがとうございます。ではお先に。・・・ふんっ!」
勝頼の息子にして甲斐武田家の最後の当主であった、信勝も自刃して果てた。享年16歳。
「桂・・・、信勝・・・、わしも今すぐそちらに逝くぞ・・・。」
勝頼は、鎧を脱ぎ腹部を露わにして刀を腹に向けた。
「父上・・・、私が不甲斐ないばかりに武田は滅びてしまいました。どうか、あの世で私を叱ってくだされ・・・。」
そして勝頼は自らの腹に刀を突き立て、横一文字に切った。
(ぐっ・・・!うおお・・・!もし・・・、もしも我が願いが叶うならば、次は血や家といったしがらみなどのない・・・、穏やかな・・・、安らかな世に生まれてみたいものだな・・・。)
そして勝頼の首を近習の刀が切り裂き、勝頼は37歳の生涯を終える・・・、はずだった。
(ここはいったいどこなのだ?わしは天目山で自刃したはず・・・。それに体がうまく動かん・・・。)
「あ、志郎が起きたわ。おなかがすいたのね、今ミルクを作ってあげるからね~。」
(言葉遣いは面妖だが日ノ本の言葉であるのは間違いなさそうだな。)
「はーい、志郎。ミルクですよー。」
(ぬっ!やめろ!わしは武田四郎勝頼であるぞ・・・ってなんだと!?)
勝頼は抱き上げられたことに対して抵抗するが、その時に自分の手足と近くにあった鏡を見て驚いた。
(馬鹿な・・・、赤子になっているとは・・・。どおりで体は碌に動かんし、言葉も話せぬわけだ・・・。)
「ははは、志郎はやんちゃだなぁ。誰に似たんだろうかね。」
「もう、このやんちゃっぷりはあなたそっくりよ、晴彦さん。」
「痛いとこを突いてくるなぁ、美代子は。」
(なるほど、この者たち、晴彦殿と美代子殿はここでのわしの両親か。二人とも朗らかなお人だ・・・。)
ミルクを飲んだ志郎(中身は勝頼)はすぐに眠りについた。
「あら、寝ちゃった。いつにもましてかわいい寝顔ねえ。」
「寝顔がかわいいのはお前にそっくりだよ。」
「何言ってんのもう・・・!でも本当にぐっすり寝てるわね。」
「きっと立派に育つぞ、こいつは。」
こうして武田勝頼改め志郎は、諏訪部夫婦の下で健やかに育っていく。
そして物語は志郎が17歳、高校二年生となる春に移っていく・・・。
プロローグが終わり、次回から本編となります。
こういう転生ものなら育ってく過程とかも書く人が多いと思いますが、自分の場合はあまりにもグダグダになってしまいそうなのでそういう過程は全部すっ飛ばすことにしました。
感想や「こうするといいんじゃないかな」といった意見があればお待ちしています。