今回はまきりんぱな回ですが、少しばかり長くなりそうなので、話を分けることにしました!
どうぞ、お楽しみください!!
ファーストライブから数日が経ったある日の授業中、音ノ木坂学院に通っている一年生の小泉花陽は授業で使っているノートの陰に隠れている「メンバー募集中!」の文字を見ながら悩んでいた。
彼女は小学生だった頃からアイドルに憧れていたのだが、その引っ込み思案な性格が災いしてどうすることもできないまま高校生になっていた。だが、μ'sのファーストライブでの穂乃果たちのパフォーマンスを見てその一生懸命な姿に感動を覚え、自分も彼女たちと共に踊りたいと思っていた。だがしかし・・・。
「じゃあここ、小泉読んで。」
「は、はい。」
先生に指された花陽は先生に言われたところを読むが、
「もう少し声出して。」
「は、はい。」
声が小さく、先生に注意され挙句の果てには
「はいそこまで。じゃあ今のとこ、今井読んで。」
と中断されてしまった。
(無理だよね、こんなんじゃ・・・。)
そう思い、花陽はうつむいた。
「おお、いたいた。」
「またここに来ていたのか。」
時は変わって昼休み、志郎たち5人はアルパカ小屋に来ていた。
「ふわあああ~。ふええ~・・・。」
「ほんとここ数日飽きないねえ。そんなにかわいいかね。」
幸雄はアルパカ小屋で白いアルパカが餌を食べてるのをうっとりとした表情で見ていることりに呆れ気味に言った。
「ことりちゃん、最近毎日ここに来るよね。」
「急にハマったみたいです。」
「そうだったのか。」
穂乃果と海未から訳を聞いた志郎は、
(確かにどこか癖になりそうな見た目をしているな。)
と思いながらアルパカを見た。
「ねえ、チラシ配りに行くよー。」
「あとちょっと~。」
穂乃果がことりを急かすもことりは動こうとしない。
「なんかいつもとは構図が逆になってねえか?」
「奇遇だな幸雄。俺もそう思っていた。」
「もう・・・。」
「志郎と幸雄以外で5人、つまり7人以上にして部として認めてもらわないとちゃんとした部活はできないのですよ?」
「そうだよねぇ~。」
海未の言葉でさえもどこ吹く風といった状態であった。
「かわいい・・・かなあ?」
ふと穂乃果が疑問の声を漏らすと、茶色のアルパカが聞こえていたのか穂乃果たちの方に顔を向けた。
「ええ?かわいいと思うな。首のあたりとかふさふさしてるし。」
そう言ってことりはアルパカの首を撫でまわした。
(確かに、父上の諏訪法性の兜の毛みたいで触り心地はよさそうだとは思うが・・・って、そうじゃなくって!)
「やめたほうがいいんじゃないか?」
志郎がことりをたしなめるも、
「大丈夫だよ~。うわあっ!」
ことりが大丈夫だといった矢先にアルパカがことりの頬を舐め、びっくりしたことりは尻もちをついた。
「ど、どうすれば?あっ、ここはひとつ弓で!」
「ダメだよ!!」
「どうやったらそういう結論が出るんだよ!!」
動揺してるのか、いつもなら絶対に言わなさそうな素っ頓狂で過激な対応策を海未が言い出したので穂乃果と幸雄は即座にやめさせるが、茶色のアルパカは海未の言葉を理解したのか唸り声をあげて志郎たちを威嚇した。
「おいどうすんだよ海未が変なこというからだぞ。責任をもって鎮めて差し上げろ。」
「私がですか!?どうしろって言うんですか・・・!」
と慌てていると、志郎たちの後ろからジャージ姿の生徒が来て、
「よーしよし、大丈夫だよ。」
そう言ってアルパカをなだめてるうちに穂乃果たちはことりのもとへ行った。
「おお、小泉じゃないか。」
「あ、諏訪部先輩、武藤先輩。」
生徒が花陽だと知った志郎は声をかけた。
「へえ、小泉って飼育委員だったんだな。なかなか手馴れてるな。」
「そ、それほどでもないですよ・・・。あ、お水替えなきゃ。」
と幸雄の賛辞に花陽は照れながら答え、ペットボトルの水を替える。
「大丈夫?ことりちゃん。」
「うん。嫌われちゃったかなあ。」
「あ、平気です。楽しくて遊んでただけだと思うから・・・。」
ことりの言葉に答えた花陽に穂乃果が近づいて、
「アルパカ使いだね。」
そう言ってから穂乃果は
「おお!ライブに来てくれた花陽ちゃんじゃない!!」
「駆けつけてくれた一年生の!」
「あ、はい・・・。」
穂乃果とことりの言葉に花陽はうなずいた。すると穂乃果は彼女の肩をつかんで、
「ねえあなた!アイドルやりませんか?」
と花陽を誘う。
「おい、いきなりすぎだぞ。」
「君は光ってる!大丈夫、悪いようにはしないから!!」
そういってさらに花陽に迫るが、
「どう見ても悪人にしか見えんのだが・・・。」
「俺の方がもっとうまく勧誘できるぞ?」
「お前はやめとけ幸雄。」
「でも、少しぐらい強引に頑張らないと。」
「あ、あの・・・。西木野さんが・・・。」
「あ、ごめん。もう一回言ってもらっていい?」
花陽が何か言いたげな様子だったが声が聞こえなかったので、穂乃果は聞き返した。
「に、西木野さんがいいと思います。す、すごく歌が上手なんです・・・。」
「そうだよね!私も大好きなんだあの子の歌声!」
そう言って穂乃果は花陽の手を握った。
「だったらスカウトに行けばいいじゃないですか。」
「行ったよ!でも絶対やだって。」
「え?あ、すみません。私余計なことを・・・。」
そう言って謝る花陽の手を穂乃果は優しく握って
「ううん。ありがとう。」
と、笑顔でお礼を言った。その時、
「か~よち~ん!早くしないと体育遅れちゃうよー!!」
と凛が花陽を呼んだ。それを聞いて花陽は
「あ、し、失礼します。」
と言って凛と共に校庭に向かっていった。
「私たちも早く戻りましょう。」
「そうだね。」
という海未とことりに
「うん・・・。」
と、意味ありげな顔でうなずく穂乃果を志郎と幸雄は見ていた。
そして放課後、1年生の教室にて・・・。
「かーよちん。決まった?部活。今日までに決めるって昨日言ってたよ?」
「そうだっけ、明日決めよっかな・・・。」
「そろそろ決めないとみんな部活始めてるよ?」
「うん・・・。あ、凛ちゃんはどこ入るの?」
「凛は陸上部かな~。」
「陸上かあ・・・。」
そういう花陽の表情を見て何かに気付いた凛は、
「あ、もしかして・・・、スクールアイドルに入ろうと思ってたり?」
と小声で聞いた。図星を突かれた花陽は
「えぇっ!?そ、そんなこと・・・。」
と弱弱しく反論するが、
「ふーん、やっぱりそうなんだね?」
花陽の口を指でやさしく抑えた凛は、
「だめだよかよちん、嘘つくとき指合わせるからすぐ分かっちゃうよ~。」
と花陽の癖を見て嘘を見破ってみせた。
「一緒に行ってあげるから先輩たちのところにいこ?」
と言って凛は花陽の腕を引くが、
「ち、違うの!ほんとに・・・、私なんかじゃ・・・。」
「かよちんそんなにかわいいんだよ?人気出るよ~。」
「でも待って、待って・・・!」
そう言って花陽は踏みとどまる。
「ん?」
「あ、あのね・・・、わがまま言ってもいい?」
「しょうがないな~、なに?」
「もしね、私が・・・アイドルになったら一緒にやってくれる・・・?」
「凛が・・・?」
「うん・・・。」
そんな花陽の言葉を聞いた凛は少し間をおいてから、
「無理無理無理無理、凛はアイドルなんて似合わないよ。ほら、女の子っぽくないし、髪の毛もこんなに短いし・・・。」
「そんなこと・・・。」
「それにほら、昔も・・・。」
そう言って凛は、小学生の頃に初めてスカートをはいたときに男子にからかわれて以来、制服以外ではスカートをはいてないことを話した。
「アイドルなんて、凛には絶対無理だよ・・・。」
そうやって笑いながら言う凛の表情はどこか悲しげだった。
「凛ちゃん・・・。」
花陽も凛にかける言葉が見つからなかった。
そのあと教室から出た花陽は掲示板の前にいる人影に気付いた。
「西木野さん・・・?」
そう、真姫である。真姫が掲示板の前に置いてあるμ'sのメンバー募集のビラを見ていた。花陽は真姫に気付かれないように物陰に隠れた。
そして真姫は、見ていたビラをカバンに入れてそのまま帰っていった。
「今の・・・。」
掲示板に駆け寄っていった花陽は、ビラが置いてある机の前に何かが落ちているのを見つけた。
「これ・・・。」
中を開いてみると、真姫の写真が貼ってあった。どうやら真姫の生徒手帳みたいだったようだ。
「よ、なにしてるんだ小泉。」
「ぴゃあ!?」
不意に後ろから声をかけられた花陽は驚いて悲鳴を上げた。
「うお!?す、すまん。驚かせてしまったな。」
「あ、諏訪部先輩。すみません、こっちこそ悲鳴を上げたりなんかして。」
「いや、こっちが急に声をかけたのが悪かったしな。って、何かを拾ったみたいだが・・・。」
「あ、これ西木野さんの生徒手帳で・・・。私に行こうかなって・・・。諏訪部先輩はどうかしたんですか?」
「ああ、幸雄は生徒会に行ってて穂乃果たちは先に帰っちまったから少し暇でな。」
「そうなんですか・・・。あ、あの!」
「ん?どうした。」
「あの、もしよかったら・・・、西木野さんに手帳を渡しに行くのに付き添ってくれませんか?」
「ああ、お安い御用だ・・・って、ええ!?」
志郎は花陽の突然の頼みごとに驚いた。
「あ、あの、だめでしたか?」
花陽は上目遣いで志郎にたずねる。
「い、いやだめってわけではないが・・・、俺がついてって大丈夫なのか?」
(うおお・・・!そうやって上目遣いで頼むのは反則ではないだろうか・・・!)
「はい、一人じゃ恥ずかしいので・・・。」
「なるほど、そういうことならついて行ってやるか。」
「すいません!ありがとうございます。」
「じゃあ、さっそく住所の場所に行ってみるか。」
「とは言って来てみたが・・・。」
「ふええ~。すごい・・・!」
志郎と花陽が着いたのはなんと豪邸だった。志郎と花陽は西木野邸の威容に唖然としていた。
(おいおいマジかよ、西木野ってお嬢様だったのか!?いや、あの高飛車な態度からして想像できなくはなかったが・・・。それより現代の豪邸ってなんであんな厳かに見えるんだ!?躑躅ヶ崎館や新府城の屋敷の方が広いし厳かだが、それとは違う雰囲気が・・・。)
と、内心では動揺しまくりではあるが何とか平静を保ってチャイムを押した。
「はい。」
すると若い女性の声が聞こえた。
「は、はい。真姫さんと同じ学校に通ってる諏訪部です。」
「えっと、真姫さんと同じクラスの小泉です。」
そう名乗ると、中から真姫の母親らしき女性が出てきて中に通され、お茶を出してもらった。リビングには高級だと思われる家具や、数多くのトロフィーやメダルが置いてあり、志郎はまさしく金持ちの家だな、と感じた。
「ちょっと待ってて。病院の方に顔を出しているところだから。」
「病院・・・?」
と花陽は疑問を口にした。
「ああ、うちは病院を経営してて、あの子が継ぐことになってるの。」
「そう、なんですか。」
(なるほど、あいつの家は病院の経営者で西木野自身はその跡取りというわけか。あいつも俺みたいな苦労をしなければよいが。)
「よかったわ。高校に入ってから友達が一人も遊びに来ないから心配してたの。」
そういって真姫の母親は顔をほころばせた。
(あいつもこれくらい態度が柔らかければ問題はないと思うが・・・。)
志郎がそんなことを考えていると、
「ただいまー。誰か来てるの?」
真姫が帰ってきた。母親に促されて部屋に入ると、
「こ、こんにちは・・・。」
「すまん、お邪魔してるぞ・・・。」
意外な来客を前に少し驚いたような顔を見せた真姫だったが、すぐにいつもの表情に戻って志郎たちのもとへ向かった。
「お茶淹れてくるわね。」
と言って母親が部屋を出てから、
「なんの用?」
と志郎たちに用件を聞いた。
「これ、落ちてたから・・・。西木野さんのだよね・・・?」
そう言って花陽は真姫に生徒手帳を渡した。
「なんであなたが?」
「ごめんなさい・・・。」
「なんで謝るのよ。あ、ありがとう・・・。それで、先輩の方はなんの用ですか?」
「いや、俺は小泉に付き添いを頼まれてな。」
「そう。」
志郎の答えに不愛想に返事した真姫に花陽は質問をぶつけた。
「μ'sのポスター、見てたよね?」
「私が?知らないわ。人違いじゃない?」
「いや、ポスターの前に落ちてたからその言い分は苦しいんじゃ・・・?」
志郎が畳みかけると、動揺した真姫は、
「ちがっ、違うのっ・・・!うっ、いった!うわああ!!」
慌てて立ち上がろうとしたところ、テーブルに膝をぶつけてよろめいてそのままソファーと一緒に倒れてしまった
「だ、大丈夫!?」
「おいおい、大丈夫か?」
花陽と志郎が心配するが、
「へ、平気よ!まったく・・・、変な事言うから!!」
そう言って真姫は二人に抗議するが、
「ふふ、ふふふ・・・。」
「くく、ははは・・・!」
花陽と志郎はそんな真姫を見て思わず笑ってしまった。
「私がスクールアイドルに?」
「うん、私いつも放課後に音楽室の近くに行ってたの。西木野さんの歌、聞きたくて。」
「私の?」
「うん。ずっと聴いてたいくらい好きで、だから・・・。」
「俺も西木野の歌声は好きだな。澄んでて綺麗だし。」
「ヴェえっ!?」
二人に褒められ、顔を赤くした真姫だったが、
「私ね、大学は医学部って決まってるの。」
「そうなんだ・・・。」
「・・・。」
「ふぅ・・・。だから私の音楽は終わってるってわけ。」
「解せんな。」
「す、諏訪部先輩?」
今まで黙って聞いていた志郎が突然口を開いたことに花陽は驚いた。
「自分の音楽は終わったと言ったな。なら何故まだピアノを弾いてるんだ?」
「べ、別にいいじゃない。趣味程度に弾いたって。」
「ふむ、言い方が悪かったな。なら何故μ'sの曲を作ってくれたんだ?本当に終わってるのなら穂乃果や幸雄に頼まれた時もそういって断ることはできたと思うのだが・・・。」
「な、あなたに何がわかるのよ!」
志郎の言葉に真姫は思わず声を荒げた。
「怒らせてしまったならすまない。西木野の家庭の事情は俺には分からん。だが、俺にはお前の苦悩が少しだが分かるような気がするんだ。」
「あなた、別に医者でも何でもないでしょ?」
「ああ、そうだ。だが、俺の知ってる人にも似た様な境遇の人がいてな?本当はやりたいことをやれるはずだったが急に家業を継ぐことになってそれを諦めざるを得なかった。だが、それでも重圧に耐えながらも自分の道を進んでいった・・・、そんな男がいたことを俺は知ってる。」
「・・・。」
真剣な表情で話す志郎を見て真姫は口をつぐんだ。
「別にお前にそうなれって言ってるわけじゃないんだ。ただ、そうやって義務を言い訳にして自分のやりたいことを諦めて欲しくないんだよ。」
「先輩・・・。」
「・・・そんなことより小泉さんのことだけど、あなた、アイドルをやりたいんでしょ?」
真姫はとっさに話を変え、花陽に矛先を向けた。
「え?」
「そうなのか?」
話をそらされ憮然とした表情の志郎も興味を示した。
「この前のライブの時も夢中になって見てたじゃない。」
「え、西木野さんもいたの?」
「ああ、幸雄が入口の方にいたが結構くぎ付けだったって言ってたぞ?」
話をそらされた意趣返しか、にやけながら幸雄から聞いた話を言った。
「わ、私はたまたま通りがかっただけだから!」
動揺した真姫を見て、
(なるほど、幸雄がからかい甲斐があるっていうのも分かるな。)
と志郎は思った。
「と、とにかくやりたいならやればいいじゃない!」
「・・・。」
志郎は複雑な表情で真姫を見ていた。
「そしたら、私も少しは応援してあげるから。」
「・・・ありがとう。」
花陽は笑顔で真姫にお礼を言った。
「さて、あまり長居するのもなんだしそろそろ帰るか。」
「あ、そうですね。じゃあ西木野さん、また明日。」
そう言って志郎と花陽は席を立って、部屋を出た。
「ええ、また明日。」
真姫が二人を見送ったすぐあと、志郎が戻ってきた。
「すまん、少し忘れ物をした!」
「え?落とし物なんて部屋には無いけど・・・。」
「いや、そうじゃなくってな。」
「・・・?」
志郎の意図がくみ取れず、真姫は首をかしげた。
「お前がどういう道を歩もうが、俺はどうこう言う気は毛頭ない。だが、さっき俺が言った言葉を忘れないでくれ。」
「えっ・・・。」
「じゃあな、邪魔したな。」
真姫が呆然としてると志郎はさっさと出て行ってしまった。
その夜、真姫はμ'sの初ライブの動画を見ながら、
「さっきの言葉・・・か。」
そうつぶやく真姫の脳裏にはある言葉が残っていた。
『別にお前にそうなれって言ってるわけじゃないんだ。ただ、そうやって義務を言い訳にして自分のやりたいことを諦めて欲しくないんだよ。』
「じぶんのやりたいことを諦めて欲しくない、か。どうすればいいのかしら。」
そう言って真姫はパソコンの電源を切ってベッドに入り、志郎が言っていた言葉を噛みしめながら眠りについた。
こうして今日も夜は更けていった・・・。
いかがでしたでしょうか。
今回は真姫ちゃんホーム突撃までやりました。(分け方、変じゃないですよね・・・?)
アニメとオリジナル展開のバランスが取れてきたと思う今日この頃、これからも精進していきます!!
感想や、こうした方がいいという意見があればどんどん書いてください。よろしくお願いします!
それでは次回もお楽しみください!